最強の剣聖を祖父にもつ孫が最強の魔法士だった件。

松川よづく

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1.学園入学編

ホロリア家のプライド

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「そ、それは本当ですか……」

母さんは少し放心状態ながらも、あまりに現実味のない出来事に鑑定士に真かと問う。

「はい、今まで私は何千人という規模の方々を見てきました。その全員水晶に現れた結果は何一つ嘘偽りは御座いません。成人の儀を成され導き出されたその結果はいずれも違っておらず、ちゃんと能力として正常に現れております」

「そう…ですか…」

母さんは考え込むように瞼をスッと閉じる。
何を思い考えているのかは分からない。だけどきっと僕の将来について必死に考えてくれているのだろう。

「僕が…魔法士ランク《幻級》…」
「はい、私もこの歴史的瞬間を拝められたことをミルミ様に感謝しなければなりません」

鑑定士は先ほどまでの震えを止まらせ、慇懃にお辞儀をしてくる。
だが今の僕にはそれを返す余裕はない。

「剣士よりも魔法士の方が向いているということか…」

僕は正直複雑な気分なのだ。魔法士の才能ランクが《幻級》であることは確かに嬉しい。でも大好きな剣よりも劣っていると思うとどこか悲しい。

《幻級》という普通なら恵まれたその才能を持っているにもかかわらず素直に喜べない僕は罪深い人なのだろうか。

「そんなことありませんよ」
「えっ?」

母さんは今日一番の真面目顔で否定する。
その表情からは〝そんなことない〟が慰めからくるものではなく、本気で違うといっているのがわかる。

「確かに才能は魔法士が上かも知れません。ですが才能が剣士より優れているからといってミルミが抱く剣への想いは変わらないでしょ?」
「はい、」
「でしたら良いのですよ。たとえ魔法士の方が上だったとしてもあなたが思い信じる剣を続ければいいわ。つまり気にするな・・・・・ってことよ」

確かにそうだ、僕は何を悲しがっていたのだろうか。
魔法士の才能がどれだけあったとしても僕は剣士をやめるつもりはない。
だって剣への愛はそんなちっぽけな・・・・・理由で無くなりはしませんから!

「ありがとう母さん!僕吹っ切れたよっ!」
「そう、それは良かったわ」

母さんは優しい微笑みで優しく僕の頭を撫でる。
鑑定士の方もどこか微笑ましい表情をしていた。

「それはそうと鑑定士さん?」
「はい、何でしょうか」
「剣士のランクは別に構いませんが結明書を書くときは魔法士のランクを下げていただくことはできませんか?」

結明書とは成人の儀によって導き出された結果を書記するものだ。
結明書は絶対不変のはず、書き直すことも変更することもできない。であれば何故母さんはランクを下げろとなど……

「いい?ミルミ。あなたの魔法士が剣士の才能より上であることを表立って公表することはできないの」
「?」

どういうことだ?歴史上二人しかいなかった《幻級》が出現したのになぜ?

「これはお家の問題よ。剣のみで築き上げてきた今までの地位があなたによって壊されかねないのよ」

「それは母さんは僕よりお家の方が大事だとでも言いたいの?」
「違うわ。この問題は私一人ではどうにも出来ないのよ。私が認めても周りが認めない。運が悪ければあなたは殺されかねない」
「僕は剣が好きです!それをみんなに知ってもらえれば────」

僕は必死に母さんに抗議をする。
僕が誰よりも剣を愛しているとみんなに知ってもらえれば許容してくれるかも知れない。そう訴えるが返ってくる答えは決して許してくれなかった。

「駄目よ、ミルミがどれだけ言ってもあの人たち・・・・・は結果が大事なの。それほどまでにプライドが高くて剣が魔法士に負けていることが許せないのよ」
「そ、そんなぁ…」

