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2 兎の伝説と失われた月
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遙か昔、月に棲む兎が秘伝の薬壺を倒してしまった。
とくとくと流れ出たそれはやがて月の大地をすっかり満たし、溢れた妙薬は訪れた箒星に乗って、なんと地上にまで伝い降りた。
慌てた兎も転がり落ちて、薬の上を跳ね回る。
そうして踏み固められた薬が、大地になった。
これが、この国に住む私たちが幼い頃に聞かされている、建国のお伽話。
これが真実だとするならば、私達は、月の加護を踏みしめて暮らしている。
先代の皇帝陛下が崩御されて国が乱れた。
しかし、あるひとりの青年が後ろ盾を得て即位する。
諍いの世を捨て、手を取り合い国を発展させていこうと希望に満ちた演説を響かせた彼だったが──この若き帝の治世は、前途多難なようだ。
だって、ある夜を境に、月は空から姿を消したのだから。
朔も、弓張も、望もない。
空には月の欠片にも満たぬ光しか持たぬ星々が、溜息とともに撒き散らされているばかり。
こうなっては月の妙薬から成る国土が荒れるのは、当然と言えば当然だ。
光を失った夜空の下で人心は乱れ出す。
いかにして月を取り戻すべきか──新帝とその優秀な側近達は、今も頭を悩ませている。
とくとくと流れ出たそれはやがて月の大地をすっかり満たし、溢れた妙薬は訪れた箒星に乗って、なんと地上にまで伝い降りた。
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これが、この国に住む私たちが幼い頃に聞かされている、建国のお伽話。
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しかし、あるひとりの青年が後ろ盾を得て即位する。
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だって、ある夜を境に、月は空から姿を消したのだから。
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こうなっては月の妙薬から成る国土が荒れるのは、当然と言えば当然だ。
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いかにして月を取り戻すべきか──新帝とその優秀な側近達は、今も頭を悩ませている。
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