悪役令嬢で物語を進めたら、全ての攻略ルートを辿ってしまいました。~悪役令嬢は第二王子とXXXする~

無月公主

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第一幕【二度目の命の幕開け】

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「……やるしかない、とは言ったものの……まずは整理からよね」

翠子はベッドに座り直し、膝に手を置いて大きく深呼吸した。この状況に慣れることはできなくても、とりあえず頭を冷やして現状を把握する必要がある。

「ロマ劇……ロマンスは劇的に、の登場人物たちといえば──」

記憶を手繰り寄せながら、翠子は視線を天井に向け、ゆっくりと思い出を紡ぐように呟いた。

「まずヒロイン。確か、聖女で男爵家の養女……コーラル男爵の娘。公式設定ではデフォルトの名前がアリス、だったはず」

翠子は眉間に手を当て、少し苦笑いを浮かべた。乙女ゲームにありがちな設定すぎて、当時プレイしていたときは少し鼻で笑ったものだ。しかし今となっては笑えない。

「そして、攻略対象……まずは王道の第一王子ね。金髪碧眼の──うん、馬鹿王子だったっけ」

その言葉に思わずため息をつく。翠子はかつてのプレイ時代の記憶を思い出しながら、脳内でその王子の姿を思い浮かべた。豪華な衣装をまとい、傲慢でどこかズレた態度を取る彼の姿。そして、ヒロインである聖女アリスがその王子を更生させ、最終的に愛を育むという王道ルート。

「ヒロインが頑張って更生させて愛を育む……ってやつね。ほんと王道……」

肩を落としながら、翠子は次の攻略対象について考えを巡らせる。

「次は……ああ、弟のイヴェルね」

その名前を口にした瞬間、翠子の胸にずしりと重い痛みが走った。

「姉にいじめられて傷ついた心を、ヒロインが癒して愛を育むルート……だったっけ」

翠子は自分の両手を見つめた。心に残るのは、自分ではない“イヴェンティア”が行った過去の数々のいじめ。それを考えると、ヒロインに癒されて幸せになってほしい気持ちが湧き上がる一方、自分の罪が重くのしかかってくる。

「……癒してあげてほしい、本当に」

翠子は小さく呟き、胸を押さえた。

「次は……騎士と魔塔主、それから隠しキャラの公爵ね」

彼らの顔を思い出すが、どれも典型的すぎるキャラクターだった。騎士は真面目で忠実、魔塔主はミステリアスで孤高、隠しキャラの公爵は美貌で人を惹きつけるタイプ。

「どれを攻略しても、正直ぱっとしないのよね。結局、よくある乙女ゲームのキャラって感じだし……あきたりだわ」

翠子はベッドの端に座り、足をブラブラさせながらぼんやりと考え込んだ。

「単純な転生なら、モブと結婚するっていう選択肢もありかもしれないけど……」

視線をスクリーンに移し、翠子は苦笑した。
「でも、この世界の神様は“面白いストーリー”を求めてるんでしょ?……私がつまらない物語を作ったら、命を落とすことになるかもしれないってわけね」

肩をすくめて大きなため息をつく。

――どうするべきなんだろう……

(とりあえず、物語のページがいつまでも翠子のままじゃダメだわ)

翠子はスクリーンをじっと見つめ、気合を入れるように深呼吸した。そして自分自身に言い聞かせるように強く呟いた。

「いいこと!?私はたった今からイヴェンティアよ!イヴェンティア・ダールベイト侯爵令嬢!」

声に出して宣言すると、少し気持ちが落ち着く。自分がこの体を使って生き延びるには、イヴェンティアとして物語を進めるしかない。そして、読者を楽しませる必要がある。

試しにスクリーンに向かって話しかけてみたが、特に反応はない。少し落胆しながらも、彼女は気持ちを切り替えることにした。

「いつまでも部屋にいても、良い案なんて浮かばないわ。まずは外に出てみましょう!」

イヴェンティアは机の上に置かれたベルを手に取り、軽く鳴らした。澄んだ音が部屋に響き、すぐにメイドたちがやってくる。

「お嬢様、いかがなさいましたか?」

「外出の準備をお願いできるかしら」

メイドたちは少し驚いた顔をしたが、すぐに頭を下げて準備に取り掛かった。どうやら、以前のイヴェンティアはあまり外出することがなかったらしい。イヴェンティアはメイドたちの動きを見ながら、改めて自分が本当に“イヴェンティア”として行動していることを実感した。

ほどなくして、準備が整い、外出の護衛として一人の騎士が部屋に現れた。

その姿を見た瞬間、イヴェンティアの心臓が跳ね上がった。

「お……オルグ……」

思わず名前を口にしてしまう。目の前に立っているのは、ゲームで見慣れた攻略対象の一人、騎士のオルグ・マッキャノンだった。青髪に青い瞳、引き締まった美しい肉体。どんな角度から見ても完璧な美男子で、ゲーム内でプレイヤーを虜にしたキャラクターそのものだ。

「お嬢様、護衛の任を承ります」

彼は低い声でそう告げると、礼儀正しく頭を下げた。真面目な態度と凛々しい姿に、イヴェンティアの頭にはゲームの記憶が蘇ってくる。

「そ、そういえば……オルグには、服を……」

イヴェンティアの顔が一気に赤くなった。ゲームの中でのエピソードを思い出してしまい、頭を振って必死にその記憶を追い払う。

(いかん、いかんぞ!これ以上思い出したら18禁になってしまうかもしれない……。そう、18禁は絶対ダメなのよ!)

イヴェンティアが内心で葛藤していると、オルグが少し険しい表情を浮かべ、口を開いた。

「お嬢様、お脱ぎいたしましょうか?」

その言葉にイヴェンティアは一瞬凍りついた。

「……え?」

彼の言葉は真剣だったが、どこか嫌悪感を隠しきれていない顔をしている。どうやら“仕事だから仕方ない”という諦めの表情らしい。

「ちょ、ちょっと待って!!ダメ!!絶対ダメ!!!」

イヴェンティアは慌ててオルグの手を掴み、必死に止めた。その勢いに驚いたのか、オルグは目を丸くして彼女を見つめる。

「え……?」

「違うの!服なんて脱がなくていいのよ!外出の護衛をしてくれればそれでいいの!」

イヴェンティアが必死に説明すると、オルグは一瞬ぽかんとした顔をした後、目を細めて何か考えるように黙り込んだ。そして、小さく頷いた。

「……承知しました」

その言葉を聞いて、イヴェンティアは心の底から安堵の息をついた。しかし、オルグの驚いた表情が頭にこびりついて離れない。

「……すごく驚いてたわね……」

イヴェンティアは小声で呟きながら、心の中で自分を責めた。あの驚いた顔を見ると、以前のイヴェンティアがどれだけ問題行動を起こしてきたかがよく分かる。

用意された馬車の前に立つと、その豪華な装飾に思わず目を見張った。輝く金の装飾と、真っ白な車体。侯爵令嬢としての威厳が漂うが、自分がその中に乗るという事実に違和感を覚える。

「これが私の生活なのね……」

馬車の扉をオルグが丁寧に開ける。イヴェンティアは彼に軽く会釈をして、そっと中に乗り込んだ。中は驚くほど快適で、ふかふかの座席が体を包み込む。

(どんな生活をしてたのよ、このイヴェンティアは……)

イヴェンティアは窓の外を眺めながら、ため息をついた。
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