もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん

文字の大きさ
表紙へ
65 / 213
5巻

5-1

しおりを挟む



 プロローグ


 僕の名前はジョーディ。ジョーディ・マカリスター。女神のセレナさんの力で、日本から異世界の侯爵家こうしゃくけに転生した一歳の子供です。
 僕達は、魔獣まじゅうさんの具合を悪くする『黒いもやもや』について調べるために、パパのお兄さんのクレインおじさんの家に行くことになりました。でも、僕はまだ子供だから、もやもやはパパ達に任せて、クレインおじさんの家でお留守番るすばんです。
 そうしてクレインおじさんの家で遊んでいたら、その黒いもやもやが家の中にまで入り込んできて、僕はさらわれちゃいました。黒い服を着たおじさん達に、ベアストーレっていう名前の森の奥まで連れて行かれたんだ。
 あのね、ロストって人が、悪いことをするためにもやもやをあやつっていたみたいで、僕はすごく嫌な気持ちになりました。
 最初はとても怖かったけど、でも、ニッカっていうお兄さんのおかげで少し安心できました。
 ニッカも怖そうな黒い服を着ている人の仲間なんだけど、本当は全然怖くないの。
 絵本を読んでくれたり、ボール遊びをしてくれたりして楽しかったです。
 しかも、僕が黒いもやもやに呑み込まれそうになった時、助けようとしてくれたんだよ。
 それから、僕のことを心配したパパと、魔獣園まじゅうえんからはグリフォンのグッシーが、森からはペガサスさんがけてくれて、みんなで黒いもやもやを消しました。
 それで黒服の人達をパパ達がこらしめて、僕達は無事、クレインおじさんのお屋敷やしきに帰ることができたんだけど。
 ……ニッカはどうしてるのかなぁ。黒服を着ていた人達はパパとじぃじがどこか別の場所に連れて行っていたような……
 でもニッカは悪者じゃないもんね。
 きっとすぐに会えるよね。



 1章 クレインおじさんのお屋敷でお片付け!


 私――ラディスは、森から帰ってきたジョーディ達が完全に寝たのを確かめると、使用人のレスターやブラックパンサーのローリー、ダークウルフのドラックパパに後を任せ、クレイン兄さんの家を出た。
 そして妻のルリエットと共に、サイラス父さんの元へと向かう。
 黒服の連中の仲間だったニッカに話を聞くためだ。


 移動中、私は昨夜のことを思い出す。
 ジョーディは寝る間際まぎわ、久しぶりにルリエットに絵本を読んでもらっていた。
 その絵本は、ニッカからもらった物で、街へ戻ってくる最中も、ずっと彼に読んでもらっていた物だ。
 それなのにきることなくこの絵本を読んでくれとルリエットに頼んでいたということは、余程よほど気に入っているのだろう。
 初めはいつも通りニコニコと聞いていたのだが、絵本が終わりかけになって、ジョーディ達――一緒に聞いていた魔獣達も――がめずらしく口をはさんだ。

「しゅぱっ、ちょっ!!」
『うん、ここはこうだったよね』
『戦ってる時の、バンッとか、シュッて音が、本物だったんだな』

 ジョーディ、ダークウルフのドラック、サウキーのミルクが言うことには、どうやらニッカはかなり読み聞かせが上手らしい。もちろんルリエットも絵本を読むことが上手く、今までジョーディ達はルリエットに絵本を読んでもらっている時が一番喜んでいたのだが……今回は違った。
 読み聞かせを始めると、ここが違った、あそこはジョーディママの方が上手など、ドラックやミルクが、ルリエットとニッカを比べ出したのだ。
 その様子を見て、私は思わずため息をつく。そんな私に、ルリエットが不思議そうな顔をしながら話しかけてきた。

