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step4 おかえりなさいませ、ご主人様
30代成人男性は大分無理をすれば魔法が使える
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「おかえりなさいませ~、ご主人様っ♡」
フリフリのエプロンにピンク色のメイドの格好をした女の子がニコニコしながら猫撫で声でそう言った。
……おぉ、これが噂に聞くメイド喫茶か。
店内は白とピンクを基調にしたファンシーな空間が広がっていた。
働いている女の子は皆、メイド姿のミニスカで惜しげもなく足を出している。
そんなふわふわした雰囲気には、明らかにミスマッチなもさい客の男共。
どいつもこいつも浮かれた顔で、メイドさんを見ている。
そしてあちらこちらから聞こえてくる呪文めいた謎の言葉。
一瞬その雰囲気に飲まれそうになるが、あいつが仁菜がここで働いているかもしれないのだ。
なりふり構っていられない。
「お待たせしました~。こちら、くまたんオムライスになります」
そう言って水嶋が頼んだオムライスには、チキンライスでかたどった可愛らしいクマが一緒に乗っかってきた。
子どもが見たら喜びそうだ。
……しかし、これがいい年した大人の男を対象に出されているんだから世も末だ。
しかし、ただ運んできただけでは終わらないようで………
「それではー、これから更に料理をおいしくする魔法をかけまーすっ」
そんな掛け声とともに、謎の呪文を唱え始めたのだ。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ、萌え萌えきゅんっ」
そう言いながら、手でハートを作り、胸元で左右に揺らす。
最後にそのハートをそのオムライスに向かって突き出し、「ぴぴぴぴぴぴぴーっ」とビームを発した。
唖然としながらその一連の流れを傍観していると、次の瞬間このメイドさんは信じられない台詞を言い放った。
「それではご主人さまもご一緒にお願いしますっ」
「はーい」
それに、にこやかに答える後輩。
さぞ楽しそうにメイドさんと一緒にさっきの台詞を唱える。
その様子に思わず、茫然としてしまう。
まさか、俺もこれをやらされるんじゃ……。
あぁ、軽はずみにメイド喫茶に来るんじゃなかった。
こんな高難度な試練が待ち構えていたとは……っ。
「お待たせしました~、こちらにゃんにゃんバーグになりまぁす」
そう言ってまたもや可愛らしくデコレーションされたハンバーグがテーブルの上に置かれた。
「それでは~、「……あの、それやらなくて大丈夫です」
魔法とやらが始まる前に、少し遠慮がちにそう言った。
するとたちまちメイドさんが、不安げに俺の顔をじっと見つめてきた。
「ご主人様さまっ、何か気に障る点があったでしょうかっ?」
「い、いや」
そうぐいっと詰め寄られ、思わずたじろぐ。
そのメイドに聞こえないように水嶋が、あーあと小声で俺に漏らした。
「ほら、先輩がそんなこと言うから」
「だってあんな真似できる訳ないだろ」
そう小声で反論する。
そうだ、あんな難易度の高い魔法は到底俺には唱えられない。
じっと心配そうに見つめてくるメイドさんに、俺はにこっと微笑んだ。
「すいません。毎回やってたら、大変だろうから遠慮させてもらったんです」
よしこれで大人しく去ってくれるだろう。
ほっと胸をなでおろしていると、メイドさんから甲高い声で思わぬ言葉が飛んできた。
「そんなっ、お気遣いありがとうございますっ、しかし最後の仕上げは欠かせません!」
「……え?」
「それでは、ご主人様ご一緒によろしいですかっ?」
……い、いや、よろしくないです。
自分でも顔が青ざめていくのが分かった。
「ははは、今日来て良かった。こんな、先輩の姿見れるなんて」
横で腹を抱えながら笑う水嶋を横目できっと睨む。
「俺はな、こんなことしにここに来た訳じゃないんだよ」
「じゃあ、一体何しに来たんですか?俺のこと強引に誘ってまで来たかったんでしょう?」
そんなに、どうしても来たかったように言われるとなんとなく腑に落ちない。
俺はただ、あいつがここに働いてんじゃないのかと思って見に来たのだ。
「今日見せた名刺のいちごって女の子を探してるんだ」
「その子、先輩の知り合いなんですか?」
「知り合いっていうか親戚みたいなもんなんだけど、今訳あって一緒に暮らしててな。昨日ちょっと喧嘩して出てったもんだから心配で」
「出てったって、よっぽどひどいこと言ったんですか?」
「まぁ……」
かっとなって色々辛辣なことを言った気がする。
「でも、結局探しに来たはいいものの見当たらないんだけどな」
そう、さっきからちらちら探しているのだが一向に見当たらない。
もしかしたら今日は休みとか?
