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54話 共に守っていた大切な物と新しい仲間たち1
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『……これまで長きにわたって守ってきたが、やはりもうダメか』
“……”
『そうか、お主らも新たな場所へ移動するか』
“……”
『私か? そうだな。私はどうするかな。ここには大切な思い出がたくさんあるのだよ』
“……”
『思い出も消えてしまうって? ……確かにそうだな』
“……”
『だから新しい場所へ行くのか』
“……”
『ほう、そのような場所があるのか。うむ、そうだな。もしもここを出るのならば、そなたたちが言う場所へ行こうか』
“……”
『ああ、元気でな』
パタパタパタパタッ!!
『……あの者たちもついに』
「ガシャアァァァンッ!! バリバリバリバリッ!!」
『はぁ、今日もまた。……まずいあの場所は!!』
私は急ぎ向かう。そして私の大切な物を助け出し、今まで皆で集まり、楽しんでいた場所まで移動した。
『ふぅ、何もなくて良かった。はぁ、だがここまでくると、他の者たち同様、覚悟を決めなければいけない時がきたようだ。よし、全てを周り、困っている者たちを全て、新たな場所へ連れ出してから、私も新たな場所を探すとしよう』
先ほども者たちが言っていた場所へ、行ってみるのも良いかもしれない。もしかしたらそこに、私の昔の仲間がいるかもしれんしな。
……先に出ていった者たちに出会ったら、言われるだろうな。だから言っただろう、もっと早く見切りをつけるべきだったのだ、と。
それでも私はここが大好きで、どうにか守りたかったのだ。だが。やはり1人では、どうする事もできなかった。あの人間の力に敵うわけがなかったのだ。
そうして私に残ったのはこれのみ。想いも思い出も、あと少しで全て消えてしまう。
「ガシャアァァァンッ!! バリバリバリバリッ!!」
『はぁぁぁ。……さぁ、皆をの所へ行こう』
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆
『はりゅと! ごはん、いっぱい!?』
「うん、いっぱい持ったよ。俺の作った物と、結城さんがたくさん作ってくれたからね」
『酒はどうだ?』
『ご飯も大切だが、オレたちにとっては、そっちの方が大切なだからな』
「おい、まだ小さくて、飲めない子たちもいるんだぞ」
『だからと言って、皆で楽しまなければしょうがないからの。大体、もう少し経てば、皆飲めるようになるのだから、少しくらい飲んでも問題あるまい』
「いくらあやかしだってダメだ。それでこの前、大変な事になっただろう。俺のいる場所で、幼いあやかしたちにお酒を飲ませるのは禁止だ」
『はりゅと、はやくいこ!!』
「はいはい、それじゃあ行こうか。姿を消していくみんなは予定通り、先に集合場所へ行っててくれ」
『じゃあ、先に行ってるぜ。おい、行くぞ!!』
『ボクは、はりゅとといっちょ』
ぴょんと俺の頭に乗ってくる氷菓丸。
『おい、その場所は俺のだぞ。肩もだ。お前はいつも通り、カバンに入れば良いだろう』
『きょうはあちゃまよ。シロタマにいちゃ、けちじゃにょ、っていわれたでちょ』
氷菓丸が、結灯の真似をして言う。
『ケチでも何でもダメだ。そこは俺のだ』
シロタマが氷菓丸を、手でちょいと押して、頭から転がり落ちてきた氷菓丸を俺が受け止める。
「ほら、行く前から揉めるなよ。シロタマも良いじゃないか、別に乗るくらい」
『ダメだ。まだ早い』
『けちじゃにょお』
『うるさいぞ!』
「煩いって言いたいのはこっちだよ」
「ハハハッ、今からそれじゃあ、先が思いやられるな。まぁ、気をつけて行ってこい」
