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番外編
番外編04.救いようのない者たち2
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「ほ、ほんとにやるのか?」
「だいじょうぶ。あたしの言うとおりにしてれば、ぜぇんぶうまく行くからぁ」
気乗りしない顔のロイを、フローラはおかまいなしに、田舎道の真ん中まで引っ張って行く。
「ほら、早く顔と服に泥を塗るのぉ。ズボンの膝は破いて」
「できたけどさぁ……」
「うーん、まだ足りないわねぇ」
そう言って石を拾うと、勢いよくロイの額を強打した。殴られるとは思っていなかったロイは、無様に土の上に倒れ込みうめき声を上げる。
「いってえ!なにすんだよ!!」
額から血を流しながら抗議するが、フローラは意に介さない。ブツブツと文句を言うロイを無理やり道端に横たわらせ、自分は膝枕をして、獲物が通りかかるのを待つ。
やがて、遠くに一台の馬車が向かって来るのが見えた。
近づいてきた馬車は、片田舎にしては立派で品がある。道端にうずくまる男女に気付いたのだろう、馬車はゆっくりと停まり、窓から人の良さそうな老婦人が顔を覗かせた。
「貴方たち、どうしたの?ひどいケガじゃない!」
(やった!金持ちそうなのがひっかかったわ)
「お優しい奥様……あたしたち、旅の途中で盗賊に襲われたんです。彼が…彼があたしをかばってケガをしてしまって…!」
「う、ううっ」
フローラは目に涙をためて必死に訴え、ロイは大げさにうめき声を上げる。人の良い老婦人は、自分の屋敷に来るように言うと、ロイとフローラを馬車に招き入れた。
「そう、そうなの。王都から駆け落ちしてきたのね」
「はい……彼は富豪の跡取り息子で、あたしはただの平民で。彼の家がどうしても認めてくれなくって」
ふたりで王都から逃げてきたんですぅ、と嘘八百並べ立て、老婦人の同情を買うことに成功した。
「そうなの、苦労したのね。しばらくはうちの屋敷に滞在なさいな」
「ありがとうございます!お優しい奥様」
(うふふ、チョロいやつばっかり。せっかくだから、しっかり利用させてもらうわねぇ)
「小金持ちって甘いよなぁ。駆け落ちって言ったら信じて、金までくれるんだから」
「そおよぉ。あいつら、人助けして悦に浸りたい、偽善者なのよぉ」
それから数ヶ月後。
町宿の一室で、ロイとフローラは金貨を数えながら、愉快でたまらないというようにほくそ笑んでいる。
各地を点々としながら、”身分違いの駆け落ちカップル”を演じて財産家の老人に取り入り、同情を買ってお金をもらう。ふたりは、セコい詐欺師暮らしをするまでに堕ちていた。
引退して社交にも出ない老人ばかりをターゲットにしているから、噂が広まる心配もあまりない。寂しい隠居暮らしに彩りをありがとう、と感謝さえし、偽りの恋人たちにかなりな額の金貨を渡して送り出してくれるのだ。
「しかも、あのアイリス妃と親友だった、って言ったら、食いつきがすごいもんな」
「そおねえ、バカなやつらだわぁ」
親友だったことなど一度もないが、よく知ることは間違いないから、話にはそれなりに厚みがある。王族になった親友には迷惑をかけたくなくて、何も知らせていない、と涙ながらに話すと、皆信用して更にお金を持たせてくれる、というわけだ。
「次は西の方へ行ってみようぜ。暇を持て余した小金持ちの年寄りが、ゴロゴロいるはずだ」
ロイはもともと気乗りしていなかったはずだが、楽して大金を得る暮らしにすっかり味をしめてしまっている。フローラはと言えば、もともと罪悪感など持ち合わせていない人種だ。
「うふん、いいわねぇ。そうしましょ」
(まだまだこんなもんじゃないわよぉ。もっともっとお金を貯めて、そしたら……)
そしてその半月後、あっさり次の獲物の屋敷に転がり込むことに成功したのだった。
そろそろ、金をせしめて出て行くか……と密かに目配せし合っていたところ、屋敷の老女主人から、フローラは思いもかけない誘いを受けた。
「え!お屋敷の舞踏会に出ていいんですかぁ?!」
「もちろんよ。疲れた心を少しでも慰められるなら、ぜひ出てほしいわ。衣装も用意してあげるから」
もともと派手好きなフローラだ、舞踏会など出たいに決まっている。ただ、駆け落ち中だと言ってある以上、目立つのはまずい。
「王都からのお客様なんて来ないから、心配しなくていいのよ。外国からもいらっしゃるから、珍しいお話が聞けるかも」
「外国のお客さま?」
「そう。遠方のさる国の、貴族のご子息もいらっしゃるわ」
大きな声じゃ言えないけれど、と前置きして、老婦人はフローラにそっと耳打ちする。
「何でも、花嫁になってくださる方を探しているそうよ」
「で、出ますぅ!」
(チャンスだわ。その貴族をつかまえて、こんな暮らしから脱け出してやるんだからぁ!)
