あるとれいと~絶対回避能力があるのに色々トラブルに巻き込まれちゃう男のお話~

上田るぅ

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アストリナ王編

第74話 アルの居場所

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 アストリナ城を奪還して三日が経過した。

 アストリナ城を奪還したあの日から快晴が続いていたが、今日は朝から雨が降りしきる。

 風が無く真っ直ぐに落ちる雨粒が屋根や草木に当たり、心地よい雨音を奏でていた。

 アルは居間の窓を開け外を眺めながら、自室に籠もるレイに声をかける。

「おーーーいっ。 メシ出来てるんだけど…… 喰わないのか?」

「うーーーん。 後で食べるかなぁ……」

 既に時刻は正午を過ぎ、アルが作った昼食はすっかり冷めている。

 食事と聞けば、いつもなら飛んでくるレイのその様子に、アルは少し心配になっていた。

(こっちに戻ってきてから、ずっとあんな感じだよなぁ…… 本ばっか読んで……)

 アルは窓の縁に腕を乗せ、空から落ちる雨粒を眺めていた。

(やっぱ寂しいのかねぇ。 つい最近まで賑やかだったからなぁ……)

 外を眺めながら「はぁ……」と大きく息を吐くアル。

 すると外から馬車の車輪の音が聞こえてきた。

 ガタンガタンッ…… ガタンガタンッ……

「全体! 止まれぇぇっ」

 白装束を来た騎士風の人物が馬車の中から叫ぶと、馬を引く数人の兵士がピタリと立ち止まる。

「ボクが呼んでくるからさっ! 皆は待っててねぇ」

「ははっ」

 馬車から出てきた白装束の人物は、窓辺に居るアルに気付くと両手で大きく手を振った。

「アルルーーン! なーーにしてんのっ?」

「それはこっちの台詞だけどな。 すっかり将軍様って感じだな? アズサ」

「へへへっ! レイちゃはぁ?」

 アズサの言葉を聞いたアルは、右親指を立てて家の中を指差す。

「お前等と別れてからずっと引きこもっててな。 何か元気無いんだよなぁ」

 アルは少し気不味そうにそう言うと、アズサは苦笑いを浮かべて話し始める。

「もしかしたら…… 【烙印】を使ったからかもね」

「えっ? 何か関係あるのか?」

「うん。 ボクもあれから二日間、ずっと寝込んでてさぁ。 今日、やっと元気になったんだぁ」

 苦笑いを浮かべるアズサの顔を見て、アルは腕を組み思案する仕草を見せる。

(てっきり寂しいからかと思ってたけど…… やっぱ【烙印】って副作用みたいなのが……)

 そんな思案を重ねるアルに対し、アズサは苦笑いのまま言葉をかける。

「そんな心配無いって! ところでレイちゃは中に居るんだよね?」

「あぁ。 部屋に居るよ」

 アルの言葉を聞いたアズサはニコっと笑顔に変わると、トタトタと玄関の方へ回った。

 ガララララ…… トタンッ……

「ただいまぁ! じゃなかった。 お邪魔しまーす! レイちゃーーー?」

 玄関を開け大声で叫ぶと、レイの部屋の戸が勢いよく開いた。

 ドタドタドタドタッ!

 そして真っ直ぐ玄関に向かったレイは、玄関に居るアズサに勢いよく抱きついた。

「アズサさーーーんっ! おかえりぃぃぃ」

「うわっ!! レイちゃ! ただいまぁ!」

 アズサの返答を聞いたレイは、両手でアズサの肩を掴むと顔を確認するように距離をとる。

「なになに? どしたの? 帰ってきたのかな? 上がる? お茶でも! お菓子もあるよっ」

 レイは満面の笑みをアズサに向けると、矢継ぎ早に言葉を浴びせていく。

 そのレイの様子に少し苦笑いを浮かべたアズサは、居間の方に視線を向けアルに聞こえるように

「それがさぁ! リナちん、じゃなかった…… リナリア様とシナモっちゃんが呼んでてさ」

 レイはその言葉を聞いて、疑問を浮かべた表情で問いかける。

「リナちゃんとシナモンちゃんが? 何かあったの?」

 アルも玄関にやってくると、少し呆れた表情でアズサに声をかけた。

「また何か面倒事か? そういうのは、もう勘弁して欲しいんだけど……」

 呆れた表情のアルに対し、アズサは笑顔で返答する。

「そういうのじゃなくてさ! ほらっ! 約束したでしょ?」

「約束? 何かしたっけ?」

「うんっ! ほらっ、祝勝会しようねって! だからお城まで来てほしいんだよねぇ。 良いでしょ?」

(本当は嘘だけど…… そう言わないとアルルン、来てくれないよね……)

 アズサの言葉を聞いたアルは、チラッとレイに視線を送る。

 明らかに行きたそうな表情のレイを見て、アルは小さく溜息を吐いた。

(まぁレイの気晴らしだと思えば良いか…… 面倒事だけは、絶対に避けるけど……)

