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step5 ゴジラ、襲来
爽やか変態水嶋くん
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ゴジラはその一部始終を見守ったのち、やっと納得がいったのか、やっと帰る気になったよう。
「もしまたここでまた顔を合わせるようなことがあれば、容赦無く家へ連行するからね」
そんなセリフを残して仁菜を睨む。玄関のドアが閉じてゴジラを見送り、コツコツと凶器のようなハイヒールの歩く音が途絶えたところでやっと生きた心地を取り戻した仁菜が口を開いた。
「彼女さん……ですか?」
「世話になってる先生の娘さんでな。断ったんだけど、あの性格だから聞かなくて」
「はぁ、また強烈な人でしたね。美人だから更に迫力が増すというか」
時計を見るともう少しで日付が変わりそうな時間。
「今日はもう遅いから、明日行こう。できるだけ早く帰ってくるようにするから」
そう言うと不安げに顔を曇らせる仁菜。
「彰人さん、やっぱり見知らぬ男性のところに寝泊まりするのは……」
「俺だってもとはそんなもんだったろ」
「違う、彰人さんとは運命のっ」
「分かった分かった、じゃあ他にお前ツテあるの?」
「……ない」
「大丈夫ルリルリの格好させられるだけで、それ以上は何もしないって言ってたから。別に女の子に不自由してる訳じゃないから変なことしないよ」
「ルリルリの格好?」
「分かんないけどメイドさんみたいな感じだろ。明日までに必要最低限の荷物まとめておけよ」
……これは、なんといった幸運の巡り合わせだろうか。体良く厄介者払いできる絶好のチャンス、なんとしてでも遂行させなくては。
家出した時はどっかで野垂れ死ぬかもという心配が付きまとったが、今回はそれがない。
まぁ、確かに仁菜がいなくなった時、少しの寂しさはあった。それは認めよう。
だがしかし、それは仁菜にひどいことを言ったという後ろめたさがあったせいもある。
なんの心残りもなく、仁菜が来る前のあの優雅な1人暮らしに戻れるとあれば、そんな寂しさなど屁でもない。
俺はやっぱりできるなら1人暮らしが良い人間だったのだ。
翌日、回診前の朝。水島に改めて礼を言った。
「水嶋、悪いな」
「いやいや、ルリルリちゃんなら歓迎っすよ。あのプニプニのほっぺ早く触りたい」
耳を疑うような発言に、思わず聞き返してしまう。
「……え?」
「え?」
それに対して、何かおかしなこと言いましたか?、とでも言いたそうな顔で逆に聞き返される。
「お前、いつも付き合ってない女の子にでもそんなことしてんの?」
「普段はしませんよー。だけどルリルリちゃんは別です」
「あいつ確かに頭のネジ一本外れてるけど、中身はいたって普通の女の子なんだから。それに男慣れしてないだろうし、あまり過度なスキンシップは」
「そうはいってもルリルリちゃんを前にして、僕の欲望はとどまれるかどうか」
「そもそも、ルリルリちゃんて何なんだよ?」
実在しない二次元のキャラクターをそこまで愛でられるとは、俺にはとてもじゃないけど理解し難い感情だった。
そんな俺の目の前に、スマホの待ち受け画像を突き付けルリルリちゃんとやらを見せつけられる。
「ほら先輩見てっ、これがルリルリちゃん!」
その予想外のルリルリちゃんの姿に、思わず閉口してしまう俺。
もっと、何か、日曜の朝やっているような幼女向けのアニメに出てくる、魔法少女のようなフリフリの服を着たようなものを想像していたのだ。
しかしその画面にいるのは、おまけついでに局所を隠したような怪しいコスチュームを着た女の子だった。紫色のビキニのような上下に、まるで体を隠す気のない透けた素材の布が付随する。アラビアンちっくな踊り子のような衣装だった。
思わず固まってしまった俺には目もくれず、画面のルリルリちゃんを指先で愛でる。
「ね、思わず触りたくなる体してるでしょー?」
「……まさか、これを仁菜に着させようとしてるのか?」
「そうですよ?これがコスチュームですから」
「いやだって、これ……、布の面積狭すぎやしないか?」
「なんでー?可愛いでしょ、僕のお嫁さんです」
そう言って画面上のルリルリにキスをする危ない後輩。思った以上に水嶋が変態で、本当に仁菜を預けて良いものかこの期に及んで心配になってきた。
いや、ここは前向きに考えよう。仁菜だってメイド喫茶で働いてる位だ、恰好はどうあれコスプレの一つや二つお手の物だろ。それに二人の間に、愛が芽生えるかもしれない。そうだ変態同士、気が合わない訳がない。
今日は立て続けに二件、予定されていた手術が入っていた。どちらも手技的には簡単なものだったが、今日ばかりは自分でもどこか神懸かったようなスピードで、手術を終わらせることができた。
