【R18】婚約破棄予定の御曹司に溺愛調教される無自覚ドSな同居生活でお試し中です

弓はあと

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月に一度のお客様

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 お腹、痛いなぁ……。

 生理痛の痛みが和らぐのを期待して、右手で腰の辺りをさする。
 痛いのはお腹なのに、腰をさすると少し楽になるから不思議。

 痛み止めの薬、買っておけばよかった。

「腰、痛い?」
「ひゃッ」

 突然話しかけられたので、左手に持っていた洗ったばかりのお皿を落としてしまいそうになる。
 創一郎さんが自分の使った湯呑を持って、いつの間にかすぐ後ろに立っていた。
 ここのキッチンは、流しもコンロも壁向きだから、近くに来るまで気がつかないことが多い。

 今日は仕事で帰りが遅く、温め直した夕食を食べ終えたばかりで、まだワイシャツにネクタイ姿の創一郎さん。
 私はもう、パジャマ代わりのスウェット姿。

 ……生理になったからモニターの件どうすればいいか相談したいけど、なんて切り出したらいいのか分からない。

「腰、痛いの?」

 流しに湯呑を置きながら、彼が先ほどの言葉を繰り返す。

 生理って伝えるのは、やっぱりなんだか恥ずかしい……。

「は、はい。少しだけ……」

 創一郎さんはキッチンの端にある引き出しを開けた。

「薬関係、ここにあるから自由に使っていいよ」

 お言葉に甘えて、ちょっと覗かせてもらう。『生理痛』に効きそうな痛み止めがあるかと期待したが、パッと見てそれと分かる物は無さそう……。
 あ、でも頭痛薬がある。これなら生理痛にも効くかも。

「あー、でも湿布は無いなぁ」

 残念そうに彼が呟いた。
 完全に腰痛だと思われているらしい。

「湿布ってスースーして痛みが楽になることあるよね。コンビニにあるかな。ちょっと行ってくる」

 創一郎さんがキッチンを出ていこうとする。
 え、私のためにわざわざ? もう遅い時間ですけど。
 気がついたら、咄嗟に彼の腕を摑んでいた。

「だ、大丈夫です。経験上、冷やすより温める方が楽になるって分かっているので」
「そう……」

 創一郎さんが少し考えこむように視線を下げる。

「カイロならあったと思うけど、それだと熱すぎるよね。どうしようかな……」

 創一郎さんは、時々びっくりするような提案を思いつくけど、今回は大丈夫かな……。
 閃いた、という感じで創一郎さんが突然顔を上げたので、思わず身構えてしまった。
 
「花、もう歯は磨いた?」
「へ? あ、はい……」

 む、歯磨き確認って、子どもじゃないんですから。

「寝る前のトイレにも行った?」

 うー、絶対子ども扱いしてる……。

「……はい」
「よし、じゃあ行こう」

 彼はヒョイと私をお姫様抱っこして廊下に出た。
 え、行くってどこへ?

「ま、まだ洗い物が……」
「後は俺がやっておくから」

 創一郎さんは私を抱っこしたままスタスタと廊下を歩き、寝室のドアを開け、そっと私をベッドに寝かせた。
 そしてベッド下の引き出しから掛け布団を取り出し、私の身体を包むようにふわりとかける。

 お、お姫様抱っこされた……。

 重くなかったかな? 私、変な顔していなかったかな? なんて頭の中でグルグル考えてしまう。

「布団から出ちゃダメ。もう寝て」
「あ、でも、モニターの『ろぉたぁ』試さないと……」
 
 恥ずかしいけど、自分で使って下着の上から、とかなら、大丈夫かな?
 とにかく試してみて、少しでも創一郎さんの役に立たないと。
 
「創一郎さんがお風呂入っている間に自分で使ってみます。創一郎さんの貴重な時間がもったいないので、もう行ってください」
「花の身体より、貴重な時間なんて無い。もう寝ろ」

 頬を、ぷにゅぅと掴まれて怒られた。
 目は本気で怒ってそうだけど……頬は全然、痛くない。

「念のため明日は仕事を休んで、病院へ行きな。仕事の方は勇太に連絡しておくから、心配しないで」

 え、あ、あの、病院、行かなくて大丈夫です。生理痛、なので。
 病院に行くほど痛みが重い体質でもないですし。市販薬があれば乗り越えられるくらいの痛さ。
 ……やっぱり、モニターのこともあるし、毎月のことだからきちんと伝えた方がいいよ、ね。

「創一郎さん、私、腰痛じゃなくて、あ、あの……えと……月のもの、で……」

 それを聞いた創一郎さんの顔が、あぁ、と何かに気づいたような表情になる。

「それなら、明日からは家でもズボンを穿いて、温かくするように」

 優しく頭をポンポンとされた。

「痛いところとか、ある?」

 布団の上に軽く手を添えて、創一郎さんが尋ねる。
 誰かがそばにいる、という安心感が、布団にのせられた彼の手の僅かな重みから感じられた。

「お腹は少し痛いですけど、時間が経てば治るものなので、大丈夫です」

 創一郎さんに背中を向けて横向きになり、膝を抱えて体を『く』の字にする。
 こうしていれば生理の鈍痛も幾分まし。あとは、痛みが過ぎるのをひたすら待てばいい。
 
 薬がない時はいつもそうしている。今回だって同じことだ。
 小さくうずくまって、ひたすら我慢して過ごせば大丈夫。
 
 目をぎゅっと閉じる。痛みでなかなか寝付くことができないのは分かっているけれど。

 ギシッ、とベッドが少し沈み込んだ。

「ごめん、花、ちょっと触るよ」

 少し掠れた声がしたかと思うと、創一郎さんがおもむろに布団の中へ手を入れてくる。

「なっ? 創一郎さん?」

 たじろいで声がうわずる私のことなどお構いなしに、彼は手のひらを私の腰の辺りにあてると、ぐぐぅっと軽く力を加えてさすった。

 ……あ、気持ちい、い……。

 ぐぐぅっと少し押されるような動きがもう一度繰り返される。
 変に指先を身体に触れることなく、手のひらだけで押されるのが心地いい。

「さっきここ、さすってたよね。どうだろ、楽になるかな? 嫌だったら、すぐ止めるから言って」

 遠慮気味な声で、彼がつぶやく。

「……大丈夫、です」

 痛みで強張っていた自分の身体が、少しずつほぐれていくのを感じる。

 むしろ、止めないで欲しい……。

 ゆったりとした一定のリズムで、彼の手が腰を動くたびに、身体から力が抜けていく。
 男性に身体を撫で回されているというのに、変にいやらしくないのはどうしてだろう。

 創一郎さんも、仕事で疲れているはずなのに…。

 彼の手の温もりに癒されながら、吸い込まれるように眠りに落ちていった。

 
 カーテンの端から薄く漏れてきた日の明かりで目が覚めると、お腹の辺りがなんだか温かい。
 布団をめくって確認する。
 まるで私のお腹を温めるように置かれている、大きな手。

 ……、手?

 くるんと寝返りして、反対を向く。
 そこにいたのは、片手だけ布団に差し込んだまま、ベッドにもたれかかるように眠る創一郎さん。

 服装は、ワイシャツに少し緩めた昨日と同じネクタイ。

 え? 昨日あのまま寝ちゃったの?
 いったいいつまで私の看病していたの?

「……ん、ああ、花。お腹、大丈夫?……ん? あ、俺、寝ちゃったんだ。シャワー、浴びてくる」

 そう言うと、創一郎さんは私の頬にキスして部屋を出て行った。
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