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Special ② (聖奈さん♡)
CROSS OVER コンペ編② 桃瀬&栗原SIDE
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「いやははははは!!も、桃くんもう無理っ!!もう止めてぇっ!!!」
目の前の子の様子を詳しく書き留めながら、俺はリモコンを操作してスイッチを切った。
「お疲れ様、協力してくれてありがとう。かなりハードだったよね、大丈夫?」
今息を切らして試作の拘束台に乗ってくれているのは、Daisyで俺を桃くん桃くんと慕ってくれている男の子。
「はぁ…っ…はぁ…っ、うん、かなりキツかったけど、桃くんの為だと思ったら頑張れたよ。桃くんこそ毎日ずっと頑張ってて大丈夫?疲れてない?」
「はは、心配してくれてありがとう。Daisyの子達はほんと優しいね。明日は別の子に協力して貰うから今日はゆっくり休んでね」
ペットボトルの水を渡すと、飲みながら元気に答えてくれた。
「うん、僕もまた協力するからいつでも言って!みんな桃くんのこと応援してるよ!Irisの人との対決、僕も当日観に行くからね!」
そう言って彼は目を輝かせながら手を振って帰った。俺は姿が見えなくなるまで見送り実験室の机に戻ると、ドサッと座り手で頭を抱えた。
「…駄目だ。これじゃまだ駄目なんだ」
机の上には幾つものクシャクシャに丸められた紙が散乱していた。俺は今目の前にあるラフ画が描かれた紙に大きくバツ印をつけ、再び頭に手を当てながら頭を悩ませる。
暫く思案に耽っていると、ガチャッと扉が開き、缶コーヒーを二本持った栗原さんが入ってきた。
「…お疲れ。また悩んでんのか」
元気を装ってはいたが疲れが顔に出てきていたのだろう。栗原さんは缶コーヒーを一本、俺の机の上に置いてきた。
「…お前のそんな真剣な顔を見たのはいつぶりだろうな。俺にも滅多に見せないだろ。自分から喧嘩ふっかけたくせに」
ーーあの時。
初めて会った未南さんと握手した時。
自分でも言いようの無い感覚が突然身体中を巡った。
嫉妬。悔しさ。憧れ。尊敬。
気がついたら、意地悪な言葉を放っていた。
俺自身もどうしてそんな感情が出てきたのか分からないが、未南さんに言われて初めて自分が何を言っているのか気付いた。栗原さんにも怒鳴られた。でも、もう止められなかった。頭が追いつかなかったんだ。
俺の提案が可決して…それからDaisyに帰るまでのことはあまり覚えていない。栗原さんにこっぴどく叱られてやっと冷静になったが、自分の言い出したことには全く後悔していなかった。むしろ、俺はその提案をした時の自分を褒めてやりたい。
…ずっと、Irisに新しい技術者が入ったって聞いた時点から、心の中で渦巻いていた本音だったから。
「なぁ…今の試作じゃダメなのか?俺には十分だと思うが、面倒くさがりのお前にしては珍しいな。前に作った拘束台だってきちんと訓練を受けたIrisの人達に効いていたんじゃないか?」
栗原さんは各所に散らばっている資料やメモに目をざっと通しながら不思議そうに聞いた。
「…この前、未南さんと篠田さんの勤める会社を調べて、彼らの納品した作品やレビューを全てネットで見てみました。…凄いなって思いましたよ。正直。
特に篠田さんの、型にとらわれない自由な発想と斬新なアイデア。間違いない性能を備えながらも、随所に見られる遊び心。…彼は天才にして、努力家です。…特にこの人気商品だっていう自動人形を見て下さい。プログラムも半端ないし、俺にはこんな画期的で面白いアイデアは思いつかなかった」
「そこまでお前に言わせるなんてな」