「あなた、ジョーディ達は何を言っているの? ニッカって、お義父とう様の手紙に書いてあった、黒服連中の仲間だった奴よね?」

 普通は仕事から戻る時に、そこまで詳しい内容の手紙を送ることはしない。しかし、今回はジョーディが『あく化身けしん』を復活させるための生贄いけにえささげられそうになるという大事件だったので、ジョーディを救い出した後、父さんがルリエットに報告の手紙を送っていたのだ。
 ニッカのことは一応、『ニッカという黒服達の仲間を連れて帰り、取り調べをする』ということだけ書いていたため、ルリエットは名前だけ知っている状態だった。


 昨夜はそんなことがあったので、父さん達の元へ向かう途中、私はニッカについて、ルリエットに次のように話した。
 ジョーディ、それにドラック達の話によると、ジョーディが連れ去られてから、ずっとニッカと、兄さんの家の使用人で奴らの仲間だったコリンズがジョーディ達の側にいたようだ。が、ほとんどニッカが世話をしているようなものだったのだろう。帰ってくる時のニッカの様子から、かなりジョーディ達のことを気にかけていたことが分かった。
 実際ご飯を食べさせる時の、準備じゅんびと食べさせ方はとても丁寧ていねいだった。さっとハンカチを胸に着け、こぼさないようにおわんを支えてやり、もしジョーディが食べづらそうにしていれば、しっかり食べられるように、ニッカがみずから食べさせる。そして顔が汚れれば、用意しておいたれタオルで、ジョーディ達の顔をく。
 最初その光景を見た時、思わずじっと見てしまった。それは父さんも同じだった。だが、ジョーディ達はそれにれた様子で、なんの文句も言わずに食事をしていた。
 さらに、ニッカの手際てぎわの良さは他にも見られた。
 トイレに行く時、素早く洋服を脱がせ、着替えさせていた。休憩きゅうけいの時に、ジョーディ達がその辺をフラフラしていると、どこかへ行ってしまわないようにしっかりと目を光らせていた。また、怪我けがをするような、そう、とげのあるような植物や、とがった石がある場所に近づけさせないように、常に側でジョーディ達を見ていてくれたのだ。
 私が最も驚いたのは、ボールと絵本を前にしたジョーディ達の態度だ。
 兄さんの家に戻る馬車の中で、ジョーディ達はニッカから貰ったという小さなボールでずっと遊んでいたのだ。
 また、馬車を止めて休憩している時、私が絵本を読んでやろうとすると、私は完璧かんぺきに無視された。今まではそんなことは考えられなかったのに。なのに、ジョーディ達はぐニッカの所へ行き、絵本を読んでくれと頼んでいたのだ。
 あのボールと絵本は、ニッカが自分の弟、クイン君に買った物だったらしい。黒服達に捕まった不安の中にいたジョーディ達を、静かに馬車に乗せておくために、ジョーディにあげたのだと、そうニッカは言っていたが……
 そしてジョーディが私ではなく、ニッカを絵本を読む人物に指名した時の、あのなんとも言えない感覚。
 私だってちゃんと読めているだろう。もちろんルリエットにはかなわないが、それでも今までずっと、マイケルを育てている時から読んできたんだぞ。
 私がそうブツブツ文句を言うと、

「あなた、話がそれてるわよ」

 と、ルリエットが笑いながら言ってきた。
 いや、笑い事ではない。ニッカの話から、だまされて『悪の化身』の復活に手を貸していたことは分っているが――そうは言っても、敵側にいた、少ししか一緒にいない奴に、私の読み聞かせが負けるだなんて。

「まぁ、今のところ、あなたの話からはそのニッカという人に、ジョーディ達がなついてるっていうのは分かったわ。それとジョーディ達がニッカと再会するのを心待ちにしているということも。また、ニッカの弟、クイン君の病気を治そうと考えていることもね」
「ニッカは犯罪の重要参考人だ。今は臨時りんじギルドの独房どくぼうらえられていて、そう簡単に外には出せないだろうし、場合によっては二度と出てこられない場合もある。それだけのことに関わったのだ」

