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ハジメユキノ

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役員会議

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玲児がハッと目を覚ますと、斎生がムニャムニャと寝言を言いながら笑っていた。
「さかきさん…ぼくから離れちゃダメですよ…」
そして、斎生は私を探しているように手で辺りを探っている。
「ぼくが幸せにしますから…」
玲児の手に触れるとホッとしたような顔をして、またスースー安らかな寝息を立て始めた。
「僕が幸せにしますって最初に言ってくれたのよね…」
大分追い詰められていたけど(笑)。
「ノンケだったのにね。こんなに大事にしてくれるなんて…」
斎生を起こさないようにそっとベッドを抜け出した。

「斎生♡朝よ。起きて♡」
耳元で甘い声。自然にかかる微かな吐息。
「斎生…。若いわね(笑)」
「ん?玲児?」
気付くとしっかり朝から反応している僕。耳元で玲児の甘い声は反則なんですよ…。
「おはようございます!」
玲児が嬉しそうに笑う。
「おはよ♡昨夜疲れただろうから…。起こすの可哀想になっちゃって(笑)」
僕は思い出して頭が噴火しそうだった。調子乗りすぎ…ですよね?
「そんな赤くなって…。エッチの時は野獣なのに♡」
や、野獣?そうかな(汗)
「だ、大丈夫ですか?そ、その…体…」
「途中イキ過ぎて、気を失っちゃったわ♡」
「す、すみません…」
玲児は幸せそうに笑っていた。
「ウソ♡しっかり最後まで一緒にイったわよ♡幸せだったわ…」
幸せ…。
「斎生って、どんどんダーリン化してって…。ホント、この人選んで良かったって毎秒思うわ♡」
毎秒?そうなんだ…。
「でも、せっかく一緒に朝ごはん作るって言ったのに」
「いいの。気持ちがうれしかったから♡」
暴走し過ぎちゃったな。それにしても綺麗な背中だった…。
「シャワー浴びてきて。食べられるようにしておくから」
「は、はい!」
シャワーで静めてこないと…(笑)。

バスルームからリビングに戻ってくると、ソファに今日のコーディネートが用意されていた。
初夏らしいライトグレーのよく見ないと分からないくらいのピンストライプのスーツにホワイトのシャツ、ネクタイがモスグリーンにホワイトの小さなドットがお洒落だ。
「僕、ライトグレーって何合わせていいか分かんなくて、ちょっと敬遠してました…。これにグリーンのネクタイっていいですね!」
「顔も明るく見えるし、品があるのよね。なんせ着こなせたらお洒落よ♡」
玲児はネイビースーツにホワイトのシャツ、ネクタイはネイビーに細かいターコイズブルー、ホワイトのドット柄。
「どこか一カ所お揃いにしたいのよね(笑)」
可愛い…。
「今日は大事な決戦の日よ。気合い入れて行きましょう!」
「はい!」
「じゃあ…はい!」
「?」
榊さんは両手を広げて待っている。
「ハグして♡」
「…。これで気合い入りますか?」
「うん♡好き」
「…。僕も好きですよ。でも…」
「ん?」
「僕の方が大好きだと思います(笑)」
そう言うと、玲児は嬉しそうに笑った。
「これで誰に何を言われても跳ね返せるわ。無敵の鎧を着けたみたい(笑)」
「僕が盾になります(笑)」
僕たちは、顔を見合わせてにっこり微笑んだ。

