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いい声しているな、一緒にやらないか?(4)

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「おはようございます。ブレイブからやってきた学生です!」

 ピアッソ・アルトが愛想良く挨拶をした。三人は村長に対し軽い自己紹介をし、テーブルの上で座りながら、村長より詳細を聞くことになった。

「最近、この村を発展させようと思いまして、山地を開拓しているのですが、開拓を頼んだ業者がホワイトベアーに襲われましてね。中には重傷で今も病院で寝込んでいる方々も少なくなくて、いやはやまいっております」

「開拓か、具体的にどんなことをしているんですか?」

「この辺は北のほうなので雪がよくつもります。一年通して、雪の積もっている時期が六ヶ月以上といったところで、この雪のおかげで村を発展させづらい。そこで、工事業者に山林の伐採、土砂の整形、さらに雪対策に温暖化の魔法陣もあちこちに描いて貰い、人が住みやすい土地へと変えているんです」

「まっ、住処をぶっ壊されてホワイトベアーがふざけんなとぶちぎれているといったところですね。じゃあ早速ぶっ殺しにいくとします」

 ノクターン・ベースは敬語を使いながらも汚い言葉遣いであった。
 詳細を聞き終え、三人はホワイトベアーのいる山林へと向かった。山中で「工事中立入禁止」の看板を見つけ、そこが問題の場所だとすぐに分かった。

どたん

 クレッシェ・ソプラは何かにつまづき転んだ。

「おい、座標杭を蹴飛ばすなよ」

 クレッシェ・ソプラが躓いたの90cmほどの木の杭で杭の頭には十字の溝が掘ってある釘が打ってある。

「ま、まずかったですか?」

 ノクターン・ベースが舌打ちをし頭をかいた。

「お前は測量も知らねえのか? いいか、土地の広さっていうのは金につながる。歴史を見ても分かるように、土地を広くしようと人間達は戦争まで起こしているんだ。この測量杭は後々、土地の面積を求めるために使われるであろう。だから測量屋が1mm単位の誤差がないようにお前が思っている以上に緻密な作業で設置しているんだ。それを蹴飛ばすってのは他人の金をいい加減に扱うのと同じだ。分かったか?」

「は、はい……」

(なんかいきなり大量に話されて、話の内容が頭に入っていかない……)

 ピアッソ・アルトがクレッシェ・ソプラの耳元でひそひそ話を始めた。

「口は悪いけど意外と博識だし、面倒見はいいのよ彼。わざわざあなたに分かりやすく教えているしね。まっ、彼氏にすると面倒くさいタイプだけどね」

「聞こえているぞピアッソ」

「なぁに、私があなたをいい男だって言っているのが聞こえちゃったかな?」

「ちっ、お前と話すと疲れるな」

 一行は周りが見渡しやすい位置まで来ると足を止めた。

「ここにホワイトベアーをおびき寄せるぞ!」

「そんなことできるんですか?」

「歌術ならできる。ピアッソ、あの歌歌ってみろよ」


「分かったわ」

 ピアッソ・アルトは姿勢を整え、息を吸った。

「ある日♪ 森の中♪ ホワイトベアーに出会った♪」

 ピアッソ・アルトは童謡を歌う子供のようだった。楽しげな表情、声質や歌い方もいかにも子供の歌だった。しかし、音程やリズムの正確さ、声の響きの良さはクレッシェ・ソプラの素人耳でもよくわかった

「歌術は本人が強く願う事、そして歌の技術で決まってくる。今回の場合はピアッソがホワイトベアーに出会いたい意思を持ちながら、上手く歌を歌ったからまず来るだろうな」

ドドドドド

 どこからか重い足音が迫ってくる音が聞こえた。ノクターン・ベースが構えている。

「グオオオオ!!」

 重い雄叫びが響いた。3m程の体格のホワイトベアーが目の前に姿を現したのだ。瞬時にノクターン・ベースは玉を投げた。玉がホワイトベアーに当たると弾け、中から煙が出てきてホワイトベアーがむせこんだ。

「ノクターン特製、激辛香辛料玉。いわゆる催涙弾ってやつだぜ」

「流石盗賊、戦闘のやり方の汚さは称賛に値するわね」

「うるせえ、俺は要領良く闘うのが良いと思っているんだよ」

 ノクターン・ベースの姿が消えた。彼は俊足で動いており、ホワイトベアーに攻撃を仕掛けた。

ガガガガガガ

 ホワイトベアーに無数の打撃が入り込む。ホワイトベアーが防御の体勢をとる。

「どうした! 防戦一方か」

ガガガガガガ

 ホワイトベアーは何かを狙っている目つきをしていた。

「ノクターン! その熊ちゃん何か狙っているわよ!」

がしっ

 ホワイトベアーはノクターン・ベースの脚を捕まえた。攻撃を受けながらも反撃のチャンスを待っていたのだ。ノクターン・ベースの動きが止まった。

「しまった!」

どすん

 ホワイトベアーが捕まえたノクターン・ベースの腹に強烈な豪腕をふるった。

「ごはぁっ!」

 ノクターン・ベースの体が吹っ飛ばされた。

「言わんこっちゃないもう……」

(どうしよう、ノクターンさんがやられちゃう)

 クレッシェ・ソプラは何か良い打開策はないかと思い、自身の知識や記憶をフル動員した。

(そういえば昔、おじいちゃんが石ころでモンスターを仕留めていた。その時に歌っていたけど、もしかして……)

 クレッシェ・ソプラは近くにある石ころを手にとった。

「ダ~イヤモンド~つ~らぬく~~♪」

 その歌詞を歌うと同時に彼は石ころを投げた。その石ころは途中から勢いを増し、ホワイトベアーに一直線に向かった。

めりぃ

 石ころはホワイトベアーの土手っ腹を貫通した。ホワイトベアーが苦痛に顔を歪める。

「あれは、自身の肩の筋力を上げて、さらに物体の硬度も高める歌術!! あの子一体何者なのっ!?」

 ピアッソ・アルトがクレッシェ・ソプラの思わぬ力に驚いた。

「まさか、こんな感じかなと思ったら出来ちゃった……」

 もちろん、一番驚いていたのはクレッシェ・ソプラ本人だった。
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