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誕生日のプレゼント
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なんだかお店の開店祝いみたい……。
相澤さんとの買い物を終えてマンションに戻ると、荷物が山のように届いていた。
その多くは、花束やアレンジメント。
あとは、大小様々な大きさの箱。
「ごめん、花さん。ちょっと花束を解くのを手伝って欲しい」
たしかに、花束は早めに花瓶に移し替えなければ。
でも、男性の一人暮らしって、花瓶とか持ってたりするのかな。
「相澤さん、この家に花瓶ってあるんですか?」
「前もこんな感じだったから、その時に花瓶買った。たぶん足りると思う」
前も……?
花束にすぐそれと分かるようなメッセージカードが添えられていたので、見ようと思わなくても目に入ってしまった。
『お誕生日おめでとうございます』
『ハッピーバースデー!』
『お誕生日おめでとう♡』
『29才も幸せな年になりますように』
これって、もしかして……。
「相澤さんって、今日が誕生日だったりするんですか?」
「そう、今日で29になった」
そっかぁ、私と6学年差なんだ。
って、そうじゃなくて!
「誕生日なら、きちんとお祝いしたかった……」
夕食なんて、二人とも今まで行ったことがないという理由で、牛丼屋で済ませてしまった。
知っていれば、プレゼントとか用意したのに。
そりゃぁ、高価な物は買えないけど。
「気にしなくて大丈夫だよ。めでたいっていう歳でもないしね」
おどけたように相澤さんは肩をすくめる。
そしてすぐそばにある荷物を開け、何やらメモして、終わったらまた次の箱を開け……と忙しい。
お礼するだけでも大変そう。
会社にも届いてるって、秘書の方から連絡があったみたい。
会社へ届いた分は、秘書の方が返礼しておいてくれるって。
「仕事に行っていたら誘いを断るのが大変だから、休みを取って正解だった」
日本に来て1年目は社内だけでなく取引先、さらには会社の近くの店員さんやら業者さんなどから何かと誘いが多く、断るのが申し訳なくて昨年から誕生日には休みをとることにしたらしい。
たぶん、お誘いって女性からじゃないですか、相澤さん?
プレゼントもほとんど女性からですよ。
よくよく聞いたら、日本に来た時に会社で入れ替わり立ち代わり、手続きのために必要だからって女性から個人情報を聞かれたんだって。
手続きに必要ならと思い、頼まれるたびに似たような書類を何枚も書いちゃったみたい。
「最初の年はよく分からなくて、油断してた」
私がここに住んでて、その女性たちみんな悲しがりませんかね?
相澤さんは話しながら、今度はローテーブルに置いたノートパソコンの前に座って何やら入力している。
花束の方がひと段落したので、相澤さんに声をかけた。
「何か他にできることありませんか?」
パソコンから顔を上げた相澤さんが、こちらを見て柔らかく微笑む。
「ありがとう、隣に座って、伝票を読みあげてくれると助かる」
言われたとおりに、彼の隣で正座して、伝票に書かれた送り主の情報と、相澤さんが伝票にメモしておいたプレゼントの内容を読み上げる。
たくさんあって、相澤さん本当に大変だなぁ。
いつの間にかハナコが、あぐらで座る相澤さんの足の上で丸くなって寝ていた。
「ふぅ、これで終わりだ。手伝ってくれてありがとう」
「相澤さん、お疲れさまでした」
相澤さんが、私の顔を覗き込むように見つめてくる。
その角度で見られると……なんだか、ドキドキします。
ふぅ……この部屋暑いのかな。少し顔が熱い。
「花さん……今年の誕生日は、一緒にゆっくり過ごせて嬉しかった。ありがとう」
「ゆっくりはできたけど、誕生日らしいことしてませんよ。結局今日だって私が買ってもらってばっかりで」
そうなのだ、ちょうど買い替えるタイミングだったからと言って、お箸、お茶碗、マグカップを色違いのペアで買ってもらってしまった。
しかも、連絡が取れないと不便だからという理由で、相澤さんと同じ機種のスマホまでプレゼントされている。
これじゃまるで、私の誕生日みたいじゃないですか。
「それなら、誕生日プレゼントに昨日のマッサージの続き、してもらおうかな」
「それじゃ昨日と同じで、特別感がないじゃないですか。ダメです」
「え? してくれないの?」
ん? 相澤さんがワンコ顔でしょげてる?
「しますよ。でもそれは誕生日とは別です」
そう言うと、相澤さんは何故か「今日は油断しないから」と言って嬉しそうにフッと笑った。
「誕生日は、もっと特別だと思います」
「特別、ねぇ」
私の言葉を復唱して、相澤さんは腕を組んで天井のあたりを見つめ思案顔。
「そしたら、さ」
ふいに、相澤さんがじっと見つめてくるものだから、心臓がピクリと跳ねる。
「名前で呼んで」
「名前で……?」
「うん、名前で」
なんだ、相澤さん、そんなの、全然特別なことじゃないです。
名前で呼ぶだけなんて……
…………………………
……? あれ?
