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第三章 『溜め込んだ魔力でスローライフを』
第三章1 スローライフのスタート
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飽きることのないほどに広大な景色を眺めながら、俺は今、期待に胸を躍らせている。
スローライフ――それは、俺がこの世界に来た理由だ。
ありあまるほどの魔力はスローライフを謳歌するためのもの。
俺が迷宮で頑張ってコツコツ溜めた魔力! ついに……ついにその魔力を使うときがきた!
もう少しで村に着く……楽しみで仕方がない!
「レイくん、どうしたんですか? 凄く楽しそうですね」
「早く村に行きたくて、はは」
くねくねと気持ち悪い動きをしていた。
やばい、引かれたか。
「私も早く村に行きたいです。強くなるためには頑張らないと……」
「がんば、る? 何を?」
「もちろん魔獣狩りですよ」
魔獣狩りってなに? おいしいの?
待て待て! 俺はスローライフを過ごすために村まで行くんだぞ!?
なんでリィラは魔獣狩りとか、ちょっとやばいこと口走っちゃってるの!?
「リ、リィラ?」
「どうしました?」
「僕は魔獣狩りなんてしないけど?」
「ッ!?」
そんな驚かれても。というか、村の近くにモンスターとか出るの?
「本当に……レイくんは魔獣を狩らないんですか?」
あれれ? リィラさんてこんな戦闘狂キャラだった? 聖女キャラがいつの間にかバーサーカーキャラになってるんだけど。怖すぎない?
「まだ狩る予定はないかな。でもゆっくり過ごすってのもありだと思うよ」
「わかりました……やめておきます……」
これは深夜こっそり抜け出して、一人で魔獣狩りするやつだ。なんとなく分かる。
とりあえず戦わないように説得させよう。一人で戦ってるときに強敵が現れ、絶体絶命になるのは目に見えている。もちろんラノベ参照だ。
「そうだ、戦いたいなら僕が相手するよ。体術には自信があるって前言ったでしょ?」
「でも……」
「リィラが魔獣と戦って、顔に傷でも出来たらどうするの?」
カッコよく説得できた気がする。
「そういう意味じゃなくて。レイくん相手に魔法戦はできないですよねってことです……」
「あ、そういうことですか……。でも僕、多少は魔法も使えますので!」
魔法と言ってもスキルだけど。あ、一つだけ魔法も使える。シリウスに教えてもらった『ファーリス』という炎魔法。
とはいえ、魔法学校卒業してるリィラの相手をできるかは些か疑問だが……。
でも魔獣と戦うよりはこっちの方が安心で、楽はできる。
あとはリィラさんが承諾してくれるかの問題だ。
「レイくんがそこまで言ってくれるなら。……お願いします」
「任せてください!」
とは言ったものの、なんかスローライフから少し離れてた気がする。
まぁ言っても一日一時間とかだろうけど。いや、テレビゲーム的な?
スローライフといえば畑仕事……? さすがにずっと引きこもりってのもダメだろうしな。
そういえば、フェーメル村って宿とかあるのかな? いきなりリィラと野宿になるとか嫌だぞ。
「フェーメル村に到着しましたよ」
ライルは振り返ることなく、到着を俺たちに告げた。
半日休むことなく走り続けた地竜を撫でて、俺は村を見渡した。
「これがフェーメル村……」
大きい村とは言えないが、街とは違い、心なしか落ち着く。
ほとんどの家は木でできているみたいだ。エゼルガルドとは違うみたいだ。
「おや、ライル」
出てきたのは村長らしき老人。腰は曲がっており、隣の男が歩くのを両手で補助している。
あまり歩かない方がいいんじゃないか?
それにしても優しそうな人だ。隣で補助している男も身長は高いがイケメンで優しいそうだ。
「この二人がこの村に行きたいって言ってきたので連れてきました」
「ほう、そうかそうか。私は村長のケイル、こいつが私の息子トール。よろしくの」
俺とリィラも自己紹介を済ませる。
「レイ・アキシノって言います」
「私はリィラです」
簡単な挨拶を終わらせると、村長は俺たち二人を村に入れてくれた。
「本当にこの村に住まれると?」
進んでいる途中、村に来た理由を話した。
端的に言うと、住みたいという事だ。
「やっぱダメでしょうか?」
「いえいえ、私たちは大歓迎ですとも。でもなぜエゼルガルドからこんな僻村に?」
スローライフをしに村まで来たが、それを包み隠さず言うのもなんか失礼な気がする。
「僕、人が多い場所苦手で……」
「なるほど」
村長は井戸の前で来ると、その足を止めた。
ここが村の真ん中みたいだ。
「みんなに紹介しよう。今日からこの村で住む、レイくんとリィラさんだ」
トールが村全体に声を響かせる。その声に、村の人は井戸の周りに集まり始めた。
こう見ると結構人がいる。ざっと三十人くらいか。
緊張するな……なんか転校生の気分だ。
「初めまして。今日からこの村に引っ越してきました、レイ・アキシノです」
「私もレイくんと一緒にエゼルガルドから来ました、リィラです」
村の人たちは笑顔で俺とリィラを迎えてくれた。
なんか安心した。この村の人、全員いい人そうだ。
「あの、この村って泊まるところとかあるんですか?」
「ないねぇ。まず旅人がそんなに来ないからねぇ」
おばさんが俺の質問に答えてくれた。
ないのか。はて、どうしよう。
「俺んち来いよ。部屋二つくらいなら開いてるぜ」
「え、いいんですか?」
黒髪のおじさんが俺たちを家に誘ってくれた。
隣には優しいそうに微笑んでいる美人な奥さんらしき人がいる。
村自体狭いため、二人の家はすぐそこにあった。
スローライフ――それは、俺がこの世界に来た理由だ。
ありあまるほどの魔力はスローライフを謳歌するためのもの。
俺が迷宮で頑張ってコツコツ溜めた魔力! ついに……ついにその魔力を使うときがきた!