怪我の療養中(ということになっている)で部屋から出られないロイは放置して、せっせとおしゃれに勤しむフローラだった。
「だいじょうぶ。あたしの言うとおりにしてれば、ぜぇんぶうまく行くからぁ」
気乗りしない顔のロイを、フローラはおかまいなしに、田舎道の真ん中まで引っ張って行く。
「ほら、早く顔と服に泥を塗るのぉ。ズボンの膝は破いて」
「できたけどさぁ……」
「うーん、まだ足りないわねぇ」
そう言って石を拾うと、勢いよくロイの額を強打した。殴られるとは思っていなかったロイは、無様に土の上に倒れ込みうめき声を上げる。
「いってえ!なにすんだよ!!」
額から血を流しながら抗議するが、フローラは意に介さない。ブツブツと文句を言うロイを無理やり道端に横たわらせ、自分は膝枕をして、獲物が通りかかるのを待つ。
やがて、遠くに一台の馬車が向かって来るのが見えた。
近づいてきた馬車は、片田舎にしては立派で品がある。道端にうずくまる男女に気付いたのだろう、馬車はゆっくりと停まり、窓から人の良さそうな老婦人が顔を覗かせた。
「貴方たち、どうしたの?ひどいケガじゃない!」
(やった!金持ちそうなのがひっかかったわ)
「お優しい奥様……あたしたち、旅の途中で盗賊に襲われたんです。彼が…彼があたしをかばってケガをしてしまって…!」
「う、ううっ」
フローラは目に涙をためて必死に訴え、ロイは大げさにうめき声を上げる。人の良い老婦人は、自分の屋敷に来るように言うと、ロイとフローラを馬車に招き入れた。
「そう、そうなの。王都から駆け落ちしてきたのね」
「はい……彼は富豪の跡取り息子で、あたしはただの平民で。彼の家がどうしても認めてくれなくって」
ふたりで王都から逃げてきたんですぅ、と嘘八百並べ立て、老婦人の同情を買うことに成功した。
「そうなの、苦労したのね。しばらくはうちの屋敷に滞在なさいな」
「ありがとうございます!お優しい奥様」
(うふふ、チョロいやつばっかり。せっかくだから、しっかり利用させてもらうわねぇ)
「小金持ちって甘いよなぁ。駆け落ちって言ったら信じて、金までくれるんだから」
「そおよぉ。あいつら、人助けして悦に浸りたい、偽善者なのよぉ」
それから数ヶ月後。
町宿の一室で、ロイとフローラは金貨を数えながら、愉快でたまらないというようにほくそ笑んでいる。
各地を点々としながら、”身分違いの駆け落ちカップル”を演じて財産家の老人に取り入り、同情を買ってお金をもらう。ふたりは、セコい詐欺師暮らしをするまでに堕ちていた。
引退して社交にも出ない老人ばかりをターゲットにしているから、噂が広まる心配もあまりない。寂しい隠居暮らしに彩りをありがとう、と感謝さえし、偽りの恋人たちにかなりな額の金貨を渡して送り出してくれるのだ。
「しかも、あのアイリス妃と親友だった、って言ったら、食いつきがすごいもんな」
「そおねえ、バカなやつらだわぁ」
親友だったことなど一度もないが、よく知ることは間違いないから、話にはそれなりに厚みがある。王族になった親友には迷惑をかけたくなくて、何も知らせていない、と涙ながらに話すと、皆信用して更にお金を持たせてくれる、というわけだ。
「次は西の方へ行ってみようぜ。暇を持て余した小金持ちの年寄りが、ゴロゴロいるはずだ」
ロイはもともと気乗りしていなかったはずだが、楽して大金を得る暮らしにすっかり味をしめてしまっている。フローラはと言えば、もともと罪悪感など持ち合わせていない人種だ。
「うふん、いいわねぇ。そうしましょ」
(まだまだこんなもんじゃないわよぉ。もっともっとお金を貯めて、そしたら……)
そしてその半月後、あっさり次の獲物の屋敷に転がり込むことに成功したのだった。
そろそろ、金をせしめて出て行くか……と密かに目配せし合っていたところ、屋敷の老女主人から、フローラは思いもかけない誘いを受けた。
「え!お屋敷の舞踏会に出ていいんですかぁ?!」
「もちろんよ。疲れた心を少しでも慰められるなら、ぜひ出てほしいわ。衣装も用意してあげるから」
もともと派手好きなフローラだ、舞踏会など出たいに決まっている。ただ、駆け落ち中だと言ってある以上、目立つのはまずい。
「王都からのお客様なんて来ないから、心配しなくていいのよ。外国からもいらっしゃるから、珍しいお話が聞けるかも」
「外国のお客さま?」
「そう。遠方のさる国の、貴族のご子息もいらっしゃるわ」
大きな声じゃ言えないけれど、と前置きして、老婦人はフローラにそっと耳打ちする。
「何でも、花嫁になってくださる方を探しているそうよ」
「で、出ますぅ!」
(チャンスだわ。その貴族をつかまえて、こんな暮らしから脱け出してやるんだからぁ!)
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