 無論、彼がどこまで、どのように関わっていたのか次第だ。私としては、ジョーディに悲しい思いはさせたくないが、こればかりは判決を待つしかない。

「でも、重い病気だっていうニッカの弟のクイン君のことは心配ね。治せるのなら治してあげたいけれど。ニッカには住んでいた街の話も聞かないといけなそうね。そこにいる組織に対しては私が対応することになるかもしれないし。もしかしたらニッカが道を踏み外す原因を作った奴らが、まだ街を我が物顔で仕切っている可能性があるもの」

 そんな話をしながら、私達は、父さんとニッカがいる建物に着いた。
 黒いもやの影響で暴れた魔獣によって、冒険者ギルドは破壊はかいされてしまっていたが、地下の独房は無事で、今はその上に小さい二階建ての家屋を急いで建て、見張りを置き、中にいた犯罪者に逃げられないようにしているらしい。街に入る前にルリエットにそう聞いた。
 他の建物を建てるのも大事だが、犯罪者を逃がすわけにはいかないからな。優先順位をつけて、この建物と、臨時のギルドとを同時進行で建てたようだ。
 中に入ると、騎士きし挨拶あいさつをしてきて、父さんがいる部屋へと案内される。
 父さんは尋問じんもんの準備を終えていた。
 ようやく街に帰ってきたが、休めるのは当分先だろう。私達の長い夜はこれからだ。


     *********


「ま~ま……、ぱ~ぱ……、ヒック、うえっ」

 僕が泣いていると、ガチャッて音がして、部屋に誰かが入ってきました。

「ジョーディ、どうしたの」

 使用人のベルに抱っこされていた僕は床に下ろしてもらって、部屋に入ってきたママの方に高速ハイハイします。ママが僕を抱き上げてくれました。
 どうしたのって……起きたら僕はクレインおじさんの家のベッドで寝ていて、ママもパパもいないんだもん。だから、ママ達がいなくなっちゃったと思ったんだ。寝てる間に、あの黒服達にママ達が連れて行かれちゃったかもとか、僕達だけまた連れて行かれちゃったってのかな思って、不安になりました。
 それで気づいたら涙がぽろぽろあふれてきたの。僕が泣き出したら、一緒に寝ていたお兄ちゃんがすぐに気づいて、レスターとベルを連れてきてくれました。それからいつの間にか窓の外でグッシーとビッキーが飛んでて、僕に大丈夫だぞって教えてくれました。
 みんないた、よかったって安心したんだけど、やっぱりパパ達はいません。それでさびしくて、涙が止まらなくなっちゃいました。でも、ママが部屋に来てくれたから、もう安心です。

「ほら、ママ帰ってきたわ。パパはまだお仕事してるから、今は帰ってこれないけれど、でも朝のご飯までには帰ってくるわ」

 仕事? 今、夜中だよね。パパは夜中なのに仕事してるの? 
 それから、僕はずっとママに抱っこされてました。そうしたらいつの間にかまた寝ちゃってて、次に起きたら窓からは明るい光が見えて、朝になっていました。
 ママの言った通り、パパは朝のご飯がお部屋に運ばれてくるちょっと前に帰ってきたらしいです。だから僕は朝のご飯を、パパのおひざの上で食べることにしました。何かやっとホッとしたって感じです。朝ごはんを食べ終わったら、僕はとっても元気になったよ。


 ご飯を食べ終わったら、グッシー達とのお友達契約のお話です! 僕がさらわれちゃってて、したくても、できていなかったからね。あのね、魔獣さん達とお友達契約をすると、今よりももっと仲良くなれるんだ。グッシーとはまだ契約できてないから、早くそのお話をしないとね。
 パパとママ、それに魔獣のみんなと一緒に、お庭にあるグッシー達がいる小屋にゾロゾロ歩いて行きます。
 小屋に行くまでに、お庭にはこわれた物がいっぱい落ちてました。この家が黒いもやもやにおそわれた時の物です。玄関の方にある壊れた物は集め終わったんだけど、裏口の方はこれからなんだって。でもみんなが少しでも通れるようにって、細い道が出来てました。
 あっ、でもね、グッシー達の小屋の周りはとっても綺麗きれいになってて、広場みたいになってたよ。これならグッシー達もゆっくりできるね。それから、グッシー達の小屋の中には、小さい魔獣が集まってて、一緒に小屋の中でお休みしてました。あとでグッシー達とのお友達契約が終わったら、あの子達とも一緒に遊べるかな?


