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第3章 ハルシュタイン将軍とサリヴァンの娘
58 懸念
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話を終えると、ユウヤはバティストを連れてアリシアの部屋を出ていった。彼らが訪れていた間、アリシアはクラウスに腰を抱かれ、密着したままだった。
「クラウス、一旦離してください。少し落ち着きたいです」
アリシアは人前で三十分もくっついていたと思うと顔が熱くなった。隠すようにやや俯いてクラウスにお願いする。
クラウスはすぐに手を離したので、アリシアは少し距離を置いて胸に手を当てる。ずっとドキドキしていたのだ。
「そろそろこういうのにも慣れてくれ」
「随分慣れてきたと思います。けど、仕方ないじゃないですか。クラウスを好きだから、どうしたって緊張します」
はー、とゆっくり息をついていると、クラウスが近寄る気配を感じた。
「アリシア」
名前を呼ばれて顔を上げると、目の前にクラウスの顔があった。そのまま近づいて唇が触れる。
アリシアは目を閉じて唇が触れ合う感触を味わう。それだけで胸はどんどん高鳴っていく。
一度ゆっくり触れた後、角度を変えて何度も触れる。クラウスの手がアリシアの首筋を支えると、クラウスは唇を舐め始めた。アリシアの下唇を舐め、唇で食む。食みながらまた唇を舐めて、アリシアの唇を濡らしていき、そしてアリシアの口内に舌が入ってくる。
「っう・・・」
ヌルリとした感触に、アリシアは声を上げた。クラウスはアリシアの舌を絡め取って戯れる。その感触に何度もアリシアは小さく呻いた。
ようやく唇が離れたので、アリシアは目を開ける。至近距離にあるクラウスの紫色の瞳と目が合った。
「君は、俺のものだ。やっと君に手が届いた。アイツには渡さない」
「アイツ・・・?」
囁やくクラウスの声とその内容に頭が痺れそうだ。アリシアは乱れた息と鼓動を整えようと息をつきながら、誰の事を言っているのか分からずに聞き返す。しかしクラウスは答えずに再びアリシアに口付けた。
「うっ・・・ん」
今度は目が合ったまま、舌を絡ませる。クラウスの瞳に熱がこもり始め、次第に欲が混じっていくのが分かった。その瞳を見つめて、アリシアの胸は甘く疼く。
長い口付けが終わる頃には、アリシアも欲に飲まれかけていた。
「このまま、君を襲いそうだ」
互いに息を乱して至近距離で見つめ合う。クラウスの中で、理性と欲情がせめぎ合っているのが窺える。そしてそれはアリシアも同じだった。
「好きです。クラウス、私は・・・」
「いや駄目だ」
アリシアの言葉を待たず、クラウスは離れて額に手を当てた。
「そうだ。晩餐があるんだった。・・・クソ」
「あ・・・そうでした」
急に現実に引き戻され、アリシアは全身が熱くなった。口元に手を当てて下を向く。大胆な発言をするところだった。
クラウスは大きくため息を付いて、アリシアには顔を向けずに口を開いた。
「バティスト殿だが」
「あ、はい」
アリシアは頬から手を離してクラウスへ顔を向ける。それに合わせてクラウスもアリシアへ視線を寄越し、まだ火照るアリシアの頬へ手を伸ばして撫でる。
「先程の反応とユウヤ殿の発言から考えるに、君に気があるようだ」
「・・・は?」
目の下を親指で撫でられて片目を瞑っていると、思いがけない言葉が聞こえてきて、つい聞き返した。
「精霊神が言っていたルアンキリ王家からの呼び出しも、君とバティスト殿の婚姻についてだろう」
「・・・え?」
「全く気付いてなかったんだろ」
「うっ・・・」
呆れた目を向けられ、思わず目を逸らす。言われた通り、そんな発想すら持ったことがなかった。
「心当たりがないと思うから一つずつ挙げていこうか。まず到着した時だ。バティスト殿がギルベルトに挨拶した後、君に微笑みかけた」
「・・・してましたね」
あれは久々に会ったからではないのか、とアリシアは疑問に思う。いやしかしあの冷徹王子がただの知り合いにそんなことをするだろうか。
「次にユウヤ殿の発言だ。二人共、と言っていた。俺とアリシアが共に気を付ける事はそれ程多くない。俺はバティスト殿ともユウヤ殿とも、完全に初対面だしな。そんなユウヤ殿から見た、俺達に共有する事。俺達の関係だ」
頬に手を当てられたまま目を合わせてそんな事を言われたので、アリシアは照れてしまう。しかしアリシアもそれしか思い当たることが無い。
「そしてこの部屋にバティスト殿が来た事。なんでユウヤ殿についてきたと思う?」
「え・・・さあ。特にこれといって話もされませんでしたし、会話に加わることもありませんでしたね」
