幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花

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第二章 『神の印』

第二章2 『光の街』エゼルガルド

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 で、でかい!
 門を抜けると、いくつもの大きな建物が視界に入ってきた。

   門を抜けた瞬間、何かを感じた。魔力のようなもの……気のせいか。

 周りを見渡すと木でできた建物、中心には岩でできたお城のようなものがある。
 外国でこんな街あったよな……ヨーロッパか。

「とりあえず街を案内しよう。リィラもついてくるかい?」
「は、はい。午後からは仕事がありませんので」

 それにしても、ここに来る途中一言も喋らなかったな、リィラ。

「ハーヴェイさんは仕事とかないのですか?」
「一応、今日の仕事は終わった」
「そうなんですね!」

 騎士って結構暇なんだな。

「ここがギルドだ。冒険者になるときはここで登録すればいい」
「おや、こんなところにハーヴェイ様がどう言った御用で?」
「この子に街を案内していたところだ。レイくん、この人はこのギルドの管理をしているアルカナ・メーベルンだ」

 めっちゃ髪白いな……。
 この人がギルドマスターってことか。

「ど、どうも。レイ・アキシノです」
「まだ魔力を持っていないようだね」
「もちろんだ。この子はまだ十二歳だからね」

 俺の代わりにハーヴェイさんが答えた。
 
「そうか。まぁ儀式を終えたらこのギルドに来るといい」

 いや、冒険者になんかならないから。
 さっきまで迷宮冒険してたからなっ! 四年間も! 
 
 そのまま軽く話をして、ギルドを出た。

「すまない、急用ができてしまった。あとはリィラ、頼んでもいいかい?」
「え! ま、まままま任せてください!」

 突然ハーヴェイさんは急用ができたといい、いなくなってしまった。
 急用って、何か忘れていた仕事でもあったのか?
 リィラもかなり動揺しているようだ。

「行っちゃいましたね……」
「そ、そうですね」

 気まずいぞ。
 友達の友達と二人でいる感じだ……。
 一先ず座って話せるところに行きたい。

「リィラさんはここらへんに詳しいんですか?」
「ある程度は把握してします……」
「どこかゆっくり休憩できる場所とかってあります?」
「あ、案内します……っ」

 やけに張り切ってるリィラさんについていく。
 それにしても人が多いな。中心に行ったらもっと多いんだろうな。

「つきました、ここです」

 はやっ! 思わず声に出るところだった。

 外見は普通だな。元の世界でいう喫茶店のようなものか? 

「入りましょうか」

 リィラはさっさとお店の中に入っていった。
 中も普通だ。椅子も机も木でできている。
 雰囲気はまんま元の世界と一緒だな。

 俺とリィラは店員に案内された場所に座った。

「何を頼みます?」

   スキル『言語解読』があるから読めるけど、いきなり街に来ていたらやばかったな。

   でも読めたところで分からないからな、とりあえず同じやつを頼むか。

「リィラさんと同じやつで大丈夫ですよ……」

 店員さんも普通の人間みたいだ。ここでメイド服の人とか、猫耳少女とか、エルフとか出てきてたらテンション上がるんだけどな……。
 
「あの……」

 なんだ? いきなりもぞもぞし始めて。

「さっきは兄様がすみません! 助けていただきながら、あんなことになってしまって……」

 あぁ、そのことか。
 もしかしてそれを謝れなくてずっと黙ってたのか? いい子だな。
 アレクとは大違いだっ!

「リィラさんが謝ることじゃないですよ。悪いのはアレク様の方だと僕は思いますし」

 妹を出来損ない呼ばわりするなんてな。

「いえ、兄様は悪くありません……私が出来損ないなのは間違いではないんです。」
「いいや違う。誰がなんと言おうと、リィラさんは出来損ないなんかじゃない」

 出来損ないってのは、生きてる価値がない――昔の俺みたいなやつを言うんだ……。
 
「レイさんはいい人ですね……」

 違う。別にいい人って言われたいわけじゃない。

 ただ、綺麗事並べた上辺だけの人間にはなりたくない……。あの時挑発に乗ったのも、原因はそれだ。

「リィラさんはほんとに――」
「今日泊まる場所ないですよね。宿を探しましょうか」

 今のはわざとだろうな……。
 俺の言葉を遮り、リィラはお会計を済ませるとお店を出た。

「あ、お代すみません。いつか……」
「いえ、今日助けてもらったお礼です」

 そのあとは一言も会話することなかった。
 宿についた時には、とっくに外は真っ暗だった。
 宿代もリィラが出してくれた。

「その僕の方こそ、ここまでしてもらって……」
「私の家に泊めてあげたかったけど、兄様がいるから。じゃあまた――」

 俺とリィラは宿の前で別れた。



 はぁ、今日は迷宮にいたときより疲れたな……。

「リィラ大丈夫かな……」

 部屋に入り、俺はふかふかなベッドに寝そべった。
 結局、綺麗事ばっかり……。
 
「今日はもう寝よう。明日になったら何か……」

 変わってるのか? 
 魔力を隠しながらアレクに楯突くなんて無理だろうな……。『瞬間身体強化』を込めた一撃でも止められたんだし。

「そういや、アレクに魔力の存在バレてたよな。完全にやらかした」

 殺されれば、迷宮での努力は水の泡。
 あっちの世界を捨ててきた意味もなくなる。
 
 ……もう寝よう。
 考えても無駄だな。
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