何故か心臓まで緊張してドッドッドっと鼓動が早くなるのを感じた。
「創一郎……さん?」
「花」
私の名前を呼んで、目尻を下げて微笑む。
大好きな、優しい笑顔。
「創一郎、さん。お誕生日、おめでとうございます」
「花、ありがとう」
相澤さんは照れくさそうに、頬をほんの少し赤くして笑った。
「生まれてきて、一番嬉しい誕生日だ」
うわぁ、その笑顔、好き、可愛い、大好き……。
自分でも分からないうちに隣に座る彼の腕を、きゅぅっと抱きしめていた。
相澤さんとの買い物を終えてマンションに戻ると、荷物が山のように届いていた。
その多くは、花束やアレンジメント。
あとは、大小様々な大きさの箱。
「ごめん、花さん。ちょっと花束を解くのを手伝って欲しい」
たしかに、花束は早めに花瓶に移し替えなければ。
でも、男性の一人暮らしって、花瓶とか持ってたりするのかな。
「相澤さん、この家に花瓶ってあるんですか?」
「前もこんな感じだったから、その時に花瓶買った。たぶん足りると思う」
前も……?
花束にすぐそれと分かるようなメッセージカードが添えられていたので、見ようと思わなくても目に入ってしまった。
『お誕生日おめでとうございます』
『ハッピーバースデー!』
『お誕生日おめでとう♡』
『29才も幸せな年になりますように』
これって、もしかして……。
「相澤さんって、今日が誕生日だったりするんですか?」
「そう、今日で29になった」
そっかぁ、私と6学年差なんだ。
って、そうじゃなくて!
「誕生日なら、きちんとお祝いしたかった……」
夕食なんて、二人とも今まで行ったことがないという理由で、牛丼屋で済ませてしまった。
知っていれば、プレゼントとか用意したのに。
そりゃぁ、高価な物は買えないけど。
「気にしなくて大丈夫だよ。めでたいっていう歳でもないしね」
おどけたように相澤さんは肩をすくめる。
そしてすぐそばにある荷物を開け、何やらメモして、終わったらまた次の箱を開け……と忙しい。
お礼するだけでも大変そう。
会社にも届いてるって、秘書の方から連絡があったみたい。
会社へ届いた分は、秘書の方が返礼しておいてくれるって。
「仕事に行っていたら誘いを断るのが大変だから、休みを取って正解だった」
日本に来て1年目は社内だけでなく取引先、さらには会社の近くの店員さんやら業者さんなどから何かと誘いが多く、断るのが申し訳なくて昨年から誕生日には休みをとることにしたらしい。
たぶん、お誘いって女性からじゃないですか、相澤さん?
プレゼントもほとんど女性からですよ。
よくよく聞いたら、日本に来た時に会社で入れ替わり立ち代わり、手続きのために必要だからって女性から個人情報を聞かれたんだって。
手続きに必要ならと思い、頼まれるたびに似たような書類を何枚も書いちゃったみたい。
「最初の年はよく分からなくて、油断してた」
私がここに住んでて、その女性たちみんな悲しがりませんかね?
相澤さんは話しながら、今度はローテーブルに置いたノートパソコンの前に座って何やら入力している。
花束の方がひと段落したので、相澤さんに声をかけた。
「何か他にできることありませんか?」
パソコンから顔を上げた相澤さんが、こちらを見て柔らかく微笑む。
「ありがとう、隣に座って、伝票を読みあげてくれると助かる」
言われたとおりに、彼の隣で正座して、伝票に書かれた送り主の情報と、相澤さんが伝票にメモしておいたプレゼントの内容を読み上げる。
たくさんあって、相澤さん本当に大変だなぁ。
いつの間にかハナコが、あぐらで座る相澤さんの足の上で丸くなって寝ていた。
「ふぅ、これで終わりだ。手伝ってくれてありがとう」
「相澤さん、お疲れさまでした」
相澤さんが、私の顔を覗き込むように見つめてくる。
その角度で見られると……なんだか、ドキドキします。
ふぅ……この部屋暑いのかな。少し顔が熱い。
「花さん……今年の誕生日は、一緒にゆっくり過ごせて嬉しかった。ありがとう」
「ゆっくりはできたけど、誕生日らしいことしてませんよ。結局今日だって私が買ってもらってばっかりで」
そうなのだ、ちょうど買い替えるタイミングだったからと言って、お箸、お茶碗、マグカップを色違いのペアで買ってもらってしまった。
しかも、連絡が取れないと不便だからという理由で、相澤さんと同じ機種のスマホまでプレゼントされている。
これじゃまるで、私の誕生日みたいじゃないですか。
「それなら、誕生日プレゼントに昨日のマッサージの続き、してもらおうかな」
「それじゃ昨日と同じで、特別感がないじゃないですか。ダメです」
「え? してくれないの?」
ん? 相澤さんがワンコ顔でしょげてる?
「しますよ。でもそれは誕生日とは別です」
そう言うと、相澤さんは何故か「今日は油断しないから」と言って嬉しそうにフッと笑った。
「誕生日は、もっと特別だと思います」
「特別、ねぇ」
私の言葉を復唱して、相澤さんは腕を組んで天井のあたりを見つめ思案顔。
「そしたら、さ」
ふいに、相澤さんがじっと見つめてくるものだから、心臓がピクリと跳ねる。
「名前で呼んで」
「名前で……?」
「うん、名前で」
なんだ、相澤さん、そんなの、全然特別なことじゃないです。
名前で呼ぶだけなんて……
…………………………
……? あれ?
何故か心臓まで緊張してドッドッドっと鼓動が早くなるのを感じた。
「創一郎……さん?」
「花」
私の名前を呼んで、目尻を下げて微笑む。
大好きな、優しい笑顔。
「創一郎、さん。お誕生日、おめでとうございます」
「花、ありがとう」
相澤さんは照れくさそうに、頬をほんの少し赤くして笑った。
「生まれてきて、一番嬉しい誕生日だ」
うわぁ、その笑顔、好き、可愛い、大好き……。
自分でも分からないうちに隣に座る彼の腕を、きゅぅっと抱きしめていた。
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