何だったんだろうと、アリシアは首を捻る。
バティストは会話下手なんてことはない。話の持っていき方は上手だし、用事があるならちゃんと発言する人だ。彼は王族で軍の総帥なのだから、色々と求められることは多いし、それらに応えられる事もアリシアは知っている。
その様を見て、小さく息をつくとクラウスは答える。
「君に会いに来たんだ」
「え」
「部屋に入ってきて俺がいる事に気付いて顔を顰めていた」
「・・・してました」
「俺が君の腰に腕を回してるのを見て、しばらく君の顔を窺っていた。君が嫌がっていないか、確認したかったんだろう。君が照れてる間もチラチラ見てたぞ」
「・・・」
「寿命の話をしていた時も、急に婚約の確認をしただろう」
「あ、あれは私も結婚前提で話をしてると思いましたが・・・」
「そう捉えられるようにユウヤ殿が誘導してたからな。俺はどちらが先に寿命を迎えるかの話をしただけだ」
「・・・確かに。クラウスは一言も婚約や結婚の話はしていませんね」
「バティスト殿の反応を見る為に、ユウヤ殿の誘導に乗って今後を匂わせる発言をした。途端に反応しただろう」
「・・・してました」
「そしてユウヤ殿の発言だ。俺達の関係について賛成だと言っていた。その後エルトナと精霊神からも認められた、なんて話していた。全てバティスト殿への牽制だ」
「牽制・・・」
「アリシアから見て、ユウヤ殿は人の事に口出ししたり、神の威光を笠に着るような人柄か?」
「いえ、全く」
確かにそうだ、とアリシアは気付いた。ユウヤは気さくだが、人の恋愛や結婚にとやかく言うタイプではない。神の威光に至っては「ハヤトの威光?いらねぇ」とでも言うだろう。恥ずかしさで頭が一杯になっていたが、今になって考えると、先程の発言はあまり彼らしくない。クラウスの言う通りだ。
「推測だが、君が人類連合に戻ったことを知ったルアンキリ王家が、アリシアとバティスト殿の婚姻の話をしてきたんだ。だが帰って来た時の君には話せないと精霊神が判断した。だからエルフの里に滞在するように君に伝えた。そしてその話はユウヤ殿も耳にしていた」
「・・・だから、『二人共バティスト王子には油断するな』と・・・。その話をしに来たものの、バティスト殿下がついてきた事で出来なくなった。仕方なく牽制する方法に切り替えた、ということですか?」
「だろうな。それと同時に俺に気付かせたかったんだろう。俺とアリシアの事ばかり話してた」
クラウスはそう言うと、アリシアを見つめたまま眉をよせる。アリシアの頬に置いていた手を離し、再びアリシアの腰を引き寄せて抱きしめてきた。
「王家からの婚姻の申し出を、君は断れる立場にあるのか?」
「・・・・・・どうでしょう。強制されることはないと思いますが、外堀を埋められたら逃げられないかもしれません」
「サリヴァン将軍の娘で、終戦の最後の一押し。国民の受けはこの上ない程に良いだろう。王家なら喉から手が出る程欲しいんじゃないか?」
クラウスの言葉に、アリシアはハッとした。
(本当だわ・・・。ルアンキリ王家に限らず、欲しがる立場の人は大勢いる)
ゾワリと悪寒が走り、アリシアはクラウスの背中に腕を回して力を入れる。
「本当ですね・・・今気付きました。私の認識が甘かったようです」
「いや、俺も認識が甘かったな」
神聖ルアンキリ国の家に帰ったら求婚が殺到するかもしれない。全く気持ちのこもっていない、権力や名声のためだけの求婚が。
「名声欲しさの求愛も執着が強くて厄介だ。バティスト殿に至っては君を好きで、しかも君の国の王族。ルアンキリ王家がどう動くか、だな」
クラウスも同じことを考えていたようだ。アリシアを抱く腕の力を強めた。
アリシアは顔を上げてクラウスを見る。
「何か対策が出来ないか、2人で考えましょう。ユウヤ様も手伝ってくださるかもしれません」
「・・・確かに。誰も文句が言えないように、それこそ外堀を埋めていくしか無いな。君が気付いてないだけで、他にもバティスト殿のような男がいそうだ」
「・・・」
そこには何も言えず、アリシアは黙った。今のところ否定出来るような実績が皆無だ。
まだバティストが自分に好意を持っていると実感出来ないが、クラウスの解説を聞いた限りでは、アリシアにもそう判断できた。自分に恋愛感情を向ける男性が他にも本当にいるのだろうか。何人か思い出して検証してみるが、アリシアはすぐに断念した。全くもって分からない。
クラウスはアリシアから視線を外して考えを巡らせた後、再びアリシアへ視線を戻した。
「魔国はどうとでもなる。問題は人類連合だ。君の話とユウヤ殿の発言を考えれば、エルフは味方についてくれそうだな」
「はい。そこは間違いなく」
