【完結】あなたと恋がしたい

まこ

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※望月視点(大学生になりました)

「大学は奏多と同じが良かったなぁ~」

最後の荷造りしている俺の後ろから抱きついてくるのは、双子の妹である奏。同じ大学に行きたいと言われていたが、俺は別の道を選んだ。

「でも何か意外だったな。私がおねだりしたら一緒の所受けてくれると思ったのにぃ」

「俺も奏と同じ大学行きたかったけど、俺は保育士に向いてないと思うから」

結局、俺たち双子は親の跡を継ぐ予定はなく、兄だけが医大へ進み、俺は心理学を学ぶ大学へ、奏は保育士の専門学校へ進学する事になった。

それに対しても両親は相変わらず何も言わず、改めて見放されていると感じた。

大学進学を機に家を出て、俺は一人暮らしをする事に決めた。

「いっぱい遊びに行くねぇ。ていうか一緒に暮らそうって言ったのにそれもだめなんてーもしかして私以外に好きな人でも出来たわけー?」

「そんなわけねーだろ。俺はお前しか見てないよ」

そうは言ったものの、奏以外にももう一人気になる存在が出来ていたのは事実。

高校一年の時に暇つぶしに遊ぼうとした、瀬野 千明。二年に上がる少し前に、アイツが俺に告白してきた。

ただ普通の告白とは違い『所有物でもいいから今まで通り抱いてほしい』というものだった。

最初は、複数の奴らに迫られたのを助けたからそう錯覚しているんじゃないかと思ったが、話を聞く内にそうではないと理解した。

告白された日に初めて聞いた瀬野の苦悩。何の悩みもなく、みんなの人気者で居ると思っていたアイツの口から語られた言葉を聞いて、人それぞれ悩み事はあるんだなと少しだけ安堵した。

他人の事ばかり考えていたと言っていた瀬野が変わったのはそこからで、俺に対して今まで以上に一途な思いをぶつけてきた。

呼び出せば必ず大好きだ愛してるなどふざけた台詞を吐き、言葉以外にも態度で示してくる始末。

本当は高校だけの関係で終わらせるつもりだったが、今までそんなに長く自分だけを見てくれる人なんて居なかったから、簡単に手放せない程に俺もアイツにハマっていた。そんなこんなで突き放す事も出来ず、高校生活は殆どずっと瀬野と過ごした。

そして大学受験の時、アイツが心理学の学校へ通うと聞いたから俺も同じ道に進む事を決めた。奏とルームシェアをせずに一人暮らしを選んだのも、大学になってからもアイツを家に呼ぶため。

それに薄々気付いている奏は、ニヤニヤしながらも『奏多が幸せなら私はそれでいいけどぉ』なんて言ってきた。

「あ!そうだ、お父さんとお母さんが今日話があるって言ってたよ」

「…ん。じゃあちょっと行ってくるわ」

明日、家を出て独り立ちする俺のために何故か両親は今日医院を休みにして珍しく在宅していた。俺に関心もないくせに驚いたが、おそらく家を出ればもう会うつもりもないから最後に…と思ったんだろう。

殆ど荷造りを終えた俺が両親の部屋に行くと、かなり久しぶりに入った広い空間。昔は何度も呼び出されてダメ出しを受けていたっけ。

もうここに入るのも、親に会うのもきっと最後だ。

ソファに座っている父と母の所へ行くと、久しぶりにじっくりと俺の顔を見てくれた。

「奏多。明日から一人暮らしだけど、しっかりやるのよ」

「うん」

「何か困ったことがあればすぐに言いなさい。そして、すぐに帰って来なさい。奏多の部屋はずっとそのまま置いておきます」

「──は?」

「…何? 何か変な事言った?」

相変わらずのキツめの口調のくせに、内容を聞いてつい聞き返してしまった。

何かあれば帰って来い?どういう意味だ。

「…俺の事、どうでもいいんだろ?」

「え?」

「…小さい頃からずっと兄貴と比べてばっかで俺を見てくれなくて、それで…俺が中学に行く時に反抗してからは、散々それまで叱ってきたくせにそれすらなくなったじゃん。その時からもう俺の事、見放してたんだよね。高校の時も一切干渉しないし、大学受験する時も一人暮らしの時も何も言わなかったじゃん」

