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23.洗脳?
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誰かを呼びに行ったカトリーナは、レオナルドを連れて戻ってきた。
ちょうど王城から帰ってきたところだったらしい。
「アイリス、体調が悪いと聞いたが……」
心配そうに様子をうかがってくるレオナルドを見ると、アイリスは気まずくなって、視線をそらしてしまう。
「ええ……少し、気分が……ごめんなさい」
先ほどのジョナスの話で浮き上がってきた疑念と、己への違和感をまだ整理しきれず、アイリスはごまかすようにぼそぼそと答える。
「そうか、ならば部屋で休むとよい。それにしても、ジョナスの奴め……喉くらい潰しておくべきだったか……」
アイリスへの気遣いを見せた後、レオナルドは小さな声で物騒なことを呟く。
つい、アイリスは苦い笑みが浮かんでくる。
「ちょうど今、ある案件が持ち上がっていてな。また王城に行かねばならぬ。もしかしたら戻りは明日の夜か、それとも明後日になるかもしれない。ジョナスはここに入れぬようにしておくので、ゆっくり休んでいてくれ」
レオナルドの言葉を聞き、アイリスはジョナスからのカードに指定されていた時間を思い出す。
どうやらジョナスはレオナルドが王太子宮を空ける時間を知った上で、誘ってきたようだ。
「まあ……お忙しいのですわね」
「ああ、大切なことがあってな。その前に少しでもアイリスの顔を見ておきたいと思い、戻ってきたのだ」
優しく微笑むレオナルドの姿に、アイリスは胸の痛みを覚える。
本当は色々と聞きたいこともあるのだが、うまくまとまらない。
「カトリーナ、今日は戻れ。アイリスを休ませてやるのだ」
「は……はい。アイリスさまとは、またいつでもお会いできますものね。それでは失礼いたしますわ」
明るく振る舞い、カトリーナは去っていく。
申し訳ない気持ちはあったが、今は一人になりたいアイリスにとっては、ありがたい。
それに、カトリーナの言うとおり、明日や明後日でもまた会えるだろう。
そう思ったアイリスだったが、レオナルドがカトリーナを見送る目に憐憫のようなものが浮かんでいるのを見て、意表を突かれる。
「さて……部屋まで送っていこう。それとも、抱きかかえて運ぼうか」
レオナルドは、アイリスの頬に手を伸ばす。
そっと頬を撫でる大きな手の感触に、アイリスはびくりと身をすくませる。
すると、レオナルドは驚いたように手を引っ込めた。その表情が、少し傷付いているようにも見えて、アイリスは罪悪感がわき上がってくる。
自分でも、どうして身をすくませたのか、わからない。
「い……いえ、大丈夫ですわ。一人で戻れます。レオナルドさまはお忙しいのですから、私のことはお気になさらないでくださいませ」
アイリスはレオナルドから逃げるように、足早に立ち去る。
今はレオナルドの側にいるのが、つらい。感情の整理ができず、胸が苦しくなってしまう。
レオナルドは追いかけてこなかった。彼がどういった顔をしているのか、アイリスは恐ろしくて確かめることもできず、ただ自室に急いだ。
自室に戻ったアイリスは、ぐったりとして寝台に横になる。
久しぶりに姉ジゼルの名を聞いた。その衝撃か、考えようとすると頭が痛くなってしまう。
「お姉さまとのこと……忘れていたなんて……」
これまでもジゼルに可愛がってもらった思い出は覚えていた。
しかし、ジゼルがアイリスをレオナルドに会わせようとしていたことは、記憶から抜け落ちていたのだ。
ジゼルがレオナルドのことを話していたことは何となく覚えていたが、その内容について深く考えることはなかった。
先ほど、急に思い出したのだ。
「頭が……痛い……何かがおかしいわ……」
以前にも、考え事をしていて頭痛を覚えたことがあった。
レオナルドがジゼルを手にかけたのは本当なのかと、疑念を抱いたときだ。
今回は、そのことに理由があったのではないかと思いついたときに、頭が痛くなった。
「何か特定のことを思い出したり、考えたりしないようにされている……?」
呟きながら、アイリスは背筋がぞくりとする。
もし、この疑問が正しいとすれば、アイリスが教育を受けているときに、洗脳されていたのだろうか。
「お姉さまが薬で錯乱したと言っていたわね……もしかしたら、私にも……」
カトリーナは、お家騒動があったと言っていた。
フォーサイス家の嫡子はジゼルのみであり、お家騒動など起きる要素はないはずだ。
しかし、アイリスの知らない何らかの要素があって、ジゼルを薬で操り、葬ろうとしたのだろうか。
ただ、仮にそうだとしても、アイリスまで洗脳する理由がわからない。いちおうフォーサイス家の血を引いているために、手駒にしようということだろうか。
「でも、もうフォーサイス家は取り潰されたのだし、それに特定のことだけ忘れるような洗脳なんて、意味がわからないわ……」
ため息を漏らしながら、アイリスは天井を見上げる。
頭痛はある程度耐えれば終わり、その後は頭痛の原因となったことを考えても平気になるようだ。洗脳が解けていくのかもしれない。
「……だとすれば」
アイリスは懐から、カードを取り出す。逢い引きの誘いが書かれたものだ。
先ほどの印象では、ジョナスはあまり深く物事を考えず、勢いで口に出してしまうような、うかつなところがあるように思えた。
彼に尋ねれば、何かを聞き出せるかもしれない。
そう考えながら、アイリスの脳裏にレオナルドの顔が浮かぶ。胸に鈍い痛みを覚え、アイリスは首を左右に振って思いを打ち消す。