「一也。負けるなよ…」
親父が少し心配そうな顔をしていた。
「勝ったら長谷さんをデートに誘ってもいいですか?」
「えっ?お前…本気か?まぁ…親バカだが、お前なら可愛い娘をまかせられるか…」
「実は以前から気になっていたんです。でも、知り合うきっかけがなくてですね。まさか親父の下で働いていたなんて…。ついてる!って思いました(笑)」
「まぁ…。美月が選んでくれたらの話だからね。ああ見えて、根は真面目でしっかりしている。泣かせたら…どうなるか分かっていますね…」
「お父さん二人付いてる娘に、遊びで手は出しませんよ(笑)」
では後ほど、と一也は悠々と部屋を出ていった。
…………………………………………………………………
「では…。皆さんお揃いのようですので」
社長の高城が口火を切った。自信に満ちあふれた表情で役員達を見渡す。
「皆さんもご存じの通り、白戸くんがある会社の社長から相談を受けた件で、皆さんにご報告があります」
高城はふと、自分以外の役員が同じ装丁のファイルを持っている事に気づいた。そして、誰も座っていない席が一つ…。役員はこれで全員揃ってるはずだが…。会長には知らせてはいない。可愛い息子がこれから追及される姿を見せるのは忍びないと…。俺のせめてもの武士の情けだよ(笑)
「相手側が依頼をされたと言われた営業の人間が、佐川くんとその上司の影山さんです。彼らを呼んでいますので、彼等自身の口から話して頂きましょう。どうぞ、二人ともお入りください」
ドアを開けて二人が入った瞬間、役員達の表情が強ばった。会議室の空気が重くなったのを感じた二人は、入り口で立ち尽くした。
「どうしました?さあ、あなた方の話を聞くために集まっているんですよ…。早く入って下さい」
二人の後ろから現れたのは前社長、会長の白戸一人。
「そして、僕はもう一人。ここに必要な社員を連れてきています。入れても宜しいですよね?影山部長に佐川くん?」
「えっ?あの…。どなたをここに?」
「さぁ、お入り下さい。鈴木経理課長」
何かを察したのか、今度は影山と佐川の顔がみるみる強ばり始めた。高城はまるで他人事のように知らぬふりを装っていた。
鈴木は緊張感からか、紙のような顔色でおずおずと重役達の前に現れた。汗が止まらない様子で始終ハンカチで額を拭っている。それでも鈴木は覚悟を決めた様子でしっかりとした眼差しで周りを見渡した。
「経理課の鈴木ともうします。今日は私がコンプライアンス違反をしてしまった事をまずお話させて頂きます。そこに居る佐川さんに頼まれて、谷口紗江子さん、白戸専務の給与振込口座の情報を漏らしました」
「な!何をふざけたことを!俺がそんなことするわけないだろ!」
「私は影山部長と佐川さんにずっと脅されていました。私…私がSMクラブに出入りしていたことを社内でバラすと…」
「本当ですか?影山部長?あなた…。それ自体、コンプライアンス違反とは言えませんか?人を差別している。情報漏洩を強要している。まあ…他にもありますがね」
「いえ、私はそのような事をさせた覚えはございません!」
白戸一人はここで初めて昨年の谷口さんの事件から、内部調査を秘密裏に行っていたことを明かした。
「谷口さんの事件の三ヶ月ほど前、経理課のPCのログイン情報によると、1月17日鈴木課長が谷口さんの口座番号を閲覧した記録が残されていた。その2日後、谷口さんの口座への入金が始まっている。鈴木課長が佐川くんから脅されたと記憶しているのが1月15日」
「お、俺は知らない!だいたい鈴木課長と接点はないし、話したこともない!」
鈴木はおもむろにICレコーダーをポケットから取り出した。そこには影山と佐川から性癖を馬鹿にした発言と、白戸専務の口座番号を教えるように迫る恫喝の言葉の数々が残されていた。
「谷口さんの口座番号を漏らしてしまって、彼女が三ヶ月ほど経って自殺してしまった時、僕は佐川に仕組まれたんだと思いました。でも、僕は自分可愛さからその事を警察にも誰にも話すことが出来なかった…。その時はICレコーダーを持っていなくて、証拠もなかったから…。でも、今回もまた何か企んでいるに違いないと確信していたので…」
ノートを取り出し、鈴木がずっと記録していた佐川と影山の発言内容、日時。何度となく呼び出され、性癖を馬鹿にし続けた二人の鬼畜のような発言が暴露された。