「はい、それじゃあ行ってきます。夕方前には帰ります」
「おう!」
俺はいつも通り氷菓丸をカバンに入れ、ツムギとユイトもカバンに入ってもらい、ヒビキは、カバンの取手部分に巻くついてもらう。そうしてドンッ!! とシロタマが俺の頭の上に座ると、結城さんのお店を後にした。
今日はみんなで、少しだけ山を登り、ある場所で、そのままピクニックをする予定なんだ。カエンが良い場所を見つけたとかで、前から行こうって言っていたんだけど。今まで忙しくて、行けてなかったんだ。
それでこの前の、滴綿のことがひと段落ついたから、行くなら今だろうって事で、今日行くことになった。
ちなみにこの前の滴綿事件。滴綿が原因だったけど、それを他の人に話せるはずもなく。依頼人と宅配会社との話し合いが、どうなるかと思ったけど、何とか話しがついたようだ。
その結果、じいちゃんと神谷さんは、残った生地と新しい生地とパーツを使い、依頼人のぬいぐるみを復活させ、依頼人に送り返したよ。
依頼人はとても喜んでいたって。たぶん、あの時のキラキラとした、とても綺麗だった想いと思い出は、依頼人の元へもどり、復活したぬいぐるみの中へ戻っただろう。これから依頼人には、復活したぬいぐるみと幸せに暮らしてもらいたいと思う。
『ぴくにっく、ぴくにっくぅ♪』
自作のピクニックの歌を、楽しそうに歌う氷菓丸。俺とシロタマ、氷菓丸とツムギとユイトは、自転車で集合場所まで向かう。
荷物はカエンたちが力を使い、持っていってくれているから。俺はほぼ手ぶらで、集合場所まで行くことができる。
いくら山のふもとだとはいえ、ここはまだ人の目があるからな。みんなでぞろぞろと歩いていくわけには行かないだろう? だから先に姿を消すことができるあやかしと、あとは集合場所まで運んでもらうあやかしには、先に行ってもらった。
俺もあまり遅れないように行かないと。遅れたらなんて言われるか。
『いけいけ、はりゅちょ! ごーごーはりゅちょ!!』
氷菓丸の掛け声と共に、俺は自転車を漕ぎ始めた。
“……”
『そうか、お主らも新たな場所へ移動するか』
“……”
『私か? そうだな。私はどうするかな。ここには大切な思い出がたくさんあるのだよ』
“……”
『思い出も消えてしまうって? ……確かにそうだな』
“……”
『だから新しい場所へ行くのか』
“……”
『ほう、そのような場所があるのか。うむ、そうだな。もしもここを出るのならば、そなたたちが言う場所へ行こうか』
“……”
『ああ、元気でな』
パタパタパタパタッ!!
『……あの者たちもついに』
「ガシャアァァァンッ!! バリバリバリバリッ!!」
『はぁ、今日もまた。……まずいあの場所は!!』
私は急ぎ向かう。そして私の大切な物を助け出し、今まで皆で集まり、楽しんでいた場所まで移動した。
『ふぅ、何もなくて良かった。はぁ、だがここまでくると、他の者たち同様、覚悟を決めなければいけない時がきたようだ。よし、全てを周り、困っている者たちを全て、新たな場所へ連れ出してから、私も新たな場所を探すとしよう』
先ほども者たちが言っていた場所へ、行ってみるのも良いかもしれない。もしかしたらそこに、私の昔の仲間がいるかもしれんしな。
……先に出ていった者たちに出会ったら、言われるだろうな。だから言っただろう、もっと早く見切りをつけるべきだったのだ、と。
それでも私はここが大好きで、どうにか守りたかったのだ。だが。やはり1人では、どうする事もできなかった。あの人間の力に敵うわけがなかったのだ。
そうして私に残ったのはこれのみ。想いも思い出も、あと少しで全て消えてしまう。
「ガシャアァァァンッ!! バリバリバリバリッ!!」
『はぁぁぁ。……さぁ、皆をの所へ行こう』
