お使いはタバコとアイスとお兄さん

秋臣

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ダブル

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そんな成り行きでルームシェアすることなった。
俺は独立に向けて引き継ぎに追われて忙しくて、部屋探しは美作さんが率先してやってくれた。
例の伊藤さんと探してくれているらしい。
美作さんとは色々話をするうちに彼の人となりが見えてきて、優しくて嘘のない人なんだなってわかってきた。
どうして俺なんかを?って思うけど、
「好きになるのに理由なんてない。
気づいたら好きで好きで堪らなくなってた」
って照れもせず言う彼の言葉に嘘は見えなかった。
この人と住んだら楽しいだろうなって思えたんだ。

美作さんが真剣な顔で相談したいことがありますと連絡してきた。
諦めたか、物件探しが難航してるのだろうと思ってたら彼は、
「真崎さん、独立するなら仕事部屋が必要ですよね?
今3LDKで探してますがそれなりに家賃も高くて…」
「3LDK?」
「真崎さんの仕事部屋と寝室で2部屋、俺の仕事部屋兼寝室で1部屋。だから3LDKです」
「俺の部屋は一つでいいです。2LDKにしましょうよ」
「いや、ダメですよ、資料とか本とか大量になりますもん。俺そういう仕事部屋たくさん見てきてるので」
さすが編集。
「美作さんだってそれじゃ手狭じゃない。仕事部屋と寝室は分けた方がいいって自分で言ってるのに」
「でも…4LDKは流石に無理です」
「だったら寝室を一緒にすればいいでしょ?」

「え…」
「ん?」
「同じ部屋で真崎さんと寝る?
同じベッドで真崎さんと…」
「そこは違います、ベッドは二つです」
「あ、ああ!そうですね、そうですよね!」
「合宿みたいな感じですかね」
「でも真崎さんと同じ部屋で寝るんですよね…」
「俺、男兄弟で育ってるので慣れてますよ」
「いや…そういうことではなくて…」
「ん?」
「…自信がない」
「え?」
「いえ!なんでもないです!頑張ります!」
「なにを?」

フリーになった年に美作さんとの同居が始まった。

引っ越しをする際、俺はベッドを新調するつもりでいた。美作さんもそうだったようで、それじゃベッド買いに行きましょうってことになって家具屋に行ったんだけど、美作さんが探してくれた部屋がとてもいい部屋でクロスとかすごく素敵でこの部屋に合うベッドがいいなってワクワクしてた。
で、どうせなら同じベッドにして部屋と調和させようってことになったんだ。
チグハグだと変かなって。

お互いいいなと思うのがあってそれに決めたんだけど、シングルとセミダブルは今すぐ用意できないと言われてしまった。
売り切れちゃってて入荷するのが3ヶ月後。
引っ越しは2週間後。
でもダブルかクイーンならすぐご用意できますと…
美作さんにもだいぶ慣れてきたし、大きいベッドならまあいいんじゃないかなって思って、軽い気持ちで俺はそれでもいいよって言ったんだ。

美作さん、
「ちょっと考えます」
って俺の手を引いて店出ちゃった。
そのまま一緒に住む部屋に連れて行かれた。
もう契約して鍵は持ってたから。

まだ何もない部屋に連れて行かれて言われた。

「俺は真崎さんのことが好きなんです。
真崎さんと一緒に住めることになってどれだけ嬉しいかわかりますか?
それと同時にどれだけ耐えなければいけないかわかりますか?」
「え…」
「俺、絶対嫌われたくないんです。
それだけは耐えられない。
嫌われたくないからそのために頑張るのは何の問題もない。
でも同じベッドは…
毎日真崎さんと同じベッドで寝て冷静でいられる自信がないんです。
なんなら寝室が一緒なのですら危うい…」
「あ…」
「真崎さんが俺のこと全然そういうふうに見ていないのはわかってます。
それでもいいんです、それでも好きなんです。でもベッドの件はあまりにも酷です」

俺は美作さんの好意を軽んじていたことに気づいた。
なんて残酷なことをしていたんだろう。
気安く同居しようとか、男兄弟で慣れてるからとか、同じベッドでもいいとか無神経すぎた。

「美作さん、ごめんなさい。俺、あなたのこと傷つけてたの気づかなくて…」
「違う…真崎さんが悪いんじゃない…
俺に耐性がないだけで…すみません…」

はっきりさせなきゃいけない、そう思った。

「美作さん、聞いてもらえますか?」
「はい…」
美作さんが身構える。

「俺、多分、美作さんのこと好きです」
「え…」
「多分なんて曖昧な言い方しかできないんだけど、あなたに好きだと言われて今は素直に嬉しいと思ってます」
「俺…てっきり同居は無しにしようって言われるのかと思って…」
はらはらと泣き出した美作さんをかわいいと思った。

「一緒に住むんでしょ?」
「…はい、真崎さんと住みたいです」
「ベッドはシングルかセミダブルじゃないと嫌?」
「え?」
「ダブルかクイーンでもいい?」
「いいの?」
「だって3ヶ月も待てる?」
「待てない、今すぐがいい」
「それじゃ決めよう、ダブルとクイーンどっちがいい?」
「ダブル…」
「この部屋ならクイーンも置けるよ」
「真崎さんとくっつけるから…」
ふっ
「笑わないで…」
「笑ってない、美作さん、かわいいなって思っただけ」
「俺の方が年上なんだけど…」
「年上でもかわいいよ」

美作さんは涙を拭うと俺を真っ直ぐ見る。

「真崎さん、俺と付き合ってもらえませんか?」

「俺でよければ」

大粒の涙をこぼしながら泣く彼はやっぱりかわいいと思った。
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