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第二章 大罪人として

22.乗りかけた船にはためらわずに乗ってしまえ

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更新遅くなりました・・・・続きを読んでいただきありがとうございます。


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 俺はちらりと目の端でエフィルディス、エストの二人を見る。
サキュバスの女王の言葉を理解しているエフィルディスはやはり狼狽えた表情をしている。
エフィルディスはさっきまで俺には指舐めなんて変なことをさせて囃し立てていたが、さすがに他人事ではなくなってしまった今、そうなってしまうのは仕方のないことだ。
そして、そのエフィルディスの顔を見たエストは何かとんでもない条件を突き付けられているのだろうと察して、怪訝な表情で顔に影を作っている。
変に回りくどく説明した方がきっとよくない方向になりそうな気もしたから、俺は包み隠さずにエストにも説明した。
当然の様にエストの顔は羞恥に染まり、青緑の瞳孔を泳がせる。
あくまで想像でしかないのだが、きっとエストはまだ処女なのだろう。
この手の話に関してあまりにウブすぎる。
仮にもし、そうだとしたら初体験が俺で、しかも見られながらするなんて恥ずかしさに耐えきれるものではないだろう。
それ以前に、前提としてがまず無理だ。
エフィルディスもエストも善意でここまで協力してくれているだけで、俺とただの仲間以上の仲ではない。
それなのに、身体を重ねろなんて、どだい無理な話だ。

「リーズ女王。
確かに女王が言う通り、そうしなければならないというのはわかるけど・・・・、俺たちは恋人同士ではないんだ。
だから・・・・そういう事は難しい・・・・。」

 サキュバスの女王の言葉を賜ってから頭を巡らしている間に、実は結構時間が立っていたのだろう。
謁見の間の空気はひどく重いものになっていた。
俺はその雰囲気を壊すために口を開いた。
だが俺の言葉は、その言葉の意味は、これ以上先に進めないという事も物語っている。
マーカラを助ける手段がないということになってしまう。

「妾はそれでも構わんがの。また眠るだけじゃし。」

 他に方法などないし、方法を探すこと自体をする必要を感じない。
他人に対しての感情が希薄なサキュバスという種族だからなのか。
あっさりと話を打ち切ろうとする女王。
だが、それは俺にとってはとても困ったことだ。
俺は歯がゆさにギリリと歯を噛みしめた。

「お前は・・・・」

 小さな声がポツリ。
震えたような小さな声が聞こえたような気がした。
反射的に俺はその声の方を向く。

「お前は・・・・どう思っているんだ?
私・・・い、いや、私たちのどちらかと・・・、その・・・・そういう行為をしてもいいと思っているのか?」

 恥ずかしさに耐えながら、顔を少し伏せたまま、上目で俺を見て伝えてくる。
少しだけ勇気を出してくれて、そして俺に少しだけ期待と希望を預けてくれる、そんな眼差しだった。

「エスト・・・・。」

 思わず俺は名前をこぼす。
エストの視線に、心が熱くなるのを感じる。

「・・・・・この前言った通り、俺はエストの事が好きだし、当然そういう関係にもなりたいとも思う。」

 他の人には聞かれたら恥ずかしすぎるセリフなのは間違いない。
だが都合がいいことに、鷺の獣人の言葉になっているから、俺の今の言葉はエフィルディスには理解できない。
言葉と共に、俺は真っすぐに、真摯にエストを見る。

「・・・・・」

 数秒なのか、数分なのか、自分では判断できない間が流れた。
空間には音は散らばらず、外気の取り込み口からかすかに響く風の音だけだ。
それがはっきりと耳に入るほど、無言。
だがきっと、本人にはその風の音よりも自身の心臓の音がうるさくて、けたたましい騒音の中にでもいた気分だったろう。
顔を赤らめ、口から湯気でも吹きそうな面持ちでエストが静寂を破る。

「それ――――」

「私がやります!」

 一言、一言だけエストが何か言いかけた瞬間。
それに、被せるようにエフィルディスが声を上げた。
エストは驚いてエフィルディスを見る。
エストはエフィルディスの言葉がわからない。
だが、何か決意に満ちた言葉をエフィルディスが言ったことは空気で感じ取る。
エフィルディスは眉根を寄せて真剣な面持ちで俺を見つめていた。

「えっ・・・エフィルディス・・・?」

 俺も当然に驚いて言葉を漏らす。
俺にとってもエフィルディスの言葉がありえない、まさかの言葉だったのは間違いない。
俺とエストの雰囲気を察して、『そうはさせない』とばかりのずばぬけた強い言葉だ。
エフィルディスとエスト、お互いの言葉がわからない。
だからいろいろと疑心暗鬼になって、『負けたくない』と、ある意味競い合ってしまった、そんな風にも思える。

「むっふう♡
よい展開じゃな。一人の男を取り合って己の純潔を捧げるか。
よいぞっ、よいぞっ。興奮するのう。」

 予想以上の展開に一人興奮していくサキュバスの女王。
本人は茶化して楽しんでいるが、当事者3人には茶化されていることを尻目に、ますます真剣な雰囲気になっていく。

「あっ・・・ああっ・・・・。」

 もしかしたらエストは一大決心をして、大事な言葉を紡ごうとしたのかもしれない。
だがエフィルディスに水を差されてしまって気持ちが行き場を失い、完全に狼狽えてしまっている。