「栗原さんにだけですよ、こんな本音言えんの。そんで、そのアイデアをそのまま組み立てられる未南さんも半端ないです。なーんてコンビでしょうね。Irisが目をつけたのも納得ですよ。あーあ、世界は広いなぁ」
俺は大きく伸びをしながら凝り固まった肩を解した。ペラペラと喋り続ける俺に対し、栗原さんはじっと俺を見つめながら話を聞いている。
「向こうだってIrisに置いてきた俺の拘束台を調べてるでしょう。あれだって俺がIrisに追いつきたい一心で必死に作った拘束台で、思いつく限りの機能を盛り込んだ、どんな人達にも驚かれるような自信作だったけど…あれを超えてくるとんでもない作品を仕上げてくる筈です。びっくりするような物を。…あくまで俺の勘ですけどね!」
どうして俺はこんなに一人で喋ってるんだろう。悩みすぎてスランプにでもなってるのかな。
などと少し恥ずかしく思っていると、栗原さんは未開封のコーヒーを持ちながら近くにあった椅子にゆっくり座って話し始めた。
「…お前と俺が初めてあの二人に会った時、薄々こうなるんじゃねーかって思ってたよ。いや、二人の噂を聞いた時からだな。素知らぬフリ決めてたんだろーが気持ちが揺れてんのバレバレなんだよ。…何年お前と一緒に任務こなしてきたと思ってんだ?
…まぁ、組織同士で対立すんのは流石にヤバいと思って止めたけどな。…そんな俺を振り切ってズカズカ進んでいく篠田って奴は予想外だった」
「あの人色んな意味で要注意人物ですよね」
二人で話していると、一人きりで悩んでいる時よりも随分空気が良くなった。今ならもう少し柔らかいアイデアが出せそうな気がする。
(遊び心…ねぇ。俺も結構自由人だとか言われてるけど、本当に自由な人の発想は違うんだろーな)
幼い頃から組織に入り、厳しい訓練や実践を積み、必死に駆け上がってきた自分。人の為に、誰かの役に立つ為に。そう思いながら、いつの間にかきちんと任務をこなすことしか考えなくなってしまっていたのかもしれない。
勿論、組織で楽しかったことはたくさんある。俺を慕ってくれている子達と遊んだり、休みには一緒にご飯を食べに行ったり、お花見をしたり、花火をしたり、クリスマスにはプレゼント交換したり…
「あっ」
急にとあるアイデアが思い浮かんだ。俺はすぐさまペンを取り、思いつくままにラフ画と走り書きの説明を大量に、できる限り分かり易く書いて栗原さんに持っていく。
「栗原さん。…これ、今思いついたんですけど…ど、どう思います…?!」
暫く眺めると、フッと笑って言った。
「はっ、何これ。お前らしくなくて良いじゃねーの」
「…なんですかその褒め言葉」
裏表のない栗原さんの言葉が嬉しくて、俺も小さく笑い返した。貰った缶コーヒーをパキッと開けて一気に飲み干し、さぁ今からはやることが山程あるぞと気合を入れ直し作業を進めた。
ーーそれから俺はひたすら製作に集中した。面倒くさがり屋だった俺が自分でも驚く程に。
今なら何だって出来そうな気分だった。
(そっか。俺…今、楽しいんだ)
Irisに追いつきたい。追い越したい。
俺は素直な気持ちを言葉にして打ち明けた。
「…栗原さん。俺、勝ちたいんです。
負けたくないんじゃない。勝ちたい。」
「なんだそれ。…ま、やるからには当然勝つしかねェだろ。俺達の意地、見せてやろうぜ」
ニヤリと笑いながらこっちを向く栗原さんがカッコよくて、つい煽りたくなった。
「今の発言、栗原さんっぽくなくて良いですね」
「…何だ、仕返しか?」
やっといつもの調子と態度を取り戻した俺は、頭の霧が全て取り払われたような清々しい気分だった。
◇ ◆
「も、桃くん…凄いね、これ…!」
久しぶりに実験室に現れた協力者の子は、かなり形の出来上がった大きな装置を見て驚くと共に目をキラキラさせている。
