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第一章 惑星ガイノス開拓計画
リョースケの閃き
しおりを挟むドローンに襲いかかった巨大生物の身体の表面には爬虫類を思わせる赤い鱗に覆われ、背中にはこれまた巨大なこうもりのような翼が生えている。
その付け根には一つ一つが岩のような背骨が身体の後ろまで続いている。見るからに強靭そうなあの尻尾で叩かれたら人間など一溜まりもないだろ。
ドローンを睨み付けているその獰猛な目の上にはゴツゴツとした太い角が頭の後ろまで伸びていた。
先程から何度もニュースの映像を再生して見ているのだが…誰がどうみてもドラゴンだった。
咀嚼した瞬間、喰えないと判断したのだろう。残骸となったドローンを吐き出し、どこかへ飛んでいった所で映像は終わり。
ニュースキャスターは「ご覧のような凶暴な生物が他にも多数生息しているものと推測され、調査は難航するとの見通しです」と締めくくった。
ピロン♪と頭の中で呼び出し音が鳴った。
「ようマイク、どうした?」
『リョースケ、ニュース見てたか?』
「おう、今見てたぜ」
『あれ、ドラゴンだよな?』
「さっきから何度も再生してるんだけど…そうとしか思えないな」
『まさか、マジでいるとはな!コイツはやべえぜ!』
「どこのダッチだお前は。まあ興奮するのも分かる、俺もワクワクが止まらん」
『ああ、久々に胸が熱くなったぜ。間近で見たいな』
「あれの間近に行ったら死ぬわ。まあでも生で見てみたいけどなー…AP117だぞ?それにガイノスがどんな環境かまだ分か…あれ?そういや親父さん宇宙開発省だっけ?」
『フッフッフ、その通りよ。
早速、根掘り葉掘り聞いたぜ』
「マジかおい、で?早く教えろ」
『フフン、今ここに現在分かっている惑星ガイノスの国家機密資料(ド嘘)がある。教えて欲しいか?』
「国家機密ゆる過ぎだろおい。まあいいや、さあ送れ!今すぐ送れ!その代わりバニーの裸体SS送ってやる」
『まあまあ、そう焦ん……今なんて?』
「あ、ごめん。本人に許可取ってなかったちょっと待って。バニー、その美しい裸体をマイクに見せてあげてもいいかい?」
「もう!リョーちゃんたら♪…いいわよ」
『ヘイヘイヘイヘイ?どういうことだ相棒、何故バニーがそこにいる?』
カシャッ
「よし、取引と行こうかマイク」
『聞けよ!バニーの裸体ってどういうこと!?ドラゴンよりそっちの方が気になるんだけど!』
「うるせえゴリラ!昨夜は最高でした!これでいいか!?あん?」
『うおい!裏切りやがったな相棒!いや、テメーなんざもう相棒じゃねえ!』
「ほう~?いいのかな?バニーの、それはもう美しく優雅な渓谷の景色が見たくないというのだね?」
『すいませんした!今すぐ送ります!』
「それでいいんだ相棒。人間素直が一番…そうだろう?」
『クッ!ミラに言ってやるからな』
「フッ、安心しろ。ミラも一緒にハッスルカーニバルでフィーバーナイトだった」
『一緒にトラボルタだと!?クゥーー!何という羨まけしからん!!動画を所望する!』
「もうおじいちゃん腰が砕けそう」
『ファーーーーッッッッ○!!!そのまま砕けちまえ!!!ついでにモゲろ!!』
「HAHAHAHA!落ち着きたまえマイク、仕方ないな…ホラご覧?」
『こ…これは…a、a、a 、amazing…神は…いや、乳神様はここにいたんや…』
「有能な相棒で良かったな?オラ、国家機密資料あくしろよ」
『今送る、そしてちょっとトイレ行ってくる』
「その宣言は要らんわ、好きなだけ籠もってろ!またな」
プッ
さてさて。
送られてきたファイルをダウンロード、解凍し空中に展開させる。
フォン、という音と共に俺の目の前にデータが浮かび上がった。
ミラ達が俺の左右に椅子を移動させ、横から覗き込んできた。
てか、そろそろシャツを着て欲しい。俺の腕と肩に生々しいプニョっとした感触が…
「当ててんのよ」