今は、これ以上何も考えたくない。
アイリスは枕に顔を埋め、思考を放棄した。
ちょうど王城から帰ってきたところだったらしい。
「アイリス、体調が悪いと聞いたが……」
心配そうに様子をうかがってくるレオナルドを見ると、アイリスは気まずくなって、視線をそらしてしまう。
「ええ……少し、気分が……ごめんなさい」
先ほどのジョナスの話で浮き上がってきた疑念と、己への違和感をまだ整理しきれず、アイリスはごまかすようにぼそぼそと答える。
「そうか、ならば部屋で休むとよい。それにしても、ジョナスの奴め……喉くらい潰しておくべきだったか……」
アイリスへの気遣いを見せた後、レオナルドは小さな声で物騒なことを呟く。
つい、アイリスは苦い笑みが浮かんでくる。
「ちょうど今、ある案件が持ち上がっていてな。また王城に行かねばならぬ。もしかしたら戻りは明日の夜か、それとも明後日になるかもしれない。ジョナスはここに入れぬようにしておくので、ゆっくり休んでいてくれ」
レオナルドの言葉を聞き、アイリスはジョナスからのカードに指定されていた時間を思い出す。
どうやらジョナスはレオナルドが王太子宮を空ける時間を知った上で、誘ってきたようだ。
「まあ……お忙しいのですわね」
「ああ、大切なことがあってな。その前に少しでもアイリスの顔を見ておきたいと思い、戻ってきたのだ」
優しく微笑むレオナルドの姿に、アイリスは胸の痛みを覚える。
本当は色々と聞きたいこともあるのだが、うまくまとまらない。
「カトリーナ、今日は戻れ。アイリスを休ませてやるのだ」
「は……はい。アイリスさまとは、またいつでもお会いできますものね。それでは失礼いたしますわ」
明るく振る舞い、カトリーナは去っていく。
申し訳ない気持ちはあったが、今は一人になりたいアイリスにとっては、ありがたい。
それに、カトリーナの言うとおり、明日や明後日でもまた会えるだろう。
そう思ったアイリスだったが、レオナルドがカトリーナを見送る目に憐憫のようなものが浮かんでいるのを見て、意表を突かれる。
「さて……部屋まで送っていこう。それとも、抱きかかえて運ぼうか」
レオナルドは、アイリスの頬に手を伸ばす。
そっと頬を撫でる大きな手の感触に、アイリスはびくりと身をすくませる。
すると、レオナルドは驚いたように手を引っ込めた。その表情が、少し傷付いているようにも見えて、アイリスは罪悪感がわき上がってくる。
自分でも、どうして身をすくませたのか、わからない。
「い……いえ、大丈夫ですわ。一人で戻れます。レオナルドさまはお忙しいのですから、私のことはお気になさらないでくださいませ」
アイリスはレオナルドから逃げるように、足早に立ち去る。
今はレオナルドの側にいるのが、つらい。感情の整理ができず、胸が苦しくなってしまう。
レオナルドは追いかけてこなかった。彼がどういった顔をしているのか、アイリスは恐ろしくて確かめることもできず、ただ自室に急いだ。
自室に戻ったアイリスは、ぐったりとして寝台に横になる。
久しぶりに姉ジゼルの名を聞いた。その衝撃か、考えようとすると頭が痛くなってしまう。
「お姉さまとのこと……忘れていたなんて……」
これまでもジゼルに可愛がってもらった思い出は覚えていた。
しかし、ジゼルがアイリスをレオナルドに会わせようとしていたことは、記憶から抜け落ちていたのだ。
ジゼルがレオナルドのことを話していたことは何となく覚えていたが、その内容について深く考えることはなかった。
先ほど、急に思い出したのだ。
「頭が……痛い……何かがおかしいわ……」
以前にも、考え事をしていて頭痛を覚えたことがあった。
レオナルドがジゼルを手にかけたのは本当なのかと、疑念を抱いたときだ。
今回は、そのことに理由があったのではないかと思いついたときに、頭が痛くなった。
「何か特定のことを思い出したり、考えたりしないようにされている……?」
呟きながら、アイリスは背筋がぞくりとする。
もし、この疑問が正しいとすれば、アイリスが教育を受けているときに、洗脳されていたのだろうか。
「お姉さまが薬で錯乱したと言っていたわね……もしかしたら、私にも……」
カトリーナは、お家騒動があったと言っていた。
フォーサイス家の嫡子はジゼルのみであり、お家騒動など起きる要素はないはずだ。
しかし、アイリスの知らない何らかの要素があって、ジゼルを薬で操り、葬ろうとしたのだろうか。
ただ、仮にそうだとしても、アイリスまで洗脳する理由がわからない。いちおうフォーサイス家の血を引いているために、手駒にしようということだろうか。
「でも、もうフォーサイス家は取り潰されたのだし、それに特定のことだけ忘れるような洗脳なんて、意味がわからないわ……」
ため息を漏らしながら、アイリスは天井を見上げる。
頭痛はある程度耐えれば終わり、その後は頭痛の原因となったことを考えても平気になるようだ。洗脳が解けていくのかもしれない。
「……だとすれば」
アイリスは懐から、カードを取り出す。逢い引きの誘いが書かれたものだ。
先ほどの印象では、ジョナスはあまり深く物事を考えず、勢いで口に出してしまうような、うかつなところがあるように思えた。
彼に尋ねれば、何かを聞き出せるかもしれない。
そう考えながら、アイリスの脳裏にレオナルドの顔が浮かぶ。胸に鈍い痛みを覚え、アイリスは首を左右に振って思いを打ち消す。
今は、これ以上何も考えたくない。
アイリスは枕に顔を埋め、思考を放棄した。
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