24 / 27
step8 ドレスはピンク色が良いです
置き去りにされた、はむ子
しおりを挟む
「お前そんな理由でちゃんと向き合おうとしなかったのか。幸せになれるに決まってるだろう、俺の自慢の息子だぞ」
「はいはい」
「こんなバカな父ちゃんの息子なのに、誰に似たのか国立の大学出て立派な医者になるなんて。俺の人生は汚点だらけだけど、お前の存在が唯一誇れるところだ」
「……それは、あんたが一生懸命働いてたから」
「あぁ、だからあまりお前に構ってやれなかった。だけどまさかこんな冷たい人間に育つなんて……。本当に仁菜ちゃんから感じ取るものは何もなかったか?」
そう言われて、何も返せなくなってしまった。
その後奴は、どっかのお店の女の子から電話がかかってきて、慌てるようにして帰っていった。
……仁菜から何も感じ取らなかったと言えばウソになる。まぁまず挙げられるのが、うざい、暑い、バカ、というような悪口のオンパレードなのだが。
それでも混じりけのない素直な好意は、だんだん心地良いものに変わっていったような気がする。
だけど、それだけでまた一緒に住むとか付き合うとかは考えられない。
……あいつの残りの荷物とか家具とか少ないけど、早めに家に持ってってもらわないとな。
そう思って仁菜の部屋を見渡すと、ピンクのファンシーな家からつぶらな瞳で見つめてくるネズミがいた。思わず顔がひきつる。
なんでハム子置いてってんだよ、唯一の家族じゃなかったのかよ。
チューチュー鳴くネズミ。なんだこんなに鳴くものなのか、それともお腹が空いて鳴いてるのか。別に放っといても良かったが、ここで死なれても気分が悪い。
仕方なく、仁菜に再び電話することに、
「お前ネズミ置いてってるけど」
『えー?』
何やら電話口から、パチパチと激しい火花のような音がする。
俺の声が聞こえないのか、そう聞き返され、大きな声で尋ねた。
「えー?じゃねぇよ、何してんだよ」
『何って、花火です』
あっちも大声で返してくるもんだから、耳に響いてすかさず携帯を離した。呑気に花火です、と返って来て言葉が少し乱暴になる。
「はぁ?花火ですーじゃねぇよ。てめぇのネズミが腹空かせてチューチューうるせぇんだよ」
『えぇ?なんですかー?』
「……もういいや」
もう大声を出す元気もなくてそのまま切った。
そしてチューチュー鳴くハム子に、声をかける。
「可哀想に、飼い主に見放されて。おいお前は一体何食うんだよ」
そう聞きながら周りを見渡すと餌らしきものを見つけて、ケースの中の餌入れに入れてやった。
「これで良いか?」
そう言ってハム子が餌を食べるのを見守るも、なかなか餌に近づこうとしない。
「食わねぇのかよ、なんだよ餌を入れた人間が違うだけで食わなくなる位お前は繊細な生き物なのか?」
そう聞いたって、チューチュー鳴いているだけで返事は返ってこない。
「しょうがないな」
……一体、何をしているんだろう、俺は。
ピンク色のファンシーなハム子の家を持って。
もう最終手段で、仁菜の家を訪ねることになったのだ。
呑気に花火中だって言う仁菜は電話してもこんな調子だし、メールなんて見ないだろうということで、今さっき帰ったオヤジにメールして住所を聞きだした。
その後、何を勘違いしたのか何回か父親から電話がかかってきたが、聞かれることは分かっているので完全スルー。
その住所を車のナビで検索すると、1時間もかからないところだった。
車で家へ向かうと、近くのコインパーキングに停めてそこからは徒歩で仁菜の家へ向かう。
なかなか古い家が立ち並ぶ住宅街、そこから表札に楠原とある確実に昭和初期に建てられたような木造の家を見つけた。庭には微かに火薬のような匂いが残っている。
さっさとハム子を置いて帰ろうと思って家の古めかしい門をくぐると、縁側から若い女性に声をかけられた。
「あらっ、もしかしてショージさんの息子さん?」
「あ、はい」
「初めましてー、私仁菜の母の梅ちゃんですー」
仁菜との年齢差を考えて若くても30代後半っていったところなのだが、20代にしか見えない若く可愛い母親。
間延びするような声に出迎えられ、戸惑いながらもこれ以上巻き込まれたくなくて要件だけを話した。
「はいはい」
「こんなバカな父ちゃんの息子なのに、誰に似たのか国立の大学出て立派な医者になるなんて。俺の人生は汚点だらけだけど、お前の存在が唯一誇れるところだ」
