猫又と俺の願いを縫う不思議な工房

ありぽん

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56話 共に守っていた大切な物と新しい仲間たち3

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『あれぇ? 晴翔、みんな?』

『ここ、さっきの場所じゃないよ。こんな所来なかった』

『じゃあこっち?』

『そっちも違うよ』

『晴翔お兄ちゃん!』

『カエン兄ちゃんどこ!?』

『……もしかして僕達迷子になっちゃった?』

『カオンが向こうで遊ぼうって言ったからだよ!』

『何だよ、お前だって行こう行こうって言ったじゃないか!』

『こんなに遠くまでなんて言ってなかったじゃん!!』

『カエンおにいちゃ、はるとおにいちゃ……うわぁぁぁん!!』

『ああ、レンカ、大丈夫よ。ちょっと!! あんた達がこんな時に大声で喧嘩するから、ただでさえ不安だったのに、泣いちゃったじゃない!!』

『あ……、悪い』

『ご、ごめんね』

『もう。今は喧嘩してる場合じゃないでしょう』

『そうよ、早くみんなの所にどうにかし戻らないと』

『でもさっきから、毎回別の場所に行ってる気がする。それにさ、なんかおかしいよ。みんなも気づいてるでしょう? みんながいる場所は大きな木の場所だから、木に登ってその木を探したのに、どこにもその木が見つからない。これっておかしいよ』

『うわぁぁぁん!! かえりちゃいぃぃぃ!!』

『大丈夫、大丈夫よ。今私たちが、すぐに帰る道を見つけるからね』

『どうしようか』

『もう1度上から見てみるか』

 ガサゴソ、ガサゴソ。ガサササササッ!!

『グギャアァァァッ!!』

『わわ!? 何だ!?』

『うわぁぁぁん!!』

『何よあいつ!! 危ない!!』

『みんな気をつけろ!!』

『うわぁぁぁん!!』

『グギャアァァァッ!!』

『レンカ危ない!!』

『くっ!! お姉ちゃんが守るからね!!』

『……おい、こんな場所に誘い込み、幼いあやかしたちに何をしようとしている』

『グギャア!? グギャギャ!?』

『消えろ』

『グギャアァァァァァァッ!!』

『ふぅ、大丈夫か? もん安心だぞ』

『だ、誰だ!?』

『うわぁぁぁん!!』

『私はお前達を害するつもりはない。お前達は先ほどのあやかしに唆され、奴の空間に引き込まれたのだ。奴は消したから、すぐに元の森に戻る。……全員木に登るぞ』

『わわ!? 一瞬で木の上に!?』

『見てみろ。あそこにあやかし達が集まっているが、お前達が探しているのは、あのあやかし達か?』

『あっ! 大きな木だ!!』

『カエンと晴翔達もいる!!』

『さっきまでは何も見えなかったのに!』

『私たち、こんな遠くまで来てたの!?』

『あれであっているな?』

『うん!!』

『うえぇ、はやくかえりちゃい』

『大丈夫。すぐに帰るからね』

『よし、私がお前達の仲間の元へ連れて行ってやろう』



      ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆



「お~い! カオン!! レンカ!!」

『どこだ!? どこに居る!! 返事をしろ!!』

『影嗅、匂いはどうだ!?』

『完全に消えてる』

『リン、結城呼んでくる!!』

『待て。それならば私が呼んでくる。私が付いていながら、こんなことになるとは』

「すまない白火、頼めるか」

『ああ、任せろ』

 白火が一瞬でその場から消える。いや、正確にいうと、そう見えているだけなんだけど。白火が本気で走ると早すぎて、消えたように見えるんだ。頼んだぞ白火。俺たちはその間に、何とかみんなを探すから。