アリシアは頷く。エルフは半神半人であり、高い精神性を持っている。権力や名声、見栄などとは無縁であり、相手への無理強いもあり得ない。アリシアとクラウスが正直に話せば皆分かってくれるだろう。
「なら今からユウヤ殿の部屋に行こう。バティスト殿がいるかもしれないから、確認のためにも先に使いを出しておくか」
そう言って侍女デュカーを呼び出し、彼女以外の使用人に使いを出すように頼んだ。デュカーは先程バティストの前に出たので、顔を覚えられている可能性があるからだ。
しばらくするとデュカーが戻り、ユウヤからの了承を伝えてくれた。デュカーを下がらせると、クラウスは魔力を動かした。
「ギルベルト、迎賓館の中で認識阻害を使いたい。・・・・・・アホか。アリシアと一緒にユウヤ殿に会いに行くんだ。バティスト殿には秘密でな・・・ああ、分かってる」
認識阻害は許可なく私用に使えば罰される。クラウスは許可を得るために王宮にいるギルベルトへ伝達魔術を送っている。
(迎賓館から王宮まで、伝達魔術が届くのね)
迎賓館は王宮の敷地内に建てられているが、距離はそれなりにある。しかしクラウスは躊躇いもなく使ったので、元々この距離なら問題なく使えるのだろう。
アリシアが感心して眺めていると、伝達魔術を解いたクラウスが立ち上がった。
「ギルベルトの許可は得た。部屋を出る前に認識阻害をかける。・・・ああ、先にユウヤ殿にも伝えないと、部屋に入れてもらえんかもな」
苦笑してアリシアに手を差し出す。アリシアは認識阻害によって慌てるユウヤを想像し、ふふっと笑ってクラウスの手を取った。
そうしてバティストに会うことはなく、数人の使用人とすれ違っただけで、無事にユウヤの部屋に着いた。応接室のソファに座ると、ユウヤから口を開いた。
「で、どうした?」
「それが・・・」
アリシアが話を伝えると、ユウヤは頷いた。
「さすがハルシュタイン将軍。やっぱり話に聞いていた通りだったな。初対面だし無理かもしれねぇと思ったが、気付いてくれたか。ま、俺と親父で少し準備はしてきたから、安心しろ」
「・・・準備、ですか?」
「さっきも言ったが、元々お前の事をハヤトは心配してた。ハヤトが用意していたものを、今使うんだ」
アリシアは首を傾げる。精霊神が何を心配して、長コウキとユウヤがどんな準備をしてきたのだろうか。
「その顔は分かってねぇな。ハルシュタイン将軍も、人類連合でアリシアがどう見られてるかまでは知らねぇだろ」
そう言ってユウヤは説明を始めた。
「アリシアの家は長く続く軍人の名家サリヴァン。その中でも突出した傑物がお前の親父、オーウィンだ。人類連合の希望と言われた男の、唯一の娘が成人した。それがどう見られるか分かるか?」
「・・・まず考えるのは結婚ですね。父の血を取り入れたいと思う家もあるでしょうし、サリヴァン家と関係を繋ぎたい、もしくはより関係を深くしたいと思う家も。父の栄光に縋りたい、威光を使いたい、色々あると思います」
「そうだ。そしてお前のおふくろはカエデ。エルフだ。エルフは半神半人だからこそ、人類にとっては格上の存在で手を出しにくいらしい。だがお前はハーフだ。しかも容姿はカエデそっくり。エルフと言っても気付かれねぇだろうな」
「なるほど。純粋なエルフより手に入れやすいと思われてるのか」
クラウスの言葉にユウヤは頷く。
「エルフは容姿端麗だって有名だ。人類連合では10歳前後で必ず精霊と契約する。そこで皆エルフを見ているから、アリシアを見たことがない奴でも、見目麗しいってのが分かってる。そして世界で見てもハーフエルフは少ない。未婚の、しかも結婚適齢期のハーフエルフの女は今、アリシアだけだ」
「・・・アリシアだけ、なのか」
クラウスは目を見開いて驚いている。アリシアも言われて気付いた。確かにそうだ。
「サリヴァンの娘、ハーフエルフ。その二つがアリシアにはくっついて回る。その上、終戦の最後の一押し。それがきっかけで人類連合の全ての国がお前という存在を知った。アリシアを巡る取り合いが起きないわけがねぇ」
アリシアは急に不安になった。だから精霊神は心配していたのだ。そして、今は居ない。
「元々アリシアの気持ちが固まったら、外野から文句言われる前にさっさと結婚させるつもりだったんだ。まさかその相手が魔人、しかもあのハルシュタイン将軍になるとは予想もしてなかったけどな」
そこまで言うと、ユウヤはアリシアの不安そうな顔を見てニヤリとした。
「心配すんな。ハヤトが準備してたって言っただろ。手はある。というか、それがあるからハヤトはお前が終戦の最後の一押しだって公表したんだ」
アリシアはハッとした。
(そういえば、精霊神様は不満が出たから公表したと言ってた)