「……それは、あんたが一生懸命働いてたから」
「あぁ、だからあまりお前に構ってやれなかった。だけどまさかこんな冷たい人間に育つなんて……。本当に仁菜ちゃんから感じ取るものは何もなかったか?」
そう言われて、何も返せなくなってしまった。
その後奴は、どっかのお店の女の子から電話がかかってきて、慌てるようにして帰っていった。
……仁菜から何も感じ取らなかったと言えばウソになる。まぁまず挙げられるのが、うざい、暑い、バカ、というような悪口のオンパレードなのだが。
それでも混じりけのない素直な好意は、だんだん心地良いものに変わっていったような気がする。
だけど、それだけでまた一緒に住むとか付き合うとかは考えられない。
……あいつの残りの荷物とか家具とか少ないけど、早めに家に持ってってもらわないとな。
そう思って仁菜の部屋を見渡すと、ピンクのファンシーな家からつぶらな瞳で見つめてくるネズミがいた。思わず顔がひきつる。
なんでハム子置いてってんだよ、唯一の家族じゃなかったのかよ。
チューチュー鳴くネズミ。なんだこんなに鳴くものなのか、それともお腹が空いて鳴いてるのか。別に放っといても良かったが、ここで死なれても気分が悪い。
仕方なく、仁菜に再び電話することに、
「お前ネズミ置いてってるけど」
『えー?』
何やら電話口から、パチパチと激しい火花のような音がする。
俺の声が聞こえないのか、そう聞き返され、大きな声で尋ねた。
「えー?じゃねぇよ、何してんだよ」
『何って、花火です』
あっちも大声で返してくるもんだから、耳に響いてすかさず携帯を離した。呑気に花火です、と返って来て言葉が少し乱暴になる。
「はぁ?花火ですーじゃねぇよ。てめぇのネズミが腹空かせてチューチューうるせぇんだよ」
『えぇ?なんですかー?』
「……もういいや」
もう大声を出す元気もなくてそのまま切った。
そしてチューチュー鳴くハム子に、声をかける。
「可哀想に、飼い主に見放されて。おいお前は一体何食うんだよ」
そう聞きながら周りを見渡すと餌らしきものを見つけて、ケースの中の餌入れに入れてやった。
「これで良いか?」
そう言ってハム子が餌を食べるのを見守るも、なかなか餌に近づこうとしない。
「食わねぇのかよ、なんだよ餌を入れた人間が違うだけで食わなくなる位お前は繊細な生き物なのか?」
そう聞いたって、チューチュー鳴いているだけで返事は返ってこない。
「しょうがないな」
……一体、何をしているんだろう、俺は。
ピンク色のファンシーなハム子の家を持って。
もう最終手段で、仁菜の家を訪ねることになったのだ。
呑気に花火中だって言う仁菜は電話してもこんな調子だし、メールなんて見ないだろうということで、今さっき帰ったオヤジにメールして住所を聞きだした。
その後、何を勘違いしたのか何回か父親から電話がかかってきたが、聞かれることは分かっているので完全スルー。
その住所を車のナビで検索すると、1時間もかからないところだった。
車で家へ向かうと、近くのコインパーキングに停めてそこからは徒歩で仁菜の家へ向かう。
なかなか古い家が立ち並ぶ住宅街、そこから表札に楠原とある確実に昭和初期に建てられたような木造の家を見つけた。庭には微かに火薬のような匂いが残っている。
さっさとハム子を置いて帰ろうと思って家の古めかしい門をくぐると、縁側から若い女性に声をかけられた。
「あらっ、もしかしてショージさんの息子さん?」
「あ、はい」
「初めましてー、私仁菜の母の梅ちゃんですー」
仁菜との年齢差を考えて若くても30代後半っていったところなのだが、20代にしか見えない若く可愛い母親。
間延びするような声に出迎えられ、戸惑いながらもこれ以上巻き込まれたくなくて要件だけを話した。
0
あなたにおすすめの小説
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ヤンデレ男子の告白を断ってから毎日家の前で待ち伏せされるようになった話
チハヤ
恋愛
「告白の返事を撤回してくれるまで帰らない」と付きまとわれても迷惑なので今日こそ跳ねのけようと思います――。
ヤンデレ男子×他に好きな人がいるヒロインのとある冬の日の出来事。
メリバです。
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる