あるとれいと~絶対回避能力があるのに色々トラブルに巻き込まれちゃう男のお話~

上田るぅ

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お城奪還編

第48話 とどめを刺したのは

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「戦神とうたわれし者 アガレス・ルーグナー!!」

「そんな訳無いのです。 戦神アガレスは十年程前に亡くなったですよ」

「ギクリ」

 女性が名乗りを上げた瞬間、シナモンが即座に否定する。

 シナモンの話を聞いたアルは、少し関心した表情で話かける。

「そうなのか? まぁ戦神ってくらいだから、こんな姉ちゃんじゃないよな」

「なのですよ」

 そんな会話をしている二人に対し女性は再度、声を張り名乗りを上げた。

「の! 四高弟の一人、剛弓のヴァルヘルム!!」

「それも嘘じゃないかなぁ? お姉ちゃんが前にヴァルヘルムって名前の、弓の使い手のお爺ちゃんが居るって話してたし」

「ギクギクリ」

 レイは顎に右人差し指を当て、思い出すように女性の発言を否定する。

 その話を聞いたアルは先程同様に、少し関心した様子でレイに話しかける。

「へぇぇ。 バレリアって何も知らなそうだけど、意外と詳しいんだな」

「何言ってるですか? 知ってて当然なのですよ」

 シナモンは少し自慢げな表情で目を瞑ると、右人差し指を立てて説明を続ける。

「そもそも、戦神アガレスの四高弟の最後の一人が、バレリア様なのです」

「そうなの? レイは知ってた?」

 シナモンの話を聞いたアルは驚いた表情でレイに問いかける。

「知らないよ! へぇぇ。 そぉなんだ! お姉ちゃんがねぇ」

 レイも初耳だったようで、アル同様に驚いた表情に変わっていた。

 その二人の様子を見たシナモンは、少し自慢気な表情で「ふふん」と鼻を鳴らしていた。

 そんなシナモンの表情を見たアルは、少し呆れた表情で言葉をかける。

「お前、そういう話好きだよなぁ。 結構ミーハーっていうか……」

「んなっ! そんな事無いのです! むしろ知らない方がおかしいのですよ」

 少し怒った様子のシナモンを見て、リナはフードを被ったまま俯き少し笑っているようだ。

 話の盛り上がる四人を他所に女性は再々度、声を張り上げ名乗りを上げる。

「っんの!! 子で、アストリナ国の第五将軍、ヨイチ・カリウディーナ」

「……そんな訳無い。 ヨイチ将軍は…… オジサン……」

「ギクギクギクリ」

 女性の名乗りを即座に否定したのはリナ。

 その話を聞いたアルは先程同様に、少し関心した様子でリナに話しかける。

「へぇぇ。 って事は、リナは会った事あるのか?」

「……五歳位の頃。 あんまり覚えて無いけど…… オジサンだった」

 リナはフードを被ったまま、アル達にしか聞こえない程度の声量で呟く。

 そんなリナの言葉を聞いたレイは、少しだけ泣きそうな表情でリナの頭を撫でる。

「うんうん。 リナちゃんも大変だったんだよね。 偉い偉い」

 頭を撫でられているリナは、まんざらでもなさそうな様子だ。

 そんな四人の様子を見ていた女性は再々々度、声を張り上げ名乗りを上げる。

 だが心なしか目には涙を浮かべ、少し泣きそうな表情をしていた。

「っんのぉ!! 娘のぉ…… アズサ・カリウディーナ……」

 声を張り上げていたのは最初だけで、徐々に小さくなる声は最後の方は涙声に変わる。

 そんなアズサの様子を見ていたアルは、少し気の毒に思ったのか優しい口調で声をかけた。

「つまり…… アズサって事…… だな?」

「そう! そうなの。 ボクの名前はアズサ! 分かってくれる? これは本当だから!」

「えっ? あっ、あぁ。 アズサね」

 目に少し涙を浮かべつつも、パァッと明るい表情で大きく頷くアズサ。

 何度も名乗りを上げつつも、全て否定されていたアズサはアルの肯定の返事に喜んでいた。

「いやぁ、顔に変な模様描いてるけど、オジサン良い人だねぇ」

「そっ、そうか。 んじゃ、アズサに聞きたいんだけど…… 何者?」

 少し呆れた表情で尋ねるアルを見て、アズサはハッとした表情に変わる。

 そして飛び跳ねるように後ろへ下がり距離を取ると、右手に持っていた矢を改めてアルに向けた。

「おっ、お前達! ゼニールの奴隷商人なんだな? 油断させて卑怯だぞっ!」

「えっ、えぇぇぇぇ……」

 豹変したように少し怒りを顕にし、言いがかりをつけるアズサにアルは若干引いていた。

 そしてアズサは意を決したように、突然アルに襲いかかる。

「覚悟しろぉぉ!!」

「っ、ちょっ。 お前ら、ちょっと下がってろ」

 アルはレイ達にそう告げると、アズサに接近していく。

(爺さん…… 【数字の烙印】は攻撃当たらねぇって言葉、信じるからなっ)