 小屋に着いて気づいたことは他にもあります。それは小屋の周りはとってもいい匂いってこと。小屋の向こうのお庭の方から、どんどんいい匂いがしてくるんだ。

『街の人間に配るご飯を作っているらしい。もう少ししたら、ジョーディ達の昼のご飯を作り始めると言っていたぞ』

 そうグッシーが教えてくれました。お家が壊されちゃった時、ご飯を作るところも壊されちゃったから、お庭でご飯を作っているらしいです。それにしても、こんなにいい匂いがするんだね。僕、朝ごはんを食べたばかりなのに、お腹が空いてきちゃったよ。何を作ってるのかな? ちょっと見てみたいな。
 僕がそう思ってたら、ダークウルフのドラックとホワイトキャットのドラッホが、いい匂いがするって言ってフラフラ歩いて行っちゃいました。でも……うん、僕もちょっとだけ見てみよう! 僕はドラック達についていきます。
 グッシー、ビッキー、ちょっと待っててね。すぐに戻ってきて、契約のお話をするから。
 そう言おうと思って、歩きながら振り向いたら、グッシー達が僕達の後ろを付いてきてました。

『骨の余りでも貰えないだろうか? それに付いてる肉だけでも欲しいのだが』
『どうだろうな。確かダシ?とかいう物を取ると言って、いつもなべでているぞ。アレをやられると、まったく肉が残らん』
『そうなのか? 少しもか?』

 そう、グッシーとビッキーが話してました。ああ、グッシー達も行くんだね。うん、じゃあみんなで行こう。みんなでゾロゾロ歩いて、お庭の向こうへ向かいます。
 少し歩いたら草で出来た壁がありました。ここの草の壁は壊されてなかったんだね。お庭には時々草で出来た壁があります。お花も咲いたりするし。背の高い草の壁から、お兄ちゃんの背くらいの、ちょっと小さい壁まで、色んな壁があるんだ。今目の前にある草の壁は、とっても大きくて、グッシー達よりも背が高いです。
 草の壁の向こう側からモクモクとけむりが上がっているのが見えました。それから人の声もします。いい匂いがどんどん強くなります。先を歩いていたママがこっちよって言いました。少し先の、壁が途切れてる所から向こう側に行くみたい。そっちに歩き始めようとした時、僕は草の壁に丸い穴が空いてるのに気づきました。
 何あれ? どうして草の壁に穴が空いてるの? そう思ってたら、グッシーとビッキーが、そのまま前に進んで、ポスッて穴に顔を入れたんだ。そしたら向こう側から、

「まだ肉は解体している途中だぞ。こっちは昨日のご飯の残りを、作り直してるだけだ。ちょっと待っててくれ」

 って声が聞こえました。僕と魔獣のみんなは、その声が気になって急いで反対側に行きます。反対側には、ご飯を作る道具がたくさん置いてありました。それから、大きな石の中で、火がぼうぼう燃えてます。ママがアレはかまだって教えてくれたよ。
 後はちょっと向こうの机の上に、お野菜、キノコのお山が出来てて、またまたそのとなりには魔獣さんのお肉のお山があります。そのお肉を大きなナイフで切っている人達がいて、他にも忙しそうな人がいっぱいいました。

