もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん

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1巻

1-2

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「ジョーディ、静かにしてないと連れて行ってあげないわよ」

 僕はすぐに大人しくします。ちゃんと連れて行ってもらわないと。

「あら、本当に静かになったわ。ママが何言ったか、分かったのかしら。まさかね」

 うん、分かるよ。分かるけど、まだお話しできないもんね。ベルがドアを開けてくれて、いよいよお部屋の外に。
 お部屋の外は……長い長い廊下でした。その廊下を歩いて行くママとベル。そのうち大きな階段のある所に到着します。ここに来るまでにお部屋がたくさんありました。

「ジョーディ、今のあなたにお話ししても分からないでしょうけど、ジョーディのお部屋があるのは二階よ。それから……」

 分からないと思ってても説明してくれるママ。ママありがとう!
 僕が今いるのは二階みたいです。それから上は四階まであって、階段の上を見たら、魔法でキラキラ光らせている綺麗なライトが見えるの。
 えっと、前に本で読んだことがあります。確かシャンデリア。あれに似てるんだよ。それから一階の方は広い広い場所で、ママが玄関ホールだと教えてくれました。
 僕は玄関ホールに行ってみたくて、手を伸ばしてママにアピールです。

「ま~ま、あうあ~」
「どうしたのジョーディ?」
「あうあうあ~」

 また手をバタバタ、それからその手を下に。

「下に行きたいの? ジョーディはまだだめよ。もう少ししたらね」

 そ、そんなぁ。そのまま来た方向へ廊下を戻っていくママ達。その途中に絵が三枚飾ってあって、描かれていたのはパパとママとお兄ちゃんでした。絵の下に何か文字が書いてあります。僕がその文字に手を伸ばしたら、ママに止められました。

「絵に触ってはダメよ。その文字は名前が書いてあるのよ。もう少ししたらジョーディも絵を描いてもらいましょうね。それからお名前も。ジョーディはただのジョーディじゃないのよ。ジョーディ・マカリスターというの。私達はマカリスター家の人間よ」

 マカリスター? 名前と苗字みょうじって感じかな?
 廊下を一周して初めてのお外は終わっちゃいました。もっと色々見たかったのに。ちょっと残念。でもこれからは少しずつお外に出られるようになるのかな?
 僕がそう思った通り、次の日もその次の日も、毎日ちょっとずつお部屋から出られるようになりました。ママと一緒だったり、パパと一緒だったり。
 でもパパはいつも、僕と一緒にいる所をレスターに見つかって、すぐに僕をママに託して連れて行かれちゃいます。レスターに、

「また仕事をおサボりになりましたね。今日はお昼は抜きで仕事を。そうしなければ終わりません」

 って怒られて三階に上がって行くのです。……パパ、お仕事サボっちゃダメだよ。
 お外に慣れてきた頃、ママがついに僕を抱っこから下ろしてくれました。ハイハイで廊下を進みます。
 階段の所では、ベルやお家で働いてる他のメイドさん? それからレスター達とおんなじお洋服を着た男の人達が、僕が階段を下りないようにバリアしています。ちょっと残念だけど、長い廊下を端っこから端っこまでハイハイできるだけでも嬉しいです。


 それからまた少しして、今日はいつもとちょっと違いました。
 自分のお部屋の床を、ハイハイで遊んでママを待つ僕。早く廊下で遊びたいのに、なかなかママもベルもお迎えに来てくれません。僕はドアの前に行って、パシパシ叩きます。ママまだぁ~?
 その時でした。ガチャって音がして、ドアがほんのちょっとだけ開きました。ちゃんとドアが閉まっていなかったみたいです。もう、赤ちゃんの僕がいるのに危ないよ。でも……ふふふ。
 僕はハイハイしながら頭でドアを開けて、廊下に出ました。
 廊下に出てすぐ左は行き止まり、だから右に進み始めます。誰にも止められないハイハイ。う~ん、なんか楽しい! 止まらずにハイハイして、ついに階段の所に到着です。
 上を見て、それから一階の方を見て、その時でした。手が滑っちゃって、体がグラッて。落ちる‼ 僕は目をつぶりました。
 ……あれ? 少ししたけど、何にも起きません。僕グラッて落ちそうになったよね? でも転がってない? 体も痛くないし……転がり落ちてたら絶対に体が痛いよね? う~ん。痛くないけど、でも首のところ、変な感じがします。
 そっと目を開けると、目の前にはやっぱり階段があって、しかも落ちる寸前のところで止まっています。
 慌てて手をバタバタしたら、ひょいって誰かが僕のことを持ち上げました。持ち上げた? 何かにぶら下がっているみたいに体がゆらゆらして、その後階段から離れていきます。
 ゆらゆら、ゆらゆら。誰? 僕のこと、ブラブラさせてるの。パパ? ママ? 何で何も言ってくれないの? なんか不安になってきちゃったよ。
 階段からずっと遠くに離れて、やっと僕のことをぶら下げていた人が、廊下に下ろしてくれました。ちょこん。座ったけど、すぐにハイハイで後ろを振り向きます。
 ドキッ‼ とってもビックリしちゃいました。ドキドキが止まりません。
 僕の後ろには大きな大きな、黒いヒョウ?みたいな動物がお座りしていて、僕のことをじっと見ていました。だ、誰? 何処から来たの? 僕のこと食べないよね? もうパニックです。だって本当に大きいんだよ。今の僕、この動物の足くらいの背しかないです。
 僕がハイハイのままじりじり後ろに下がったら、黒いヒョウが近づいてきます。どうしてついて来るの⁉ また僕は下がって、そしたら黒いヒョウが近づいてきて、少しの間それの繰り返しです。
 どんどん下がる僕。でも壁にぶつかって、それ以上下がれなくなっちゃった。こ、怖い。
 泣きそうになっちゃいます。