もう少しで村に着く……楽しみで仕方がない!
「レイくん、どうしたんですか? 凄く楽しそうですね」
「早く村に行きたくて、はは」
くねくねと気持ち悪い動きをしていた。
やばい、引かれたか。
「私も早く村に行きたいです。強くなるためには頑張らないと……」
「がんば、る? 何を?」
「もちろん魔獣狩りですよ」
魔獣狩りってなに? おいしいの?
待て待て! 俺はスローライフを過ごすために村まで行くんだぞ!?
なんでリィラは魔獣狩りとか、ちょっとやばいこと口走っちゃってるの!?
「リ、リィラ?」
「どうしました?」
「僕は魔獣狩りなんてしないけど?」
「ッ!?」
そんな驚かれても。というか、村の近くにモンスターとか出るの?
「本当に……レイくんは魔獣を狩らないんですか?」
あれれ? リィラさんてこんな戦闘狂キャラだった? 聖女キャラがいつの間にかバーサーカーキャラになってるんだけど。怖すぎない?
「まだ狩る予定はないかな。でもゆっくり過ごすってのもありだと思うよ」
「わかりました……やめておきます……」
これは深夜こっそり抜け出して、一人で魔獣狩りするやつだ。なんとなく分かる。
とりあえず戦わないように説得させよう。一人で戦ってるときに強敵が現れ、絶体絶命になるのは目に見えている。もちろんラノベ参照だ。
「そうだ、戦いたいなら僕が相手するよ。体術には自信があるって前言ったでしょ?」
「でも……」
「リィラが魔獣と戦って、顔に傷でも出来たらどうするの?」
カッコよく説得できた気がする。
「そういう意味じゃなくて。レイくん相手に魔法戦はできないですよねってことです……」
「あ、そういうことですか……。でも僕、多少は魔法も使えますので!」
魔法と言ってもスキルだけど。あ、一つだけ魔法も使える。シリウスに教えてもらった『ファーリス』という炎魔法。
とはいえ、魔法学校卒業してるリィラの相手をできるかは些か疑問だが……。
でも魔獣と戦うよりはこっちの方が安心で、楽はできる。
あとはリィラさんが承諾してくれるかの問題だ。
「レイくんがそこまで言ってくれるなら。……お願いします」
「任せてください!」
とは言ったものの、なんかスローライフから少し離れてた気がする。
まぁ言っても一日一時間とかだろうけど。いや、テレビゲーム的な?
スローライフといえば畑仕事……? さすがにずっと引きこもりってのもダメだろうしな。
そういえば、フェーメル村って宿とかあるのかな? いきなりリィラと野宿になるとか嫌だぞ。
「フェーメル村に到着しましたよ」
ライルは振り返ることなく、到着を俺たちに告げた。
半日休むことなく走り続けた地竜を撫でて、俺は村を見渡した。
「これがフェーメル村……」
大きい村とは言えないが、街とは違い、心なしか落ち着く。
ほとんどの家は木でできているみたいだ。エゼルガルドとは違うみたいだ。
「おや、ライル」
出てきたのは村長らしき老人。腰は曲がっており、隣の男が歩くのを両手で補助している。
あまり歩かない方がいいんじゃないか?
それにしても優しそうな人だ。隣で補助している男も身長は高いがイケメンで優しいそうだ。
「この二人がこの村に行きたいって言ってきたので連れてきました」
「ほう、そうかそうか。私は村長のケイル、こいつが私の息子トール。よろしくの」
俺とリィラも自己紹介を済ませる。
「レイ・アキシノって言います」
「私はリィラです」
簡単な挨拶を終わらせると、村長は俺たち二人を村に入れてくれた。
「本当にこの村に住まれると?」
進んでいる途中、村に来た理由を話した。
端的に言うと、住みたいという事だ。
「やっぱダメでしょうか?」
「いえいえ、私たちは大歓迎ですとも。でもなぜエゼルガルドからこんな僻村に?」
スローライフをしに村まで来たが、それを包み隠さず言うのもなんか失礼な気がする。
「僕、人が多い場所苦手で……」
「なるほど」
村長は井戸の前で来ると、その足を止めた。
ここが村の真ん中みたいだ。
「みんなに紹介しよう。今日からこの村で住む、レイくんとリィラさんだ」
トールが村全体に声を響かせる。その声に、村の人は井戸の周りに集まり始めた。
こう見ると結構人がいる。ざっと三十人くらいか。
緊張するな……なんか転校生の気分だ。
「初めまして。今日からこの村に引っ越してきました、レイ・アキシノです」
「私もレイくんと一緒にエゼルガルドから来ました、リィラです」
村の人たちは笑顔で俺とリィラを迎えてくれた。
なんか安心した。この村の人、全員いい人そうだ。
「あの、この村って泊まるところとかあるんですか?」
「ないねぇ。まず旅人がそんなに来ないからねぇ」
おばさんが俺の質問に答えてくれた。
ないのか。はて、どうしよう。
「俺んち来いよ。部屋二つくらいなら開いてるぜ」
「え、いいんですか?」
黒髪のおじさんが俺たちを家に誘ってくれた。
隣には優しいそうに微笑んでいる美人な奥さんらしき人がいる。
村自体狭いため、二人の家はすぐそこにあった。
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