今ここにはクラウスがいるから話せないが、アリシアが魔国潜入中に流した情報は、各国上層部の一部が見ていた。それ故アリシアが潜入していた事も知られていた。
アリシアが一年で戻って来たことに不満が出た、とも話していた。今考えればアリシアへの結婚話はその時から既に出ていたのかもしれない。中にはアリシアの失敗を挙げ、それを弱みに結婚を強いてくる者もいただろう。
(だから『キッチリ絞めた』んだわ)
あの優しい精霊神が不満を言った程度でそんな事をするなんて、と思っていたのだ。
アリシアの評価を高めて、卑怯な手を伸ばしにくくする。そのために精霊神は終戦の最後の一押しだと公表した。求婚の数が増えたとしても対策があるから問題なかった、という事だ。
ユウヤは勝ち気な笑みに変えてクラウスへ視線を向けた。
「んで?一応確認だが、ハルシュタイン将軍はアリシアと結婚するつもりはあんのか?」
「もちろん」
「即答だな」
ユウヤはククッと楽しげに笑う。
アリシアは顔が熱くなる。当然と言いたげのクラウスに、嬉しさと共に胸がキュッとした。
「アリシアは?」
問われてアリシアは向かいに座るユウヤを見やり、考える。
使用人として働いている間に『彼から求婚を受けたけど、改めてこの人で大丈夫なのか不安で』という話を聞いたことがあった。それに対して年上の女性使用人は『不安が大きいならやめなさい。一時の感情で一生を決めたら駄目よ』と答えていた。
まだ再会してから2週間しか経っていない。知り合ってから一年も経っていない。そんな短期間で決めて良いのだろうか、と自分に問う。
アリシアは隣へ視線を向ける。緊張してこちらを見ているクラウスと目を合わせながら考える。
(・・・不思議)
アリシアはユウヤへ顔を戻した。
「私も、クラウスと結婚したいです」
自分でも理由は分からないが、何度考えてもそう思えてしまう。この人と一生を共にしたいと。
答えを聞いたユウヤは嬉しそうに笑う。
「そう言うと思ってたよ。アリシアとハルシュタイン将軍はさ。そうやって一緒に居る時の色っていうか、なんて言うんだろうな・・・波長?そういうもんがピッタリなんだよ」
「前に話されていた、魂の色ですか?」
「いや、ちょっと違う」
ユウヤは言いながらジッとアリシアとクラウスを眺める。不思議そうにしているクラウスに気付き、アリシアは説明することにした。
「エルフの長とユウヤ様は、人の魂の色が見えるそうです」
「・・・すごいな」
驚いた顔で言った後、クラウスはそういえば、という顔をしてユウヤへ視線を向ける。
「魔神エルトナがアリシアの魂が美しいから気に入っていた、と聞いたが。それと同じものが見えるって事か?」
「ああ、アリシアの魂の輝き方は凄いぞ。中心から外に向けて七色がほとばしる様に煌めいていて、でも穏やかなんだ。親父曰く『深い輝き』ってな。確かにその表現がしっくりくる」
「・・・・・・」
改めて言われて、アリシアはなんとなく胸に手を当てる。魂の輝きなんて全く感じられないが、なんとなく自分の体を見下ろしてしまう。
「深い輝き、か・・・。ちなみにユウヤ殿は私の魂も見えるのか?」
「見えるぜ。魂の話だから種族は関係ねぇ。んー・・・そうだな。どう表現すればいいか・・・」
ユウヤはクラウス全体を眺めてから口を開く。
「アリシア程じゃねぇが、なかなか面白い輝き方をしてんな。ハルシュタイン将軍にも虹彩は見える。それがずっしりしてるって言うか・・・安定してる。それでいてフッと何かを放つような輝き方っていうか・・・表現が難しいなー」
ユウヤは腕を組んでうーんと唸る。クラウスはアリシア同様、なんとなくといった顔で自分の体を見下ろしている。
「・・・そうか。まあ、私の魂の色は置いといて」
自分を見下ろしていたクラウスはユウヤへと視線を戻した。
「波長みたいなものがピッタリだと、何かあるのか?」
「ああ、相性がいいんだよ。稀に見る程度だけどな。こういう場合は結婚した後もずっと良い関係が続く。オーウィンとカエデもそうだった」
「父さんと母さんが・・・」
「出会ってからの時間は関係ねぇ。だから安心しろ。ハルシュタイン将軍とアリシアは上手く行くから。俺が保証する」
そう言うと、ユウヤはニコニコと笑みを浮かべ、組んでいた腕を解いて膝にパンと軽く音を立てて手を置いた。
「ま。そんなわけで、まずはハルシュタイン将軍とアリシアの婚約だな。事後報告じゃ不満が上がる。恐らくエルフでも抑えきれない程のな。だから公表する」
「・・・でも邪魔が入るのでは?」
アリシアが不安そうに眉を寄せて問うと、ユウヤは頷いた。
