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step6 #ルリルリ渋谷に登場
あわやトレンド入りは免れたい
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「そのソファー、倒してベッドになるから、そこで寝れる?」
「え、は、はい」
「お風呂、適当に入っていいから。あれ?ご飯は食べてきたの?」
「あ、はい、彰人さんちで」
「じゃ、俺明日も早いし先に寝るから。じゃ」
なんだか、本当に私自身には興味がないのか、扱いがちょっと適当になる。
結局下のズボンを要求する前に彼は自分の寝室へ入ってしまった。
さっきまでルリルリーと、目の色を変えて自分を持て囃していた人間がこうも変わってしまうのかと思うと、ちょっと寂しくなってしまう。
そのソファーで眠る前はそんな複雑な心境だったものの、図太い私は家主が仕事へ行ったのにも気付かない位そこで爆睡していた。しかも綿製のパンツ丸出しで。
眠い目を擦りながら、時計を見るともうお昼前。
いけない、いけない。ここに長居する訳にはいかないのだ、家主が返ってくる前に彰人さんの家へ戻らなくては。しかし、私の服はどこかに隠されてしまっている。ルリルリの衣装か、この借りたTシャツ一枚で家を出るかという、究極の選択に迫られていた。
それは綿製のパンツ丸出しか、局所は隠れているがビキニ同然の恰好で外に出るか、という選べない選択肢。
ちょっと家主の服を拝借しようかと寝室に浸入を試みるも、しっかり鍵が閉められておりあえなく断念。
私は覚悟を決めて腹をくくることに。私はどっかのコスプレイヤーになりきったつもりで、少し濃い目の化粧をしこっそり家を抜け出した。
視線が痛いがこれは私へ向けられているものではない。ルリルリというコスプレイヤーに向けられているものであって、決して仁菜本人に向けられたものではない。そう自分に言い聞かせながら、そう遠くない彰人さんの家へと急ぐ。
美人だけど、あんなおっかない人と結婚して、彰人さんは本当に幸せになれるのだろうか。私だったら、一生をかけて彰人さんに尽くす自信があるのに。
と思ってしまうのだが、彰人さんに行ったら鼻で笑われて身の程を知れって言われそうだ。自分だって不釣り合いだっていうのは分かってる。
けど、そんな人生で彰人さんは本当に寂しくないんだろうか?
あの人を一人の世界に閉じ込めてなるものか、強引にでも割り入ってやる。それが恋愛というものでなくても、もう少し人の温かみというものをあの人は感じた方が良い。
……しかし、帰り道が分からない。キョロキョロしながら人の多い方を辿ってきたら、なんと渋谷の街中へ出てしまった。そして私の恰好に「ルリルリっ」と指をさされ、少しずつギャラリーが増えていく。
「ルリルリだー」
「え?何?なんていうレイヤーさん?」
「ぽっちゃり具合、完成度高いねーっ」
「ねぇツイッターやってないの?」
い、いや、えっと、としどろもどろになり、人だかりに囲まれたところで、警察官に所謂職務質問というものをされて交番へ連れて行かれることに。
◇ ◇ ◇
昨日は自宅のでっかなテレビで夜な夜な飲みながら、録画していたとあるSF映画を見た。やっぱり心おきない一人暮らしとは素晴らしいもの。やっと、本物の静寂が帰ってきた気がした。
その日も仕事を終え早々に帰ろうとした矢先、携帯がぶるぶる震え出した。03から始まる、まるで身に覚えのない番号。
「先輩、出ないんすか?」
「……嫌な予感がする、不吉な匂いがぷんぷんする」
「大げさだな、かわりに出てあげましょうか?さっきから鳴りっぱなしじゃないですか」
そう言って、水嶋が電話に出るとスピーカーにして俺のデスクの上に置いた。
『あの、宇田川交番の者ですが、えーあなたの妹さんと言う方が、街中で不審な様子だったのでこちらで保護しまして。肉親はあなただけと言うことで、交番まで迎えに来てくれないかと……』
嫌な予感、見事的中。
「いえ、本当の肉親がいるはずですから。まずそちらを当たって頂いて」
努めて冷静にスピーカーに話す。
『それが、どうしてもあなたの名前しか出さないんです。発言もなかなか要領を得なくて、こっちも困ってしまって』
「なんて言ってるんですか?」
『お兄ちゃんに捨てられて、友達に預けられたら無理矢理服を脱がされてこんな格好をさせられた、と。そして、あくまでも本人曰くですが身も心も犯され傷つけられた、と。これが本当だとすると、監禁罪、強制わいせつ罪もしくは強姦罪が適用されますので署へ連絡して本格的な調査を始めなくてはならないのですが……』
「えぇっ!?」
大事になっており思わず声を荒げる水嶋。俺も呆れて間抜けな返事しかできない。
「はぁ」
