最後の日本人・タロウの物語

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異世界長編小説

剣と魔法の異世界の女神・アリリス_勇者になりたくありません。

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女神のヒモになりたいなぁ~

――――――――――――――――――――
死ぬまでに叶えたい夢がある。
だから……
選びてし止まん。
――――――――――――――――――――



──目を覚ました。

???:【剣と魔法の異世界】へようこそ!

理由は分からない。
だが気づけば、目の前に一人の美少女が立っていた。

白銀の長い髪。
澄んだ瞳。
簡素ながら神々しい衣をまとっていた。

???:さぁ!
    あなたの力でこの世界を滅ぼそうとする魔王を討ち果たし!!
    この世界を救ってください!!!

彼女は満面の笑みで、彼女は手を差し出してきた。

彼女は、この世界を司る女神

──アリリス

その姿は自信に満ちていた。
まるでこの世界そのものが彼女であるかのような、可愛くも傲慢な美少女だった。



タロウ:いやだ。

タロウは差し出された女神の手を一瞥し、小さく息を吐いた。

アリリス:どうしてですか!?
     あなたはこの世界に選ばれた存在なのですよ!
     勇者になれるのですよ!!

タロウ:結局のところ、魔王を倒すって……要するに、仕事だろ?
    もう仕事は十分、生前にしてきた。
    もう、俺は仕事はしたくない。

アリリス:そんな……

タロウ:だから、申し訳ないけど……
    元の世界に帰らせて欲しい。

アリリスは視線を伏せ、しばらく沈黙した。
やがて、諦めたように顔を上げ、指を二本立てる。

アリリス:……では、選びなさい。

――――――――――――――――――――
──勇者としてこの世界に転生し、魔王と戦う。
か。

──転生はせず、魂だけ、この世界を永遠に彷徨う存在に成り果てる
か。
――――――――――――――――――――

アリリス:さぁ
     ……どうしますか?

タロウは、少し考える素振りを見せ、首をかしげ、告げた。

タロウ:じゃあさ。

アリリス:?

──俺と結婚して、俺を養ってくれないか?

アリリス:……ハァ~!?

タロウ:君みたいな美人と結婚できるなら、勇者という仕事も引き受けるよ。
    それくらいの役得がないとぉ~ねぇ~~~

アリリス:けっ、結婚って!?
     そ、そんな選択肢の前例は……!
     てか、お前みたいなブサイクと……

タロウ:ホホ~っ
    それが君の本音かぁ~
    アリリスさん。

──あっ……

気まずい沈黙が落ちる。
それでも女神・アリリスは、先ほどのやり取りをなかったことにするかのように、再び同じ言葉を口にした。

アリリス:【剣と魔法の異世界】へようこそ!
     さぁ!
     あなたの力でこの世界を滅ぼそうとする魔王を討ち果たし!!
     この世界を救ってください!!!

しばらくの間、どんなに俺が話を振ってもこのセリフを同じセリフを機械のように繰り返す女神。

いい加減うんざりしたタロウは、静かに告げた。

タロウ:女神・アリリスよ。
    選択肢は二つだ。

アリリス:では、勇者に……

タロウは顔を上げ、指を二本立てる。

――――――――――――――――――――
──俺と結婚する
か?

──俺と結婚せずに……
――――――――――――――――――――

アリリス:せずに?

――――――――――――――――――――
貴様を殺して、このよくわからん異世界から立ち去る
か!?
だ!!
――――――――――――――――――――

アリリス:ヒ、ヒィ~~~~( ´Д`)~~~~!!??

タロウ:アリリスよ。
    お前が女神だろうと、俺は月の女神から三種の神器を身に宿している
    人ならざる存在に落ちたバケモノ!
    貴様ごときに、指図される覚えは……






選択を求めた女神が、今や自らが選択される側に立たされていた。
女神・アリリスは恐怖と混乱で言葉を失い、膝から力が抜け、
──ぺたん
と、尻もちをついたまま、恐怖の眼差しで主人公を見上げていた。

アリリス:ひ、ひぃ……



本来であれば、俺は勇者になり、血で血を洗う戦いの日々を生きていたのかもしれない。
剣を握り、仲間と共に魔王を討ち、世界を救う――
そんな女神・アリリスが望んだ英雄譚は、最初から用意されていた。

だが俺は、その「始まりの物語」を否定した。

勇者としてではなく、ただの一人の人間として、俺は魔王の城を訪ねたのだ。
両手に剣はない。
代わりに抱えていたのは――

二本の酒。
俺が趣味で仕込んだ、梅酒みたいな自家製の酒だった。

魔王は、両手に酒瓶を抱えた俺の姿を見て、目を丸くした。
明らかに「想定外」という顔だった。
隣にいたアリリスも、同じく困惑――いや、絶望の色を浮かべていた。

そんな、どうしようもなく間の抜けた出会いがきっかけで、
俺と魔王は……なぜか友達になった。

正確には、飲み友達だ。

杯を交わすうちに、魔王は侵略よりお酒に夢中になり、戦争の計画はいつの間にか棚上げされた。。
気づけば世界は、人間と魔族の争いが終わり、平和……
いや、平穏な日々が訪れた。

アリリスがぽつりと呟く。

アリリス:あなたが選んだのは、私が筋書きを建てた英雄譚でも、悲劇でもなく
     平穏な物語を選んだのだったのかしら?

タロウ:そうなのか?

アリリス:でも……
     女神の私が、人間のあなたと結ばれて……
     息子と娘を授かる未来が待っているなんて……

タロウ:ねぇ~

じとっ~とした視線をアリリスがタロウに向け、昔を思い出すように眉をひそめた。

アリリス:この男……
     あの時、女神である私を散々脅したくせに……

タロウ:だって、初対面で勇者になれなんて言われて素直に
    はい、なります!
    なんて言わないでしょう?
    普通は?
    それに、今となっては、こんなに美人な女神と結婚して俺は幸せだよ?

アリリス:……ブサイク
タロウ:……ロリ



・ 






二人の声が同時に重なり、部屋に響いた。
二人は今日も変わらず、タロウとアリリス夫婦は、とても仲良く口喧嘩を続けるのだった。

チャンチャン。
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