「ふえっ……」

 僕が泣きそうになった瞬間、黒いヒョウがごろんって寝転がって、お腹を見せてゴロゴロして、にゃあにゃあ鳴き始めました。え?
 僕に構わず、ゴロゴロし続ける黒いヒョウ。そのうち、長いしっぽをぶんぶん振り始めました。
 ヒョウのお顔も、さっきまでみたいに怖くありません。怖いヒョウじゃないのかな? 僕はそっとそっと黒いヒョウに近づきます。僕が近づいてもヒョウはお腹を出したままです。
 これ以上近づけないって所まで近づいたら、黒いヒョウがもう一回「にゃあ」って鳴きました。何故かそれが触って良いよ、って言っているみたいに聞こえて。だから僕は、そ~っと手を伸ばして、黒いヒョウのお腹を撫で撫で、撫で撫で。それからすぐに手を引っ込めます。
 怒ってない? 大丈夫? ヒョウは僕が撫で撫でしてもそのままです。そのお目々が、もっと撫でてって言っているように見えました。もう一度お腹を撫でます。

『なにょうぉぉぉ!』

 嬉しそうにヒョウが鳴いた時、パタパタ、と誰かが走ってくる音が聞こえました。

「ジョーディ! 何でここにいるんだ⁉ ママはどうした? ベルは?」

 パパが走ってきたの。それで僕のことを急いで抱っこします。

「ローリー、一体何があったんだ」
『にゃうにゃう、にゃあにゃあ』
「うん、うん、それで」

 え? パパ、黒いヒョウとお話ししてる? ビックリして、パパとヒョウのことをじぃ~って見つめちゃいました。

「そうか、そうだったのか。ありがとうなローリー。よしみんなで戻ろう」

 僕達の後ろをヒョウがついて来ます。僕のお部屋に戻って、パパが僕を抱っこしたままソファーに座ると、パパの足元でヒョウが伏せの姿勢を取りました。

「ジョーディ、この子の名はローリー、ブラックパンサーという魔獣だ。まだジョーディに話しても分からないと思うが……」

 この黒いヒョウの名前はローリー。ローリーは動物じゃなくて魔獣でした。ブラックパンサーっていう魔獣さん。
 魔獣はこの世界にいる生き物で、たくさんいて、森とか林とか、色々な所に住んでいます。人と仲良くしてくれる魔獣もいるし、逆に人間を襲う怖い魔獣もいて、僕の大好きなぬいぐるみのサウキーも魔獣なんだよ。
 ローリーは、ずっと昔からパパの側にいる魔獣で、何処かにお出かけする時もずっと一緒。パパとローリーは魔獣契約をしています。魔獣契約っていうのは、ずっと一緒にいるってこと、お友達になることなんだって。それから、二人で力を合わせてお仕事したりもするんだって。
 あとあと、一番ビックリしたのは、魔獣契約すると、契約した魔獣とお話しできるようになるってこと。だからパパとローリーはさっきお話しできたんだよ。
 魔獣さんとお話しできるなんて凄いねぇ。僕もいつか魔獣さんとお友達になれるかな? ちゃんと魔獣契約できるかな? 契約の仕方とか知らないけど、それはもう少し大きくなったらお勉強すればいいし。また楽しみが増えちゃいました。
 パパのお話が終わるとローリーが起き上がって、お顔を僕の顔に近づけて、自分のお鼻をスリスリしてきました。

『にゃうにゃう』
「ん? そうなのか」

 何々? 何て言ってるの?

