悪役令嬢で物語を進めたら、全ての攻略ルートを辿ってしまいました。~悪役令嬢は第二王子とXXXする~

無月公主

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第一幕【二度目の命の幕開け】

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部屋の外から聞こえてくるメイドたちのひそひそ声。

「お嬢様、頭を打ってから様子が少し変わられたようですね……」
「そうね、でももしかしたらこれを機に優しくなられるかも……」

その言葉を聞いた瞬間、翠子は顔をしかめた。頭を打っておかしくなった、なんて言われているらしい。これでは余計に疑われるかもしれない、と少し不安がよぎる。

「とりあえず、落ち着こう……」

翠子は意を決してベッド脇に置かれた大きな姿見の前に立った。そして鏡に映る自分を見て、驚きの声をあげた。

「な、なによこれ……?」

鏡の中には、見知らぬ美少女が立っていた。ワインレッドの美しい髪が緩くウェーブを描き、艶やかに光を反射している。翠子は信じられない思いで、その髪を引っ張ってみた。

「ウィッグじゃないわよね……本当に私の髪?」

さらに、紫色に輝く瞳がまるで宝石のように煌めいている。16歳の少女とは思えないほど、顔立ちは整っており、体つきも驚くほど華奢でしなやかだ。

「これは……嘘でしょ……」

言葉を失いながらも、翠子は頭の中で現実を整理しようと必死だった。
そうだ、記憶の中にあったあの名前──イヴェンティア。ロマンスは劇的に──略して“ロマ劇”の悪役令嬢。

「私が……イヴェンティアに転生した……?」

部屋の中を歩き回りながら、翠子は自分の新しい姿を手で触り確かめる。そしてため息をついた。

「悪役令嬢に転生なんて、有名な話っちゃ話だけど……本当にこんなことが起こるなんて……」

少しずつ現実を受け入れつつある翠子だが、心の中にはまだ混乱が残っている。そして、ふと気づいてしまった。

「ってことは……私、死んじゃったのね……」

ぽつりと呟いた瞬間、翠子の胸に深い喪失感が広がった。自分の人生はたいしたものではなかったかもしれない。でも、両親の悲しむ顔が浮かぶと胸が締めつけられる。

「お母さん、お父さん……ごめんね……。恋人はいなかったけど、残してきたものが多すぎるわ……」

翠子はベッドに腰掛け、しばらくぼんやりとしたまま考え込んでいた。
「それで、どうすればいいのかしら……」

現代によくある小説や漫画みたいに、チート能力でも使えばなんとかなるのだろうか。それとも“悪役令嬢”から逆ハーレムを作るような展開に持っていくべき?そんなことを考えていると、突如、目の前に光が差し込んだ。

「な、なに!?」

翠子の目の前に、透明なスクリーンが現れた。まるでスマートフォンの画面のように光を放っている。

【あなたはロマンスは劇的にの悪役令嬢に転生しました。】

「わ、わかってるわよ、それくらい!」

翠子は思わずスクリーンに向かって叫んだ。だが、スクリーンにはさらなる言葉が続いていく。

【あなたは、この物語のヒロインで、読者がついています。】

「ヒロイン……?いやいや、私は悪役令嬢でしょう?」

翠子が困惑する間もなく、スクリーンの文字はさらに続く。

【物語を好きに作り替えていただいて結構です。ですが、読者を楽しませられるようなハッピーエンドを迎えてください。】

「はぁ!?ハッピーエンドってどういうことよ!」

翠子は立ち上がり、スクリーンを指差して抗議するように叫んだ。そのとき、さらに衝撃的な一文が表示された。

【1円でも収益が出せなければ、あなたの命は即終了です。】

「な、なによこれ~~~~~~~~~!!!」

翠子の叫び声が部屋に響き渡った。

ふと、遠くから廊下を走る足音が聞こえた。その音は次第に近づき、そして扉が勢いよく開かれた。

「お、大きな声が聞こえて……」

現れたのは弟のイヴェルだった。彼はまだ真っ青な顔をして、恐る恐るこちらを伺っている。扉を開けたまま、まるで一歩でも中に入ると危険だと感じているかのような怯えた態度だ。