コンペ用新型拘束台の設計図が固まってから、俺と栗原さんは急いで必要なパーツを発注したり、プログラムを設定したり大忙しで製作を進めていった。
具体的なイメージを二人で共有していたので、仮の仕上がりは理想通りといっていい。
「でしょ。凄いって言ってくれて嬉しいよ。でも他の人達にはどんなの作ってるか絶対ナイショね?発表する時にびっくりさせたいから」
「うん、もちろんだよ!えへへ、でも桃くんこういうの作るんだぁって僕も今びっくりしたよ。なんか、イメージと違った!」
ほぼ栗原さんと一緒の純粋な意見に、俺は苦笑いした。他人から見た俺ってどう映ってるのかな。なんて考えたりしながらスタートの準備を進めていく。
協力者の彼はかなり緊張してきていたが、こちらを向いてOKだと頷いた。
「じゃあテスト作動スタートするよ。結構キツいと思うから、息苦しくなったり身体に異変があったりしたら手をバンバン叩いて合図して」
わかった、という合図を確認すると、俺はボタンをいくつか押していった。暫くすると、彼は反応を示す。
「んん…?ん、何これ…?」
かなり特殊な形状の拘束台ーーいや、拘束台と言えるのか?という状況の為、彼はキョロキョロしている。初めての人を乗せた稼働に俺は少し感動を覚え、まじまじと観察を続ける。
ーー“俺らしくない”、そう言われるその奇妙な拘束台の中で、俺がボタンを弄り状況を変化させる度に彼は快楽による強い変化と発情に苦悶させられていった。
「あ…からだ、熱い…なんか、ドキドキして変になりそう…」
「うまくいってるね。気化した媚薬のせいだけどこれから暫く頑張ってね」
身体をくねらせて悶える姿はとても艶めかしい。男でもドキッとさせられるような姿だろう。こういう時、何も感じず冷静に記録することが出来る特殊体質で良かったと思う。
…今のところ、俺を特別な気持にさせてしまうのは
…あの子一人しかいないから。
「うぅ…やだ…っおかしくなる、イきたいよ、出したいよ、桃くんもう焦らさないで…っ!」
「今日はこのままずっと焦らすからね。媚薬でどんどん身体が疼いてきちゃってるだろうけどまたまだイかせないよ。そういう実験だから」
発表日は誰がこの拘束台に乗るのだろうか?Irisの人の中で誰か指名してくれるのだろうか。できればある程度耐性のある人がこちらとしては良いな…等とボタンをいじりながら暫く考えていると、バンバンと硬い物を叩く音が聞こえた。
「…くん!…っも、もくん…っはぁ、はぁ…ったす、けて。もう無理っ…イかせて!イかせて!お願い!なんでもするからっ…!」
目の前には身体中を火照らせ必死に涙目で懇願する彼。合図に気づき、これ以上は壊れてしまうと判断した俺は全てのスイッチを切って彼を解放した。まだまだこれから機能を試していく予定だったが仕方ない。
「…んぁっ。そ、そっと触ってぇ…!今、どこ触られてもおかしくなってるからぁ…っ」
抱きかかえるとすっかりとろとろになってしまった身体はとても熱く、息は絶え絶えで震えている。この子には少しまだ早かったか。
「お疲れ。君のおかげで中々良いデータが取れたよ。じゃあシャワー浴びてスッキリしに行こうか」
協力してくれた彼を労って部屋まで送り届けた後、実験室に戻ってきた俺は改めて自分の作品に目をやった。
ーーひとまず初稼働は成功だ。
お披露目の時に乗ってくれるIrisの人はきっと素敵で、無様で、これ以上なく可愛らしい姿を晒してくれる事になるだろう。
相変わらずこんな時でも意地悪な俺だが、いじめることができると思うと思わずニヤリとしてしまう。
俺は一人になった部屋でしっかりと呟く。
「さーて、誰か分からないですけど…次は雑魚だなんて言わせないで下さいね。途中でリタイアなんて無しですよ。俺達は勝ちに行くんで。絶対」
完成までもうすぐ。
皆は俺達がどんな拘束台を仕上げてきたと予想するんだろう?