「ジョーディ、ローリーが『契約はできないけど、ジョーディとお友達になってくれる』と言ってるぞ」

 お友達! 本当? わわわ、僕の初めてのお友達! 僕嬉しくて笑っちゃいます。

「キャッキャッキャ!」
「はは、友達が何なのか、ちゃんと分かってるみたいな反応だな。まぁいいか」
「リー、リー」
「そうだぞ。ローリーだ」
『にゃうにゃう!』

 僕はローリーの頭をそっと撫でました。
 次の日から、時々お部屋に遊びに来てくれるようになったローリー。一緒にボールを転がして遊んだり、僕がハイハイでローリーの下をくぐったり。
 それから廊下でも一緒に遊んでくれます。遊んでくれるし、守ってくれるんだよ。僕が危ない所に近づくと、僕のお洋服をくわえて安全な所に戻してくれるの。
 僕の初めてのお友達は、とっても優しいブラックパンサーのローリーでした。


 ローリーとお友達になった次の日から、

「リー!」

 ローリーは僕が呼ぶと、いつもすぐに来てくれます。何処にいても来てくれるの。それで僕と遊んでくれます。
 ローリーと遊ぶようになって、パパが乗り物を作ってくれました。木の乗り物で、箱みたいな物に木のタイヤが付いています。乗り物には長いピンクの紐が付いていて、僕が乗ると、ローリーがその紐を引っ張って動かしてくれるんだ。
 たまにお兄ちゃんが引っ張ってくれるんだけど、ちょっと不安。急に走り出すんだもん。スピードが上がりすぎて、乗り物が横倒しになったこともあるし。初めて倒れた時は泣いちゃいました。
 それからはパパかママがいないと、乗り物を引っ張っちゃダメってことになっちゃって、お兄ちゃんはちょっとだけブーブー怒ってました。
 それから僕、ちょっとずつ言葉が話せるようになったんだよ。話せるって言っても、抱っこしてもらいたい時は「だ」とか、おなかすいた時は「ま」とか、そんな感じです。でもパパ達はちゃんと分かってくれます。
 そして今日、またまた初めてのことが。
 朝、僕におはようしに来てくれたパパとローリー。その時パパがママとお話ししてて、今日はパパとローリーはなんかの訓練があるって言ってました。だからみんなが僕のお部屋から出て行っちゃって一人でつまんなくても、ローリーのことを呼びませんでした。何の訓練か分かんないけど、邪魔しちゃダメだもんね。
 仕方ない。そう思った僕は、お気に入りのサウキーのぬいぐるみで遊ぼうって、お部屋の中を見渡します。けれど床の何処にも落ちてなくて、今度はちょっとだけ首を伸ばして、僕のちいさな椅子の上とかも確認。
 あっ、あれ! ソファーの所に、ちょっとだけサウキーのお耳が見えました。ハイハイで近づいて手を伸ばします。う~ん、あとちょっとなのに届きません。よしもう一回。ソファーにつかまりながら手を伸ばして。
 グググっ!
 なんか体が動いた感じがしました。そのとたんサウキーに手が届いて。ん? なんかいつも見てるソファーじゃない? 僕はいつもお座りしているから、ソファーの足しか見えないのに、今は座るところが見えています。
 何でだろう? 僕はサウキーを抱きしめながら、上を見て下を見て……。あっ!

「たぁ‼」

 僕、いつの間にか立ってました。今まで高速ハイハイしかできなかったのに、ソファーにつかまってはいるけど、立ってるの。
 嬉しい‼ 前よりもいろんな物が見えるようになった気がします。僕は嬉しくてサウキーを持ち上げて、やったぁ‼の万歳をしました。そうしたら……。

「お?」

 体が後ろに倒れ始めて、そしてゴチンッ‼

「うっ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁん‼」

 そのまま倒れて、おもいっきり頭をぶつけちゃいました。い、痛い~! 初めて立てたのは、ソファーにつかまっていたからだったのに、万歳して手を離したから倒れちゃったの。そこまで考えてませんでした。
 僕が大泣きしてたら、ヒュッ‼ 開いていた窓から何かが入ってきました。入ってきたのはローリーで、すぐにこちらに来て、僕の顔にすりすりしてくれます。
 僕が泣いているといつも側にいてくれるローリー。今も僕が泣いているのに気付いて、すぐに来てくれたみたいです。
 ローリーが来てくれてすぐ、今度は廊下をバタバタ走ってくる足音がたくさん聞こえて、バンッてドアが勢い良く開き、パパ達がお部屋に入ってきました。

