死に戻り能力家系の令嬢は愛し愛される為に死に戻ります。~公爵の止まらない溺愛と執着~

無月公主

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シーズン1

50.嫉妬と誤解の果てに

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「レオル・パープルポーンと恋仲になろうとしていたのを今さっき確信して、メイの人生を回帰させようと思いました。」

ユリの言葉に、私は耳を疑った。

「はい!?」

「この1年、俺はずっとここに潜入して、メイがどうして俺から逃げているのか探っていました。様々な要素を調査しましたが、もう浮気を疑う他ありませんでした。」

その告白に、私は絶句した。一年もの間、ユリが私の行動を監視していたという事実に、驚きと怒りが混ざり合った複雑な感情が湧き上がる。

「違うわ。レオルはラズベルと恋仲なの。気付かなかった?」

「すみません、気付けませんでした。てっきり、ラズベルに成り代わろうとしているのかと…。」

ユリは、眉を寄せて素直に謝罪した。その表情には焦りと戸惑いが見えた。嫉妬に駆られた彼の行動が、自分の想像力をどれだけ超えていたのか、改めて理解させられる。

「あー、そうよね。確かにそう見えなくもないかも。ユリならそう考えるでしょうね。」

私は苦笑いを浮かべたが、その奥では複雑な思いが渦巻いていた。彼が浮気を疑ったことで、どれだけの混乱と危険が生まれたかを思うと、素直に笑うことなどできなかった。

「今度は私の番ね。1年前、別館でユリが黒髪の赤ちゃんを抱っこしてる姿を見たの。それで、ユリを抱きしめる白髪の女性。それを見て、私浮気されてたらどうしようって思ったの。黒髪の子供なんて全国探してもユリの子供でしかないじゃない。」

私は自分が見た光景とその時の気持ちを、ユリに包み隠さず話した。胸の奥に溜まっていた不安と嫉妬、疑念――全てが言葉となって溢れ出す。

「違います!!…あー…失念していました。」

ユリの声が一段と大きくなった。その表情には、焦りと後悔が浮かんでいる。

「メイの精神状態がまだ少し不安定だったので、伝えるのは落ち着いてからにしようと思っていたんです。メイが見たのは俺の妹です。白髪の女性は母です。強いストレスによりあのような髪になったんです。」

彼は一気に説明を続け、誤解を解こうとしていた。その必死さが伝わってきて、私はさらに動揺する。

「い、妹!?」

私は驚きの声を上げた。そんなことがあるなんて、まるで考えもしなかった。ユリが話す真実に、思わず心が揺れ動く。

(あぁ、やっちゃった…。私って本当に勘違いの女王様ね。)

自分の中で反省の言葉がこだまする。あの光景だけを見て、全てを決めつけてしまった。ユリの言葉をもっと早く聞いていれば、こんな事態にはならなかったのに。

「父が母の記憶を封じて、彼女を別館に閉じ込めました。母は強いストレスにより、元の黒髪から白髪になったんです。そして、その後妹が生まれました。俺が抱いていたのはその妹です。」

ユリの声は冷静さを取り戻しつつも、どこか寂しさを含んでいた。彼は一息ついてから、私に視線を向ける。

「…そんな理由があったのね。でも、どうして私に話してくれなかったの?」

「俺が間違えました。言葉にして説明するよりも、落ち着いたタイミングで全てを話した方が良いと思っていました。でも、それが結果的に最悪の結果を招いてしまった。」

ユリは目を伏せながらそう言った。その姿を見て、私は胸の中に少しだけ安堵の感情が芽生えた。ユリもまた、不器用な形で私のことを考えてくれていたのだと気づいたからだ。

「父さん、病んじゃだめだよ。母さんは、2回浮気されて、殺されて、死に戻りしてトラウマができてるんだ。そこは絶対考慮しないといけない。父さんなら意味わかるだろ?」
ルーが訴える声には、真剣さと重みが滲んでいた。その小さな体から発せられる言葉が、私とユリの胸に深く突き刺さる。