 そんな事を考えつつ、アルは向かってくるアズサと対峙する。

「へぇぇ。 奴隷商人のくせに一応、女の子は守るんだ? ふぅぅん」

 アズサは少し関心した素振りを見せつつも、右手に持った矢をアルに向ける。

「ちょっと落ち着け! って」

 アルがそう言葉をかけた瞬間、アズサは右手に持つ矢で斬りかかる。

 ヒュンッ…… ヒュンヒュンッ……

 まるで小枝を振り回しているような風切り音を放ちながら、アズサの矢がアルに襲いかかる。

 しかし確実に当たっているであろう軌道でも、アズサの矢がアルに当たる事は無い。

「っへ、へぇぇ。 なかなかやるねっ! ボクの攻撃をここまで避けるなんて」

「だからちょっと落ち着けって!」

「問答無用!!」

 ダンッ!! ヒュンヒュンッ…… ヒュンヒュンッ……

 アズサは地面を蹴りアルとの距離を縮めると、今度は左右に持った弓と矢でアルを攻撃する。

 ガァァンッ!! ザシュッ!!!

 アズサの持つ矢は地面を切り裂き、弓は地面を破壊する。

 アルの周りの木々や岩、地面はアズサの斬撃によって形を変えていった。

(話を聞く雰囲気じゃねぇな…… とりあえず、弓を奪ってみるか)

 距離を取り攻撃を避ける一方だったアルは、今度は逆にアズサの攻撃に合わせ距離を縮める。

「おわぁぁ」

「ッチ、失敗したか」

 突然近づき弓に手を伸ばすアルに驚いたアズサは、飛び跳ねるように後ろへ下がる。

「ふぅぅ。 危ない危ない。 オジサン、商人にしてはなかなかだね」

 焦ったように矢を持つ右手で額の汗を拭うと、少し関心したようにアルへ言葉をかけた。

 そんな二人の戦う様子を見ていたレイが、キョトンとした表情でアズサに問いかける。

「ねっ、ねぇ! アズサさん…… だっけ? ちょっと聞きたい事あるんだけど……」

「ビクリ」

 突然レイに話しかけられたアズサは、驚いたようにレイに視線を向ける。

「なっ、なんだよぉ! いきなり話しかけて。 ビックリするだろぉ?」

 少し怒ったようなアズサに対し、レイは少し申し訳無さそうに言葉をかけた。

「あっ、ごめんね! なんで弓を持ってるのに、弓矢として使わないのかなぁって思って」

「ギクリ」

 申し訳無さそうに話すレイに対し、アズサは気不味そうな様子を見せている。

 そんな二人のやり取りを見ていたシナモンが、勝ち誇ったように話に割って入る。

「多分なのですが、その弓矢。 引く事が出来ないのだと思うですよ」

「ギクギクリ」

 カラカラーーン……

 シナモンの言葉を聞いたアズサは、左手に持つ弓を地面に落とす。

「引けないって、そんな訳無いだろ? 一応、将軍の娘なんだぞ? このアズサってのは」

「グサリッ」

 カラーーン……

 アルの言葉を聞いたアズサは、右手に持つ矢を地面に落とす。

「そっ、そうだよシナモンちゃん! 引けもしない弓なんて持ってる訳無いでしょ?」

「グサグサリッ……」

 レイの言葉を聞いたアズサは、崩れるようにその場にへたり込む。

 そんなアズサの様子を他所に、シナモンは得意げな表情でアル達に話を続ける。

「その方が持っている弓は、恐らくソール鉱で出来てるですよ!」

「ソール鉱? なにそれ?」

 疑問を浮かべたアルの表情を見たシナモンは、更に得意げな表情が深まる。

「バレリア様の持つ剣はラグナ鉱で出来た魔剣、グラムなのですが、その鉱物はとっても硬いですので、折れず曲がらずで不変の鉱物と言われてるです」

 シナモンお得意の講釈に、レイは「うんうん」と小さく頷いていた。

 アルは「また始まったか……」と小さく呟き、呆れた様子を見せている。

「その代わりラグナ鉱は、とっても重いのですよ。 ソール鉱はラグナ鉱に次ぐ硬さがあるですが、もの凄く軽いのです。 一説では羽毛より軽いと言われてるのですよ」

 得意満面の表情で講釈を垂れるシナモンに対し、レイとリナは小さくパチパチと拍手していた。

「さすがシナモンちゃん! すっごい物知りだねぇ」

「それほどでもあるのですよ」

(なるほどな。 結構な大きさの弓や矢をあの速度で振り回すから、凄い奴だと思ってたけど)

 アルはチラッとアズサに視線を向けるが、アズサは項垂れたままだ。

 そのアズサにトドメを刺す一言を、シナモンが悪気なく口にする。

「つまり、その方にとってその弓は、宝の持ち腐れなのですよ」

「おまっ…… それは言い過ぎ……」

「ポキーーーン」

 慌てて制止しようとしたアルだったが、シナモンの言葉の刃はアズサに突き刺さった。

 アズサは自ら心の折れる音を口にすると、カタカタと小刻みに震えだす。

「うっ…… ううっ…… 酷い! 酷いよぉぉぉ! あんまりだぁぁぁぁぁ」

 へたり込んだまま上空を見上げ、大きな声で叫ぶアズサ。

「うわぁぁぁぁ、酷いよぉぉぉ…… あぁぁぁぁぁ。 あんまりだよぉぉぉぉ」

 どう見ても成人女性であるアズサが子供のように泣く姿を見て、四人は少し引いていた。
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