扇風機を持って異世界転移!? もふもふたちと共に扇風機を操り俺はこの世界を生き延びる!!

ありぽん

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20話 小鳥と契約?

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 振り返った先には……。誰もいなかった。

「なぁ、今誰かの声がしたよな?」

『ああ』

「ミルフィーやトールみたいな声、したよな?」

『ああ』

「誰もいないぞ?」

『僕はここだよ~』

 と、確認をしている時だった。今度は頭の上から声がした次の瞬間、俺の頭の上にミルフィーよりも軽く、トールよりも重い感覚がして。俺は思わずその場に固まった。

『こんにちわ~』

『何だお前は!? どこから入ったんだ!! 魔獣は俺の張った結界の中には入れないはずだぞ!! 大体、どうしてお前からは気配が一切しないんだ!!』
 
 タイラーが俺の肩に手を乗せ立ち上がると、俺の頭の上にいる何かに向かって話し、何かを追い払ってくれた。それから俺の前に立ってくれたよ。

 俺は何とか現実に戻り、前を見て何かを確認しようとする。すると少しだけ離れた場所で、俺の片手に収まるくらいの大きさで、シマエナガに似ている。
 色はエメラルドグリーンのような綺麗な緑色。頭のてっぺんの一部分の毛が、くるんっと跳ねている。とても可愛い鳥がホバリングをしていた。

 ホバリング。普通の鳥はできないはずの動きだ。確か地球ではハリドリという鳥ができたと思ったけど。

 まぁ、それはおいておいて。確かにこの鳥はどこから入ってきたんだろう? 話せるっていうことは魔獣だから。そうなるとタイラーの結界を通れないはず。
 でもここは思い切り結界の中だからな。本当どうやって入ってきたんだ? それに、なんか随分気軽にはなしかけてきたよな。

『おい! 気配を消せるということは、それだけの力を持っているのだろう! お前は何者だ!! ここへ何をしにき!! お前の話と場合によっては!!』

 タイラーが思い切り鳥に向かって唸る。何だ? そんなに危険な鳥なのか? と俺も警戒警戒しようとした時。向こうで勉強会という名の、花の良い悪いを話していたミルフィーとトールが、俺達の所へ飛んできた。

 何で今来ちゃうんだよ。チビもふコンビは。何かあったらどうするんだ!!

『知らない声が聞こえた』

『トールおにいちゃんとおなじ、とりさんがいた。とりさん、こんにちは』

 俺の腕の中に飛び込んできたミルフィーが、ぺこりと頭を下げる。それからトールも、こんにちはと言った後、くるんとした毛がいけてると褒めたし。

 待て待てお前達。こいつは敵かもしれないのに、何呑気に挨拶して褒めてるんだよ。タイラーも唸りながら、一瞬だけど変な顔をしたし。きっと俺と同じことを思ったんだろう。

『お前達は黙っていろ。今は俺が奴と話しているんだ。それに、敵かもしれんのに、まずは警戒しなければならんだろう!』

 ほら怒られた。

『待って待って! 別に僕は、みんなを攻撃しにきたわけじゃないし、この場所に、何かしようと思ってきたわけじゃないよ。気配は、お土産を持ってくるために、そのお土産を森の中を探していて、邪魔な魔獣に見つからないよう、気配を消して動いてたんだよ』

『はっ、どうだか。口では何とでも言えるからな』

『う~ん、だって、ここは人間や君達にとって。大切な場所なんでしょう? そんな大切な場所をどうにかしたり、敵でもないのに、攻撃したりなんかしないよ。僕はね、そこの人間に、僕と契約してもらおうと思って、ここまできたんだ』

『は?』

「え?」

『少し前に、結界の近くまで来たんだ。そうしたら新しい人間がいることに気づいてさ』

 その鳥の話によると、どうやら俺がミルフィーと契約している時に、たまたまタイラーの結界の近くをフラフラしていたらしい。

 それで久しぶりに契約しているところを見たなぁ、という感じで、最初は俺達を見ていたようなんだけど。その時、チラと横を見たら、俺の近くに置いてあった扇風機が目に入ってきて。

 あの変な形をした物は何? なんか面白い予感!! てなことで。それからは隠れながら、ずっと俺のことを観察していたらしい。

 そして、先日の野菜虫事件だ。ミルフィーとトールが大好きで、何気にタイラーも面白がって時々やっている、あの扇風機の前で「あ~」と声を出して遊ぶ言葉遊び。あれを見て面白い、やってみたいと思っていたのだが。

 『エリアバリア』も見て、ミルフィーじゃないが、回る言葉遊びもやりたい。ついでに俺と契約したら、もっとたくさん面白い事ができるかもしれない、と思って。契約してもらおうと、今日ここへやってきたと。

 まさかの理由に、思わず気が抜けてしまった。面白い、言葉遊びがしたい、が契約理由だとは。

『ねぇねぇ、僕と契約してよ。僕、けっこう凄い子なんだよ。もしも何かあったら助けてあげるから。その代わり僕といっぱい遊んで!! それからその回る面白いので、いっぱい遊ばせて!!』

「いや、まぁ、契約して欲しいって、言ってもらえるのは嬉しいんだけど。契約って、そんなぽんぽんして良い物なのか? 俺、最近魔法を覚えたばかりなんだよ。それにお前家族は? ちゃんと家族には許可を取ってきたのか?」

『僕、家族はいないよ。でも仲間はいて、その仲間には伝えて、好きなようにすれば良いって言われから大丈夫』

「そうなのか? う~ん。でも初めて会ったばかりだからな」

『お願い! 僕、今日までとっても楽しみにしてたんだ。あっ、それにもしも、僕がこの場所やみんなに、何かすると思っているなら、やっぱり契約だよ。契約すると契約した魔獣は、契約した人に、悪さできないんだから。ね、そうでしょう、そこの』

『そこのって。俺はタイラーだ。まぁ、お前の言っている事は確かにそうだが』

「だから契約して、僕が何もできなければ、問題ないでしょう? ねぇねぇ、契約して!!」

 まさかここまで契約して!! と言われるとは思わなかった。ミルフィーの時とはぜんぜん違う。まぁ、契約して悪さできないっていうなら。こんなに契約したいって言ってるんだから、契約しても良いか。

「タイラー、どう思う?」

『はぁ、これだけ言っているんだ。断っても居座るだろうからな。こいつのいう通り悪さはできなくなるから、契約をしても大丈夫だろう。契約も後から解除できるからな』

「そうなのか? う~ん。あのさ、契約して俺達と家族になるなら、ちゃんとみんなの言うこと聞いてくれよ。悪いこと、ダメなことをしたら怒るからな」

『うんうん!!』

「でも、それだけ俺と好きになってくれたのは、とっても嬉しいよ、まぁ、扇風機が目当てかもしれないけど。家族になったのなら、俺はお前を大切にするからな。……契約するか」

『わ~い!! ありがとう!!』

 まさかの急な契約になってしまった。
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