囚われの公爵と自由を求める花~マザコン公爵は改心して妻を溺愛する~

無月公主

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26.同じ時間を過ごす約束

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「おはようございます……」クレノースはむすっとした顔で、じーっとサクレティアの顔を見つめていた。

サクレティアは一瞬驚きながら、ぎこちなく微笑んだ。「ク、クレノ?どうしたの……?」

クレノースは軽く溜息をつき、まるで不満を抱えているかのように顔をそむけた。「僕はサクレティア様より遅く寝て、サクレティア様より早く起きるんです。それが……僕のささやかな楽しみだったのですが……昨夜、それが叶いませんでした。」

サクレティアはその言葉に戸惑いを隠せず、「え……それって……」と口ごもった。「まさか、それで拗ねてるの?」

クレノースはじっと彼女を見つめたまま、拗ねた顔で続けた。「……昨夜は、サクレティア様より先に眠ってしまったことがショックで……」としんみりとした口調で話した。

サクレティアは内心で叫んだ。《えええ!まさかそんなことで!?》

「いやいや、クレノ、別にそんなことで落ち込む必要はないわよ……!」と彼女は焦ってフォローしながらも、クレノースの真剣な顔に少し笑いをこらえた。

「でも、僕は……サクレティア様より先に眠るなんてことが今までなかったんです。僕は、サクレティア様を深く…深く愛しておりますから…。」

サクレティアは困惑しつつも、もうどう対応していいのかわからなくなり、少し微笑んで「クレノ、そんなことで悩まなくても大丈夫よ。本当に……」と優しく彼をなだめた。

《まったく……昨日の手記なんて比じゃないくらい、クレノの扱いが難しいわね……》

サクレティアは、クレノースがむすっとした顔で拗ねている様子を見ながら、ふと良いアイデアを思いついた。《そうだ、これならクレノの変なこだわりも少しは落ち着くかも……》

「ねぇ、クレノ。」サクレティアは優しく語りかけた。「私ね、ちょっと提案があるの。」

クレノースは彼女の言葉に反応して、少し興味を示しながら顔を向けた。「提案……ですか?サクレティア様のためなら何でも喜んでお受けいたします。」

サクレティアはニコッと微笑み、少し悪戯っぽく言った。「クレノ、あなたって、私と同じことをするのが好きでしょう?」

クレノースは一瞬真剣な顔で頷き、「もちろんです!サクレティア様と共に過ごすことこそが、僕の喜びです。」と崇拝の眼差しを向けた。

サクレティアは内心で《ほんとに素直すぎるわね……》と思いながら、提案を続けた。「じゃあね、こうしましょう。これからは、私とほぼ同時に寝るようにして、どちらかが先に起きたら、その人が相手を起こすっていうのはどうかしら?」

クレノースは一瞬考え込み、彼女の提案をゆっくりと噛み締めるように理解していった。「サクレティア様と同じ時間に寝て、そして先に起きた方が……相手を起こす……」

彼の目が輝き始めた。「それは……!実に素晴らしいご提案です、サクレティア様!あなたと同じリズムで過ごすことができるなんて……まさに僕の願いそのものです!」

サクレティアは内心で《うまくいったわね》とほくそ笑み、軽く微笑んだ。「そうでしょう?じゃあ、これからはそういうふうにしましょうね。ほら、クレノ、あなたは私と同じが好きだから……ね?」

クレノースは大きく頷き、崇拝するような眼差しで彼女を見つめた。「サクレティア様、本当にお優しい……僕は、幸せです。」

サクレティアは、目の前にいるクレノースをじっと見つめながら、内心でため息をついた。《こんな……180㎝以上もあって、華奢なのにしっかりと筋肉がついている大人の男が、まるで子供みたいに……。子供?もしかして、あれだけの心労とショックが重なって、こうなっちゃったのかしら……》

彼女はふと思いを巡らせた。出会った当初のクレノースは、冷静で、冷酷ともいえるほどクールだったのに。今ではその面影はほとんど残っていない。《あのクールな彼に戻ってくれないかしら……》

サクレティアがそう思いながら、朝の支度を整えていると、侍女たちがさっそく手伝いにやってきた。ドレスの整え方や髪のまとめ方、すべてが完璧に仕上げられていく中、サクレティアはぼんやりと、日々の変化に思いを馳せていた。

支度が終わり、クレノースと共に朝食のテーブルに着く。彼は相変わらずの優雅な姿勢でサクレティアに微笑みかける。

「サクレティア様、今日もお美しい……」

その崇拝じみた言葉に、サクレティアは苦笑いを浮かべながら内心で《あの冷たい雰囲気の頃が恋しい……》と感じた。

朝食が終わると、クレノースはキースの子守りに向かい、彼の愛情たっぷりの眼差しがキースに注がれるのを見て、サクレティアは安堵と少しの不安を感じつつ、庭へと向かった。

《さて、作物に水をやらなきゃ……》

庭に広がる畑で、サクレティアは自分の育てた植物たちに水をやりながら、再び考え込んだ。クレノースは変わってしまったけれど、今は彼を支えながらこの公爵家を切り盛りしていかなければならない。

《まぁ、あれだけ献身的だし……それに、今のところ自由にさせてもらえてるから、いいのかも……》

サクレティアはふっと小さく微笑んだ。公爵家の重責は確かに大きいが、以前のような圧迫感はない。クレノースは異様なまでに彼女を敬い、全てを彼女のために捧げている。歪んだ愛ではあるけれど、今のところ彼女自身に直接的な危害はない。むしろ、自由を享受できる環境にさえなっている。

《このままの方が、意外と気楽かもしれない……》

そう考えつつも、彼女の心にはどこかに引っかかるものがあった。クレノースの本来の姿を取り戻してほしいという思いが、心の片隅で静かに芽生え続けていたが、今はまだそれに向き合う時ではないと感じていた。

「まぁ、今はこのままでいいか……」と呟きながら、彼女は再び水やりに集中した。
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