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8.ウササの行進とニニンとダンス

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 パパが先に、荷馬車から藁の束を下ろしてきて、小屋の入り口周りに置いていきます。藁の束はいっぱい。ウササは藁が大好きなんだ。
 ウササの藁は他の藁と違って、とってもふわふわしていて。僕がこの藁の上で寝転がっても、ぜんぜんチクチクしない、本当にふかふかもふもふの、カーペットみたいな藁です。

 この藁は特別の藁で、寒~い季節にしか育たない、しかも決まった場所にしか咲かなくて。なかなか見つけられないから、探すのがとっても大変なんだ。
 でもじゃあ何で、お家にこの藁がいっぱいあるのか。それはこれが人が育てた藁だからです。お家で育てているんだ。

 昔々、みんなこの藁が欲しくて、自然に生えていた藁を取ってきました。それで街や村で育てたんだけど、どうして上手に育ってくれなくて。でもある日、別の種類の藁と間違えて一緒に植えたら、とっても不思議なことが。

 自然の特別の藁よりもふわふわ、もふもふじゃないけど。とっても気持ちの良い藁が、新しく生えてきたんだって。
 それからも何回か自然の藁を育てたみんな。やっぱり自然の藁は育たなかったけど、新しく生えてきた藁は育てることができて。それと新しい藁は、季節も関係なく育てることができました。

 それからずっと、みんな新しい藁を育てるようになったんだ。僕のお家にも、この藁を育てる場所があるんだよ。だからウササ達にいっぱいこの藁をあげることができるんだ。

 パパが藁を運んでいる間に、僕は藁を縛っている紐を外します。そうするとふわふわふわっと藁が広がってくれて。僕はその藁に顔を突っ込みました。うん、やっぱり気持ちがいい。

 僕の真似をして友達ウササも顔を突っ込みます。それから2人で顔を出して、お互いの顔を見て笑って。そうしたら、他のウササも寄ってきて、みんなで一緒に、藁に顔を突っ込みます。

「ふえぇぇぇ」

『『『きゅうぅぅぅ』』』

「何をやってるんだ? ほら、藁を敷くぞ」

 パパに言われて顔を出して、みんなでニコニコ。みんなの気持ちいいねぇ。パパが藁の敷き方を教えてくれて、その後は左からパパが、右から僕が藁を敷いていきます。でも……。

 う~ん、上手く敷けない。パパは下の地面が見えないように、綺麗に敷いてるのに、僕は所々地面が見えちゃってる。

「何だ、そんなブスッとして。どうした?」
 
「じめん、みえる。ぜんぶわらじゃない」

「ん? 地面? ああ、そういう事か。それくらいな大丈夫だぞ。アルフは初めてなんだから、そんなちゃんとできなくて良いんだ。それに藁はみんなが動いているうちに動いて、全部綺麗に地面は見えなくなるからな。パパだって今は綺麗だけど、そのうち地面が見えるぞ。そんな時は面倒だから直さん。どうせ動いて埋まるしな。ハハハハハッ」

 パパ、パパはそれじゃあいけないんじゃ? 僕が肩に乗っている友達ウササを見たら、友達ウササがニコッて笑っていて。友達ウササに大丈夫? って聞いたら、頷いてくれました。友達ウササは僕の質問に、いつも頷いたり、首を振ってくれたりして、答えてくれるんだ。
 
 パパもママも、そう見えるだけで、そんな事はしないし。話しだって、簡単な言葉は何となく分かっているだろうけど、僕が質問するような、難しい言葉は分からないって。
 そんな事ないよね。だって今だってちゃんと答えてくれたもん。他のみんなも、時々お話し聞いてくれるし。

 友達ウササが、ウササ達に何か言いました。そうしたらみんなが集まってきて。何であつまったのかな? って思いながら、また藁を敷き始めた僕。少しして後ろを見たら、ウササ達が僕がちゃんと藁を敷けなくて、地面が見えていた場所を、綺麗に直してくれていました。

「ありがと!!」

『きゅう!!』

 それからみんなでどんどん藁を敷いて行って、残り半分くらいになった時、小屋の外からママの声が。見たらママが、大きな籠を持って、小屋の入り口に立っていました。

「あら、何でみんなそんな並んでいるの? アルフを先頭に行進しているみたいになっているわよ」

 ん? 行進?

「それがなぁ、アルフが藁を敷いたあと、何故かウササが集まってきて、順番に藁を動かし始めたんだよ。それでアルフが動くたびにウササがその場所に来るもんだから、長い列みたいになって。挙句そのまま進んでいくから行進してるよう見えるんだ」

「何故か集まって?」

「どうやらアルフを手伝ってくれてるらしい」

「手伝うなんて、今までこんな動きした事ないでしょう。私も見たことがないし」

「いや、それは俺もそうなんだが、どう見てもそうにしか見えたくて。それに今日はこれ以外にも、アルフのことで色々あったんだよ。まぁ、後で話すが」

「はぁ、まぁ良いわ。それよりもあと少しで終わりでしょう。私も手伝うから、ささっと終わらせてしまいましょう。ご飯を食べたらアルフもみんなと遊びたいでしょうし。その後の泥遊びもの準備もしてきたわ。それからこれ」

 ママが籠を開けると、そこにはニニンがいっぱい。何でニニン……。

「3日目のニニンより、今日朝イチで取ってきたニニンの方が新鮮でしょう? そっちは私達が食べて、こっちをみんなに」

「ああ、そうだな。ほら、みんな朝イチニニンだぞ」

『『『きゅうぅぅぅ!!』』』

 ウササ達、大興奮です。肩に乗っている友達ウササも、何回も僕の肩の上で飛び跳ねてるし、とってもニコニコ。最後はみんなで足を交互にパシッ、パシッと動かして、1番嬉しい時の仕草を始めました。

 ウササはとっても嬉しいことがあると、足を交互に動かして、パシパシ地面を叩くんだ。タイミングはパシパシだったり、パッシンパッシンだったり色々。その時その時で違うんだけど。それがダンスしているように見えて、とっても可愛いんだよ。

 でもニニンで喜ぶのはちょっと……。この後はママも一緒に藁を敷いた僕。僕が藁を敷いた跡を、今までみたいに直してくれたみんなは、ずっとダンスしたまま直していました。
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