手術が終わった後、病棟へ送られた患者さんの元へ行き、問題ないことを確認してすぐさま家路へ着く。水嶋の方も今日は午前中外来で、午後は他の手術の助手についていたようで俺より早く帰宅した模様。
仁菜には少し悪い気もするが、しょうがない。俺はやっぱり、できることなら1人暮らしが良い。誰にも自分の生活に干渉して欲しくないのだ。
大丈夫、仁菜は上手くやっていける。あの子はあぁ見えて根性あるし、強い子だ。
そう自分に言い聞かせながら家へ着くと、そこにはやはり不安そうな仁菜が待っていた。
「ルリルリの恰好ってどんなんだろうと思って調べようと思ったんですけど、なかなか怖くて」
だめだ、調べられたら一貫の終わりだ。ハラハラしながら仁菜に断言する。
「そ、そんなこと調べなくていい」
「彰人さん?」
「いいか、仁菜、世の中には知らない方が幸せだったりすることもある。それにちょっと嫌だったりすることもそれが日常になれば人は慣れるもんだ」
そんな俺の様子があまりにも不自然だったのか、更に不安がる仁菜。
「彰人さん、どうしたんですか?ルリルリの恰好知ってるんですか?そんなにおかしいんですか?」
「そんなことない、今日水嶋に見せてみらったけど、なんか、
「なんか?」
「……涼しそうな服だったよ」
「なんですか、その間!もう絶対変な衣装なんだ!やっぱり行きたくないですっ」
「あのゴジラに消炭にされるのとどっちが良いっ?」
「どっちも嫌だー、もうここにいたいー」
「だめだ、どっちみちこの家にいても、あのゴジラに連れ去られるぞ」
「うわーん」
泣いて嫌がる仁菜をずるずると引きずって車に乗せ水嶋の家へ無理矢理連れて行く。
「水嶋、悪いけどよろしくな」
「……」
俺の後ろから出ようとせず、ぎゅっと俺の服の裾を握っている。涙をたっぷり含んだ上目遣いで見つめられ、最後の抵抗とばかりに分かりやすいSOSサインが出される。
まるで仕方なく、飼えなくなったような子犬を里親に出すような心境で、俺もちょっと心が痛い。
「わぁ、ルリルリっ!よろしく!」
そんなおっかなびっくりの仁菜にお構いなく、引っ張り出す水嶋。
「ルリルリーっ」
興奮を隠さず仁菜の両頬を嬉しそうに摘まむ。その様子に、本当にこの人に預けるんですか、という目を向けてくる仁菜。
「ほ、ほら、水嶋。仁菜が戸惑ってるだろ、そういうのはもう少し仲良くなってからな」
「ごめん、ルリルリ。嬉しさの余りについ手が出ちゃった」
「手が出ちゃった……?」
この人やっぱり危ない人です、と俺に助けを求める仁菜。
「もしまたここでまた顔を合わせるようなことがあれば、容赦無く家へ連行するからね」
そんなセリフを残して仁菜を睨む。玄関のドアが閉じてゴジラを見送り、コツコツと凶器のようなハイヒールの歩く音が途絶えたところでやっと生きた心地を取り戻した仁菜が口を開いた。
「彼女さん……ですか?」
「世話になってる先生の娘さんでな。断ったんだけど、あの性格だから聞かなくて」
「はぁ、また強烈な人でしたね。美人だから更に迫力が増すというか」
時計を見るともう少しで日付が変わりそうな時間。
「今日はもう遅いから、明日行こう。できるだけ早く帰ってくるようにするから」
そう言うと不安げに顔を曇らせる仁菜。
「彰人さん、やっぱり見知らぬ男性のところに寝泊まりするのは……」
「俺だってもとはそんなもんだったろ」
「違う、彰人さんとは運命のっ」
「分かった分かった、じゃあ他にお前ツテあるの?」
「……ない」
「大丈夫ルリルリの格好させられるだけで、それ以上は何もしないって言ってたから。別に女の子に不自由してる訳じゃないから変なことしないよ」
「ルリルリの格好?」
「分かんないけどメイドさんみたいな感じだろ。明日までに必要最低限の荷物まとめておけよ」
……これは、なんといった幸運の巡り合わせだろうか。体良く厄介者払いできる絶好のチャンス、なんとしてでも遂行させなくては。
家出した時はどっかで野垂れ死ぬかもという心配が付きまとったが、今回はそれがない。
まぁ、確かに仁菜がいなくなった時、少しの寂しさはあった。それは認めよう。
だがしかし、それは仁菜にひどいことを言ったという後ろめたさがあったせいもある。
なんの心残りもなく、仁菜が来る前のあの優雅な1人暮らしに戻れるとあれば、そんな寂しさなど屁でもない。
俺はやっぱりできるなら1人暮らしが良い人間だったのだ。
翌日、回診前の朝。水島に改めて礼を言った。
「水嶋、悪いな」
「いやいや、ルリルリちゃんなら歓迎っすよ。あのプニプニのほっぺ早く触りたい」
耳を疑うような発言に、思わず聞き返してしまう。
「……え?」
「え?」
それに対して、何かおかしなこと言いましたか?、とでも言いたそうな顔で逆に聞き返される。