ユリはその言葉にしばらく目を伏せ、無言で考え込んだ。彼の顔には葛藤の色が浮かび、ルーの話す「トラウマ」という言葉が彼の心に何かを触発したようだった。

「そうですね…。そう…だったんですね。トラウマか…。そこは考えられていませんでした。」
ユリは静かに頭を下げ、自分の誤りを認めた。その素直な態度に、私は少しだけほっとする。

私たちは恐る恐る正座をし、真剣な表情を浮かべるルーの前で、まるで子供のようにお説教を受ける形となった。彼の瞳には、これまでの人生で背負った悲しみと決意が宿っていた。その姿を目の当たりにし、私とユリは自然と背筋が伸びる。

「子供は親を選べないんだ。環境もね。1度目の記憶をもってしても2度目も俺は負けてしまう。」
ルーの声には諦めと、しかしどこかに光を求めるような強さがあった。その言葉に私たちは黙り込み、彼の言葉に全身で耳を傾ける。

「誰に負けたんだ?」
ユリが問うと、ルーは一瞬だけ目を伏せ、何かを思い返しているようだった。その沈黙の中、私の心はざわめき、不安が膨らんでいく。

「母さんが全てを話せないのと同じように、俺もブルービショップの掟に従って言えないこともある。俺は俺の大切な人に負けた。でも次は負けないし、その人を救いたいんだ。力を…貸してほしいから、二人には元気でいてほしいんだ。」
彼の言葉には、幼いながらも確固たる決意が込められていた。その言葉に、私もユリも胸を打たれる。

ユリは深い溜め息をつき、しばらく思案した後、重々しい声で言った。
「分かった…。力を貸そう。」

その一言に、ルーの表情がふっと和らいだ。肩の力が抜けたように見え、その瞬間、私もまたほっと胸をなでおろす。
「良かった…。正直、わからずやの父さんを説得するのが一番不安だった。」
ルーの無邪気な言葉に、ユリは思わず苦笑いを浮かべた。

「わ、わからずや…。」
ショックを受けたように肩を落とすユリに、私はそっと手を伸ばして背中を撫でた。その触れた先で、彼がほっとしたように微かに肩を揺らしたのを感じた。

「ユリ、今回のことは、マイナスばかりじゃないわ。」
「どういうことです?」
彼が不思議そうに私を見つめる。

「私が…その…ユリのことが大好きだって、ちゃんと気付けたから。」
私は少し照れくさそうに視線を逸らしながら続けた。
「ユリの浮気を疑ってる間、ユリの側に別の女性がいたらと思うと胸が苦しくて。それに追い打ちをかけるように、新聞でユリとその女性と子供を乗せた馬車が崖から転落したっていう記事を見た時、もう嫉妬で狂いそうになったの。だから新聞を破いちゃったわ。」

ユリは驚いた表情で私を見つめていた。その瞳には、私の言葉が彼の心にどれだけ大きく響いているかが浮かび上がっている。

「本当に…?」
ユリの声は小さく震えていた。その声に、私はうなずきながら微笑んだ。
「ええ、本当よ。まさか、いつの間にか、こんなにも好きになってるだなんて…。」

ユリは微笑みながら、そっと私の手を取った。その手の温かさが、彼の心の中の不安を全て拭い去ろうとしているようだった。
「ありがとうございます、メイ。俺もアナタのことが――。」
「コホンッ!!!二人とも、子供の前なんだけど?」
ルーが大人びた声で咳払いをし、私たちをたしなめる。

顔を赤らめながら、私たちは急いで身を離した。そして、そんな私たちを見て笑うルーの姿に、自然と笑みがこぼれた。

その時、突然玄関の扉が勢いよく開き、息を切らしたミレーヌが飛び込んできた。
「あの…これは…どういった状況でしょうか…。」
彼女の驚いた顔に、私たちは思わず吹き出してしまった。

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