『もし、あなたが迎えに来てくれるのなら、全て水に流すと言っているんです。女性警察官が詳細を聞いても、具体的なことは言わず抽象的な発言を繰り返すだけで、なんとも発言自体が怪しく信用性を疑ってしまうというか……。とりあえずお兄さんに迎えに来てもらって事情を教えてもらえたら、と』
そう言われて終わる電話。俺は水嶋の肩に手を置いて、
「よし、水嶋、迎えに行ってこい」
と真剣な面持ちで言う。
「は?こんな話聞いて行ける訳ないじゃないですかっ」
それに対して、慌てて断る水嶋。
「何、簡単だ。自分が兄だと貫き通せばいいだけ」
「仁菜ちゃんが違うって言うに決まってるでしょ、それになんか俺犯罪者扱いされてんのに、そんなとこ行ったら捕まっちゃうかもしれないじゃないですか」
「お前のルリルリに対する気持ちはその程度だったのか?」
「だって、先輩、俺に本物の犯罪者になれと!?」
声を荒げだした水嶋に対し、俺も感情的になって負けじと大声を出す。
「なれよ!?」
「嫌ですよ!」
「何だよ、お前ルリルリ好きだろ、こんな簡単に手離していいのかよ!」
「好きですよ、何より大好きですっ!」
「だったら、早くルリルリを迎えに行って適当に警察納得させてお前の部屋に閉じ込めておけ!」
熱弁する俺に、じとーっとした疑わしい視線を向けられる。
「……先輩、ただ自分の独身生活を邪魔されたくないからって、そんなに躍起になっている訳じゃないですよね?」
「な、何言ってんだ、お前は。そんな訳ないだろ」
「あー、しどろもどろになって、怪しー。それにルリルリって言ったって、本物じゃないし。正体はちんちくりんの子どもだし」
自分のスマホを手に取ると、あ、やっぱり、と意味深なことを言い出す。
「仁菜ちゃん、早く迎えに行ってあげた方がいいですよ、なかなか騒ぎになってるみたいだがら」
そう言って自分のスマホ画面を見せてくる。そこには仁菜があのルリルリのコスプレをして渋谷の街中を歩いている写真が映し出されていた。SNS系は疎いからよく分からないのだが、ツイッターというもので誰かがあげたものらしい。
その写真の下には、青文字で、
♯ルリルリ渋谷に登場 ♯ルリルリ発見
と続かれていた。よく分からなくて水嶋にどういうことか聞くと、
「画像にハッシュタグ付けられて、リツイートされまくってんすよ」
「それってまずいのか」
「まずいも何も、ほら、こんなに広まってる」
そして、たった今、誰かが呟いたものというものを見せてもらう。
ルリルリ捕まってるーwww
ルリルリ交番で尋問されてるwwww
そこには、実兄中継さながらの文言が並ぶ。
「これがトレンドにでも上がったら一躍時の人ですよ。その前に迎えに行って事件を収集させないと」
「いやいや、こんな誰が見てるか分かんない状況で、迎えに行ったら俺まで変人扱いされるだろ」
「しょうがないですよ、あなたが強引に置き去りなんてするから」
「元はと言えば、お前の変態じみた趣味のせいで……」
「え、は、はい」
「お風呂、適当に入っていいから。あれ?ご飯は食べてきたの?」
「あ、はい、彰人さんちで」
「じゃ、俺明日も早いし先に寝るから。じゃ」
なんだか、本当に私自身には興味がないのか、扱いがちょっと適当になる。
結局下のズボンを要求する前に彼は自分の寝室へ入ってしまった。
さっきまでルリルリーと、目の色を変えて自分を持て囃していた人間がこうも変わってしまうのかと思うと、ちょっと寂しくなってしまう。
そのソファーで眠る前はそんな複雑な心境だったものの、図太い私は家主が仕事へ行ったのにも気付かない位そこで爆睡していた。しかも綿製のパンツ丸出しで。
眠い目を擦りながら、時計を見るともうお昼前。
いけない、いけない。ここに長居する訳にはいかないのだ、家主が返ってくる前に彰人さんの家へ戻らなくては。しかし、私の服はどこかに隠されてしまっている。ルリルリの衣装か、この借りたTシャツ一枚で家を出るかという、究極の選択に迫られていた。
それは綿製のパンツ丸出しか、局所は隠れているがビキニ同然の恰好で外に出るか、という選べない選択肢。
ちょっと家主の服を拝借しようかと寝室に浸入を試みるも、しっかり鍵が閉められておりあえなく断念。
私は覚悟を決めて腹をくくることに。私はどっかのコスプレイヤーになりきったつもりで、少し濃い目の化粧をしこっそり家を抜け出した。
視線が痛いがこれは私へ向けられているものではない。ルリルリというコスプレイヤーに向けられているものであって、決して仁菜本人に向けられたものではない。そう自分に言い聞かせながら、そう遠くない彰人さんの家へと急ぐ。
美人だけど、あんなおっかない人と結婚して、彰人さんは本当に幸せになれるのだろうか。私だったら、一生をかけて彰人さんに尽くす自信があるのに。
と思ってしまうのだが、彰人さんに行ったら鼻で笑われて身の程を知れって言われそうだ。自分だって不釣り合いだっていうのは分かってる。
けど、そんな人生で彰人さんは本当に寂しくないんだろうか?