「お前、いつも付き合ってない女の子にでもそんなことしてんの?」
「普段はしませんよー。だけどルリルリちゃんは別です」
「あいつ確かに頭のネジ一本外れてるけど、中身はいたって普通の女の子なんだから。それに男慣れしてないだろうし、あまり過度なスキンシップは」
「そうはいってもルリルリちゃんを前にして、僕の欲望はとどまれるかどうか」
「そもそも、ルリルリちゃんて何なんだよ?」
実在しない二次元のキャラクターをそこまで愛でられるとは、俺にはとてもじゃないけど理解し難い感情だった。
そんな俺の目の前に、スマホの待ち受け画像を突き付けルリルリちゃんとやらを見せつけられる。
「ほら先輩見てっ、これがルリルリちゃん!」
その予想外のルリルリちゃんの姿に、思わず閉口してしまう俺。
もっと、何か、日曜の朝やっているような幼女向けのアニメに出てくる、魔法少女のようなフリフリの服を着たようなものを想像していたのだ。
しかしその画面にいるのは、おまけついでに局所を隠したような怪しいコスチュームを着た女の子だった。紫色のビキニのような上下に、まるで体を隠す気のない透けた素材の布が付随する。アラビアンちっくな踊り子のような衣装だった。
思わず固まってしまった俺には目もくれず、画面のルリルリちゃんを指先で愛でる。
「ね、思わず触りたくなる体してるでしょー?」
「……まさか、これを仁菜に着させようとしてるのか?」
「そうですよ?これがコスチュームですから」
「いやだって、これ……、布の面積狭すぎやしないか?」
「なんでー?可愛いでしょ、僕のお嫁さんです」
そう言って画面上のルリルリにキスをする危ない後輩。思った以上に水嶋が変態で、本当に仁菜を預けて良いものかこの期に及んで心配になってきた。
いや、ここは前向きに考えよう。仁菜だってメイド喫茶で働いてる位だ、恰好はどうあれコスプレの一つや二つお手の物だろ。それに二人の間に、愛が芽生えるかもしれない。そうだ変態同士、気が合わない訳がない。
今日は立て続けに二件、予定されていた手術が入っていた。どちらも手技的には簡単なものだったが、今日ばかりは自分でもどこか神懸かったようなスピードで、手術を終わらせることができた。
手術が終わった後、病棟へ送られた患者さんの元へ行き、問題ないことを確認してすぐさま家路へ着く。水嶋の方も今日は午前中外来で、午後は他の手術の助手についていたようで俺より早く帰宅した模様。
仁菜には少し悪い気もするが、しょうがない。俺はやっぱり、できることなら1人暮らしが良い。誰にも自分の生活に干渉して欲しくないのだ。
大丈夫、仁菜は上手くやっていける。あの子はあぁ見えて根性あるし、強い子だ。
そう自分に言い聞かせながら家へ着くと、そこにはやはり不安そうな仁菜が待っていた。
「ルリルリの恰好ってどんなんだろうと思って調べようと思ったんですけど、なかなか怖くて」
だめだ、調べられたら一貫の終わりだ。ハラハラしながら仁菜に断言する。
「そ、そんなこと調べなくていい」
「彰人さん?」
「いいか、仁菜、世の中には知らない方が幸せだったりすることもある。それにちょっと嫌だったりすることもそれが日常になれば人は慣れるもんだ」
そんな俺の様子があまりにも不自然だったのか、更に不安がる仁菜。
「彰人さん、どうしたんですか?ルリルリの恰好知ってるんですか?そんなにおかしいんですか?」
「そんなことない、今日水嶋に見せてみらったけど、なんか、
「なんか?」
「……涼しそうな服だったよ」
「なんですか、その間!もう絶対変な衣装なんだ!やっぱり行きたくないですっ」
「あのゴジラに消炭にされるのとどっちが良いっ?」
「どっちも嫌だー、もうここにいたいー」
「だめだ、どっちみちこの家にいても、あのゴジラに連れ去られるぞ」
「うわーん」
泣いて嫌がる仁菜をずるずると引きずって車に乗せ水嶋の家へ無理矢理連れて行く。
「水嶋、悪いけどよろしくな」
「……」
俺の後ろから出ようとせず、ぎゅっと俺の服の裾を握っている。涙をたっぷり含んだ上目遣いで見つめられ、最後の抵抗とばかりに分かりやすいSOSサインが出される。
まるで仕方なく、飼えなくなったような子犬を里親に出すような心境で、俺もちょっと心が痛い。
「わぁ、ルリルリっ!よろしく!」
そんなおっかなびっくりの仁菜にお構いなく、引っ張り出す水嶋。
「ルリルリーっ」
興奮を隠さず仁菜の両頬を嬉しそうに摘まむ。その様子に、本当にこの人に預けるんですか、という目を向けてくる仁菜。
「ほ、ほら、水嶋。仁菜が戸惑ってるだろ、そういうのはもう少し仲良くなってからな」
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