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『はりゅと! ごはん、いっぱい!?』
「うん、いっぱい持ったよ。俺の作った物と、結城さんがたくさん作ってくれたからね」
『酒はどうだ?』
『ご飯も大切だが、オレたちにとっては、そっちの方が大切なだからな』
「おい、まだ小さくて、飲めない子たちもいるんだぞ」
『だからと言って、皆で楽しまなければしょうがないからの。大体、もう少し経てば、皆飲めるようになるのだから、少しくらい飲んでも問題あるまい』
「いくらあやかしだってダメだ。それでこの前、大変な事になっただろう。俺のいる場所で、幼いあやかしたちにお酒を飲ませるのは禁止だ」
『はりゅと、はやくいこ!!』
「はいはい、それじゃあ行こうか。姿を消していくみんなは予定通り、先に集合場所へ行っててくれ」
『じゃあ、先に行ってるぜ。おい、行くぞ!!』
『ボクは、はりゅとといっちょ』
ぴょんと俺の頭に乗ってくる氷菓丸。
『おい、その場所は俺のだぞ。肩もだ。お前はいつも通り、カバンに入れば良いだろう』
『きょうはあちゃまよ。シロタマにいちゃ、けちじゃにょ、っていわれたでちょ』
氷菓丸が、結灯の真似をして言う。
『ケチでも何でもダメだ。そこは俺のだ』
シロタマが氷菓丸を、手でちょいと押して、頭から転がり落ちてきた氷菓丸を俺が受け止める。
「ほら、行く前から揉めるなよ。シロタマも良いじゃないか、別に乗るくらい」
『ダメだ。まだ早い』
『けちじゃにょお』
『うるさいぞ!』
「煩いって言いたいのはこっちだよ」
「ハハハッ、今からそれじゃあ、先が思いやられるな。まぁ、気をつけて行ってこい」
「はい、それじゃあ行ってきます。夕方前には帰ります」
「おう!」
俺はいつも通り氷菓丸をカバンに入れ、ツムギとユイトもカバンに入ってもらい、ヒビキは、カバンの取手部分に巻くついてもらう。そうしてドンッ!! とシロタマが俺の頭の上に座ると、結城さんのお店を後にした。
今日はみんなで、少しだけ山を登り、ある場所で、そのままピクニックをする予定なんだ。カエンが良い場所を見つけたとかで、前から行こうって言っていたんだけど。今まで忙しくて、行けてなかったんだ。
それでこの前の、滴綿のことがひと段落ついたから、行くなら今だろうって事で、今日行くことになった。
ちなみにこの前の滴綿事件。滴綿が原因だったけど、それを他の人に話せるはずもなく。依頼人と宅配会社との話し合いが、どうなるかと思ったけど、何とか話しがついたようだ。
その結果、じいちゃんと神谷さんは、残った生地と新しい生地とパーツを使い、依頼人のぬいぐるみを復活させ、依頼人に送り返したよ。
依頼人はとても喜んでいたって。たぶん、あの時のキラキラとした、とても綺麗だった想いと思い出は、依頼人の元へもどり、復活したぬいぐるみの中へ戻っただろう。これから依頼人には、復活したぬいぐるみと幸せに暮らしてもらいたいと思う。
『ぴくにっく、ぴくにっくぅ♪』
自作のピクニックの歌を、楽しそうに歌う氷菓丸。俺とシロタマ、氷菓丸とツムギとユイトは、自転車で集合場所まで向かう。
荷物はカエンたちが力を使い、持っていってくれているから。俺はほぼ手ぶらで、集合場所まで行くことができる。
いくら山のふもとだとはいえ、ここはまだ人の目があるからな。みんなでぞろぞろと歩いていくわけには行かないだろう? だから先に姿を消すことができるあやかしと、あとは集合場所まで運んでもらうあやかしには、先に行ってもらった。
俺もあまり遅れないように行かないと。遅れたらなんて言われるか。
『いけいけ、はりゅちょ! ごーごーはりゅちょ!!』
氷菓丸の掛け声と共に、俺は自転車を漕ぎ始めた。
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