僕は肩を落とす。
もしかすると剣聖を輩出したことにより、より魔法士に対して厳しくなったのだろう。
だけどおじいちゃんがいてもいなくてもおそらく何も変わらなかったと思う。

剣のみで築き上げてきた。その言葉は良い風に聞こえるが、今の僕にとってはあまり誇らしくない。

「鑑定士さん、よろしくね?」
「はい、仰せのままに…」

すると鑑定士はロープの中をまさぐり、一枚の紙を取り出す。

「『記す、ミルミ・ホロリアの名の下に絶対の才をここに明をする。剣を極め魔をあらゆる幻にし体現させるその力を今ここに示さん』」

汚れひとつない純白の紙が黒い線で埋まっていく。
そこには僕の名前、そして剣士ランク《 極 》、魔法士ランク《下級》であることが記載されていた。

「スグハ様、終わりました」
「ご苦労様。」

母さんは事を終えた鑑定士に僕のランクが書かれた紙を受け取りながら労いの言葉をかける。

僕はその間も心がモヤモヤと霧がかったようにどこか苦しかった。

「これにて成人の儀は終了となります。ミルミ様、スグハ様、お疲れ様でした」
「お疲れ様、ミルミ、行きましょうか」
「……」


それからもモヤモヤが晴れることなく日々を過ごし、剣の鍛錬以外何もすることなく学園入学までの日数が過ぎていった。







「どうしたの?浮かない顔をして」
「何でもないよ」

住んでいる家の近くの庭で素振りをしていると、1000回目を超えるあたりで母さんが話しかけてきた。

「そんなことないでしょ?」
「別に何もないって、ほっといてよ」

僕は少し母さんを突き飛ばす。
だけど母さんは帰ることなく未だ僕に話しかけてきた。

「成人の儀からずっとムスッとした顔をしてるわよ、ミ・ル・ミ?」
「───っ!?」

だからそんなに顔を近づけないで!
母さんなのに生みの親であるはずなのに、心臓がドキドキしてしまうからぁ!

「はぁ、まあいいわ。ミルミが言わないなら私から言ってあげる。気にしているんでしょ?ホロリア家のこと」
「……」

僕は答えない。
母さんは僕から目線を外し、腕を後ろで組みながら黄昏るように空を見据えた。

「気にしすぎなのよミルミは。知ってる?あなたはまだ14歳なのよ?人生は一度しかないのだからいちいち大人の事情を気にする必要なんて無いわよ」
「そう、なのかな…」
「そうよっ」

母さんはハツラツに僕の言葉を肯定し、目線を向き直した。
振り向きざま甘い香りがしたのは気のせいだろう。

「もうすぐ学園もあるのだからシャキッとしてなさいっ!シャキッと!仮にもミルミは剣士ランク《 極 》で魔法士ランク《幻級》なのよ?滅多なこと起きない限り大丈夫よ」
「……」

すると母さんは後ろに回り、ギュッと優しく抱きしめた。

「やるならばとことんやりなさい。あなたが考え思った事を諦めずやり続ければきっと実になって落ちてくるわ」
「うん、そうだね。僕は少し考え過ぎてたみたい」


僕の事を誰よりも想ってくれて誰よりも愛してくれる。
そんな母さんが好きだ。

父さんは物心つく前に死んじゃったからよく覚えてないけど、きっと強くて逞しくて優しい人だったと思う。

そして最強のおじいちゃん。僕はおじいちゃんがとても好きだ。
おじいちゃんは過去の自身が犯した罪を繰り返さないように努力している。つまり家族のために身を削ってるってこと。

僕はそんな優しい家族に恵まれて本当に良かった。
この先色々な壁にぶち当たって泣きそうになってもこの優しい両親やおじいちゃんを想い出せば乗り越えていける気がする。


「うん、そんな気がする…」

僕は今この時この瞬間の幸福な気持ちに打ちひしがれていたが、母さんは思い詰めた表情で浮かない顔をしていた。
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