「私・・・あなたには負けたくありませんので。」

 言葉と共にエフィルディスがエストを睨みつけるかのように、しっかりと瞳に捉える。
狼狽えてしまっているし、言葉もわからないエストだが、エフィルディスの視線だけで真意を察せれるほどの強い眼差しだった。

「キチクさん。私とは、したくないですか?」

 少し残念そうに眉尻を下げ、濡れた子犬の様につぶらな瞳で俺を見るエフィルディス。
期待しているような、怯えているような、そんな雰囲気で唇を固く結ぶ。
だが、口角には陰が落ちていて、ほんのりと口の端が上がっている。
素直で朗らかなエフィルディスらしい、かわいらしい表情だ。

「もちろん、したくない、わけがない・・・。」

 エフィルディスの攻撃力満載の表情に押され、不覚にも俺はたじろいでしまう。
そんな俺に隙が出来たのは確かだ。
嬉しそうにさらに口角を上げて顔を緩ませたエフィルディスは、次の瞬間には俺の手を取っていた。

「ちょうどよく、寝台があります。そういうことですよね?」

 謁見の間なのに、なぜか寝台がある。
言われてみれば、全くもって不自然だ。
エフィルディスはそのまま俺を寝台まで連れていき、俺に抱き着きながら一緒に寝台に倒れこむ。

「あっ!ちょっ!――――エフィルディス!!」

 あれよあれよとエフィルディスのペースで事が進んでいく。

「むっふぁ!来た来た!
ここここ、これから!いいところ~♪」

 さらに興奮のゲージを上げて、一人食い入るリーズ女王。
もはやただのエロオヤジにしか見えない。

「キチクさん・・・。」

 寝台に倒れこんだ、俺とエフィルディス。
エフィルディスが仰向けになり、手は着いているから密着はしていないが俺が上に覆いかぶさってしまっている。
そんな真下から、艶っぽく、熱を帯びた視線が俺の心を貫く。
黄金色の瞳は濡れ輝き、長いまつ毛が落とす影がさらにその輝きのコントラストをはっきりと描き出す。
薄く開いた口からは、潤いを求めるかのように小さな舌がピチャリと唇を濡らす。
まさに誘う瞳、唇、そして興奮させる表情だ。

「キスして欲しいです・・・。」

 気持ちがまだたじろいだままで、動き出せずにいた俺に、エフィルディスがガイドを作る。
こんなところまで秘書キャラなのか。
見事すぎるアテンドだ。
俺は深く考えれないまま、言われるがまま、衝動のままにエフィルディスの口に触れる。
唇越しに感じるエフィルディスの唇の触感。
真っ白い肌に綺麗に映える淡い桃色は、ぷるると弾力がありつつ、柔らかい。
そして、それは中毒性を持っているのか、一度触れてしまっては止まらなくなってしまう。
唇を重ねる度に、頭の中が真っ白に塗られていく。
目の前のエフィルディスだけしか目に入らなくなっていく。
官能に目を細め、エフィルディス自身も情欲の虜になったその瞳が、さらに俺を虜にしていく。
赤らんだ頬の熱が、触れた皮膚からじんわりと伝わってくる。
唇ばかりを堪能していると真っ赤に蠢くものが触れてくる。
しっかりした触感のその赤は、柔らかい唇のカンフル剤の様に絡んでくる。
纏わり、絡み合う舌。
なんだかとても心地よくてずっとしたくなってしまう。
ふと、エフィルディスの手が俺の頬に触れる。
指が触れた部分が熱い。
まるで身体が火照ってます、熱いから脱ぎたいんです。そんな風に暗喩しているようだ。
これもまたエフィルディスのガイドなのか。
俺は視線に意識を戻し、エフィルディスと目を合わせる。
エフィルディスはコクリと小さく頷き、笑顔を浮かべた。
そして自身の左のわきの下に手を入れ、金属の肩当てのベルトを外す。
さらに右肩のベルトを外して同じ金属の胸当てを浮かせた。
俺はとても自然にその防具を身体から外した。
ガンメタの様にやや黒光りするその防具は見た目では思えないほど軽かった。
だが、とても丈夫そうだ。
エルフの技術力の高さの鱗辺が垣間見える。
俺はそのままエフィルディスの服のボタンを外す。
金属の胸当てで縛っていたから、緑の服には皺が寄っていて、体に密着している。
服の上からでも華奢という言葉がぴったりな細い身体の線。
そこに小ぶりな双丘がかわいらしく存在する。
俺はボタンをすべて外し、服の前側をはだけさせた。
誉め言葉で使う真っ白な肌。
よく使われる言葉だ。
エフィルディスはまさにそんな誉め言葉そのままの綺麗な肌だった。
肌の奥にうっすらと刺す赤みが肌を艶めかせ、そして透明感を演出している。
そして、服の中には胸当てはしていなかった。
手で覆えばすっぽりと収まってくれるサイズの小ぶりな胸が露わになったのだ。

