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02.茶番は終わり
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「まあ……そんな……」
レオノールは驚きながら花束を眺め、続いて大きく顔をそらす。
会場の入り口にまで視線を向け、ゆっくりと顔を戻した。
「やはり……受け取れませんわ」
「何故ですか? まだ互いを知らぬというのなら、これからゆっくりと知っていけばよいのです」
「……わたくし、オテロ殿下とはほとんどお話ししたこともございません。それなのに、何故……」
「陰ながら、あなたを見ておりました。この深紅の薔薇にも負けぬ美貌、そして常に凜とした立ち居振る舞い、なんと素晴らしい方だと思っておりました」
拒絶するレオノールだが、オテロは愛を囁き続ける。
突然の事態に固まっていたエリザが、そのやり取りを見て、わなわなと震え出した。
「どっ……どういうことですか!? レオノールさまみたいな、可愛げのない女に求婚するなんて、おかしいでしょう!? この場の主人公は、私なんですよ! 私を見なきゃダメなんです!」
エリザが喚き出す。
オテロが、それに呆れた眼差しを向ける。
「……あなたは、イヴァン殿下と婚約するのでしょう? ならば、私たちのことなど、どうでもよろしいのでは?」
「で……でもっ! それとは話が別なんです!」
辛辣な物言いをするオテロだが、エリザはさらに食ってかかる。
レオノールがこっそりため息を漏らしていると、会場の入り口に騎士たちが駆け込んできた。
物々しい雰囲気に、人々は今度は何事かと息をのむ。
「オテロ王子の部屋から、魔術薬が発見されました! エリザ嬢の部屋から発見されたものと同じです!」
騎士の一人が声を張り上げる。
すると、オテロはしばし唖然とした後、顔を歪め、唇を噛みしめた。
エリザは何も分からないといった顔で突っ立っている。
「……そういうことだったか」
イヴァンがため息を漏らしながら、しがみついていたエリザを引き離す。
「え……? 殿下……?」
愕然とした顔をするエリザだが、イヴァンはエリザには目もくれず、レオノールの元へとやってくる。
「さて、茶番は終わりだ。婚約破棄も、エリザ嬢とのことも、全てでたらめだ。そもそも、婚約破棄を私の一存で決められるわけがない」
「……まさか、婚約破棄を真に受けて求婚してくるとは、驚きでしたわ。花束まで準備しているなど、用意周到すぎて疑ってくれといわんばかりですわよ」
イヴァンとレオノールは、これまでの言い合いが嘘のように寄り添う。
「え? え? どういうことですか? 殿下は、可愛い私に心を奪われて、レオノールさまを捨てることにしたのですよね? なのに、どうして?」
まったく状況についていけない様子で、エリザが呆然と呟く。
「エリザ嬢が魔術薬を使い、男子生徒たちを虜にしていたことは調べがついている。私には特に周到に使い、妃の座を狙ったこともな。あいにくだが、私はエリザ嬢に対して特別な感情などない」
「魔術薬の出所がわからなくて、しばらく泳がせておいていましたのよ。まさか、オテロ殿下と通じているとは思いませんでしたわ」
イヴァンとレオノールが説明するが、それでもエリザは心当たりがないといったように、首を横に振る。
「そんな……私は、『あなたのファンから』と差し入れがあった美容薬を飲んだだけよ……特に仲良くなりたい相手と一緒に飲むとよいお茶っていうのを殿下と飲んだけれど、それだってただのおまじないでしょう……?」
愕然と呟くエリザの言葉に、イヴァンとレオノールは顔を見合わせる。
二人の予想とは、食い違いが出ているようだ。
「男子生徒のみんなだって、私の魅力に虜になっただけでしょう……? そんな……魔術薬のせいだなんて嘘よ! 私が可愛いからでしょう!? こんなの、おかしいわよ! どうして! どうして……!?」
地団駄を踏んで、エリザは叫び出す。
「レオノール嬢、これは何かの陰謀です! そうだ、この身の程知らずの勘違いした小娘が、仕組んだに決まっています! 私だけが、あなたと真実の愛を育めるのです! 騙されないでください!」
「な……何を言っているのよ! 私は、あんたなんて知らないわよ! わけのわからないこと言わないでよ!」
「黙れ、貧相な小娘が!」
「何よ、あんたこそ気障な勘違い野郎でしょうが!」
オテロも喚きだし、さらにエリザが応戦して罵り合いに発展していく。
もはや、めちゃくちゃだ。
「殿下! 殿下ぁぁぁ……!」
「レオノール嬢! レオノール嬢……!」
