ハイスペな車と廃番勇者の少年との気長な旅をするメガネのおっさん

夕刻の灯

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4話・少年とキャンピングカー

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雨が降る夜の森の中
少し進んではスマホの地図を見ると、再び前を見て
スマホのライトをたよりに歩く。
防水じゃない靴が水を吸って重くなる
靴が重いだけならばまだ良いんだが、中に水が浸透してきたらしく…
靴下がビチャビチャになっていて、足の指先から冷たい
この雨は一向に止む気配がない。
止まないなぁ~っと上を向いたら…
不意に木の葉から落ちたり、当たって跳ねたのか大粒の雫が落ちて来る
その大粒の水滴がメガネについて視界の邪魔をする。
レインコート着ていても、背中や足に当たる雨が冷たい
そんな冷たい雨粒が降りしきる雨の中に…
何かあった。

「アレか?」

1人の少年が倒れていた。
その民族衣装のような感じの服を着ていた。

「オイ!!君!!大丈夫か⁉︎」

呼び掛けてみたが返事は、返って来なかった。
俺は、ひょっとしたらっと思って駆け寄った。
すぐに少年を抱き上げた。
微かだが少年は、息をしていた。

「良かった生きてる。」

しかし、抱き上げた少年のその小さな体は雨に濡れていても熱いと感じるほどにとても熱かった。

「これは、マズイな…」

とても、熱いひどい熱だ。
体温計で測ったわけじゃないんだが…
いや、測るまでもない程にこの子の熱は高い。
何時間この雨の中に居たのか分からないが
大人でもこんな雨の中にいたら大変だ。
俺は、急いで少年を抱えたままに来た道を走る。
車まで戻ると車の後ろに牽引していたキャンピングカーの扉を開けた。
すると…

「え⁉︎暖かい?」

キャンピングカーの中から暖かい空気が流れ出して来た。
気温差のせいでメガネが曇る
そのまま中に入ると…
メガネの曇りが晴れていき
そして、ひらけた視界に映る光景に
また再び驚いた。
キャンピングカーとは、思えないほどの空間が広がっていた。
まず、扉を開けると見えるのは長い廊下だった。
その廊下にいくつも扉が付いている。
驚いて固まっていると

「う、う~ん」

抱えていた少年が苦しそうに呻いた。
その呻き声に俺は我に返って
急いで扉の中へと入る
扉を潜ると玄関スペース的な所なのか1段だけ段が違う
そこで、もたつきながら靴を脱ぐ
全身ずぶ濡れで、体のあちらこちらから
水滴がポタポタっと落ちる
廊下を歩くと手前二つは、洗面所とトイレっと言う表札が付いていた。
その次の扉が、部屋番号1番
その向こうが風呂、そのまた向こうが
部屋番号2番だった。
どうやら、運転席側…つまり、左側が1番って事らしい。
その1番の部屋のドアのノブを回して
扉を開けて部屋の中へと入る。

「ここは、また一段と暖かいな。」

この部屋の中も心地がいいくらいの温度で暖かい
この暖かさの源は…
小さめな暖炉で薪が燃えている
暖炉の火にはヤカン…いや、ポットかな?それが掛けられて湯気が出ている。
テーブルにベットが一つ
それらがいくつものランプの火によって、生まれてくる光に照らされている
少年を床にそっと下ろす。
とにかく、この子の服を脱がして新しい乾いた服に着替えをさせないと
少年の着ている服を脱がしていく。
見たことのないデザインの服だが
うん、この下着とかどうなってんだろう?
これは、インナーなのか?
わからない、人の服をあれこれ言うのは、やめにしておいて
しかし、形は同じようだから脱がすのは問題なかった。
濡れた服をまとめて置いておく。

「本当にこの子、全身ずぶ濡れだな。」

脱がしたはいいが
この子に新しい服を…
いくら、この部屋の中が暖炉の熱で暖かいとはいえ
せめて濡れた髪や体を拭くタオルがあれば、良いんだけど…
そう思って、目線を上げると…

「アレ?さっきまであったか?」

先ほどまで無かったはずだか…
テーブルの上に置いてあった。
服の一枚を広げて見ると、俺が知ってる型だった。
この子の服のデザインとは違うが仕方ない。
まず、タオルで念入りに拭く
ある程度拭いたが、髪はまだ湿ってるな
ドライヤーで一気に乾かしたいが、ドライヤー無いし…
頭にタオルを巻いておくしかないな。
着替えをするまで頭のタオルは、そのままにした。
一応服を着せたし、ベットへ寝かせる。
髪から水分を吸って湿っているタオルを外した。
そのタオルを外した顔に手を当てる。

「やっぱり。まだまだ、熱いな」

肌に触れている手に少年の体から発せられる熱が伝わってくる。
それは、雨に濡れた服をただ変えただけだからだ。
確かに濡れたままよりは良いだろう。
しかし、いまだに熱は下がらない。
氷枕は…氷が無いから、無理だな
タオルを水で冷やして頭に置くしかないな。
この部屋の中には水はないから、洗面所で濡らして絞って来た。

「一先ずはこれでも良いだろうけど…」

薬とかあればいいんだがな
そう思いながら、棚の扉を開けて
棚の中の引き出しを開けては閉めて行く。
いろいろあるんだが、目的の医薬品が中々出ない。

「この中に薬があれば良いんだがな…」

パタンパタンと扉をひたすら開け閉めする。
食料に衣類、ここは、消耗品か?
本当にいろいろあるよな~

「うん?ここは、どうだ?」

そうしてようやく、目的のものが入った引き出しを見つけた。

「あ、あった!!医薬品だ!!さてさて解熱剤は?」

胃薬飲んで、爽やかな朝を迎えましょう?
何だコレ?
こんな奴薬局とかにあったか?なんだよ。
このチャッチコピーは、爽やかな朝を迎えましょうって…?

「違う。違う!!そんな事は、今どうでもいい!!」

その怪しげなキャッチコピーの胃薬の箱とを元の場所へ押し込み
引き出しの中をゴソゴソっと見ていく。

「お、早速発見⁉︎あ!!ダメだ、コレ!!子供用の服薬の欄がない!、」

解熱剤を見つけたと思ったら…
大人1日2回1錠、15歳以下には使用しない事、って書いてあった。
この大人1錠って、効き目や成分が強すぎて
子供には使えない、使っちゃダメなタイプの薬だった。
違うのを探さないと…
再び、俺は引き出しの中身を引っかき回す。

「どれだ?」
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