「アリシアがルアンキリに帰国後、婚約発表する。その時期はまた改めて考えるが、そうすれば不満や抗議が絶対に出てくる。そん時にハヤトが用意してたものを使うんだ」
機嫌良さそうに言い放つユウヤに、アリシアはクラウスと顔を見合わせた。
「クラウス、一旦離してください。少し落ち着きたいです」
アリシアは人前で三十分もくっついていたと思うと顔が熱くなった。隠すようにやや俯いてクラウスにお願いする。
クラウスはすぐに手を離したので、アリシアは少し距離を置いて胸に手を当てる。ずっとドキドキしていたのだ。
「そろそろこういうのにも慣れてくれ」
「随分慣れてきたと思います。けど、仕方ないじゃないですか。クラウスを好きだから、どうしたって緊張します」
はー、とゆっくり息をついていると、クラウスが近寄る気配を感じた。
「アリシア」
名前を呼ばれて顔を上げると、目の前にクラウスの顔があった。そのまま近づいて唇が触れる。
アリシアは目を閉じて唇が触れ合う感触を味わう。それだけで胸はどんどん高鳴っていく。
一度ゆっくり触れた後、角度を変えて何度も触れる。クラウスの手がアリシアの首筋を支えると、クラウスは唇を舐め始めた。アリシアの下唇を舐め、唇で食む。食みながらまた唇を舐めて、アリシアの唇を濡らしていき、そしてアリシアの口内に舌が入ってくる。
「っう・・・」
ヌルリとした感触に、アリシアは声を上げた。クラウスはアリシアの舌を絡め取って戯れる。その感触に何度もアリシアは小さく呻いた。
ようやく唇が離れたので、アリシアは目を開ける。至近距離にあるクラウスの紫色の瞳と目が合った。
「君は、俺のものだ。やっと君に手が届いた。アイツには渡さない」
「アイツ・・・?」
囁やくクラウスの声とその内容に頭が痺れそうだ。アリシアは乱れた息と鼓動を整えようと息をつきながら、誰の事を言っているのか分からずに聞き返す。しかしクラウスは答えずに再びアリシアに口付けた。
「うっ・・・ん」
今度は目が合ったまま、舌を絡ませる。クラウスの瞳に熱がこもり始め、次第に欲が混じっていくのが分かった。その瞳を見つめて、アリシアの胸は甘く疼く。
長い口付けが終わる頃には、アリシアも欲に飲まれかけていた。
「このまま、君を襲いそうだ」
互いに息を乱して至近距離で見つめ合う。クラウスの中で、理性と欲情がせめぎ合っているのが窺える。そしてそれはアリシアも同じだった。
「好きです。クラウス、私は・・・」
「いや駄目だ」
アリシアの言葉を待たず、クラウスは離れて額に手を当てた。
「そうだ。晩餐があるんだった。・・・クソ」
「あ・・・そうでした」
急に現実に引き戻され、アリシアは全身が熱くなった。口元に手を当てて下を向く。大胆な発言をするところだった。
クラウスは大きくため息を付いて、アリシアには顔を向けずに口を開いた。
「バティスト殿だが」
「あ、はい」
アリシアは頬から手を離してクラウスへ顔を向ける。それに合わせてクラウスもアリシアへ視線を寄越し、まだ火照るアリシアの頬へ手を伸ばして撫でる。
「先程の反応とユウヤ殿の発言から考えるに、君に気があるようだ」
「・・・は?」
目の下を親指で撫でられて片目を瞑っていると、思いがけない言葉が聞こえてきて、つい聞き返した。
「精霊神が言っていたルアンキリ王家からの呼び出しも、君とバティスト殿の婚姻についてだろう」
「・・・え?」
「全く気付いてなかったんだろ」
「うっ・・・」
呆れた目を向けられ、思わず目を逸らす。言われた通り、そんな発想すら持ったことがなかった。
「心当たりがないと思うから一つずつ挙げていこうか。まず到着した時だ。バティスト殿がギルベルトに挨拶した後、君に微笑みかけた」
「・・・してましたね」
あれは久々に会ったからではないのか、とアリシアは疑問に思う。いやしかしあの冷徹王子がただの知り合いにそんなことをするだろうか。
「次にユウヤ殿の発言だ。二人共、と言っていた。俺とアリシアが共に気を付ける事はそれ程多くない。俺はバティスト殿ともユウヤ殿とも、完全に初対面だしな。そんなユウヤ殿から見た、俺達に共有する事。俺達の関係だ」
頬に手を当てられたまま目を合わせてそんな事を言われたので、アリシアは照れてしまう。しかしアリシアもそれしか思い当たることが無い。
「そしてこの部屋にバティスト殿が来た事。なんでユウヤ殿についてきたと思う?」
「え・・・さあ。特にこれといって話もされませんでしたし、会話に加わることもありませんでしたね」
何だったんだろうと、アリシアは首を捻る。
バティストは会話下手なんてことはない。話の持っていき方は上手だし、用事があるならちゃんと発言する人だ。彼は王族で軍の総帥なのだから、色々と求められることは多いし、それらに応えられる事もアリシアは知っている。