やがて、暴れるエリザとオテロは騎士たちに取り押さえられ、連行されていった。
レオノールは驚きながら花束を眺め、続いて大きく顔をそらす。
会場の入り口にまで視線を向け、ゆっくりと顔を戻した。
「やはり……受け取れませんわ」
「何故ですか? まだ互いを知らぬというのなら、これからゆっくりと知っていけばよいのです」
「……わたくし、オテロ殿下とはほとんどお話ししたこともございません。それなのに、何故……」
「陰ながら、あなたを見ておりました。この深紅の薔薇にも負けぬ美貌、そして常に凜とした立ち居振る舞い、なんと素晴らしい方だと思っておりました」
拒絶するレオノールだが、オテロは愛を囁き続ける。
突然の事態に固まっていたエリザが、そのやり取りを見て、わなわなと震え出した。
「どっ……どういうことですか!? レオノールさまみたいな、可愛げのない女に求婚するなんて、おかしいでしょう!? この場の主人公は、私なんですよ! 私を見なきゃダメなんです!」
エリザが喚き出す。
オテロが、それに呆れた眼差しを向ける。
「……あなたは、イヴァン殿下と婚約するのでしょう? ならば、私たちのことなど、どうでもよろしいのでは?」
「で……でもっ! それとは話が別なんです!」
辛辣な物言いをするオテロだが、エリザはさらに食ってかかる。
レオノールがこっそりため息を漏らしていると、会場の入り口に騎士たちが駆け込んできた。
物々しい雰囲気に、人々は今度は何事かと息をのむ。
「オテロ王子の部屋から、魔術薬が発見されました! エリザ嬢の部屋から発見されたものと同じです!」
騎士の一人が声を張り上げる。
すると、オテロはしばし唖然とした後、顔を歪め、唇を噛みしめた。
エリザは何も分からないといった顔で突っ立っている。
「……そういうことだったか」
イヴァンがため息を漏らしながら、しがみついていたエリザを引き離す。
「え……? 殿下……?」
愕然とした顔をするエリザだが、イヴァンはエリザには目もくれず、レオノールの元へとやってくる。
「さて、茶番は終わりだ。婚約破棄も、エリザ嬢とのことも、全てでたらめだ。そもそも、婚約破棄を私の一存で決められるわけがない」
「……まさか、婚約破棄を真に受けて求婚してくるとは、驚きでしたわ。花束まで準備しているなど、用意周到すぎて疑ってくれといわんばかりですわよ」
イヴァンとレオノールは、これまでの言い合いが嘘のように寄り添う。
「え? え? どういうことですか? 殿下は、可愛い私に心を奪われて、レオノールさまを捨てることにしたのですよね? なのに、どうして?」
まったく状況についていけない様子で、エリザが呆然と呟く。
「エリザ嬢が魔術薬を使い、男子生徒たちを虜にしていたことは調べがついている。私には特に周到に使い、妃の座を狙ったこともな。あいにくだが、私はエリザ嬢に対して特別な感情などない」
「魔術薬の出所がわからなくて、しばらく泳がせておいていましたのよ。まさか、オテロ殿下と通じているとは思いませんでしたわ」
イヴァンとレオノールが説明するが、それでもエリザは心当たりがないといったように、首を横に振る。
「そんな……私は、『あなたのファンから』と差し入れがあった美容薬を飲んだだけよ……特に仲良くなりたい相手と一緒に飲むとよいお茶っていうのを殿下と飲んだけれど、それだってただのおまじないでしょう……?」
愕然と呟くエリザの言葉に、イヴァンとレオノールは顔を見合わせる。
二人の予想とは、食い違いが出ているようだ。
「男子生徒のみんなだって、私の魅力に虜になっただけでしょう……? そんな……魔術薬のせいだなんて嘘よ! 私が可愛いからでしょう!? こんなの、おかしいわよ! どうして! どうして……!?」
地団駄を踏んで、エリザは叫び出す。
「レオノール嬢、これは何かの陰謀です! そうだ、この身の程知らずの勘違いした小娘が、仕組んだに決まっています! 私だけが、あなたと真実の愛を育めるのです! 騙されないでください!」
「な……何を言っているのよ! 私は、あんたなんて知らないわよ! わけのわからないこと言わないでよ!」
「黙れ、貧相な小娘が!」
「何よ、あんたこそ気障な勘違い野郎でしょうが!」
オテロも喚きだし、さらにエリザが応戦して罵り合いに発展していく。
もはや、めちゃくちゃだ。
「殿下! 殿下ぁぁぁ……!」
「レオノール嬢! レオノール嬢……!」
やがて、暴れるエリザとオテロは騎士たちに取り押さえられ、連行されていった。
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