「このノートが何よりの証拠です。この件に関しては警察にも相談済みです。今回の白戸専務の口座への入金が始まったのは…。やはり影山部長と佐川くんが鈴木課長を脅した直後。これをどう説明されますか?」
白戸一人は二人を見つめた。今度は二人の顔から色が失われていた。
「あと、一人の女性の大切な人生を取り戻す為の、もう一つの話をしなくてはなりません。ここにもう一人。呼んでも構いませんね?」
白戸一人が会議室をぐるりと見渡す。誰も異議を唱えない。
「では、長谷さん。お入り下さい」
美月が会議室の重厚なドアを押して入ってきた。手には谷口紗江子さんの遺影。
「経理課の長谷と申します。ここに手にしているのは私の友人、谷口紗江子さんの遺影です。佐川さん。あなたの元婚約者ですよね?」
佐川は顔を背けていた。
「あなたはこの写真を正面から見ることが出来ないようですね…。それも無理はないと思いますよ。あなたが彼女に何をしたのか。何をさせたのか…。私は皆さんに言いたくはありません。ここには男性しかいない。でも、この話を聞いて、性的に興奮するような鬼畜のような人もいないと信じています」
美月が語り始めた内容は、重役達の顔から表情を奪っていった。そして、皆一様に佐川に対しておぞましいものを見る目つきになっていった。
「谷口さんだけではないと言うのはどういう事なんですか?」
一人の重役が耐えかねて口を開いた。
「佐川の兄、佐川圭祐はクスリを使って女性達の意識を失わせ、証拠を残さないように…レイプを重ねてきたんです。佐川はそれを知らないはずはなかった。そんな人間にあられもない姿の写真を撮らせるということが、一体どんな結果をもたらすか…誰の目にも明白です。そして、その写真を使い結婚を諦めさせた。紗江子は…」
美月は殺気のこもった目で佐川を見た。
「紗江子は首をくくってしまった。辛かったでしょう。苦しかったでしょう…。でも、鬼畜のような行いはこれだけでは終わらなかった。水増し請求の犯人に仕立て上げられ、それをわざと公にした。ウチの会社の株価は暴落。社長の交代…。影山と佐川は暴落することを確信していたのでしょう。情報をリークする前に空売りをしていました」
「そ、そんなことはしていない!どこにそんな証拠が…」
「その時計はいつ買いました?それ…700万超えるらしいですね?」
佐川は時計を隠した。
「インサイダーの疑いがあると証券会社に相談をしました。するとやはり2件だけ、空売りをしていた口座があったことを報告していただけました。その2件。誰だか分かりますよね?影山部長、佐川さん?」
もう二人の顔色は白から青へと変わっていた。影山はそれでも自分の保身を図ろうとした。
「わ、私は命令されて…」
影山と佐川の視線は高城に向けられていた。
「私は何もしていない」
「そんな…。でも、白戸専務の口座を…」
「知らないな…。何の話だ」
その時、白戸一人はタブレットを開いた。
「これは…」
「リオネル社、その前から不正なキックバックを取引先にさせ、資金を流していたペーパーカンパニー…。それが入っていた建物の管理を行っていたリブラ社。代表は高城社長…。あなたです」
「ほぉ…。随分調べあげたものですね。感心しますよ」
「では、あなたが以前から不正なキックバックを取引先に要求していたことは認めますね?」
「売り上げ割り戻しですよ。別に法律に違反している訳じゃない。それに私は自分の資産として持っている不動産を管理して、税金対策しているだけです(笑)」
「では、これはどう言い訳するつもりです?」
佐川の会社支給の携帯から取り出した音声データ。
「佐川くんも自分の身を守るために録音していたようですね」
「えっ?俺は…」
美月が佐川に近づき、自分のスマホを見せた。途端に青ざめ何も言わなくなった。そこには彩とのあの夜の醜態…。
「ここにあなたが指示している音声データが残っています」
白戸一人は最後にこう締めくくった。
「あとは我々の範疇ではありません。集めた情報は全て…警察に預けています」
高城は何も言わず白戸一人と一也をにらみつけていた。
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