「あれ?俺今声に出してました?」
「ダーリンの考えることなんてお見通しだっちゃ」
「その台詞は真顔で言うものではない筈だが」
「うーん、どれどれー?このファイルかな?」
「バニーもワザと当ててるよね?」
惑星ガイノスの第一次調査報告書は環境についてのデータから書かれている。
重力は地球と同程度。大気の状態は非常に安定しているが、酸素濃度は地球でいう白亜紀後期位らしい。
つまり、映像のドラゴンのような巨大生物が他にいてもおかしくはないということだ。
その証拠にドローンが撮影した生物データによるとそのサイズは軒並み大きかった。正にモンスター。
と言っても比較対象がないので、大きさの実感は湧かないが…
データからの予測とドローンが観察したモンスター達の生態から、その危険性はなかなかに恐ろしいものだった…報告書には『理想的には生物学者を派遣してより詳しい生態系の調査をして欲しい』と続いていた。
まあ、安全が確認されない限り誰も行きたくないだろうな…
続いて資源の調査書だ。残念ながら埋蔵量は計れていないが、その良く似た環境の状態から、地球で枯渇している希土類や資源はほぼ確実にあるだろうと書かれている。
それどころか未知の鉱石などがある可能性はかなり高いと予想されている。
もし発見されれば宇宙開発が捗るな、何せワープゲートと宇宙船の生産には希土類が欠かせない。
宇宙船を開発している企業に向けてこの情報が発表されたら飛びつくようにガイノスに行くだろう。それに、人が住める環境に出来れば地球が抱えるいくつかの問題がクリアされる。
政府や企業にとって希望の惑星だ。ただし…
「危険な巨大生物がいなければ、の話だな」
「そうね、あんなのに襲われたら人間なんて助からないわね。リターンは大きいけれど、リスクが高すぎるわ。これならガイノスより少し条件が悪くとも他の星を開発したほうがメリットが大きい」
「平和条約で武器の製造は禁止されてるから、間引こうにもどうすることも出来ないわね♪」
「うん、それこそハンティング・ワールドのハンター位の強靭な身体じゃないとな。生身で武器なしなんて無理ゲー……あれ?」
俺の思考は突然降ってきたアイデアに中断された。
懐かしいこの感覚。
遺伝子に組み込まれた俺の能力が数十年振りに目を覚ました。
「どうしたの?リョースケ。腰使い過ぎてギックリ来た?」
「いや砕けそうだけど違う…ちょっと待って……義体の問題は恐らくクリアだ…問題は武器…銃器は勿論ダメ…ブツブツ…だから当然?…フフ、そうなるな……生産職はどうする?…いや、長谷川達はむしろ喜ぶはずだ…ブツブツ…建物と…後は食糧か…じゃなきゃ楽しくないもんな…うん…ブツブツ」
「リョーちゃんが怖いわ、ミラ彼どうしちゃったの?」
「リョースケはじまったな」
「いや、全然意味が分からないのだけどミラ」
「ハンティング・ワールドのアイデアが出た時の様子にそっくりですねマスター」
「それってつまり?」
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「リョーちゃん、今まで見たことない表情してるわね」
「この顔に惚れたのよねー。悪戯したくなるわ」
「今は勘弁だミラ。それより、お母さんはまだ現役?」
「当然。相変わらずブリバリ働いているわ。繋ぐ?」
「よし、後で頼む。マリー、HALに繋いでくれ」
「イエス、マスター。少々お待ち下さい」
マリーの言う通り、ハンティング・ワールドを企画した当初のように次から次へとアイデアを実現する為のプランが湧いて来る。
そして、同時に確信する。
これはイケる!絶対に実現出来る!
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死んだように生きて来た人生に光が射した気がした。
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