それか、あの名刺はただの客としてもらっただけとか。
ひょっとして、家に帰ってるなんてこともあり得るかも。
帰ったら「ごめんなさーい」といつもの間延びした声で謝って、出迎えてくれたりして。
……まあ、それは万の一つもないか。
自分が奴に言った最後の台詞を思い出す。
『人の金取るような妹なんていらねぇよ』
確かにそう言った。
言われた後のあいつの顔もしっかり覚えている。
今まで見たことのない程、悲しそうな顔をしていた。
いつも能天気にへらへら笑っている奴が、必死に泣かまいと堪えているようだった。
そんな奴が自ら帰ってくるようには思えない。
フリフリのエプロンにピンク色のメイドの格好をした女の子がニコニコしながら猫撫で声でそう言った。
……おぉ、これが噂に聞くメイド喫茶か。
店内は白とピンクを基調にしたファンシーな空間が広がっていた。
働いている女の子は皆、メイド姿のミニスカで惜しげもなく足を出している。
そんなふわふわした雰囲気には、明らかにミスマッチなもさい客の男共。
どいつもこいつも浮かれた顔で、メイドさんを見ている。
そしてあちらこちらから聞こえてくる呪文めいた謎の言葉。
一瞬その雰囲気に飲まれそうになるが、あいつが仁菜がここで働いているかもしれないのだ。
なりふり構っていられない。
「お待たせしました~。こちら、くまたんオムライスになります」
そう言って水嶋が頼んだオムライスには、チキンライスでかたどった可愛らしいクマが一緒に乗っかってきた。
子どもが見たら喜びそうだ。
……しかし、これがいい年した大人の男を対象に出されているんだから世も末だ。
しかし、ただ運んできただけでは終わらないようで………
「それではー、これから更に料理をおいしくする魔法をかけまーすっ」
そんな掛け声とともに、謎の呪文を唱え始めたのだ。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ、萌え萌えきゅんっ」
そう言いながら、手でハートを作り、胸元で左右に揺らす。
最後にそのハートをそのオムライスに向かって突き出し、「ぴぴぴぴぴぴぴーっ」とビームを発した。
唖然としながらその一連の流れを傍観していると、次の瞬間このメイドさんは信じられない台詞を言い放った。
「それではご主人さまもご一緒にお願いしますっ」
「はーい」
それに、にこやかに答える後輩。
さぞ楽しそうにメイドさんと一緒にさっきの台詞を唱える。
その様子に思わず、茫然としてしまう。
まさか、俺もこれをやらされるんじゃ……。
あぁ、軽はずみにメイド喫茶に来るんじゃなかった。
こんな高難度な試練が待ち構えていたとは……っ。
「お待たせしました~、こちらにゃんにゃんバーグになりまぁす」
そう言ってまたもや可愛らしくデコレーションされたハンバーグがテーブルの上に置かれた。
「それでは~、「……あの、それやらなくて大丈夫です」
魔法とやらが始まる前に、少し遠慮がちにそう言った。
するとたちまちメイドさんが、不安げに俺の顔をじっと見つめてきた。
「ご主人様さまっ、何か気に障る点があったでしょうかっ?」
「い、いや」
そうぐいっと詰め寄られ、思わずたじろぐ。
そのメイドに聞こえないように水嶋が、あーあと小声で俺に漏らした。
「ほら、先輩がそんなこと言うから」
「だってあんな真似できる訳ないだろ」
そう小声で反論する。
そうだ、あんな難易度の高い魔法は到底俺には唱えられない。
じっと心配そうに見つめてくるメイドさんに、俺はにこっと微笑んだ。
「すいません。毎回やってたら、大変だろうから遠慮させてもらったんです」
よしこれで大人しく去ってくれるだろう。
ほっと胸をなでおろしていると、メイドさんから甲高い声で思わぬ言葉が飛んできた。
「そんなっ、お気遣いありがとうございますっ、しかし最後の仕上げは欠かせません!」
「……え?」
「それでは、ご主人様ご一緒によろしいですかっ?」
……い、いや、よろしくないです。
自分でも顔が青ざめていくのが分かった。
「ははは、今日来て良かった。こんな、先輩の姿見れるなんて」
横で腹を抱えながら笑う水嶋を横目できっと睨む。
「俺はな、こんなことしにここに来た訳じゃないんだよ」
「じゃあ、一体何しに来たんですか?俺のこと強引に誘ってまで来たかったんでしょう?」
そんなに、どうしても来たかったように言われるとなんとなく腑に落ちない。
俺はただ、あいつがここに働いてんじゃないのかと思って見に来たのだ。
「今日見せた名刺のいちごって女の子を探してるんだ」
「その子、先輩の知り合いなんですか?」
「知り合いっていうか親戚みたいなもんなんだけど、今訳あって一緒に暮らしててな。昨日ちょっと喧嘩して出てったもんだから心配で」
「出てったって、よっぽどひどいこと言ったんですか?」
「まぁ……」
かっとなって色々辛辣なことを言った気がする。
「でも、結局探しに来たはいいものの見当たらないんだけどな」
そう、さっきからちらちら探しているのだが一向に見当たらない。
もしかしたら今日は休みとか?
それか、あの名刺はただの客としてもらっただけとか。
ひょっとして、家に帰ってるなんてこともあり得るかも。
帰ったら「ごめんなさーい」といつもの間延びした声で謝って、出迎えてくれたりして。
……まあ、それは万の一つもないか。
自分が奴に言った最後の台詞を思い出す。
『人の金取るような妹なんていらねぇよ』
確かにそう言った。
言われた後のあいつの顔もしっかり覚えている。
今まで見たことのない程、悲しそうな顔をしていた。
いつも能天気にへらへら笑っている奴が、必死に泣かまいと堪えているようだった。
そんな奴が自ら帰ってくるようには思えない。
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