虐げられ無能令嬢、優しい家族に囲まれて幸せ森暮らしを始めます

ありぽん

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3話 3年前の私に起きたこと

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「いちゃちゃ……。こんどあえたら、いちゃいのだけけしてもらお。しょれにしても、やっと3ねん。はやく、いろんなことできりゅよになりちゃいなぁ」

 まだ3歳の私。そんな私が普通の子どもに比べて、どうしてこんなにしっかりと物事を深く考えたり、余計な行動を控えたりできるのか。それは、私が前世の記憶を持っているからだ。

 私は三年前まで、地球の日本で、大西花音として暮らしていた。でも、気がついた時には地球ではない、この別の世界の人間として生まれていた。

 最初は、そりゃあ驚いたよ。だって、自宅で仕事をしていたはずなのに、次の瞬間には見知らぬ人たちに囲まれて、しかも自分が赤ん坊になっていたんだから。

 ようやく落ち着いたのは、それから二週間くらい経った頃だったっけ? その間はあまりに現実離れした出来事に、体も心もついていかなくて体調を崩しまくって。
 そのせいで、この世界の両親には、なんて虚弱な赤ん坊だ、と。それはそれは、グチグチ言われたのを、今でもしっかり覚えてる。

 落ち着いてからはいろいろと情報を得て、自分なりに整理し、この世界がどういう世界かを理解した。

 私が生まれた世界は、魔法と剣の世界。動物の代わりに魔獣と呼ばれる、動物に似た生き物が存在する世界だった。そう、まるでライトノベルの転生や転移ものに出てくるような、そんな世界。

 そんな世界の伯爵家、ヴァレンシュタイン家の次女、カティア・ヴァレンシュタインとして、私は生まれた。

 父はロダリク・ヴァレンシュタイン、母はイザベル。そして、10歳も歳の離れた姉エリシアが、私の家族。……そう、一応のね。

 伯爵家に生まれたんて、私の未来は安泰? なんて最初は考えていた私。だってそうでしょう? 伯爵家よ? でもその考えは、まったくの間違いだったわ。

 生まれてから数ヶ月が経った頃。私の魔力量と魔法属性を調べるために、能力鑑定士が屋敷にやって来た。
 どうやらヴァレンシュタイン家は、魔法の名家らしく。生後数ヶ月も経てば魔力が安定してるだろうって、父と母は私の力を早く知りたかったみたい。

 そうしたらなんと、魔力は普通の赤ん坊以下、魔法の属性も何もないことが分かっちゃって。そこから私の生活は一変したんだ。

 鑑定士の方は、これから能力が伸びる可能性も十分にあります、と言ってくれたのだけど。力こそが全てで、それを民のためではなく、自分たちの利益のために使うことしか考えていなかった両親に、そんな言葉が届くはずもなく。

 私はすぐに才能なしの無能と結論付けられ。それからは、屋敷の裏手に建てられた小屋で暮らすようになった。

 まさか、まだ赤ん坊の私を、そんな場所に追いやるなんてね。しかも私に力がないと分かったとたん、メイドや使用人たちまでが、露骨に冷たい態度を取るようになるっていう。

 それでも最初の二年間くらいは、私を不憫に思ったメイドのエリッサが、ずっと面倒を見てくれていた。

 彼女は最低限の生活の世話に加えて、まだ赤ん坊で何も分からないだろうけど、それでも何かを覚えてくれていたらと言って。言葉や礼儀なんかを、赤ん坊の私に教えてくれた。本当に、ありがたかったよ。

 でも、食事や衣服の管理は、すべてイザベルが厳しくチェックしていたし。彼女が気に入らないことがあれば、さっきみたいに平気で私に手を上げてきた。父のロダリクもね。
 そんな2人をメイドのエリッサにが、この家の主を止めることなんてできるわけもなく。だから、両親からの扱いは、今と何ひとつ変わらなかった。

 そしてそんな生活が2年続き、エリッサの雇用期間が終わると、彼女はあっさりと屋敷を追い出されてしまって。彼女にきちんとお礼ができなかったけれど、どうか今はまだどこかで、幸せに暮らしてくれている事を願うばかりだ。

 ただ、エリッサがいなくなって、この屋敷に私の味方は誰一人いなくなって。これからどうしようと、数日悩んでいた私。

 ……そう、誰も味方はいないと思っていたのよ。あの時までは。
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