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ラブコメ短編バージョン(※長編版とは展開が異なります)
唇
「ん……」
殿下とキスをしたのは、これで二度目。
一度目は私たちの結婚式の時。
それ以来のキス。
結婚式の時は、向かい合わせに立つ殿下がそっと私の肩に触れ、唇同士がチュッと軽く重なるだけのキスだった。
幸せすぎてドキドキしたから長く感じられたけど、実際にはほんの一瞬の出来事だったはず。
でも今しているキスは、違う。
殿下にうしろから抱きしめられ、私は殿下の方へ振り返るように左を向かされ唇を奪われている。
お互いの唇が触れてから、もうどのくらい時間が過ぎているのだろう。
唇の柔らかい感触を教え込まれるような、長いキス。
殿下とキスをしているのだと意識させられて、顔が熱くなってくる。
口を閉じたままだから、息ができなくて苦しい。
唇を離すために頭を動かそうとしたのに。
胸までふわりと伸びる私の亜麻色の髪の根元へ指を差し込んだ殿下に、頭を固定されてしまって動けない。
苦しくて、もう、限界……。
そう思った時に、ようやく殿下の唇が離れていった。
ぷはッと息をして、新鮮な空気を取り込む。
髪の根元から移動した殿下の左手が、私の右頬をスルリと撫でた。
「ミーネ……」
切なそうに眉を寄せた殿下の、青い瞳が微かに潤んでいる。
こんな殿下の表情、初めて。
憂いを帯びて、なんとも言えない色気を醸し出していて。
思わずポーッと見入ってしまう。
「本当は、幼馴染のネイブルと結婚したかったのか?」
少し掠れた、殿下の声。
「そ、ン……」
そんな事はありません、と言おうとした私の唇に、頬を撫でていた殿下の左手の親指がフニ、と触れた。
「そうだという返事を聞くのは、ごめんやっぱりつらい」
ふにふにと唇を揺さぶられる。
「柔らかいな、ミーネの唇は」
「っ……」
先ほどのキスの感触を思い出してしまい、なんだか恥ずかしい。
「ミーネ、これから言う俺の質問に答えて」
ふにふに触られているのは唇なのに、不思議と身体の奥の方がくすぐったい。
「ネイブルのことをどんな男だと思う?」
どんな、男……?
幼馴染だったネイブルと、小さな頃はよく一緒に遊んでたびたび喧嘩もした。
室内で私が遊びたい時も、外で遊ぼうと言って強引に連れ回されることが多かったから。
さすがに大きくなってからは一緒に遊ぶこともなくなり、喧嘩なんて一度もしていないけれど。
小さな頃の印象は、強く記憶に残っている。
殿下の親指が、私の唇からパッと離された。
質問に答えて、ということかしら。
「ええと、ちょっと強引なところがありますね……」
「ふぅん……ちょっと強引な、ね……」
あれ?
再び殿下から、どす黒いオーラを感じるのは、気のせい?
私の右頬を撫でながら、殿下がにっこりと微笑んだ。
見惚れてしまうくらい、麗しい笑顔。
でも、笑顔なのに笑っているように見えないのは、なぜ?
「では俺も、ミーネの望み通りの男になってやろう」
「んッ!」
右頬から離れた手で後頭部を支えられるのと同時に与えられた、記憶に新しい殿下の唇の感触。
ふわっっ
まさか今日だけで、2回もキスをすることになるなんてっっ
ん?
んん??
ムんン!?
何か、入ってきた!?
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