『ジョーディ、こっち』

 ドラッホが僕を連れて、草の壁のそばを歩いて行きます。それで窯の近くを通ると、大きな男の人がいました。

「おはようございます、っちゃん」

 その人に、大きな声で挨拶されたから、僕も挨拶をします。

「ちゃっ!!」
「彼らなら、そこからのぞいてますよ。火に気を付けてくださいね」

 覗く? 誰が? 僕はおじさんの邪魔しないように、気を付けてその横を通り過ぎました。

『ジョーディ来たか』
『そこの果物を貰えるか聞いてくれ』

 そしたら目の前にいたのは、草の壁から顔だけを出してる、グッシーとビッキーでした。さっき首を突っ込んでたのは、この穴だったんだ。
 草の壁の穴から顔を出すグッシー達は、なんだかお家にかざってある魔獣の頭に似ています。僕のお家にはトカゲさんの頭、じぃじのお家にはドラゴンさんの頭、それからクレインおじさんのお家には大きなつのが付いてるウシさんみたいな魔獣の頭が飾ってあるの。それにそっくりです。
 どれもとっても珍しくて、とっても強い魔獣さんなんだけど、パパやママがやっつけたらしいです。せっかく珍しい魔獣をやっつけたからって、ギルドに持って行くとか、ご飯にして食べちゃわないで、記念に壁にくっ付けて飾ってるんだ。
 今のグッシー達はその飾りみたい。顔だけ草の壁から出してるんだもん。僕はなんだか笑っちゃいました。ドラック達も面白いって笑ってます。

『笑っていないで、そこの果物を貰えるか聞いてくれ』

 ビッキーがそう言いました。果物? ビッキーが見ているのは、さっき僕達に挨拶してくれた男の人の横。そこには、小さなカゴに入ってる果物がありました。
 ていうか、ビッキー達、ドラッホパパに魔法をかけてもらって、お話が通じるようにしてもらってるんでしょう? なら自分でお願いすればいいのに。
 僕はそう思いながらも、おじさんに聞いてみました。

「くちゃ、しゃい!!」
「え? どうされましたか、坊っちゃん」

 おじさんは、僕の言葉が分からないみたい。ドラック達が代わりに聞いてくれます。でも、ドラック達がお話ししても、おじさんには通じなかったんだ。あれ? なんでだろう? 僕の言葉が分からなくても、ドラック達なら話せるはずなのに。
 その時ドラックパパが『しまった』って言いました。その後すぐに、周りにいるみんなに、言葉が分かるようになる魔法を使ってくれました。

『今夜ぐらいが魔法が切れる頃だとは思っていたんだが、朝になって魔法をかけるのを忘れていた。大体この頃、ジョーディ達とは普通に話していたからな。話すのに慣れていて、つい魔法を使うのを忘れてしまった』
『お前もか。俺もこの前魔法を使うのを忘れてな。一回使えば数日そのままだから、つい忘れてしまう』

 確かに最近僕は、ドラックパパ達とも魔法なしでお話しできるようになってきていました。それで、ドラッホパパとドラックパパが魔法を使うのを忘れていたせいで、みんなの言葉が分からなかったみたい。ビッキー達もどうりでおかしいと思ったって言ってました。昨日まではおじさんと話せていたのに、急に言葉が伝わらなくなったから、朝は果物を貰えなかったって言ってます。
 言葉が分かるようになったおじさんに、グッシー達はすぐに果物をお願いします。おじさんはしょうがないなって言って、ポイッ、ポイッて、果物を一つずつグッシー達の顔に向かって投げました。
 グッシー達はお口を開けて待っていて、そこに果物が入ると、ちょっとモグモグした後、ゴックンってみ込んでたよ。食べ終わったと思ったらまた口を開けて、次の果物を待ってます。
 おじさんはまたかって言いながら、グッシー達の方に、もう一つずつ果物を投げて、その後僕達にも果物を一つずつくれました。ママに、ありがとうって言いなさいって言われて、みんなでおじさんにありがとうした後グッシー達を見たら……