翠子はそんな彼を見て、胸が締めつけられるような思いを感じた。

「あ……ごめんなさいね、イヴェル。なんでもないの。それより、本当に今までごめんなさいね……」

思わず心からの謝罪を口にする。だが、イヴェルの表情は変わらないどころか、さらに強張りを見せた。そして、言葉を発する間もなく、彼はバンッと扉を閉めてしまった。

「……そりゃ、怖いよね……」

翠子は苦笑いを浮かべ、再びベッドに倒れ込む。柔らかな布団が背中を受け止めてくれるが、その心の重みは全く取れない。

ーーイヴェルがこの屋敷に来てからの1年間、私はずっと彼をいじめてばかりだった。

目を閉じると、脳裏に浮かぶのはイヴェルの泣き顔や怯えた表情。どれも昨日までの記憶のように鮮明だ。

「私じゃない……はずなのに……」

翠子は額に手を当てて、深いため息をついた。だが、それはあくまでこの体の“イヴェンティア”がしたことで、翠子自身が手を下したわけではない。それなのに、この体に残った記憶や感情がまるで自分の罪のように感じられる。

「……私はもう翠子じゃない……私はイヴェンティアだ」

その言葉を呟くたびに、胸の奥が締めつけられる。翠子としての人生を失っただけでなく、今は悪役令嬢として、イヴェンティアの罪と過去を背負わなければならない。それも、自分の命がかかっているという状況で。

「あのスクリーン……」

翠子は思い出す。先ほど現れたスクリーンの言葉。あれはただの幻覚なんかではない。おそらく、この世界を操る“神”のような存在が自分に課した試練だろう。

「読者を楽しませる?読む側だった私が……どうすればいいのよ……」

翠子は腕で目元を覆いながら、再び深いため息をついた。自分が読者だった頃は、物語をただ楽しむだけで良かった。しかし、今はその“楽しませる側”にならなければならない。
それが自分の命を守るための条件だというのなら、なおさら無理だと感じる。

「……無理よ……そんなの……」

翠子はぐるぐると考え続けるが、結論は出ない。頭を抱えたまま、ふと、自分の中にぽつりと湧き上がる焦燥感に気づく。

「……あー!もう!」

叫ぶように声を出し、彼女は勢いよく起き上がった。苛立ちと不安が入り混じる。

そのとき、不意に翠子は気づいた。
「あのスクリーン、もしかして……意識すればまた見える?」

半信半疑で目を閉じ、集中してみる。すると、先ほど現れた光のスクリーンがふわりと目の前に浮かび上がった。

「……やっぱり……出た!」

翠子は恐る恐るスクリーンに手を伸ばし、触れることができるのか試してみた。指先がスクリーンに触れると、まるでスマートフォンのように柔らかく反応し、画面が変わる。その中に目立つボタンを見つけた。ボタンには小さなアイコンでグラフのような絵が描かれている。

「……これ、なんだろう?」

翠子は恐る恐るそのボタンを押してみた。すると、画面が切り替わり、驚くべき情報が表示された。

「な、なにこれ……閲覧数……?収益……?」

そこにはリアルタイムで更新されるデータが載っていた。閲覧数、収益、そして「お気に入り」という項目まである。翠子は思わず目を見開いた。

「え……!?これ……」

さらに詳細を確認すると、驚愕の事実が浮かび上がる。どうやら、すでに“1ページ目”が完成しているらしい。そしてそのページには、すでに3人もの読者がお気に入りをつけていることが表示されていた。

「なっ……!?」

翠子は言葉を失った。この世界の出来事がそのまま物語として記録され、誰かに読まれている。さらに、その物語を気に入っている人がいるという事実。

「……これ、本気なの?現時点で3人もお気に入りがついてる……そんなことって……」

翠子はスクリーンをじっと見つめながら、胸の中に湧き上がる奇妙な感覚を抑えられなかった。戸惑い、不安、そして、わずかながらの期待。

「……でも……やるしかないみたいね……私が生き残るためには……」

翠子は深呼吸をし、スクリーンをさらにいじってみることにした。画面を切り替えながら、操作方法を探り、いくつかのことに気づいた。

まず、この物語には“200ページ分”の進行が求められていること。つまり、200ページ分の内容を作り上げない限り、目標は達成されない。そして、もう一つの重要な機能──“OFF”ボタンの存在だ。

「OFF機能……?」

説明を読むと、この機能を使えば、スクリーンに記録されない“秘密の出来事”を作ることができるという。翠子は目を輝かせた。

「なるほど……この機能があれば、秘密のネタを仕込んだり、他の人に知られたくないことを隠すことができる……」

翠子は思わず微笑んだ。少しずつ、状況を整理し、これからどう動くべきかが見えてきた。もちろん、全てが順調に進むわけではないだろう。それでも、生き残るためにはやるしかない。

「よし……まずはやってみるしかないわね……!」
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