→
目の前の子の様子を詳しく書き留めながら、俺はリモコンを操作してスイッチを切った。
「お疲れ様、協力してくれてありがとう。かなりハードだったよね、大丈夫?」
今息を切らして試作の拘束台に乗ってくれているのは、Daisyで俺を桃くん桃くんと慕ってくれている男の子。
「はぁ…っ…はぁ…っ、うん、かなりキツかったけど、桃くんの為だと思ったら頑張れたよ。桃くんこそ毎日ずっと頑張ってて大丈夫?疲れてない?」
「はは、心配してくれてありがとう。Daisyの子達はほんと優しいね。明日は別の子に協力して貰うから今日はゆっくり休んでね」
ペットボトルの水を渡すと、飲みながら元気に答えてくれた。
「うん、僕もまた協力するからいつでも言って!みんな桃くんのこと応援してるよ!Irisの人との対決、僕も当日観に行くからね!」
そう言って彼は目を輝かせながら手を振って帰った。俺は姿が見えなくなるまで見送り実験室の机に戻ると、ドサッと座り手で頭を抱えた。
「…駄目だ。これじゃまだ駄目なんだ」
机の上には幾つものクシャクシャに丸められた紙が散乱していた。俺は今目の前にあるラフ画が描かれた紙に大きくバツ印をつけ、再び頭に手を当てながら頭を悩ませる。
暫く思案に耽っていると、ガチャッと扉が開き、缶コーヒーを二本持った栗原さんが入ってきた。
「…お疲れ。また悩んでんのか」
元気を装ってはいたが疲れが顔に出てきていたのだろう。栗原さんは缶コーヒーを一本、俺の机の上に置いてきた。
「…お前のそんな真剣な顔を見たのはいつぶりだろうな。俺にも滅多に見せないだろ。自分から喧嘩ふっかけたくせに」
ーーあの時。
初めて会った未南さんと握手した時。
自分でも言いようの無い感覚が突然身体中を巡った。
嫉妬。悔しさ。憧れ。尊敬。
気がついたら、意地悪な言葉を放っていた。
俺自身もどうしてそんな感情が出てきたのか分からないが、未南さんに言われて初めて自分が何を言っているのか気付いた。栗原さんにも怒鳴られた。でも、もう止められなかった。頭が追いつかなかったんだ。
俺の提案が可決して…それからDaisyに帰るまでのことはあまり覚えていない。栗原さんにこっぴどく叱られてやっと冷静になったが、自分の言い出したことには全く後悔していなかった。むしろ、俺はその提案をした時の自分を褒めてやりたい。
…ずっと、Irisに新しい技術者が入ったって聞いた時点から、心の中で渦巻いていた本音だったから。
「なぁ…今の試作じゃダメなのか?俺には十分だと思うが、面倒くさがりのお前にしては珍しいな。前に作った拘束台だってきちんと訓練を受けたIrisの人達に効いていたんじゃないか?」
栗原さんは各所に散らばっている資料やメモに目をざっと通しながら不思議そうに聞いた。
「…この前、未南さんと篠田さんの勤める会社を調べて、彼らの納品した作品やレビューを全てネットで見てみました。…凄いなって思いましたよ。正直。
特に篠田さんの、型にとらわれない自由な発想と斬新なアイデア。間違いない性能を備えながらも、随所に見られる遊び心。…彼は天才にして、努力家です。…特にこの人気商品だっていう自動人形を見て下さい。プログラムも半端ないし、俺にはこんな画期的で面白いアイデアは思いつかなかった」
「そこまでお前に言わせるなんてな」
「栗原さんにだけですよ、こんな本音言えんの。そんで、そのアイデアをそのまま組み立てられる未南さんも半端ないです。なーんてコンビでしょうね。Irisが目をつけたのも納得ですよ。あーあ、世界は広いなぁ」
俺は大きく伸びをしながら凝り固まった肩を解した。ペラペラと喋り続ける俺に対し、栗原さんはじっと俺を見つめながら話を聞いている。
「向こうだってIrisに置いてきた俺の拘束台を調べてるでしょう。あれだって俺がIrisに追いつきたい一心で必死に作った拘束台で、思いつく限りの機能を盛り込んだ、どんな人達にも驚かれるような自信作だったけど…あれを超えてくるとんでもない作品を仕上げてくる筈です。びっくりするような物を。…あくまで俺の勘ですけどね!」
どうして俺はこんなに一人で喋ってるんだろう。悩みすぎてスランプにでもなってるのかな。
などと少し恥ずかしく思っていると、栗原さんは未開封のコーヒーを持ちながら近くにあった椅子にゆっくり座って話し始めた。
「…お前と俺が初めてあの二人に会った時、薄々こうなるんじゃねーかって思ってたよ。いや、二人の噂を聞いた時からだな。素知らぬフリ決めてたんだろーが気持ちが揺れてんのバレバレなんだよ。…何年お前と一緒に任務こなしてきたと思ってんだ?