「あなた達、いい加減にしなさい! さぁ、ジョーディ、みんなも戻りますよ。お仕事の邪魔じゃましちゃダメよ」

 グッシー達はまた口を開けて待ってたんだ。だからママに怒られてました。
 そうだよ、もう二つも貰ったでしょう。おじさん達はみんなのご飯を作ってるんだから、そんなに貰っちゃダメだよ。
 頭だけのグッシー達、怒られてちょっとしょんぼりです。
 みんなで果物を持ったまま、壁の向こう側に戻ります。戻ったらグッシー達は草の壁からもう出てて、しょんぼりしたまま小屋の方に戻っていきました。その後、僕達が遅れて小屋に着いたら、僕達の貰った果物をじっと見てきたの。
 僕は果物を後ろに隠してグッシー達にダメって言います。グッシーはそれを見ていたママとパパに、また怒られてました。
 いい匂いでお腹が空く感じがしたけど、朝ご飯を食べたばっかりなので、貰った果物はすぐには食べられません。果物はベルに渡して、お昼のデザートに出してもらうことにしました。
 今度は果物を持って行くベルをじっと見るグッシー達。
 もう! どうしてそんなに食べたいの? しょうがないな、あとで僕の果物、ひと口だけあげるよ。僕のひと口は、僕の小指くらいだけどね。
 グッシーとビッキーはまだチラチラとベルが帰っていった方を見つめています。でも、お兄ちゃんが契約のお話をしようって言ったら、グッシー達はバッてこっちを向いて、いよいよかって言って目をキラキラさせています。さっきまでしょんぼりしてたのに、凄く元気になったよ。

『我はもう名前を貰っているからな。「グッシー」、最高ではないか』 
『俺もだ。「ビッキー」、いい名前だ。さぁ、さっさと契約してしまおう』 

 グッシー達が興奮こうふんしてそう言ったら、パパがちょっと待てって止めます。まずは話をしたいって言いました。

「ごたごたしていて確認していなかったが、本当に魔獣園の人達には、話をして出てきたんだろうな。もし黙って出てきたのなら、今頃向こうは大変なことになっているぞ」
『ふん、そんなことするわけがなかろう? これでもずっとあそこで暮らしてきたんだ。世話になった恩もある。勝手に出てくるなどということはしない。そうだよな、グッシー?』
『当然だ。そういえば、手紙とやらを預かっていたな。ジョーディ達のことがあって、すっかり忘れていた。落としてないといいが』

 そう言ってグッシーが羽をバサバサします。こう、小さく何回もバサバサって感じ。そしたらポロって、グッシーの体から何か小さくてうすい物が落ちました。

『ああ、あったあった。落としていなかったな。魔獣園で我の面倒を見ていた人間から渡された物だ』
「……なんでそういう大事な物のことを忘れるんだ」

 パパがため息をつきながら手紙を拾って、中身を広げて読み始めました。それをすぐに読み終わると、ママになんて書いてあったか言います。

「『後のことは任せます、それから、新しい家族としてよろしくお願いします』と書いてあった。というか、挨拶はそれくらいで、あとはグッシー達の好きな食べ物とか、寝床のワラの具合とかが書いてある」

 そうだ! 後で何が好きか聞こう。それでグッシーとビッキーに、来てくれてありがとうのお礼をしよう!
 パパが手紙を読み終わると、グッシー達は……さぁ、早く契約するぞって、鼻をフンフン鳴らして準備万端じゅんびばんたんって感じです。ちょっと待って、あの契約の魔法の使い方を思い出すから。それから魔力をめなくちゃ。僕だけで魔力を溜められなかったら、ローリー達に手伝ってもらわなくちゃいけないからね。
 まずは、あの契約する時に必要なあの魔法の模様を思い出そう。セレナさんが『マホウジン』って呼んでたやつです。僕はみんなと契約した時のことを思い浮かべます。この前ミルクと契約した時は、セレナさんに手伝ってもらわなくてもできたから、今日もできると思うんだ。
 えっとこっちにお星さまのマークがあって、あっちには三角とマルでしょう。後はそっちが四角で……うん、模様は大丈夫そう。そう思っていたら、隣にいたお兄ちゃんが、

「僕、準備できた!!」

 って言いました。それからビッキーのことを呼びます。
 

しおりを挟む
表紙へ
感想 598

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。