 俺たちは今みんなで、カエンと同じ猿火のあやかしと、他の幼いあやかしたちを探しているところだ。

 数時間前、待ち合わせ場所で合流した俺たちは、カエンの案内で、綺麗な花がたくさん咲いている、近くには川もある、ピクニックをするには最高の場所へ連れて行ってもらい。

 まだ午前中だったから、まずはビニールシートを敷いて、喉が渇いた時にすぐ飲み物を飲めるよう準備し、のんびりと遊んで過ごした。

 そしてお昼になり、みんなで美味しいご飯をたくさん食べた後は、幼いあやかしたちは食休みをはさみ、また元気に遊び始め。シロタマやカエンたち大人組はというと、変わらずのんびりお酒を飲みながら、それぞれがピクニックを楽しんでいたよ。

 だけど……、気づいた時には、カエンと同じ猿火のあやかしたちと、他の幼いあやかしたちが、いなくなっていたんだ。まさか誰も、みんながいなくなったことに気づかなかったなんて。

 慌てて影嗅に匂いを探してもらい、俺たちはピクニックをしていた場所の周辺をくまなく探し。
 移動が得意なあやかしたちには、遠くまで行ってもらって、全員でいなくなってしまったみんなを探した。

 だけど、いくら探しても、誰ひとり見つからなくて。匂いさえ、見つけることができなかったんだ。

 そこで今、白火が結城さんを呼びに行ってくれたところだ。

『どうする、もう1度向こう側を探すか?』

『あっちはどうだ? まだ2回しか探してないだろう』

「俺がしっかりみんなを見ていれば……」

『晴翔のせいじゃない。あいつらは隠れて移動するのが得意だからな。おそらく、見つからないようにそっと抜け出したんだろう。まったく見つけたら、しっかり説教しないと』

『しかし、ここまで匂いが見つからないとなると……。もしかしたらあやかしが関わったか?』

「え? あやかし? ……まさか滴綿みたいなあやかしがここに!?」

『いや、確かに危険で厄介なあやかしだが、これは別のだろう』

「どういう事だ?」

『おい、最近この辺りで、面倒なあやかしは見たか? 話しを聞いたりは?』

 シロタマがみんなに聞く。

『いや、俺は何も見ていない。それに話しも聞いてない』

『ワシもじゃ』

『おいらも知らない』

『……ということは、他から気づかないうちに流れてきたか』

『その可能性が高いだろうな』

『じゃあそいつにみんなは』

 俺と、他の幼いあやかし以外、シロタマたちは何か知っているみたいだった。

「なぁ、一体どんなあやかしなんだ。もしも分かってるなら早く行動しないと。みんなが危険なんだろう? 結城さんも来てくれるだろうけど、俺たちでできる限りの事をしないと」

『分かっている。だがまずは場所を特定しないとダメ……』

 突然シロタマもカエンも、みんなが黙って少し向こうの空を見た。俺もつられてそちらを見る。だけどそこには何も見えなくて。

「シロタマ、どうしたんだ? 何か見えるのか?」

『影嗅、匂いは!』

『全員の匂いする!!』

『そうか。……連れてくるのは、どんなあやかしか。俺たちと敵対するあやかしか、それれとも……』

「なぁ、シロタマ、一体何が起きてるんだ」

『晴翔、俺たちは少し下がるぞ。あのスピード、今から移動してもすぐに追いつかれる。おい、俺たちはさがるぞ!! 良いか!?』

『ああ、それで良い。俺たちに任せろ』

「シロタマ!?」

『向こうで話す。とりあえず隠れるぞ』

 シロタマに連れられて、何が起こっているのか分からないまま、大きな木の後ろに隠れる。

「シロタマ、そうしたんだ」

『今こちらに、たくさんのあやかしが近づいてきているんだ。その中にはカオン達の気配もある』

「本当か!?」

『ああ。だが、他のあやかしの気配もしているんだ。一直線にこちらへ近づいてきているから、俺たちを目指して飛んできているんだろうが。それが誰だから分からないから、晴翔には隠れてもらった』

「分からないあやかし……」

 と、話している時だった。遠くの方から何かが聞こえて。俺たちは話すのをやめて、その何かに耳を傾ける。すると微かにだったが、こう聞こえたんだ。

『カエン兄ちゃ~ん!! 晴翔兄ちゃ~ん!!』
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