その様を見て、小さく息をつくとクラウスは答える。
「君に会いに来たんだ」
「え」
「部屋に入ってきて俺がいる事に気付いて顔を顰めていた」
「・・・してました」
「俺が君の腰に腕を回してるのを見て、しばらく君の顔を窺っていた。君が嫌がっていないか、確認したかったんだろう。君が照れてる間もチラチラ見てたぞ」
「・・・」
「寿命の話をしていた時も、急に婚約の確認をしただろう」
「あ、あれは私も結婚前提で話をしてると思いましたが・・・」
「そう捉えられるようにユウヤ殿が誘導してたからな。俺はどちらが先に寿命を迎えるかの話をしただけだ」
「・・・確かに。クラウスは一言も婚約や結婚の話はしていませんね」
「バティスト殿の反応を見る為に、ユウヤ殿の誘導に乗って今後を匂わせる発言をした。途端に反応しただろう」
「・・・してました」
「そしてユウヤ殿の発言だ。俺達の関係について賛成だと言っていた。その後エルトナと精霊神からも認められた、なんて話していた。全てバティスト殿への牽制だ」
「牽制・・・」
「アリシアから見て、ユウヤ殿は人の事に口出ししたり、神の威光を笠に着るような人柄か?」
「いえ、全く」
確かにそうだ、とアリシアは気付いた。ユウヤは気さくだが、人の恋愛や結婚にとやかく言うタイプではない。神の威光に至っては「ハヤトの威光?いらねぇ」とでも言うだろう。恥ずかしさで頭が一杯になっていたが、今になって考えると、先程の発言はあまり彼らしくない。クラウスの言う通りだ。
「推測だが、君が人類連合に戻ったことを知ったルアンキリ王家が、アリシアとバティスト殿の婚姻の話をしてきたんだ。だが帰って来た時の君には話せないと精霊神が判断した。だからエルフの里に滞在するように君に伝えた。そしてその話はユウヤ殿も耳にしていた」
「・・・だから、『二人共バティスト王子には油断するな』と・・・。その話をしに来たものの、バティスト殿下がついてきた事で出来なくなった。仕方なく牽制する方法に切り替えた、ということですか?」
「だろうな。それと同時に俺に気付かせたかったんだろう。俺とアリシアの事ばかり話してた」
クラウスはそう言うと、アリシアを見つめたまま眉をよせる。アリシアの頬に置いていた手を離し、再びアリシアの腰を引き寄せて抱きしめてきた。
「王家からの婚姻の申し出を、君は断れる立場にあるのか?」
「・・・・・・どうでしょう。強制されることはないと思いますが、外堀を埋められたら逃げられないかもしれません」
「サリヴァン将軍の娘で、終戦の最後の一押し。国民の受けはこの上ない程に良いだろう。王家なら喉から手が出る程欲しいんじゃないか?」
クラウスの言葉に、アリシアはハッとした。
(本当だわ・・・。ルアンキリ王家に限らず、欲しがる立場の人は大勢いる)
ゾワリと悪寒が走り、アリシアはクラウスの背中に腕を回して力を入れる。
「本当ですね・・・今気付きました。私の認識が甘かったようです」
「いや、俺も認識が甘かったな」
神聖ルアンキリ国の家に帰ったら求婚が殺到するかもしれない。全く気持ちのこもっていない、権力や名声のためだけの求婚が。
「名声欲しさの求愛も執着が強くて厄介だ。バティスト殿に至っては君を好きで、しかも君の国の王族。ルアンキリ王家がどう動くか、だな」
クラウスも同じことを考えていたようだ。アリシアを抱く腕の力を強めた。
アリシアは顔を上げてクラウスを見る。
「何か対策が出来ないか、2人で考えましょう。ユウヤ様も手伝ってくださるかもしれません」
「・・・確かに。誰も文句が言えないように、それこそ外堀を埋めていくしか無いな。君が気付いてないだけで、他にもバティスト殿のような男がいそうだ」
「・・・」
そこには何も言えず、アリシアは黙った。今のところ否定出来るような実績が皆無だ。
まだバティストが自分に好意を持っていると実感出来ないが、クラウスの解説を聞いた限りでは、アリシアにもそう判断できた。自分に恋愛感情を向ける男性が他にも本当にいるのだろうか。何人か思い出して検証してみるが、アリシアはすぐに断念した。全くもって分からない。
クラウスはアリシアから視線を外して考えを巡らせた後、再びアリシアへ視線を戻した。
「魔国はどうとでもなる。問題は人類連合だ。君の話とユウヤ殿の発言を考えれば、エルフは味方についてくれそうだな」
「はい。そこは間違いなく」
アリシアは頷く。エルフは半神半人であり、高い精神性を持っている。権力や名声、見栄などとは無縁であり、相手への無理強いもあり得ない。アリシアとクラウスが正直に話せば皆分かってくれるだろう。
「なら今からユウヤ殿の部屋に行こう。バティスト殿がいるかもしれないから、確認のためにも先に使いを出しておくか」