…まぁ、組織同士で対立すんのは流石にヤバいと思って止めたけどな。…そんな俺を振り切ってズカズカ進んでいく篠田って奴は予想外だった」
「あの人色んな意味で要注意人物ですよね」
二人で話していると、一人きりで悩んでいる時よりも随分空気が良くなった。今ならもう少し柔らかいアイデアが出せそうな気がする。
(遊び心…ねぇ。俺も結構自由人だとか言われてるけど、本当に自由な人の発想は違うんだろーな)
幼い頃から組織に入り、厳しい訓練や実践を積み、必死に駆け上がってきた自分。人の為に、誰かの役に立つ為に。そう思いながら、いつの間にかきちんと任務をこなすことしか考えなくなってしまっていたのかもしれない。
勿論、組織で楽しかったことはたくさんある。俺を慕ってくれている子達と遊んだり、休みには一緒にご飯を食べに行ったり、お花見をしたり、花火をしたり、クリスマスにはプレゼント交換したり…
「あっ」
急にとあるアイデアが思い浮かんだ。俺はすぐさまペンを取り、思いつくままにラフ画と走り書きの説明を大量に、できる限り分かり易く書いて栗原さんに持っていく。
「栗原さん。…これ、今思いついたんですけど…ど、どう思います…?!」
暫く眺めると、フッと笑って言った。
「はっ、何これ。お前らしくなくて良いじゃねーの」
「…なんですかその褒め言葉」
裏表のない栗原さんの言葉が嬉しくて、俺も小さく笑い返した。貰った缶コーヒーをパキッと開けて一気に飲み干し、さぁ今からはやることが山程あるぞと気合を入れ直し作業を進めた。
ーーそれから俺はひたすら製作に集中した。面倒くさがり屋だった俺が自分でも驚く程に。
今なら何だって出来そうな気分だった。
(そっか。俺…今、楽しいんだ)
Irisに追いつきたい。追い越したい。
俺は素直な気持ちを言葉にして打ち明けた。
「…栗原さん。俺、勝ちたいんです。
負けたくないんじゃない。勝ちたい。」
「なんだそれ。…ま、やるからには当然勝つしかねェだろ。俺達の意地、見せてやろうぜ」
ニヤリと笑いながらこっちを向く栗原さんがカッコよくて、つい煽りたくなった。
「今の発言、栗原さんっぽくなくて良いですね」
「…何だ、仕返しか?」
やっといつもの調子と態度を取り戻した俺は、頭の霧が全て取り払われたような清々しい気分だった。
◇ ◆
「も、桃くん…凄いね、これ…!」
久しぶりに実験室に現れた協力者の子は、かなり形の出来上がった大きな装置を見て驚くと共に目をキラキラさせている。
コンペ用新型拘束台の設計図が固まってから、俺と栗原さんは急いで必要なパーツを発注したり、プログラムを設定したり大忙しで製作を進めていった。
具体的なイメージを二人で共有していたので、仮の仕上がりは理想通りといっていい。
「でしょ。凄いって言ってくれて嬉しいよ。でも他の人達にはどんなの作ってるか絶対ナイショね?発表する時にびっくりさせたいから」
「うん、もちろんだよ!えへへ、でも桃くんこういうの作るんだぁって僕も今びっくりしたよ。なんか、イメージと違った!」
ほぼ栗原さんと一緒の純粋な意見に、俺は苦笑いした。他人から見た俺ってどう映ってるのかな。なんて考えたりしながらスタートの準備を進めていく。
