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第三章 『溜め込んだ魔力でスローライフを』
第三章9 決意
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「気持ちよかった~」
一気に疲れが吹っ飛ぶ感じが、なんとも言えない快感を生む。
日本もこの世界も、一番はお風呂だな。一人で暮らすとしたら風呂は必須だな。
タオルで頭の水を拭きながら、俺はそう決意した。
この村の人たちはみんな、村の真ん中にある井戸の水を使って生活しているという。
飲料水なども井戸からの水を使っているらしい。
水龍ミラ――ラグナさんが言っていた四帝龍の一匹らしい。
そのミラの魔石の欠片が井戸の下にあって、魔力が尽きるまで魔石から水が出てくる、みたいなことをステラさんが言っていた。
「水魔法は諦めるとして、せめて魔石の欠片ぐらい欲しいよなぁー」
そんなチートアイテム売ってるわけないか。
「これ、リィラちゃんに飲ませてあげてくれない?」
キッチンに行くとステラさんがポーションを作っていた。ちょうど完成したのか、そのポーションを俺に渡してきた。
丸い瓶に入れられた赤い液体。
「これをリィラに?」
「ええ。リィラちゃんも一番信頼してる人に看病してもらったほうが嬉しいと思うから」
「そうですか……」
赤いポーションを受け取り、二階のリィラの部屋へと向かった。
ドアの前に立つ。ゆっくりとそのドアを開ける。
緊張で開ける手を一度止めた。仮とはいえ、今はリィラの部屋。つまり女の子の部屋だということだ。
「ふぅ……」
深呼吸で一拍置く。再び手に力を入れドアを開けた。
「リ、リィラ大丈夫?」
…………
返事はない。寝ているのだろうか。
リィラの部屋にはベッド置いてあるんだな。安心した。
病人を硬い床で寝させるわけにはいかないからな。
俺はリィラが寝ているベッドの横まで行く。
「どうしたんですか、レイくん」
「いや、ステラさんがポーションを飲ませてあげてって言うから」
俺のいる場所とは逆の方向を向いて、リィラは質問を投げかけた。
俺は笑いながらその質問に答えた。
「それにしても、ステラさんポーション作れるんだって。すごいよね」
「…………」
あれ? すごくなかった?
もしかして部屋に入られるのが嫌だったり? ポーションだけ置いて俺は立ち去った方がいいか。
「これ、置いとく。ちゃんと飲んでね、リィラ」
「はい……」
ステラさんに渡したことだけ報告して、シリウスの待つ部屋に戻るとするか。
「あの……」
「ん?」
部屋を出る直前、リィラは俺を止めた。
未だベッドから見えてるのは赤い髪の毛のみ。
「この村から出るんですか?」
「え? どうしたの、いきなり」
「レイくんにとって私は邪魔ですか?」
もしかしてさっきの独り言聞かれてたのか?
確かにあのとき、後ろから音は聞こえてきたけど。
「邪魔なんかじゃないよ」
「じゃあなんで私を置いて村から出るんですか?」
「それは――」
純粋に俺とリィラの目的が違うからだ。
これ以上俺に付き合わせて、リィラが強くなるとは到底思えない。
「言えないんですね。結局レイくんも兄様と同じ――」
「違う。僕は別にリィラが邪魔だと思って、村から出るわけじゃない。この村だとまだ僕のやりたいことが叶わないんだ」
スローライフ。のんびり暮らすのが俺の目的。
誰もいないところで、一人でゆっくり暮らしたい、ただそれだけだ。
それに、ずっとここにいるのもラグナさんたちに迷惑だからな。
「じゃあ私も行かせてください……」
「僕は人がいないような場所でスローライフを送りたいんだ。リィラは強くなりたいんだよね? 僕といて強くなると思う?」
「いいえ……」
自分勝手なのはわかっている。でもこれに関しては仕方がない。
「でもすぐに村から出るわけじゃないから。魔獣の代わりになるって言ったからね」
「ありがとうございます……」
「ポーションを飲んだら、すぐ寝てね。また悪化したら大変だから」
