転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する

ありぽん

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14話 それぞれの今(前半ある家族視点、後半ある男視点)

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「最近、港の治安はどうだ? 揉め事は起きていないか? 怪しい動きは?」

「はっ、いずれも以前の半分以下にまで減っております」

「そうか、それは良い知らせだ。……これも兄上の働きによるものだろうか」

「多少強引な手も使っておりますが、そうかと存じます」

「さすが兄上だな。私が何年も悩まされていたというのに」

「アーセリオ様には、今の立場がよく合っておられるかと」

「私はどうしても話し合いの方が性に合っていてな。しかし兄上は昔から、力でも言葉でも結果を出せる人だった。そのせいで……」

「……こちらが新しい報告書でございます」

「どれ……。本当にすごいな。今、兄上は?」

「酒場に行くとおっしゃっていました」

「なんだ、今日は一緒に食事でもしようと思っていたのに」

「自分には、ともに食事をする資格はないと……」

「そんなことはないのだがな。私たちは家族なのだから。……父上は、冒険者となった兄上を最後まで認めないまま、数年前に亡くなられた。だが今の兄上の働きを見ていたら、きっと何か思うところがあったはずだ。もしかしたら、認めてくれていたかもしれない」

「……」

「母上も、兄上と一緒に食事をしたがっている。次に会った時に、そう伝えてくれないか? 今度は一緒に食事をしようと」

「かしこまりました」

 執事のアルセインが部屋から出ていく。私は窓辺に歩み寄り、港の方を見下ろした。いつものように、港には多くの船が停泊している。

 父にこの街を任されて以来、私はこの街をより良いものにしようと尽力してきた。だが、思うようにいかないことが多く。

 そんな時、兄上が戻ってきた。何があったのか、その理由を聞くことはできなかったが。兄上は、もう冒険者を辞める、とだけ私たちに伝えてきて。

 S級冒険者にまで上り詰めた兄上が、あんなにもボロボロの姿で現れ、誰の説得にも耳を貸さず、ただ引退を口にするなんて。一体どれほどの出来事があったのか……。

 今はなんとか引き止めているが、このまま何もなければ、またふらりとどこかへ行ってしまい、今度こそ戻ってこない気がしてならない。

 だから兄上には今、港の治安維持を任せている。何もしないよりは、何かにをして、気を紛らわせていた方が良いと思ったのだ。

 幼い頃から、兄上は何でもできる人だった。政治の才にも、武の才にも恵まれ。それは今もそれは衰えていないようで、その手腕のおかげで、荒れていた港の治安は、目に見えて回復しつつある。

 辛ければ、私たち家族を頼って欲しい。消して居なくなるなんて選択をせずに。私たちでなくても良い。何か、兄上の心をここに繋ぎ止める、何かがあれば……。



      ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



「よう、ベルナード、仕事は終わりか!」

「ああ」

「じゃあ一緒に飲もうぜ。俺たちも今来たところなんだ」

 俺はかつての冒険者仲間だった奴らと、同じ席に着く。

「何食べる?」

「イノブーの焼肉を」

「飲み物は?」

「エールを」

「おばさん! イノブーの焼肉とエールをちょうだい!!」

「あいよ!!」

「久しぶりだな。相変わらずか?」

「まぁな」

「仕事には慣れたの? あなた、時々余計なことをするから、みんなに迷惑をかけていない?」

「普通に仕事をしているだけだ。言う事を聞かない奴らや、隠れてコソコソ何かをしようとしている奴らとも、をして、解決しているからな」

「話し合いねぇ。あなたの話し合いって、じゃなかったと思うのだけど」

 そう言ってきたのはミレーネだ。

「なんだ、俺はいつもちゃんと話し合いで、問題を解決してただろう?」

「私の知らないベルナード」

 そう言いながら、俺に出されたつまみを取ろうとするノエル。

「ハハハッ! いつものベルナードって事だな! 元気で良かった良かった! なっ、ベルナード!!」

 そう言い、俺の背中をバシバシ叩くドランツ。

「……ドランツ、今ので私のご飯に、ゴミが飛んできたんですが?」

 ジト目でドランツを見るイザーク。

「あ? ゴミ? そんなちっこいほこりみたいなもん、気にすんな」

「ではこれは、あなたが食べてください。私はあなたのお金で、ウルヒドの肉を食べますから」

「おい! そんな高級肉頼んでんじゃねぇよ」

「おかみさん、こちらに……」

「おい、待て!!」

 皆、相変わらずのようだ。注文したイノブーの焼肉が届き、俺はすぐにそれを食べ始め。皆が食べ終わる前に食べ終わり、さっさと店を出ようとする。

「もう行っちゃうの? もう少し話しましょうよ」

「そうだぜ、そんな早く戻らなくても大丈夫だろう」

「いや、俺はもう宿に戻る。明日も早いからな」

「……もっとお話し」

「ノエルすまないな。また今度だ」

「この前も同じ事を言っていましたが?」

「……そうだったか? それじゃあな」

「ねぇ!! あなたは港の仕事をしていても、私たちの冒険者活動を把握しているでしょう!私たちはいつも仕事終わりはここにいるから、いつでも来て! そして食べて話しましょう! その日の出来事を話すだけで良いから!」

「……そのうちな」

「必ずよ!!」

「そうだぜ!! ゆっくり話そうぜ!!」

「くだらない事で良いんですから」

「……」

 最後は何も言わずに店を出た。月が静かに照らす夜道を、宿へ向かって歩き出す。……あいつらが俺を心配して、ここに残ってくれているのは分かってる。分かってはいるが、それでもな。俺が、いつまでも過去を引きずっているのがいけないのだが。

 ……あの事件からどれくらい経った? あの時は悲しみと、自分がいかに無力なのかということを突きつけられ、立ち上がる気力も、前を向く余裕もなくなっていた。

 しかしここで過ごすし、暮らしに落ち着きが出てくると、少しずつ癒えてきた気がして。なんとか普通に過ごせるようにはなったし、あれは仕方のなかったことだ、とそう思えるようにもなってきた。……いや、そう思い込もうとしているだけかもしれんが。

 いずれにせよ、これは俺自身の問題だ。勝手に家を出た俺に、それでも変わらぬ温かさで接してくれた母上や弟、アーセリオ、そして、あいつらにも。いい加減ちゃんと接しないといけない、と心では分かってはいるんだ。

 ……今の俺を見て、あの子は何と言うだろう。もし、再びあのときのような場面に直面したら、俺はどう行動するのか。もう2度と、幼い犠牲は見たくない。
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