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晩餐
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何故か奏は雪の家の玄関の前に。雪の職場まで送ってくれた加賀美には、雪さんのお宅に誘われたと言うと、ゆっくりしてきてと送り出してくれた。
「あの、雪さん?私…やっぱり帰ります!」
逃げ帰ろうとする奏の手を雪はがっちりと掴んだ。
「だぁめ!一緒にお夕飯食べるの!」
「雪さん…。ご主人も息子さんも気まずくないですか…?」
「大丈夫よ!周作さんには電話で話しておいたし、あなたは私のお友達だから」
奏はどうしよう…と思っていた。あの後、いろんな話をしてすっかり仲良くなってしまったが、まさか息子さんと一緒にご飯食べましょうと言われるなんて…。半ば強引に連れてこられた。
「大丈夫。周作さんは優しいし、ハルはいい子よ」
雪さん…。そういう問題では…。
どうやら雪は本気のようで、奏は逆らいきれずに覚悟を決めた。
お家に上がらせてもらうと、そこには可愛い猫を抱いた男の子が待っていた。
「こんにちは。私、羽田奏と言います」
ハルはニコっと微笑むと、
「こんにちは!僕は陽斗です。この子はハチ。ハチワレのハチです!」
「ニャッ」
ハチは相変わらずの愛想良しだ。
「わっ!喋った!」
「お姉さん、あいさつしたんだよ。ね?ハチ」
「ニャア」
僕可愛いでしょ?と言わんばかりの態度…。
「可愛い♡…触ってもいい?」
ハチは本領発揮!いわゆるへそ天で奏をノックアウトした。
「♡♡♡!かわい~♡」
「ゴロゴロ…」
「ハチ…。お前って…。綺麗な女の人に弱いんだ…」
ハルは呆れた顔でハチを眺めていた。
雪はキッチンで夕飯作りに入った。奏は雪に夕飯作りを手伝わせて下さいとお願いした。
「じゃあ、炒めてくれる?」
「何を作るんですか?」
「ん?シュクメルリ」
「?シュクメルリ?」
「食べたことない?ほら、牛丼屋さんで流行った…」
「あ!あの売り切れちゃったってテレビで見たかも…」
「それです!美味しいのよ」
ハルはいつものようにテーブルセッティングを任せられ、すっかり料理待ちの様相を呈していた。
シュクメルリ、相変わらずの具沢山お味噌汁(今日の具は白菜、大根、人参、長ネギ、えのき、豆腐、油揚げ…)、キャベツと生姜の浅漬け、ごぼうと人参のきんぴら。
「すごい!美味しそう…」
「良かった!」
「しかも早いですね…。全部具材が切ってあった…」
奏はすっかり雪に魅入られた。私もこの人お嫁に欲しいかも…。
「雪さん!私、雪さんを尊敬します!」
雪は破顔一笑!奏が大好きになった。
「奏さん。可愛い♡」
雪はにっこり可愛らしい笑顔を見せた。
テーブルにはたくさんの料理が並び、美味しそうな匂いでいっぱいだった。
ハチは先にハルからごはんをもらい、前足をペロペロなめて綺麗にしていた。可愛い♡とハチを眺めていたら、雪さんのご主人が帰ってきた。
「お!いらっしゃい!」
ご主人は奏の素性を知っても全然嫌な顔一つしない素敵な人だった。
「急にお邪魔して申し訳ありません」
椅子から立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「いやいや、人数が多い方が楽しいでしょ?」
周作は奏に椅子に座ってとすすめた。
「雪に強引に連れてこられたんでしょ?」
「!なんで分かったんですか?」
「こら!強引じゃないもん!」
「え~…。あれが強引じゃなくて何なんですか…」
雪がちょっと口を尖らせた。
「まあまあ、ごはん食べようよ!」
ハルにつっこまれ、そうだねとみんな席についた。
「いただきま~す!」
ハルと周作は待ってました!とばかりに口に頬張っていた。奏もつられて食べ始めると、
「!美味しい!」
目を見開いて雪を見た。
「でしょ?(笑)」
「いや、ほんとに!すごい美味しい!」
周作がニコニコしながら奏が食べるのを見ていた。
「俺、このシュクメルリにやられたの(笑)」