そう言って侍女デュカーを呼び出し、彼女以外の使用人に使いを出すように頼んだ。デュカーは先程バティストの前に出たので、顔を覚えられている可能性があるからだ。
しばらくするとデュカーが戻り、ユウヤからの了承を伝えてくれた。デュカーを下がらせると、クラウスは魔力を動かした。
「ギルベルト、迎賓館の中で認識阻害を使いたい。・・・・・・アホか。アリシアと一緒にユウヤ殿に会いに行くんだ。バティスト殿には秘密でな・・・ああ、分かってる」
認識阻害は許可なく私用に使えば罰される。クラウスは許可を得るために王宮にいるギルベルトへ伝達魔術を送っている。
(迎賓館から王宮まで、伝達魔術が届くのね)
迎賓館は王宮の敷地内に建てられているが、距離はそれなりにある。しかしクラウスは躊躇いもなく使ったので、元々この距離なら問題なく使えるのだろう。
アリシアが感心して眺めていると、伝達魔術を解いたクラウスが立ち上がった。
「ギルベルトの許可は得た。部屋を出る前に認識阻害をかける。・・・ああ、先にユウヤ殿にも伝えないと、部屋に入れてもらえんかもな」
苦笑してアリシアに手を差し出す。アリシアは認識阻害によって慌てるユウヤを想像し、ふふっと笑ってクラウスの手を取った。
そうしてバティストに会うことはなく、数人の使用人とすれ違っただけで、無事にユウヤの部屋に着いた。応接室のソファに座ると、ユウヤから口を開いた。
「で、どうした?」
「それが・・・」
アリシアが話を伝えると、ユウヤは頷いた。
「さすがハルシュタイン将軍。やっぱり話に聞いていた通りだったな。初対面だし無理かもしれねぇと思ったが、気付いてくれたか。ま、俺と親父で少し準備はしてきたから、安心しろ」
「・・・準備、ですか?」
「さっきも言ったが、元々お前の事をハヤトは心配してた。ハヤトが用意していたものを、今使うんだ」
アリシアは首を傾げる。精霊神が何を心配して、長コウキとユウヤがどんな準備をしてきたのだろうか。
「その顔は分かってねぇな。ハルシュタイン将軍も、人類連合でアリシアがどう見られてるかまでは知らねぇだろ」
そう言ってユウヤは説明を始めた。
「アリシアの家は長く続く軍人の名家サリヴァン。その中でも突出した傑物がお前の親父、オーウィンだ。人類連合の希望と言われた男の、唯一の娘が成人した。それがどう見られるか分かるか?」
「・・・まず考えるのは結婚ですね。父の血を取り入れたいと思う家もあるでしょうし、サリヴァン家と関係を繋ぎたい、もしくはより関係を深くしたいと思う家も。父の栄光に縋りたい、威光を使いたい、色々あると思います」
「そうだ。そしてお前のおふくろはカエデ。エルフだ。エルフは半神半人だからこそ、人類にとっては格上の存在で手を出しにくいらしい。だがお前はハーフだ。しかも容姿はカエデそっくり。エルフと言っても気付かれねぇだろうな」
「なるほど。純粋なエルフより手に入れやすいと思われてるのか」
クラウスの言葉にユウヤは頷く。
「エルフは容姿端麗だって有名だ。人類連合では10歳前後で必ず精霊と契約する。そこで皆エルフを見ているから、アリシアを見たことがない奴でも、見目麗しいってのが分かってる。そして世界で見てもハーフエルフは少ない。未婚の、しかも結婚適齢期のハーフエルフの女は今、アリシアだけだ」
「・・・アリシアだけ、なのか」
クラウスは目を見開いて驚いている。アリシアも言われて気付いた。確かにそうだ。
「サリヴァンの娘、ハーフエルフ。その二つがアリシアにはくっついて回る。その上、終戦の最後の一押し。それがきっかけで人類連合の全ての国がお前という存在を知った。アリシアを巡る取り合いが起きないわけがねぇ」
アリシアは急に不安になった。だから精霊神は心配していたのだ。そして、今は居ない。
「元々アリシアの気持ちが固まったら、外野から文句言われる前にさっさと結婚させるつもりだったんだ。まさかその相手が魔人、しかもあのハルシュタイン将軍になるとは予想もしてなかったけどな」
そこまで言うと、ユウヤはアリシアの不安そうな顔を見てニヤリとした。
「心配すんな。ハヤトが準備してたって言っただろ。手はある。というか、それがあるからハヤトはお前が終戦の最後の一押しだって公表したんだ」
アリシアはハッとした。
(そういえば、精霊神様は不満が出たから公表したと言ってた)
今ここにはクラウスがいるから話せないが、アリシアが魔国潜入中に流した情報は、各国上層部の一部が見ていた。それ故アリシアが潜入していた事も知られていた。
