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62 王太子モフィラクトのひとりごと
しおりを挟む私の婚約者だったヴェレッドが、メルヴェイユ王国第一王子の婚約者になってしまった。
我が国との戦争を目論む隣国メルヴェイユ王国の第二王子を討ち、国民に望まれ王太子となった第一王子の婚約者に。
そしてアカリ嬢が正式に、アルアスラ王国王太子――すなわち私の婚約者になった。
女神と共に隣国メルヴェイユ王国を救った聖剣の乙女だと国内外で評判が高いのが一番の理由。
しかし、それだけだ。
この国の王太子妃となるのに相応しい令嬢は、アカリ嬢の他にたくさんいるだろう。
それに私自身、まだヴェレッドの事が……。
――アカリ嬢とはいずれ婚約破棄しなければ
だが……。
今はそれどころではない。
ヴェレッドがいなくなり、痔が悪化してしまったからだ。
食生活、特に野菜嫌いが原因で幼少の頃から便秘を拗らせて酷い状態の『痔』だった私。
でもヴェレッドが作ってくれる野菜入りお菓子のおかげで痔は改善されていた。
ヴェレッドの作ってくれるお菓子は美味しくて、野菜嫌いな私でも食すことができたから。
それ、なのに……。
ベッドの上でズボンと下着を膝までおろし、お尻を突き出す形でうつ伏せになる。
プルプルと手を震わせながら、座薬をお尻の穴へ。
毎回この瞬間は、どうも緊張してしまう。
もう少しだ。
もう少しで、入りそ――
「こんにちは!モフィラクト王太子殿下!」
元気な声に驚いて、ドアの方へ顔を向けるとアカリ嬢が立っていた。
婚約者だからという理由で、私の部屋へ入る事について国王陛下から許可はされている。
…………されている、が!
――ノックをしろノックぉぉおおお!!
声にならない声で叫ぶと、パタンとドアを閉めてこちらへ歩いてくるアカリ嬢。
呆気にとられる私の手から薬を奪うと、お尻の穴にニュルンと入れ、そばにあった塗り薬までクリュクリュと塗ってくれた。
「はい、おしまい」
下着とズボンを上げられて、腰を軽くポンポンとされた。
なんだか幼い頃のヴェレッドを思い出す。
アカリ嬢は私の情けない姿を見ても幻滅しないのか――
完璧な私じゃなくても……
「……アカリ嬢、明日も薬を入れにきてくれないか」
「いいですよ~」
アカリ嬢のふわふわした笑顔に、なぜか少し癒された。
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