どうせ最後だからと、少し泣きそうになりながらも今までの事を全て吐き出すと、母親は言葉を失ったのか暫く沈黙が続いた。父親は昔から殆ど何も話さないので、今も置物のようになっている。

「……またお兄ちゃんの話をして悪いけど、あの子は叱って伸びるタイプだったの」

「…?」

「褒めたらすぐに努力を止める子だったから、奏多と奏が居ない所ではずっとずっとあの子に厳しくし続けてきた」

今まで兄が叱られている所なんて見た事がなかったが、そんな事実が語られて驚いた。

「…お兄ちゃんが初めての子育てで、そういう育て方しか知らなかったから、奏多にも同じようにずっと厳しく接してきた。奏多はそれでも何も言わずに懸命に努力をして伸びてくれたから、それが正解だと思っていたの。奏に何も言わなかったのは、厳しくすればする程の何もしなくなったから、この子は厳しくしてはいけないんだと幼い頃に分かったからよ」

「……」

「けど、奏多が中学受験の時、初めて嫌だと自己主張してきた時にどう接していいか分からなくて…恥ずかしいけど奏に相談したの。そしたら『あれだけ努力してるのに、認めてもらえない奏多が可哀想。もう二度と奏多のする事に口出すな、好きに生きる事を許してやれ』って言われて…そこから奏多が決めた事を否定せずに好きな事をさせてあげようって思ったの。もしそれが干渉しないだけの親だと思わせていたならごめんなさい。もちろんいけないことをしようとしたら奏多のためにも、しっかりと叱るつもりだったわ」

「…え」

その言葉を聞いて、胸が苦しくなった。

幼い頃は必死に頑張っていたけど、全然認めてもらえなくて悲しくて。

もういいやと自ら反抗したくせに、何も言ってもらえない事も悲しくて。

でも、何も伝えられないで捻くれた自分が恥ずかしくて気持ちに蓋をしていた。

俺が言葉を選んでいると、母は続けて今までの事を話してくれた。

「だから…奏多が一人暮らしするって言った時も本当は凄く淋しかったけど、この家にいると奏多が疲れてしまうならと思って何も言わずに了承したの」

「もっと、…早く…言ってくれれば良かった、のに」

「…そうね、ごめんなさい。」

俺も悪いのに、親を責めるような言葉しか出てこない自分が情けなくて、口を結んでいると、父がやっと口を開いた。

「仕事が忙しいからと言ってお母さんに全て任せていた俺の責任だ。……辛い思いをさせて、本当に申し訳なかった。奏多は小さい頃から凄く頑張っていたのは認めている。高校生の時も一度たりとも首位を落とさず努力していたのも知ってる。大学になって心理学を学んだら、俺達にも教えてくれないか。分野が違うから興味があってね」

俺が高校の時、ずっと首席をキープしていたことも、今から進む大学の事も知ってくれている父に目を丸くすると、二人は深々と謝罪をしてくれた。

「今日は奏多の好きな料理を作るから、たくさん食べていってね。これからも、何もなくてもいつでも帰って来てくれればいいからね。…帰って来たくないかもしれないけど、心配だから顔を見せてね」

「………うん」

今の俺にはそう言うのが精一杯で。泣きそうになりながら頷くと、二人は初めて見せるような柔らかい笑顔で俺を見つめてくれた。


◇ ◆


「わぁ、奏多どうしたの?めっちゃ泣いてる?何言われたの!?」

「…泣いてねーよ」

「そ、それは嬉し泣き?それとも…また何か言われた?私殴ってくるよ!!」

「……やめろって。嬉し泣き…だから。初めて親の気持ち聞けて…ちょっと嬉しかった」

「それなら良かったぁぁ。これからもいつでも帰って来てね。まぁ奏多の部屋は私の荷物置きになるかもだけどぉ。その時は小さい頃と同じで一緒に寝ようよー」

「ん、好きに使えよ。顔は見せに来るけど一人暮らしして、自立したいから」

「ふふふ。子供はちゃんと結婚してからにするんだよ?」

「………何それ。別に彼女連れ込むとかしないから。一人で生きてくし」

「へぇぇ?どーだかねー?」

今まで抱えてきた負の感情が、たった数分の会話でなくなるなんて自分でも驚いた。

ニヤニヤした奏と会話を交わした後、久しぶりの母の手料理が振る舞われた。普段は忙しい両親に変わり、殆ど料理を担当していたのは俺達双子なので、決して美味しいとは言えないがとても優しい味がした。