「どうしたのジョーディ⁉」

 ママが僕を抱っこしてくれます。

『にゃうにゃ』

 泣いている僕の代わりにローリーが説明しました。

「ああ、転んだのか? お座りしてて後ろに倒れたってところだな。待ってろジョーディ。すぐに痛いの消してやるからな」

 パパが僕の頭のところに手を当てて、それから頭の上が明るくなりました。見えないけど、たぶんパパの手が光ってるんだと思います。

「ヒール」

 パパがそう言ったら頭の上がもっと明るく光って、そうしたらあれだけ痛かった頭が、すぅって痛くなくなりました。

「ひっく、う?」
「どうだジョーディ。もう痛くないだろう」

 もしかして怪我を治す魔法? もう全然痛くありません。痛くないってことを伝えるために、僕は両方の手を上げてニコニコ笑ってみせます。

「大丈夫みたいだな。ふぅ、驚いたぞ。いきなりローリーが、ジョーディがまずい!なんて言って走り出すから」
「私もあなたがいきなり走って来て、ジョーディが大変だって言うから、もう心臓がドキドキだったわよ。ジョーディ、ママ達を驚かせないで」

 ごめんなさい。でも嬉しくて手を離しちゃったんだ。
 あっ、そうだ! 僕、立てたんだよ! 立てたことも忘れちゃうところだった。パパ達に立ったところを見せなくちゃ。
 僕を抱っこしているママに、手と足をバタバタして見せます。これをすると下ろしての合図だから、すぐにママが床に下ろしてくれました。

「ジョーディ、気を付けろ」

 大丈夫、大丈夫。今度は手を離さないから。
 ハイハイでソファーの所まで行って、さっきとおんなじことをします。できるかな? さっきは上手にできたけど、まだ一回しかやってないもんね。
 息を吸って、フン! 手と足に力を入れます。そして……良かった、立てました! さっきみたいに完璧です。
 見て見て。僕がパパ達の方を見たら、パパもママも、それにローリーまで、ビックリした顔をして固まっています。ど、どうかな? 上手に立ててる?

「ジョーディが立ったぞ‼」
「ジョーディが立ったわ‼」
『にゃにゃにゃにゃ~ん‼』

 この日、お家の中は大騒ぎでした。パーティーが始まっちゃって、僕のお部屋の中は凄いことに。僕は赤ちゃん用フルーツ?スペシャルジュースを飲ませてもらえて。メイドさんや、あとトレバー達も、順番に僕におめでとうと言いに来てくれて。
 でもね。少し落ち着いてから、トレバー達にも見せてあげようと思って頑張ったんだけど、その後は一回も成功しませんでした。とっても残念そうなトレバー達。みんなごめんね。


 それからも立つ練習をして、だいぶ上手になってきました。最初は立つのがやっとだったのに、今はよちよちなら歩けるようになったんだ。
 歩けるようになって少しして、ママが僕に靴を履かせてくれました。歩くと先っぽが光る靴です。今までは靴下だけだったんだ。お部屋の中か、廊下しか歩かなかったからね。
 そして靴を履いた僕はついに、二階から一階へと下りました。初めて一階に行った時は、あんまり嬉しくて、歩かないでハイハイして玄関ホールをグルグル周っちゃったよ。
 ママが、せっかく靴履いてるのにって残念そうだった。だって歩くよりもハイハイの方が楽だから、喜んだり嬉しくなったりした時は、ハイハイでグルグルしちゃうんだよ。


 初めて一階に下りてからまた少しして、今日もママがいつもみたいに一階に連れて行ってくれます。でも今日はすぐに床に下ろしてくれません。そのまま大きな大きなドアに近づいて行って。

「ジョーディ、今日はこれからお外に出るのよ。初めてのお外、驚かないと良いのだけれど」

 外⁉ お外に出られるの⁉ 本当?

「とぉ、とぉ」
「そうよ、お外よ」

 さぁ行きましょうって、ベルがドアを開けてくれようとした時、ママって呼ぶ声が。お兄ちゃんが二階から下りて来ました。

「僕も一緒って言ったでしょう!」
「そうだったわね。ママもなんだか嬉しくて忘れてたわ。ごめんなさい。さぁ、今度こそお外に出るわよ!」

 ベルがガチャン、とドアを開けてくれて、ママが僕を抱っこしたままお外に。ま、まぶしい! 最初は目を細めていた僕。慣れてくると、ぱっちり目を開けます。

「にょおぉぉぉぉぉぉ!」
「ジョーディの声、面白! ふふふっ」
「さぁ、ジョーディ、初めてのお外よ!」

 ひ、広い! 玄関の前には長~い道が続いていて、その脇には木も花もいっぱいです。
 僕が喜んで手をバシバシしていたら、ママ達が横に歩いて行きます。ちょっと進むと、玄関前より木も花も多くなって、お花のトンネルがあったり、お池もあったりしました。もっと進むとテーブルとお椅子が置いてあって、そこにパパ達がいました。

「お、来たな。ママ、ここなら大丈夫だから下ろしてあげたらどうだ?」
「大丈夫かしら?」

 ママがそっと庭に下ろしてくれます。下ろしてもらったら、もう誰も僕を止められないよ。あっちによちよち、こっちによちよち。さっき見たお池も見てみたいし、初めてのお外に、僕、大興奮です。たまに前のめりになって転びそうになると、ローリーが僕のお洋服を咥えて支えてくれます。
 僕がふらふらしてたら、レスターが何か運んできました。お茶とお菓子を持って来てくれたみたいです。それらがテーブルに並べられた後、僕はパパに掴まってそのお膝に座ります。

「初めての外はどうだ、ジョーディ」
「とぉ! ちぃ‼」
「そうか楽しいか。良かった良かった」

 僕はフルーツジュースを、パパ達はお茶とお菓子を口にします。周りをキョロキョロしながらジュースを飲んでたら、パパ達がお話を始めました。
 パパが「父さんが」とか「母さんが」とか、いつ出かけるかとか話すと、ママがそろそろ用意を始めないととか、僕の誕生日パーティーがとか。僕の誕生日パーティー? ん?
 ジュースを飲んで少し遊んだら、今日はもうお外で遊ぶのは終わりだって。少ししか遊べませんでした。もうちょっと遊びたかったのに。
 でもそれからは、短い時間お外で遊べるようになって、少したったら長い間お外で遊べるようになりました。
 遊べる場所もだんだん多くなって、僕のお家には、魔獣を飼ってる小屋があることが分かりました。
 ママが順番に指差して紹介してくれます。

「しゃうきー!」
「そうよ。サウキーよ」
「わんわん!」
「そうね、ワンワンね」
「しゅぷ!」
「スプリングホースよ」

 僕の大好きなサウキーに、毛がぼうぼうのワンちゃん。それから頭の毛がぼうぼうで、しっぽの毛もぼうぼうのお馬さん。走るのがとっても速いんだって。他にもたくさん魔獣を飼ってます。

「今度おじいちゃん、おばあちゃんのお家に行く時は、このお馬さんが馬車を運んでくれるのよ」

 この頃、お家の中がバタバタしてます。お出かけの準備をしているみたい。この前パパ達がお話ししてたでしょう? あれは僕のお誕生日のお話で、パパのお父さんとお母さんのお家に行って、パーティーしてくれるってことだったんだ。
 パパのお父さんとお母さんだから、僕のおじいちゃんとおばあちゃんに会えるの。それから僕のお誕生日のパーティー……えへへ、嬉しいね!


「さぁ、ジョーディ様、お着替えいたしましょうね」

 今日は朝起きたら、いつもと違う、なんかカッコいいお洋服を着せられました。それからママがグミみたいな小さい食べ物をくれて、お口に入れたらすぐに溶けてなくなっちゃったんだ。ママは僕の口を開けて、グミがなくなったのを確認します。

「これで馬車に乗っても酔わないわね」

 それからすぐに、抱っこされて玄関ホールからお外に出たら、目の前にカッコいい馬車が止まってました。馬車は二台で、その後ろにも馬車みたいなのが止まってて、それからお馬さんと騎士きしさんもいっぱいいます。
 騎士さん。そう、この世界には騎士さんがいるんだ。時々お庭にいるんだよ。

「さぁ、ジョーディ。これからおじいちゃんのお家に出発よ」

 みんな初めて会う人ばっかり、しかもこんなに人が周りにいるのは初めてで、僕はママに抱っこしてもらったまま固まっちゃいました。おじいちゃんのお家に行くだけだよね?
 僕が固まってたら、スプリングホースの所にいた、大きな体の男の人が僕を見て、隣にいた男の人に声をかけて近づいてきました。


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