「やっぱり!だってこんなに美味しいの食べさせられたら、私もやられちゃいます!(笑)」
同じ食卓を囲んでいると、すっかりこの家族が大好きになってしまった。あたたかくて、優しくて、こんな家族…。いいなって思った。
「?奏さん?」
ちょっと涙ぐんでいるのに気付いた雪は優しく食べてとすすめてくれた。
「美味しいもの食べると元気になるのよ」
奏はこの人には敵わないなと思った。そして、早く浩介に会いたいと思っていた。
「あの、雪さん?私…やっぱり帰ります!」
逃げ帰ろうとする奏の手を雪はがっちりと掴んだ。
「だぁめ!一緒にお夕飯食べるの!」
「雪さん…。ご主人も息子さんも気まずくないですか…?」
「大丈夫よ!周作さんには電話で話しておいたし、あなたは私のお友達だから」
奏はどうしよう…と思っていた。あの後、いろんな話をしてすっかり仲良くなってしまったが、まさか息子さんと一緒にご飯食べましょうと言われるなんて…。半ば強引に連れてこられた。
「大丈夫。周作さんは優しいし、ハルはいい子よ」
雪さん…。そういう問題では…。
どうやら雪は本気のようで、奏は逆らいきれずに覚悟を決めた。
お家に上がらせてもらうと、そこには可愛い猫を抱いた男の子が待っていた。
「こんにちは。私、羽田奏と言います」
ハルはニコっと微笑むと、
「こんにちは!僕は陽斗です。この子はハチ。ハチワレのハチです!」
「ニャッ」
ハチは相変わらずの愛想良しだ。
「わっ!喋った!」
「お姉さん、あいさつしたんだよ。ね?ハチ」
「ニャア」
僕可愛いでしょ?と言わんばかりの態度…。
「可愛い♡…触ってもいい?」
ハチは本領発揮!いわゆるへそ天で奏をノックアウトした。
「♡♡♡!かわい~♡」
「ゴロゴロ…」
「ハチ…。お前って…。綺麗な女の人に弱いんだ…」
ハルは呆れた顔でハチを眺めていた。
雪はキッチンで夕飯作りに入った。奏は雪に夕飯作りを手伝わせて下さいとお願いした。
「じゃあ、炒めてくれる?」
「何を作るんですか?」
「ん?シュクメルリ」
「?シュクメルリ?」
「食べたことない?ほら、牛丼屋さんで流行った…」
「あ!あの売り切れちゃったってテレビで見たかも…」
「それです!美味しいのよ」
ハルはいつものようにテーブルセッティングを任せられ、すっかり料理待ちの様相を呈していた。
シュクメルリ、相変わらずの具沢山お味噌汁(今日の具は白菜、大根、人参、長ネギ、えのき、豆腐、油揚げ…)、キャベツと生姜の浅漬け、ごぼうと人参のきんぴら。
「すごい!美味しそう…」
「良かった!」
「しかも早いですね…。全部具材が切ってあった…」
奏はすっかり雪に魅入られた。私もこの人お嫁に欲しいかも…。
「雪さん!私、雪さんを尊敬します!」
雪は破顔一笑!奏が大好きになった。
「奏さん。可愛い♡」
雪はにっこり可愛らしい笑顔を見せた。
テーブルにはたくさんの料理が並び、美味しそうな匂いでいっぱいだった。
ハチは先にハルからごはんをもらい、前足をペロペロなめて綺麗にしていた。可愛い♡とハチを眺めていたら、雪さんのご主人が帰ってきた。
「お!いらっしゃい!」
ご主人は奏の素性を知っても全然嫌な顔一つしない素敵な人だった。
「急にお邪魔して申し訳ありません」
椅子から立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「いやいや、人数が多い方が楽しいでしょ?」
周作は奏に椅子に座ってとすすめた。
「雪に強引に連れてこられたんでしょ?」
「!なんで分かったんですか?」
「こら!強引じゃないもん!」
「え~…。あれが強引じゃなくて何なんですか…」
雪がちょっと口を尖らせた。
「まあまあ、ごはん食べようよ!」
ハルにつっこまれ、そうだねとみんな席についた。
「いただきま~す!」
ハルと周作は待ってました!とばかりに口に頬張っていた。奏もつられて食べ始めると、
「!美味しい!」
目を見開いて雪を見た。
「でしょ?(笑)」
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