そのあとは何も会話を交わすことなく、俺はリィラの部屋を出た。
ステラさんに報告したあと、シリウスの待つ部屋へと戻る。
一気に疲れが吹っ飛ぶ感じが、なんとも言えない快感を生む。
日本もこの世界も、一番はお風呂だな。一人で暮らすとしたら風呂は必須だな。
タオルで頭の水を拭きながら、俺はそう決意した。
この村の人たちはみんな、村の真ん中にある井戸の水を使って生活しているという。
飲料水なども井戸からの水を使っているらしい。
水龍ミラ――ラグナさんが言っていた四帝龍の一匹らしい。
そのミラの魔石の欠片が井戸の下にあって、魔力が尽きるまで魔石から水が出てくる、みたいなことをステラさんが言っていた。
「水魔法は諦めるとして、せめて魔石の欠片ぐらい欲しいよなぁー」
そんなチートアイテム売ってるわけないか。
「これ、リィラちゃんに飲ませてあげてくれない?」
キッチンに行くとステラさんがポーションを作っていた。ちょうど完成したのか、そのポーションを俺に渡してきた。
丸い瓶に入れられた赤い液体。
「これをリィラに?」
「ええ。リィラちゃんも一番信頼してる人に看病してもらったほうが嬉しいと思うから」
「そうですか……」
赤いポーションを受け取り、二階のリィラの部屋へと向かった。
ドアの前に立つ。ゆっくりとそのドアを開ける。
緊張で開ける手を一度止めた。仮とはいえ、今はリィラの部屋。つまり女の子の部屋だということだ。
「ふぅ……」
深呼吸で一拍置く。再び手に力を入れドアを開けた。
「リ、リィラ大丈夫?」
…………
返事はない。寝ているのだろうか。
リィラの部屋にはベッド置いてあるんだな。安心した。
病人を硬い床で寝させるわけにはいかないからな。
俺はリィラが寝ているベッドの横まで行く。
「どうしたんですか、レイくん」
「いや、ステラさんがポーションを飲ませてあげてって言うから」
俺のいる場所とは逆の方向を向いて、リィラは質問を投げかけた。
俺は笑いながらその質問に答えた。
「それにしても、ステラさんポーション作れるんだって。すごいよね」
「…………」
あれ? すごくなかった?
もしかして部屋に入られるのが嫌だったり? ポーションだけ置いて俺は立ち去った方がいいか。
「これ、置いとく。ちゃんと飲んでね、リィラ」
「はい……」
ステラさんに渡したことだけ報告して、シリウスの待つ部屋に戻るとするか。
「あの……」
「ん?」
部屋を出る直前、リィラは俺を止めた。
未だベッドから見えてるのは赤い髪の毛のみ。
「この村から出るんですか?」
「え? どうしたの、いきなり」
「レイくんにとって私は邪魔ですか?」
もしかしてさっきの独り言聞かれてたのか?
確かにあのとき、後ろから音は聞こえてきたけど。
「邪魔なんかじゃないよ」
「じゃあなんで私を置いて村から出るんですか?」
「それは――」
純粋に俺とリィラの目的が違うからだ。
これ以上俺に付き合わせて、リィラが強くなるとは到底思えない。
「言えないんですね。結局レイくんも兄様と同じ――」
「違う。僕は別にリィラが邪魔だと思って、村から出るわけじゃない。この村だとまだ僕のやりたいことが叶わないんだ」
スローライフ。のんびり暮らすのが俺の目的。
誰もいないところで、一人でゆっくり暮らしたい、ただそれだけだ。
それに、ずっとここにいるのもラグナさんたちに迷惑だからな。
「じゃあ私も行かせてください……」
「僕は人がいないような場所でスローライフを送りたいんだ。リィラは強くなりたいんだよね? 僕といて強くなると思う?」
「いいえ……」
自分勝手なのはわかっている。でもこれに関しては仕方がない。
「でもすぐに村から出るわけじゃないから。魔獣の代わりになるって言ったからね」
「ありがとうございます……」
「ポーションを飲んだら、すぐ寝てね。また悪化したら大変だから」
そのあとは何も会話を交わすことなく、俺はリィラの部屋を出た。
ステラさんに報告したあと、シリウスの待つ部屋へと戻る。
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