協力者の彼はかなり緊張してきていたが、こちらを向いてOKだと頷いた。
「じゃあテスト作動スタートするよ。結構キツいと思うから、息苦しくなったり身体に異変があったりしたら手をバンバン叩いて合図して」
わかった、という合図を確認すると、俺はボタンをいくつか押していった。暫くすると、彼は反応を示す。
「んん…?ん、何これ…?」
かなり特殊な形状の拘束台ーーいや、拘束台と言えるのか?という状況の為、彼はキョロキョロしている。初めての人を乗せた稼働に俺は少し感動を覚え、まじまじと観察を続ける。
ーー“俺らしくない”、そう言われるその奇妙な拘束台の中で、俺がボタンを弄り状況を変化させる度に彼は快楽による強い変化と発情に苦悶させられていった。
「あ…からだ、熱い…なんか、ドキドキして変になりそう…」
「うまくいってるね。気化した媚薬のせいだけどこれから暫く頑張ってね」
身体をくねらせて悶える姿はとても艶めかしい。男でもドキッとさせられるような姿だろう。こういう時、何も感じず冷静に記録することが出来る特殊体質で良かったと思う。
…今のところ、俺を特別な気持にさせてしまうのは
…あの子一人しかいないから。
「うぅ…やだ…っおかしくなる、イきたいよ、出したいよ、桃くんもう焦らさないで…っ!」
「今日はこのままずっと焦らすからね。媚薬でどんどん身体が疼いてきちゃってるだろうけどまたまだイかせないよ。そういう実験だから」
発表日は誰がこの拘束台に乗るのだろうか?Irisの人の中で誰か指名してくれるのだろうか。できればある程度耐性のある人がこちらとしては良いな…等とボタンをいじりながら暫く考えていると、バンバンと硬い物を叩く音が聞こえた。
「…くん!…っも、もくん…っはぁ、はぁ…ったす、けて。もう無理っ…イかせて!イかせて!お願い!なんでもするからっ…!」
目の前には身体中を火照らせ必死に涙目で懇願する彼。合図に気づき、これ以上は壊れてしまうと判断した俺は全てのスイッチを切って彼を解放した。まだまだこれから機能を試していく予定だったが仕方ない。
「…んぁっ。そ、そっと触ってぇ…!今、どこ触られてもおかしくなってるからぁ…っ」
抱きかかえるとすっかりとろとろになってしまった身体はとても熱く、息は絶え絶えで震えている。この子には少しまだ早かったか。
「お疲れ。君のおかげで中々良いデータが取れたよ。じゃあシャワー浴びてスッキリしに行こうか」
協力してくれた彼を労って部屋まで送り届けた後、実験室に戻ってきた俺は改めて自分の作品に目をやった。
ーーひとまず初稼働は成功だ。
お披露目の時に乗ってくれるIrisの人はきっと素敵で、無様で、これ以上なく可愛らしい姿を晒してくれる事になるだろう。
相変わらずこんな時でも意地悪な俺だが、いじめることができると思うと思わずニヤリとしてしまう。
俺は一人になった部屋でしっかりと呟く。
「さーて、誰か分からないですけど…次は雑魚だなんて言わせないで下さいね。途中でリタイアなんて無しですよ。俺達は勝ちに行くんで。絶対」
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