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2・ばあちゃんを祓う方法は?
しおりを挟む背中合わせに腰かけると、沈黙の時間が流れ始めた。顔が見えないとなると、気配を探るほかない。相手がしゃべりだすような気がして口を噤んでいると、相手もまた口を噤んでいるし、いざしゃべりだそうとすると、同じタイミングで話し始めるものだから、曲がり角でぶつかってころぶかのように言葉が止まる。
『ったく、なんなの? 親子のくせに、付き合いたてのカップルみたいね』
「「出てくんな!」」
ふたりの叫びが、ぴったり合った。
「それで、母さん」
「なーに? マコト」
祖母・アヤコの言葉が号砲となったかのように、ふたりの口から言葉があふれ出す。
「このばあちゃん、どうするよ」
「ビンタ以外に叩きだす方法、あるかな」
「誰かに頼むとか? こういう時にお願いするのって、誰だっけ? 呪術師?」
「こういう時は霊媒師じゃない?」
「いや、今のオレの状態が霊媒な気がする。だから、霊媒師は違うような」
「じゃあ、何よ」
「霊を祓う人って、なんていうんだろう」
「「……悪魔祓い?」」
『コラ! 年上の人間に対して悪魔だなんて失礼なこと言うんじゃないよ!』
「人間じゃないでしょうが! あんたはもう死んでるんだから!」
『死んでますけど、成仏してませーん!』
「じゃあ、さっさと成仏しなさいよ!」
マコトは背中から熱を感じた。タカコは怒りの炎を大きく育てているようだ。
考える。悪魔祓い……で対応できるか。できるとして、それができる人間が存在しているのか。それとも、もっと平和的な方法でこの状況を打破できるのか――。
「ねぇ、母さん」
「なーに? マコト」
「ばあちゃんはさ、オレから追い出す方法が見つかるまで、オレの中に居続けるんだと思うんだよ。だけどさ、勝手に出てこられたら困るじゃん? だから、とりあえず〝勝手に出てこない〟って約束をしたほうがいいよね?」
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「知らん」
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「まぁ、そうなるかな。おーい、ばあちゃん!」
宙にむかって呼びかける。すると、
『なんだい? マコちゃん』
アヤコが出てきた。
「オレから出ていく気ってある?」
『えぇ、せっかくこうして話せるようになったってのに、もう出ていけって言うのかい?』
「ああ、まぁ」
『そんなぁ、ひどーい。だけど、ごめんね。わたし、出ていく方法知らないの! てへっ!』
マコトには、ぴきっという音が聞こえた気がした。ゴーゴーと燃え盛るようなエネルギーを感じる。おそらく今、タカコは突沸した憤怒に狂っている。
「あ、そう。じゃあ、出ていく方法が見つかるまで、許可なく乗っ取るの禁止ね」
『……えぇ!』
「っていうか、頼まれなくたってねぇ、他人の体乗っ取ってんじゃないわよ!」
バコン! マコトの後頭部にタカコの一撃がヒットした‼
「母ちゃん……痛い……」
『あらあら、暴力はんたーい! 虐待はんたーい!』
「人のこと散々ぶっ叩いたくせに、どの口が言うかー!」
バコン!
「の、乗っ取られてるだけ! オレは悪くなーい! 全員、しばらくしゃべんないで!」
マコトの叫びをきっかけに、部屋は静かになった。マコトは自分の中に入り込んでいるアヤコの居場所を探るべく、体のあちこちに意識を集中させてみる。しかし、どこか分かるでもないし、分かったところでどうにもできないことに気づいてやめた。
そんなマコトの頭の中に、出所不明の笑い声が響きだした。
――ばあちゃん? うるさいんだけど。
――あら、気づいてくれたの? うれしい!
――ばあちゃん、さっき言ったことだけど。
――ああ、乗っ取るの禁止、ってやつ?
――そうそう。約束してくれるよね?
――うーん……努力はするわ!
バチン!
「マコト?」
「ん? ああ、ごめん。ちょっと、叩いてやりたい気分だったから」
「あ、そう」
変なの。普通、自分のことを叩くヤツなんていないだろう。もしもそんなことをしていたら、おかしくなったと心配するってものなんじゃないのか。アヤコのせいで、この家はおかしくなってしまった、と、マコトは思う。
早く、ばあちゃんに出ていってもらわなくちゃ。
――マコちゃん。さっきも言ったけど、わたし、まだ出ていく気ないからね~!
バチン!
だまってろ! 成仏しそびれた悪魔!
あーあ。叩かれたり叩いたりしすぎて、ほっぺたが痛い。
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