あの人を一人の世界に閉じ込めてなるものか、強引にでも割り入ってやる。それが恋愛というものでなくても、もう少し人の温かみというものをあの人は感じた方が良い。
……しかし、帰り道が分からない。キョロキョロしながら人の多い方を辿ってきたら、なんと渋谷の街中へ出てしまった。そして私の恰好に「ルリルリっ」と指をさされ、少しずつギャラリーが増えていく。
「ルリルリだー」
「え?何?なんていうレイヤーさん?」
「ぽっちゃり具合、完成度高いねーっ」
「ねぇツイッターやってないの?」
い、いや、えっと、としどろもどろになり、人だかりに囲まれたところで、警察官に所謂職務質問というものをされて交番へ連れて行かれることに。
◇ ◇ ◇
昨日は自宅のでっかなテレビで夜な夜な飲みながら、録画していたとあるSF映画を見た。やっぱり心おきない一人暮らしとは素晴らしいもの。やっと、本物の静寂が帰ってきた気がした。
その日も仕事を終え早々に帰ろうとした矢先、携帯がぶるぶる震え出した。03から始まる、まるで身に覚えのない番号。
「先輩、出ないんすか?」
「……嫌な予感がする、不吉な匂いがぷんぷんする」
「大げさだな、かわりに出てあげましょうか?さっきから鳴りっぱなしじゃないですか」
そう言って、水嶋が電話に出るとスピーカーにして俺のデスクの上に置いた。
『あの、宇田川交番の者ですが、えーあなたの妹さんと言う方が、街中で不審な様子だったのでこちらで保護しまして。肉親はあなただけと言うことで、交番まで迎えに来てくれないかと……』
嫌な予感、見事的中。
「いえ、本当の肉親がいるはずですから。まずそちらを当たって頂いて」
努めて冷静にスピーカーに話す。
『それが、どうしてもあなたの名前しか出さないんです。発言もなかなか要領を得なくて、こっちも困ってしまって』
「なんて言ってるんですか?」
『お兄ちゃんに捨てられて、友達に預けられたら無理矢理服を脱がされてこんな格好をさせられた、と。そして、あくまでも本人曰くですが身も心も犯され傷つけられた、と。これが本当だとすると、監禁罪、強制わいせつ罪もしくは強姦罪が適用されますので署へ連絡して本格的な調査を始めなくてはならないのですが……』
「えぇっ!?」
大事になっており思わず声を荒げる水嶋。俺も呆れて間抜けな返事しかできない。
「はぁ」
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そう言われて終わる電話。俺は水嶋の肩に手を置いて、
「よし、水嶋、迎えに行ってこい」
と真剣な面持ちで言う。
「は?こんな話聞いて行ける訳ないじゃないですかっ」
それに対して、慌てて断る水嶋。
「何、簡単だ。自分が兄だと貫き通せばいいだけ」
「仁菜ちゃんが違うって言うに決まってるでしょ、それになんか俺犯罪者扱いされてんのに、そんなとこ行ったら捕まっちゃうかもしれないじゃないですか」
「お前のルリルリに対する気持ちはその程度だったのか?」
「だって、先輩、俺に本物の犯罪者になれと!?」
声を荒げだした水嶋に対し、俺も感情的になって負けじと大声を出す。
「なれよ!?」
「嫌ですよ!」
「何だよ、お前ルリルリ好きだろ、こんな簡単に手離していいのかよ!」
「好きですよ、何より大好きですっ!」
「だったら、早くルリルリを迎えに行って適当に警察納得させてお前の部屋に閉じ込めておけ!」
熱弁する俺に、じとーっとした疑わしい視線を向けられる。
「……先輩、ただ自分の独身生活を邪魔されたくないからって、そんなに躍起になっている訳じゃないですよね?」
「な、何言ってんだ、お前は。そんな訳ないだろ」
「あー、しどろもどろになって、怪しー。それにルリルリって言ったって、本物じゃないし。正体はちんちくりんの子どもだし」
自分のスマホを手に取ると、あ、やっぱり、と意味深なことを言い出す。
「仁菜ちゃん、早く迎えに行ってあげた方がいいですよ、なかなか騒ぎになってるみたいだがら」
そう言って自分のスマホ画面を見せてくる。そこには仁菜があのルリルリのコスプレをして渋谷の街中を歩いている写真が映し出されていた。SNS系は疎いからよく分からないのだが、ツイッターというもので誰かがあげたものらしい。
その写真の下には、青文字で、
♯ルリルリ渋谷に登場 ♯ルリルリ発見
と続かれていた。よく分からなくて水嶋にどういうことか聞くと、
「画像にハッシュタグ付けられて、リツイートされまくってんすよ」
「それってまずいのか」
「まずいも何も、ほら、こんなに広まってる」
そして、たった今、誰かが呟いたものというものを見せてもらう。
ルリルリ捕まってるーwww
ルリルリ交番で尋問されてるwwww
そこには、実兄中継さながらの文言が並ぶ。
「これがトレンドにでも上がったら一躍時の人ですよ。その前に迎えに行って事件を収集させないと」
「いやいや、こんな誰が見てるか分かんない状況で、迎えに行ったら俺まで変人扱いされるだろ」
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