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翌日、公爵は昨晩、黒ずくめの不審者3人がユリエラの部屋に入ろうとしたという報告を受け、王宮の魔法士団長を招き、ユリエラの護衛を確保しました。 屋敷の警備が不十分だったことへの対策でもありました。
ユリエラの心は複雑でした。 目の前にいるのは攻略対象であり、自身と同じくらいの歳の少年、パピルスでした。 彼はピンクの瞳とふわふわのピンクの髪の毛を持ち、外見からは年若く見えますが、ユリエラにとってはキルエルさんのように実は年老いているのではないかという疑念が頭をよぎりました。
王宮魔法士団長パピルス・ホルマックスは、可憐なユリエラに向かって礼を尽くしました。
「お初にお目にかかります。王宮魔法士団長パピルス・ホルマックスでございます。 どうぞよろしくお願いします、可憐なるお嬢様。」
ユリエラはパピルスの苗字が同じであることに驚きました。
「え…あ…ユリエラ・ホルマックスです。此方こそよろしくお願いします。」
「同じ苗字みたいですが、僕はスイートローズ王国のホルマックス家の三男です。恐らくこちらがホルマックスの本家ですね。」
ユリエラは驚いた表情を浮かべながら、興味深そうにパピルスを見つめました。
「そうなんですね。実は高熱が出てしまった時、以前の記憶を失ってしまっていて、自分の家のことや両親のことが全く思い出せないんです。」
「ふーん、それは大変ですね。でも、それだけではなさそうですが。」
パピルスは興味深そうにユリエラの話を聞き、その後もじっと彼女の身に付けている魔法のネックレスやバルコニーのガラスを観察していました。 その様子からは、まるでキルエルの魔法の痕跡をたどっているかのような様子が伺えました。
ユリエラも内心では、‶絶対にキルの魔法痕跡を辿っているな、この人は…〟と思っていました。 彼の様子からは、何かを探っているような雰囲気が感じられました。
執事が「それでは何かございましたらベルを鳴らし下さい。」と言って部屋から出ていきました。 この世界のベルはとても優秀で、鳴らすと魔法道具を持つ人の耳に届くという仕組みになっている。
二人きりになった瞬間、「お~い。ユリエラや~」といってキルエルが壁から現れました。 パピルスは咄嗟に魔法を使おうとしましたが、キルエルの方がわずかに早く、パピルスは光るロープでぐるぐる巻きにされ、口にも光る猿ぐつわをされて身動きがとれない状態となりました。
「キル!?今絶対出て来ちゃ不味そうな雰囲気ですけど…。」
「そうじゃろ?ワシも思うた。いや~ちとな。いじめとーなってな。こやつを。」
パピルスは怒っているようで、しきりにうめいています。
「おー、おー、自分が一番だと思うておったようじゃがのぅ。ちと、甘いのぅ。」
キルエルはパピルスを煽りながらニコニコとしています。
「キル、性格が悪いですよ…。」
「ホルマックス家の血筋は魔力が膨大でのぅ。なんせ近隣国の魔塔主の血筋じゃから、この部屋にこやつを置いておいけば結界も継続されたままになり、ユリエラは外に出放題じゃ。」
「えっ!それは便利ですね。」
「じゃろ?上手く使ってやろうと思ってな、ちと細工して、こやつが来るように仕向けてみたんじゃ。」
「キル、貴方また策を…。」
パピルスは殺気を出しながら、しきりにうめき続けていました。
「先に策を講じたのは何代目かのメルドロイド公爵じゃ。ホルマックスの分家をこの国に置いて、定期的に血筋の者を屋敷に連れ込み、結界を作動させておる。 ホルマックスの血筋にのみ反応する結界をな。」
その言葉を聞いて、パピルスは殺気をしまい、大人しくなり、じっとキルエルを睨みました。
「ようやく落ち着いたかいのぅ。」
キルエルはパピルスの猿ぐつわだけを解きました。
「その話、本当ですか?クラリアス辺境伯。」
「本当も何も、お前さんほどの優秀な魔法士なら気付いておるじゃろ?屋敷に入った時点でのぅ。」
「…おかしな結界だとは思っていました。」
「そうじゃろ。ワシはこうして鳥籠の中のお嬢さんを助けようと思うておるだけじゃ。こやつの父親も必死で魔力量を隠そうとしたんじゃろうなぁ。ユリエラは気付いておらんようじゃが、お前さんが魔法を使う時、髪の色が…桜色に染まるんじゃ。」
「え!?」