 そんな事を考えながら、アルはレイの頭をポンポンと叩く。

「仕方ねぇな。 お呼ばれされるか?」

「うんっ! 待ってて! 今、着替えてくるからっ」

 そう言うとレイは直ぐに部屋に戻り、支度に取り掛かっていた。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 アル達一行は馬車に乗り、アストリナ城へと向かう。

 道中は途中まで雨が降りしきり、馬車の幌に当たった雨粒が激しい音を立てていた。

 しかし城が近付くにつれ雲こそは晴れないが雨は止み、少し霧が掛かっている。

 徒歩より少しだけ早い馬車は、一時間半程度の時間でアストリナ城へと到着した。

 霧のかかったアストリナ城は、幻想的な雰囲気を醸し出している。

「ふぅ…… 何か凄く前な感じするなぁ」

 馬車を降り、背筋を伸ばしたアルは改めてアストリナ城を見る。

 当然だが【神狼】の仕業による血痕等の痕跡は消され、城本来の姿をじっくりと眺めるアル。

「そうだねっ! こないだはゆっくり見る時間、無かったもんね」

 城を見上げるアルの横に立ったレイは、無意識の内にアルの腕に抱きついて見上げている。

 アルはその様子に一瞬、「んっ?」と疑問に感じたが、レイの機嫌が治ればと思い触れずにいた。

 しかしアズサがその様子を目撃すると、小声で「おぉ……」と言いながら驚いた表情に変わる。

「んじゃボクもっ! いやぁ、それにしても綺麗なお城だよねぇ」

 アズサもアルの逆の腕に抱きついて見上げると、アルは呆れた表情でアズサに視線を送る。

「何してんすか……」

 その言葉に気付いたように、レイはパッとアルの腕から離れていた。

 しかし腕を組んだままのアズサは、気にする素振りも見せずに話し始める。

「あっ、そうそう。 一応リナちん、じゃなかった…… リナリア様にお目通り? っていうんだっけ? 何かそんなのしないとダメだからさっ! 良いよね?」

 アズサの言葉を聞いたレイとアルは、小さく頷きながら返答する。

「それはもちろん! でも、リナちゃん以外にも、いっぱい人居るのかな?」

「うん! いっぱいって訳じゃないけどさっ! 昔、お城に居た人達がチラホラ戻ってきてて」

 アルは抱きつくアズサの腕をゆっくりと退かすと、呆れた表情で声をかける。

「んじゃさっさと済ませようぜ? 俺は早く酒が飲みたい……」

 そして三人はアストリナ城の謁見の間へと向かっていった。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 謁見の間の巨大な扉の前に立ったレイとアル。

 ギギギギギギッ…… ギーーーーーーッ

 先頭に立つアズサが扉をゆっくりと開ける。

 謁見の間では数十人の人達が並び、奥にはリナの姿が見える。

 中心にある大きな玉座は空けられ、その隣にある一回り小さい玉座に腰掛けていた。

 アズサは思い出すように天井に視線を向けながら、大きな声で言葉を発する。

「えーーーっと…… アルルンとレイちゃ…… じゃなかった。 んーーっ、まぁいっか……」

 そう言うとアズサは思い出すのを諦め、改めて大きな声で言葉を発した。

「アルルンとレイちゃが来ましたぁ!! お願いしまぁーーっす」

 そしてクルッと振り返ったアズサは、アル達を謁見の間へと招き入れた。

(適当過ぎるだろ…… まぁ、まだ三日目だし仕方ないのかね……)

 呆れたようにアズサを見つめたアルは、レイに視線を向け小さな声で言葉をかけた。

「まぁ良いか…… とりあえず、行くかっ」

「うっ…… うん……」

 アルはレイと共に玉座に近付くと、アルは片膝を付いて頭を下げた。

 その姿を見たレイは、ハッとした表情に変わると見様見真似でアルと同じく片膝を付く。

(えーーっと…… こういう時って何て言うんだっけか? まぁ…… 俺も適当で良いかな)

 そしてアルは顔を上げ、言葉を発しようとすると……

「なっ、何をされているのです? ささっ、お立ち下されっ!」

 黒いタキシードのような衣装に身を包んだ、白髪の男性が慌てたように近づいてくる。

 オールバックで白い髭を蓄えた姿を見て、アルは少し驚いたような様子を見せていた。

(おぉぉ…… 何か…… セバスチャン! って感じの爺さんだな……)

 そんな事を考えつつも、アルは男性の顔を見て問いかけた。

「えっと…… 何かまずかった…… のかな?」

 少し気不味そうな表情で問いかけるアル。

 白髪の男性は片膝を付くアルの腕と肩に手を添え、立ち上がるように促していた。

「貴方様のお席はあちらですぞ?」

 白髪の男性が右手で示した場所は、リナの隣。

 アストリナ王の玉座だった。
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