アリシアが一年で戻って来たことに不満が出た、とも話していた。今考えればアリシアへの結婚話はその時から既に出ていたのかもしれない。中にはアリシアの失敗を挙げ、それを弱みに結婚を強いてくる者もいただろう。
(だから『キッチリ絞めた』んだわ)
あの優しい精霊神が不満を言った程度でそんな事をするなんて、と思っていたのだ。
アリシアの評価を高めて、卑怯な手を伸ばしにくくする。そのために精霊神は終戦の最後の一押しだと公表した。求婚の数が増えたとしても対策があるから問題なかった、という事だ。
ユウヤは勝ち気な笑みに変えてクラウスへ視線を向けた。
「んで?一応確認だが、ハルシュタイン将軍はアリシアと結婚するつもりはあんのか?」
「もちろん」
「即答だな」
ユウヤはククッと楽しげに笑う。
アリシアは顔が熱くなる。当然と言いたげのクラウスに、嬉しさと共に胸がキュッとした。
「アリシアは?」
問われてアリシアは向かいに座るユウヤを見やり、考える。
使用人として働いている間に『彼から求婚を受けたけど、改めてこの人で大丈夫なのか不安で』という話を聞いたことがあった。それに対して年上の女性使用人は『不安が大きいならやめなさい。一時の感情で一生を決めたら駄目よ』と答えていた。
まだ再会してから2週間しか経っていない。知り合ってから一年も経っていない。そんな短期間で決めて良いのだろうか、と自分に問う。
アリシアは隣へ視線を向ける。緊張してこちらを見ているクラウスと目を合わせながら考える。
(・・・不思議)
アリシアはユウヤへ顔を戻した。
「私も、クラウスと結婚したいです」
自分でも理由は分からないが、何度考えてもそう思えてしまう。この人と一生を共にしたいと。
答えを聞いたユウヤは嬉しそうに笑う。
「そう言うと思ってたよ。アリシアとハルシュタイン将軍はさ。そうやって一緒に居る時の色っていうか、なんて言うんだろうな・・・波長?そういうもんがピッタリなんだよ」
「前に話されていた、魂の色ですか?」
「いや、ちょっと違う」
ユウヤは言いながらジッとアリシアとクラウスを眺める。不思議そうにしているクラウスに気付き、アリシアは説明することにした。
「エルフの長とユウヤ様は、人の魂の色が見えるそうです」
「・・・すごいな」
驚いた顔で言った後、クラウスはそういえば、という顔をしてユウヤへ視線を向ける。
「魔神エルトナがアリシアの魂が美しいから気に入っていた、と聞いたが。それと同じものが見えるって事か?」
「ああ、アリシアの魂の輝き方は凄いぞ。中心から外に向けて七色がほとばしる様に煌めいていて、でも穏やかなんだ。親父曰く『深い輝き』ってな。確かにその表現がしっくりくる」
「・・・・・・」
改めて言われて、アリシアはなんとなく胸に手を当てる。魂の輝きなんて全く感じられないが、なんとなく自分の体を見下ろしてしまう。
「深い輝き、か・・・。ちなみにユウヤ殿は私の魂も見えるのか?」
「見えるぜ。魂の話だから種族は関係ねぇ。んー・・・そうだな。どう表現すればいいか・・・」
ユウヤはクラウス全体を眺めてから口を開く。
「アリシア程じゃねぇが、なかなか面白い輝き方をしてんな。ハルシュタイン将軍にも虹彩は見える。それがずっしりしてるって言うか・・・安定してる。それでいてフッと何かを放つような輝き方っていうか・・・表現が難しいなー」
ユウヤは腕を組んでうーんと唸る。クラウスはアリシア同様、なんとなくといった顔で自分の体を見下ろしている。
「・・・そうか。まあ、私の魂の色は置いといて」
自分を見下ろしていたクラウスはユウヤへと視線を戻した。
「波長みたいなものがピッタリだと、何かあるのか?」
「ああ、相性がいいんだよ。稀に見る程度だけどな。こういう場合は結婚した後もずっと良い関係が続く。オーウィンとカエデもそうだった」
「父さんと母さんが・・・」
「出会ってからの時間は関係ねぇ。だから安心しろ。ハルシュタイン将軍とアリシアは上手く行くから。俺が保証する」
そう言うと、ユウヤはニコニコと笑みを浮かべ、組んでいた腕を解いて膝にパンと軽く音を立てて手を置いた。
「ま。そんなわけで、まずはハルシュタイン将軍とアリシアの婚約だな。事後報告じゃ不満が上がる。恐らくエルフでも抑えきれない程のな。だから公表する」
「・・・でも邪魔が入るのでは?」
アリシアが不安そうに眉を寄せて問うと、ユウヤは頷いた。
「アリシアがルアンキリに帰国後、婚約発表する。その時期はまた改めて考えるが、そうすれば不満や抗議が絶対に出てくる。そん時にハヤトが用意してたものを使うんだ」
機嫌良さそうに言い放つユウヤに、アリシアはクラウスと顔を見合わせた。
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