ユリエラは驚きを隠せませんでした。 まさか魔法を使っている間、自分の髪の色が変わるとは思ってもみませんでした。
「時に、パピルスよ。何歳になったんじゃ?」
「この国に来てからは11歳という事になっています。」
「ほぅ。 ではスイートローズ王国ではどうじゃったんじゃ? どれ、本当の姿を見せてみぃ。」
キルエルはくるりと指を動かしてパピルスの魔法を解きます。 すると目の前には20代は越えていそうなピンク色の長い髪をした美青年に早変わりしました。 その美しい姿に、ユリエラも驚きを隠せませんでした。
「年齢詐称の人増えたー!!」
「どうじゃ、ユリエラ。ちと年上じゃが、好みか?」
「うーん…この世界の住民がイケメンばかりでわかりません。後、小さな姿の方が可愛いです。」
「確かにのぅ。後はセトラか。」
「何気に攻略対象全員と合わせようとしてません!?私はできれば距離を置きたいのですが…。」
「何故じゃ。イケメンを選びたい放題じゃぞ。」
キルエルは今度は指をパチンと鳴らしてパピルスをふたたび少年の姿に早変わりさせました。
「キル、私は恋愛結婚がしたいので、このようにお見合いさせられるのは困ります。」
「なんと。しかし、攻略キャラを射止めるには早いうちがえぇよ?」
「そもそも、公爵だとか魔法士団長だとか、結婚したら面倒な人ばかりじゃないですか!」
その言葉にパピルスは吹き出してしまった。
「ぷはっ!なんですか?このお嬢さん。面白い方ですね。」
ユリエラは「面白い方」と言われて、ピクリと眉を動かしました。
「ちょっ!ちょっと!それは男性が女性に興味が湧いた時に使う定番のセリフです!絶対に私を好きにならないで下さいね!」
パピルスは驚いた表情を浮かべながら「あ、あはは…そ、そんなことはないですよ。それにまだ子供ですし?」と笑いながら言いました。
「こうみえてユリエラは30歳らしいぞい。」
「い゛っ!?」
パピルスは顔を引きつらせ、ドン引きした表情を浮かべました。
「さて、パピルスや、ワシを裏切ったら猿ぐつわが強制的に発動するよう、ちと魔法をかけさせてもらったぞぃ。覚悟して生きるんじゃな。」
「は!?それはないですよ…辺境伯。」
「安心せい、ワシちゃんと国王派の人間じゃからな。」
パピルスはしょんぼりとした表情を浮かべました。
「さてと、ワシそろそろ、帰るでのぅ。そうじゃ、しばらくの間お前さんがユリエラの家庭教師をしてやってはくれんか。ほれ、一応他国とはいえ、貴族の出じゃろ?」
「…拒否権がありません。」
「うむ。左様。じゃあの!」
キルエルは軽く手を振りながら、壁の中に消えていきました。
そして、パピルスは深い溜息をつきながら、よろよろと座り込みました。
「魔塔じゃチヤホヤされないから、この国に来たのに…これじゃあ僕も鳥籠の中じゃないか。グスン。」
「御気の毒に…。」
ユリエラは自分が少し悪い気がして、気の毒そうな目でパピルスを見つめていました。
「全くですよ。で、魔法を教えれば良いんですか?メーベルはお持ちですか?」
「メーベルって何ですか?」
「魔法を使う為の媒体ですよ。」
「あぁ!これの事ね!」
ユリエラは机の上に置かれている赤いピアスを手に取り、パピルスに見せました。
「…メーベルは必ず肌身離さず持つのが常識です。命の次に大事なものなので。」
「へぇ…。」
パピルスは丁寧に、ユリエラにメーベルの使い方を教えました。まず、手に持った状態で「メーベル」と口にするか、心の中で言うことで、媒体を変形させることから始めます。そして、メーベルについている宝石の色によって属性がわかります。得意な属性から伸ばしていく感じで使っていくと、効果的だとパピルスは説明しました。
ユリエラの魔法の才能に興奮したパピルスは、昼食を忘れて夜まで魔法の指導を続けました。しかし、夜遅くまで魔法の勉強をしていることに心配を募らせた執事が、ドアを軽くノックして部屋に入ってきました。
「ユリエラ様、パピルス様、そろそろお食事をとられてはいかがでしょうか?」
ユリエラとパピルスは互いに顔を見合わせ、夜に気づいて笑い合いました。お互いに時間を忘れていたようです。そして、執事の提案に従い、二人は一緒に食事をすることにしました。楽しい雰囲気の中で、彼らは魔法の話題や日常の出来事について話し合いながら、美味しい食事を楽しみました。
