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恋愛初心者とおしおき2
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「あ、あと……!?」
「この前、俺がつけただろ? あ、このままじゃ付けにくい? これも脱ごうか?」
いやいや、なにその変な親切心! 要りませんから脱がないでください、と全力で首を振る。
「じゃあほら」
「え、ちょっと待って。どうやるの?」
「――知らないのか?」
真剣な眼差しで聞かれて逆に動揺する。
「え、私の時代の保健の教科書には載ってなかったよ」
「いつの時代の保健の教科書にも載ってねぇよ」
ふは、と秀ちゃんが笑う。危うさを纏った瞳から険が削がれて、優しい手つきで私の手を掬い上げる。
「吸うんだよ、こうやって」
形のいい口が開いて、潤んだ粘膜が見えた。漆黒の瞳が私を見つめながらゆっくりと私の人差し指を口に含み、じゅっと少し強く吸った。
「ひゃっ」
指先がねっとりした舌の感触と軽く指を咥える歯の感触を生々しく拾い上げた。
「今のをもうちょっと強めにする感じ」
ちゅぱ、と私の指を解放した美形に脳が完全にキャパオーバーで真っ白になった。だからか、全然納得いっていないのに「うん」頷いてしまった。
「ほら」と再び襟元を人差し指で引っ張ったイケメンに逞しい身体を差し出されて、もはやなにがなんだか分からないままに、身体が秀ちゃんの命令に素直に動く。これが幼いころから染みついた習慣というやつなのだろうか。
秀ちゃんのしっとりした肌に唇を寄せて、ちゅっと吸ってみる。離れてみると全くついていなかった。もう一度試してみても、全くつかない。
「もっと強くしないとつかないって」
「そうなの?」
「もう一回やってみせようか?」
え? もう一回?
疑問に思った頃には、秀ちゃんの指は既に私の服の襟を指でズリ下げていた。秀麗な美貌が胸元に降りてきて、生温かい濡れた感触とともにゾワリとしたものが背筋を駆け上がる。
「あッ」
自分の口から洩れた恥ずかし過ぎる声に、慌てて手で口を押さえたけど、顔を上げた秀ちゃんが「変な声上げんなよ」とニヤリと笑った。
「それよりも、分かっただろ? 早く付けろよ」
しっとりとした肌に顔を寄せてもう一度思いっきりじゅ、と吸い付くと、今度こそ彼の肌に赤い痕がついた。秀ちゃんに自分の痕がついて、心の奥底がくすぐったくなるような愉悦感と満足感を覚えた。
「ちゃんとできたのが嬉しい? それとも、俺の身体に真白の痕が付いたのが嬉しい?」
ハッとして慌てて顔を取り繕ったけど、嬉しそうに口許を綻ばせてしまったのを指摘された後では今更だったかもしれない。
「ちゃんとできたからです」
あまりにも恥ずかしくって。つい口を突いて出た言葉は全然可愛げが無くって。言ったそばから自分で落ち込んでしまう。
「素直に言えばいいのに。俺のことが大好きだからキスマークが付いて嬉しいって」
「……っ!?」
「違ったか?」
意地悪く笑う美形の胸板に、「もうっ」とぐーパンチを食らわせる。
ドキドキするようなお仕置きをされて浮足立っていたのに、その日の夕食に秀ちゃんは言った。
「再来週の金曜日にマンションの残代金の決済したいと思うけど、真白の予定はどう?」
「……ちょっと待ってね。うん、大丈夫、だよ」
「そっか。じゃあ、それで予定組むな」
「うん、もしかして、再来週の土曜には引っ越し?」
「そうなるな。荷物もニューヨークから送ったやつしかないし」
秀ちゃんがここを出て行く日――期間限定の同棲の終わりの日が、決まってしまった。
「この前、俺がつけただろ? あ、このままじゃ付けにくい? これも脱ごうか?」
いやいや、なにその変な親切心! 要りませんから脱がないでください、と全力で首を振る。
「じゃあほら」
「え、ちょっと待って。どうやるの?」
「――知らないのか?」
真剣な眼差しで聞かれて逆に動揺する。
「え、私の時代の保健の教科書には載ってなかったよ」
「いつの時代の保健の教科書にも載ってねぇよ」
ふは、と秀ちゃんが笑う。危うさを纏った瞳から険が削がれて、優しい手つきで私の手を掬い上げる。
「吸うんだよ、こうやって」
形のいい口が開いて、潤んだ粘膜が見えた。漆黒の瞳が私を見つめながらゆっくりと私の人差し指を口に含み、じゅっと少し強く吸った。
「ひゃっ」
指先がねっとりした舌の感触と軽く指を咥える歯の感触を生々しく拾い上げた。
「今のをもうちょっと強めにする感じ」
ちゅぱ、と私の指を解放した美形に脳が完全にキャパオーバーで真っ白になった。だからか、全然納得いっていないのに「うん」頷いてしまった。
「ほら」と再び襟元を人差し指で引っ張ったイケメンに逞しい身体を差し出されて、もはやなにがなんだか分からないままに、身体が秀ちゃんの命令に素直に動く。これが幼いころから染みついた習慣というやつなのだろうか。
秀ちゃんのしっとりした肌に唇を寄せて、ちゅっと吸ってみる。離れてみると全くついていなかった。もう一度試してみても、全くつかない。
「もっと強くしないとつかないって」
「そうなの?」
「もう一回やってみせようか?」
え? もう一回?
疑問に思った頃には、秀ちゃんの指は既に私の服の襟を指でズリ下げていた。秀麗な美貌が胸元に降りてきて、生温かい濡れた感触とともにゾワリとしたものが背筋を駆け上がる。
「あッ」
自分の口から洩れた恥ずかし過ぎる声に、慌てて手で口を押さえたけど、顔を上げた秀ちゃんが「変な声上げんなよ」とニヤリと笑った。
「それよりも、分かっただろ? 早く付けろよ」
しっとりとした肌に顔を寄せてもう一度思いっきりじゅ、と吸い付くと、今度こそ彼の肌に赤い痕がついた。秀ちゃんに自分の痕がついて、心の奥底がくすぐったくなるような愉悦感と満足感を覚えた。
「ちゃんとできたのが嬉しい? それとも、俺の身体に真白の痕が付いたのが嬉しい?」
ハッとして慌てて顔を取り繕ったけど、嬉しそうに口許を綻ばせてしまったのを指摘された後では今更だったかもしれない。
「ちゃんとできたからです」
あまりにも恥ずかしくって。つい口を突いて出た言葉は全然可愛げが無くって。言ったそばから自分で落ち込んでしまう。
「素直に言えばいいのに。俺のことが大好きだからキスマークが付いて嬉しいって」
「……っ!?」
「違ったか?」
意地悪く笑う美形の胸板に、「もうっ」とぐーパンチを食らわせる。
ドキドキするようなお仕置きをされて浮足立っていたのに、その日の夕食に秀ちゃんは言った。
「再来週の金曜日にマンションの残代金の決済したいと思うけど、真白の予定はどう?」
「……ちょっと待ってね。うん、大丈夫、だよ」
「そっか。じゃあ、それで予定組むな」
「うん、もしかして、再来週の土曜には引っ越し?」
「そうなるな。荷物もニューヨークから送ったやつしかないし」
秀ちゃんがここを出て行く日――期間限定の同棲の終わりの日が、決まってしまった。
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