「私・・・、胸が小さくて・・・・。喜んでもらえなかったら、ごめんなさい・・・・。」

 エフィルディスは申し訳なさそうな表情で、目を伏せる。
胸が小さいのはコンプレックスなのだろうか。
だけどそれよりも、残念に思ってしまうかもしれない、と相手の事を思って謝罪の言葉を口にできる。
これはとてもすごいことだ。
関心すると同時に、エフィルディスにさらに感情が入っていってしまう。

「謝ることなんてないよ。エフィルディスの胸、とてもかわいい。」

 言葉と共に俺はエフィルディスの胸の輪郭を優しく撫でた。
ピクリ、とかわいい双丘の上に立つ唇よりもさらに淡い桃色の突起が反応する。

「アッ・・・・」

 エフィルディスの口からも、艶を纏った吐息が漏れる。
耳障りのよい、とてもいい声だ。透き通ったいい声だ。
俺の興奮のボルテージもどんどん上がっていく。
もっと声が聴きたくて、さらに胸の周りを愛撫する。
輪郭を刺激し、乳房を少しずつ刺激する。
小さいのにとても張りがある乳房を指先で楽しむ。
なんの引っかかりも感じられない綺麗な皮膚、潤いのある皮膚を持つ乳房。
跳ね返ってくる弾力も気持ちよくて、揉むのが止められない。

「アッ・・・アアッ・・・・、やだぁ、キチクさん、優しい・・・。心も・・・手つきも・・・。」

 熱に溶け始めた目を向けてくるエフィルディス。
どんどんかわいく思えてくる。
こっちもかわいいなと思ってしまっている桃色の突起を軽くつまむ。

「アッ!イヤッ!」

 ビクリと、エフィルディスの身体が脊髄反射の様に弾けた。
本当に軽くつまんだだけなのに、かなりいい反応だ。
だいぶ興奮しているのだろう。
もう一度トライして突起をつまむ。
すると、先ほどはまだ起き上がっていなかったその突起は血が巡り、コリッとした触感に変わっていた。一瞬で立ったのだ。
そういえば聞いたことがある気がする。
胸が小さい女の子は感度がとてもいいと。
本当かどうかはどうでもいい話だが、エフィルディスは胸がかなり敏感なようだ。
突起に触れるたび、突起と共に乳房をまさぐるたび、恥じらいつつも響く嬌声はとても色めき立っていく。

「キチクさん・・・・き、気持ちいいです・・・・。もっとぉ・・・。」

 結構な恥じらいを見せつつも、おねだりしてくるエフィルディス。
もちろん、その期待に答えなければならない。
俺はその小ぶりな胸の先を口に含んだ。

「アアッ!!いいッ!――――」

 エフィルディスは目を瞑って顔をくしゃりと縮め、恍惚に声を上げる。
その声で俺もさらに興奮して舌で突起を弄ぶ。
弧を描くように舐め、突起を吸い、突起の付け根を愛撫する。
確かに他の女性に比べたら、胸は小さいかもしれないが、このコンパクトにいろいろまとまっている感じも何ともかわいくてたまらない。
そして、エフィルディスからはとてもいい匂いがするのだ。
鼻孔を刺激する、その官能的な匂いもまた、俺を昂らせる。

「むはああああ!素晴らしい!素晴らしい興奮じゃあ!
妾にも興奮が流れ込んでくるのじゃあ!」

 玉座に座るリーズ女王が賑やかす。
そんな声はもはや俺とエフィルディスには聞く耳を持てない。
俺たち二人はかなり興奮してしまっている。
ああ、なるほど。
まだし始めたばかりなのに、こんなに早く興奮してしまうのは、やはり。
誰かに見られているからなのか。
だからこんなにもエフィルディスは興奮しているという事もあるのだろう。
恥じらいというのはどうやらかなりの媚薬のようだ。
そのことを意識した瞬間に、俺の身体にも電流が流れたかのような錯覚が起きる。

俺も、他に人がいるのに、下半身丸出しにしてエッチしちゃうの??
二人で昂っているのを、他の人に冷静に見られちゃうの??

 ドクンと俺の下半身が疼いた。
どうやら、恥じらいというのは俺にも効く媚薬だったらしい。

「エフィルディス?・・・・見られるってもしかして・・・・気持ちいい??」

 俺は顔を上げてエフィルディスに向いた。
すでにかなり昂っていたエフィルディス。
ふと正気になって、目を丸くし、さらには顔を真っ赤にして恥じらうが、

「痴態を見られるのはもちろん恥ずかしい・・・。でも、でもごめんなさい。
今は・・・今はとても気持ちいいんです。」

 恥じらいという媚薬を取り込み、少しだけはにかみながら笑顔に花を咲かせた。



「待って・・・。」



 かすれたような声。
持てる勇気を全て振り絞ったような、最後の一声。
だけれど、しっかりとした意思を宿した声。
決して大きくはなかったはずのその声を、俺の耳が捉え、認識した。



カオスゲージ
Law and Order法と秩序 +++[65]++++++ Chaos混沌

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