ユリエラは食事を終え、心地よい入浴を済ませた後、耳に優美なバイオリンの音色が届きました。その美しい音色は静かな夜空に響き渡り、ユリエラの心を引き付けました。
ユリエラの心は複雑でした。 目の前にいるのは攻略対象であり、自身と同じくらいの歳の少年、パピルスでした。 彼はピンクの瞳とふわふわのピンクの髪の毛を持ち、外見からは年若く見えますが、ユリエラにとってはキルエルさんのように実は年老いているのではないかという疑念が頭をよぎりました。
王宮魔法士団長パピルス・ホルマックスは、可憐なユリエラに向かって礼を尽くしました。
「お初にお目にかかります。王宮魔法士団長パピルス・ホルマックスでございます。 どうぞよろしくお願いします、可憐なるお嬢様。」
ユリエラはパピルスの苗字が同じであることに驚きました。
「え…あ…ユリエラ・ホルマックスです。此方こそよろしくお願いします。」
「同じ苗字みたいですが、僕はスイートローズ王国のホルマックス家の三男です。恐らくこちらがホルマックスの本家ですね。」
ユリエラは驚いた表情を浮かべながら、興味深そうにパピルスを見つめました。
「そうなんですね。実は高熱が出てしまった時、以前の記憶を失ってしまっていて、自分の家のことや両親のことが全く思い出せないんです。」
「ふーん、それは大変ですね。でも、それだけではなさそうですが。」
パピルスは興味深そうにユリエラの話を聞き、その後もじっと彼女の身に付けている魔法のネックレスやバルコニーのガラスを観察していました。 その様子からは、まるでキルエルの魔法の痕跡をたどっているかのような様子が伺えました。
ユリエラも内心では、‶絶対にキルの魔法痕跡を辿っているな、この人は…〟と思っていました。 彼の様子からは、何かを探っているような雰囲気が感じられました。
執事が「それでは何かございましたらベルを鳴らし下さい。」と言って部屋から出ていきました。 この世界のベルはとても優秀で、鳴らすと魔法道具を持つ人の耳に届くという仕組みになっている。
二人きりになった瞬間、「お~い。ユリエラや~」といってキルエルが壁から現れました。 パピルスは咄嗟に魔法を使おうとしましたが、キルエルの方がわずかに早く、パピルスは光るロープでぐるぐる巻きにされ、口にも光る猿ぐつわをされて身動きがとれない状態となりました。
「キル!?今絶対出て来ちゃ不味そうな雰囲気ですけど…。」
「そうじゃろ?ワシも思うた。いや~ちとな。いじめとーなってな。こやつを。」
パピルスは怒っているようで、しきりにうめいています。
「おー、おー、自分が一番だと思うておったようじゃがのぅ。ちと、甘いのぅ。」
キルエルはパピルスを煽りながらニコニコとしています。
「キル、性格が悪いですよ…。」
「ホルマックス家の血筋は魔力が膨大でのぅ。なんせ近隣国の魔塔主の血筋じゃから、この部屋にこやつを置いておいけば結界も継続されたままになり、ユリエラは外に出放題じゃ。」
「えっ!それは便利ですね。」
「じゃろ?上手く使ってやろうと思ってな、ちと細工して、こやつが来るように仕向けてみたんじゃ。」
「キル、貴方また策を…。」
パピルスは殺気を出しながら、しきりにうめき続けていました。
「先に策を講じたのは何代目かのメルドロイド公爵じゃ。ホルマックスの分家をこの国に置いて、定期的に血筋の者を屋敷に連れ込み、結界を作動させておる。 ホルマックスの血筋にのみ反応する結界をな。」
その言葉を聞いて、パピルスは殺気をしまい、大人しくなり、じっとキルエルを睨みました。
「ようやく落ち着いたかいのぅ。」
キルエルはパピルスの猿ぐつわだけを解きました。
「その話、本当ですか?クラリアス辺境伯。」
「本当も何も、お前さんほどの優秀な魔法士なら気付いておるじゃろ?屋敷に入った時点でのぅ。」
「…おかしな結界だとは思っていました。」
「そうじゃろ。ワシはこうして鳥籠の中のお嬢さんを助けようと思うておるだけじゃ。こやつの父親も必死で魔力量を隠そうとしたんじゃろうなぁ。ユリエラは気付いておらんようじゃが、お前さんが魔法を使う時、髪の色が…桜色に染まるんじゃ。」
「え!?」
ユリエラは驚きを隠せませんでした。 まさか魔法を使っている間、自分の髪の色が変わるとは思ってもみませんでした。
「時に、パピルスよ。何歳になったんじゃ?」
「この国に来てからは11歳という事になっています。」