◇ ◆


「よーし、これでなんとか生活出来るくらいには片付いたなぁ!」

引越し当日、手伝いに来てくれたのは兄と奏だった。

「…お兄ちゃん、ありがとう。勉強忙しいのにわざわざ」

「全然平気だぞー。にしても奏多が一人暮らしかぁ。淋しくなるなぁ…俺も頑張るから、お前も頑張れよ」

「うん。俺も応援してる。二人とも本当にありがとう」

「いーえー!また遊びに来るから合鍵ちょーだい!」

「……無理」

「あははぁ、彼女に渡すもんねぇ?」
「えっ、奏多彼女居んの!?」

「い、居ないからっ、今日は本当にありがと!気を付けて帰って!」

なんとなく恥ずかしくなって、二人には帰ってもらうと、シンと静まり返った狭い空間。

昨日親との会話がなかったら。
さっき兄と奏が来てくれなかったら。

今の空間が淋しくて堪らなかったかもしれない。

わだかまりが取れた今の俺の心はあったかくて、新しい生活に向けて期待が生まれた。

「……」

二人が完全に帰ったのを確認してから、瀬野に新しい住所と【来い】だけメッセージすると、またもや10分程で呼び鈴が鳴った。

「来たよ!望月くん!!」

「…お前相変わらず早いな」

「わぁ……望月くん何かあったの?すっごいご機嫌さんだね!」

「はぁ?……別にいつも通りだよ。引越し作業疲れたから…癒やせよ」

全く態度に出してないはずなのに、顔を見た瞬間に気付かれてとても恥ずかしく思い、いつも通りフェラを要求すると、瀬野は嬉しそうな顔でご奉仕してくれた。

「……っ、」

コイツのフェラは最初の時と比べてありえないほど上達して、今は早漏と言われても文句言えないくらいに早々に絶頂が訪れる。

本当は引越し初日に体を重ねたかったが、まだ完全に片付いてないので落ち着いて抱いてあげれない気がするので、俺はフェラだけで終わる事にした。

「…飲め」

「はぁぃ……」

勢い良く放った俺の欲を嬉しそうに飲む顔を見て、可愛くて少しときめいた。

「……ん、これから俺が呼んだらこの家に来い」

「うん!分かったぁ。俺も明日引越しだからすぐには来れないかも」

明日は行けない、じゃなくてすぐには来れないかもという言葉がコイツらしくて小さく笑いが溢れると、ぎゅっとしがみついてきた。

「…明日も呼んでいいからね。これからもずっとずっと、俺は望月くんだけの俺だから」

「はいはい。もういい、帰れ」

本当はもっと居てほしい。けど明日コイツも引越しなら、疲れるだろうから片付けを手伝わせたくないし、色々準備もしたいだろう。まぁそれなら呼び出すなと言われそうだが、どうしても会いたかった。

「えぇ、俺引越しのお手伝いするよ?」

「お前に触られたくないから無理」

「わぁひどーい。じゃあ無理しないようにね、大学でも望月くんと一緒に居れるの嬉しい。またね」

「あ……そうだ。これ」

「ん?」

「……渡しとく」

奏にはあげなかった合鍵を渡すと、目を輝かせた瀬野は嬉しそうに鍵を眺めていた。

「え…えええええ?なんで…」

「これから大学忙しくなったら家のことしてほしいし。だから渡しただけ。勘違いすんなよ」

「わぁぁぁぁ!俺なんでもするぅぅ!ありがとう!俺も合鍵渡すからね!」

「いらねーよ、別に」

今まで以上の笑顔を見せた瀬野は、飛び跳ねながら帰っていった。

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