「ほぅ。 ではスイートローズ王国ではどうじゃったんじゃ? どれ、本当の姿を見せてみぃ。」
キルエルはくるりと指を動かしてパピルスの魔法を解きます。 すると目の前には20代は越えていそうなピンク色の長い髪をした美青年に早変わりしました。 その美しい姿に、ユリエラも驚きを隠せませんでした。
「年齢詐称の人増えたー!!」
「どうじゃ、ユリエラ。ちと年上じゃが、好みか?」
「うーん…この世界の住民がイケメンばかりでわかりません。後、小さな姿の方が可愛いです。」
「確かにのぅ。後はセトラか。」
「何気に攻略対象全員と合わせようとしてません!?私はできれば距離を置きたいのですが…。」
「何故じゃ。イケメンを選びたい放題じゃぞ。」
キルエルは今度は指をパチンと鳴らしてパピルスをふたたび少年の姿に早変わりさせました。
「キル、私は恋愛結婚がしたいので、このようにお見合いさせられるのは困ります。」
「なんと。しかし、攻略キャラを射止めるには早いうちがえぇよ?」
「そもそも、公爵だとか魔法士団長だとか、結婚したら面倒な人ばかりじゃないですか!」
その言葉にパピルスは吹き出してしまった。
「ぷはっ!なんですか?このお嬢さん。面白い方ですね。」
ユリエラは「面白い方」と言われて、ピクリと眉を動かしました。
「ちょっ!ちょっと!それは男性が女性に興味が湧いた時に使う定番のセリフです!絶対に私を好きにならないで下さいね!」
パピルスは驚いた表情を浮かべながら「あ、あはは…そ、そんなことはないですよ。それにまだ子供ですし?」と笑いながら言いました。
「こうみえてユリエラは30歳らしいぞい。」
「い゛っ!?」
パピルスは顔を引きつらせ、ドン引きした表情を浮かべました。
「さて、パピルスや、ワシを裏切ったら猿ぐつわが強制的に発動するよう、ちと魔法をかけさせてもらったぞぃ。覚悟して生きるんじゃな。」
「は!?それはないですよ…辺境伯。」
「安心せい、ワシちゃんと国王派の人間じゃからな。」
パピルスはしょんぼりとした表情を浮かべました。
「さてと、ワシそろそろ、帰るでのぅ。そうじゃ、しばらくの間お前さんがユリエラの家庭教師をしてやってはくれんか。ほれ、一応他国とはいえ、貴族の出じゃろ?」
「…拒否権がありません。」
「うむ。左様。じゃあの!」
キルエルは軽く手を振りながら、壁の中に消えていきました。
そして、パピルスは深い溜息をつきながら、よろよろと座り込みました。
「魔塔じゃチヤホヤされないから、この国に来たのに…これじゃあ僕も鳥籠の中じゃないか。グスン。」
「御気の毒に…。」
ユリエラは自分が少し悪い気がして、気の毒そうな目でパピルスを見つめていました。
「全くですよ。で、魔法を教えれば良いんですか?メーベルはお持ちですか?」
「メーベルって何ですか?」
「魔法を使う為の媒体ですよ。」
「あぁ!これの事ね!」
ユリエラは机の上に置かれている赤いピアスを手に取り、パピルスに見せました。
「…メーベルは必ず肌身離さず持つのが常識です。命の次に大事なものなので。」
「へぇ…。」
パピルスは丁寧に、ユリエラにメーベルの使い方を教えました。まず、手に持った状態で「メーベル」と口にするか、心の中で言うことで、媒体を変形させることから始めます。そして、メーベルについている宝石の色によって属性がわかります。得意な属性から伸ばしていく感じで使っていくと、効果的だとパピルスは説明しました。
ユリエラの魔法の才能に興奮したパピルスは、昼食を忘れて夜まで魔法の指導を続けました。しかし、夜遅くまで魔法の勉強をしていることに心配を募らせた執事が、ドアを軽くノックして部屋に入ってきました。
「ユリエラ様、パピルス様、そろそろお食事をとられてはいかがでしょうか?」
ユリエラとパピルスは互いに顔を見合わせ、夜に気づいて笑い合いました。お互いに時間を忘れていたようです。そして、執事の提案に従い、二人は一緒に食事をすることにしました。楽しい雰囲気の中で、彼らは魔法の話題や日常の出来事について話し合いながら、美味しい食事を楽しみました。
ユリエラは食事を終え、心地よい入浴を済ませた後、耳に優美なバイオリンの音色が届きました。その美しい音色は静かな夜空に響き渡り、ユリエラの心を引き付けました。
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