20 / 20
20.今を駆ける(終)
しおりを挟む「……へ?」
「ああ、いや……。もし予定とかなかったら、一緒にご飯、どうかな? って、思って。私、マイコっていうの」
「あ、うん。えっと、カエデっていいます。あの……わたしなんかと一緒でいいの? っていうか、そのぅ……。いや、なんでもない」
「うん。一緒でいいよ? っていうか、一緒がいい」
「ほんとう? わたしなんかと釣り合わないっていうか、なんていうか。わたしみたいな人じゃない、あの辺の子たちとかと仲良くしてそうな見た目、っていうか、なんていうか」
「ああ、まぁ、あの辺の子たちとはもう連絡先交換してあるけど」
「やっぱり」
「でも、カエデ……ちゃんが嫌じゃないなら、一緒にご飯に行きたいな。私は」
「そ、それなら、うん」
今はまだ、たぶん平気。
だけど、これが迷惑になるか、救いになるかは、これからの私の行動にかかっている。
大丈夫。私は彼女の瞳を、今より輝かせることができる。
毎朝自分の瞳を額縁で飾り、大学へ行く。
今日も今日とて変わらぬルーティンをこなし、慣れた道を歩き出す。
けれど、今日はそわそわせずにはいられない。
心の中は不安でいっぱい。でも、今日までの間に、私はフウカの練習台になりながら、見て、感じて、学んできた。それだけじゃない。フウカやみんなに〝誰かにメイクをする方法〟を教えてもらった。だから、心配ないと信じたい。
ペンケースの中に今も入れてある、あの日もらったからっぽのマスカラと、今朝からっぽになったばかりのマスカラを握りしめる。
――できる。期待に応えられる。カエデのかわいいも、自信も、私になら引き出せる。
一コマ空いているからとたまり場と化した空き講義室の端っこで、私はカエデの顔に色をのせた。
あの日、ミサコに見せていたのだろう私の顔が目の前にあるような錯覚に陥って、ふ、と微笑が漏れる。
「えっと……」
「ごめん。あんまりかわいくなるものだから」
目の前で恥ずかし気に笑うカエデにつられるように、私も笑う。
ふぅ、と息を吐き、集中しなおす。
仕上げに瞳を額縁で飾ると、カエデに鏡を差し出し、彩った顔を見せた。
「え、すごい。自分じゃないみたい」
「メイクってすごいよね。だけど、カエデの顔がいいからだよ。メイク映えする、すっぴんじゃもったいないようなかわいい顔してるもん」
「そんな、お世辞はいらないよ」
「これはお世辞じゃなくて、事実ですぅ」
「……ねぇ」
「んー?」
「わたしもこうしてメイクしたらさ、あっちのみんなと仲良くできるかな」
カエデの視線が、煌めく集団を刹那捉えて、私のもとへと帰ってきた。
「メイクしなくても仲良くなれると思うよ」
「でも、ほら。釣り合わない気がするんだ」
「じゃあ、これからもメイクしようよ」
「でも、なんか。マイコみたいにうまくメイクする自信がないよ」
「練習あるのみだよ。少しずつ、楽しんでいこう? 私でよければ、いくらでも相談乗るし」
「ほんとう?」
「本当!」
いろんな面倒ごともあるけれど、こうしてメイクをしていると、ああ、女の子でよかったって私は思う。
コスメをあげて余裕ができたポーチをカバンに入れて、家を出る。
日々膨れていくカエデのポーチを見るのを楽しみに、弾む足で地を蹴る。
今日も額縁は最高の出来だ。
上向くまつ毛は、テンションが上向いている証でもある。
一歩先に見える希望と夢のエネルギーを、瞳が抱きしめる。
私はこれからも、なんにでもチャレンジしていける。
そんな自信が、心の底から湧いてくる。
「今日も、明日も、絶対いい日だ!」
かわいいは、私自身が作り出す。
かわいいは、私を守り、支えてくれる。
かわいいは、私をどんな困難にも立ち向かわせてくれる。
かわいいと共に、私は今日も、輝く未来へスタートダッシュをかますように、今を駆けていく。
―了―
11
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?
待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。
けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た!
……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね?
何もかも、私の勘違いだよね?
信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?!
【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
実は私あまりメイク得意ではなくて。
けれど拝読していてつい鏡を覗き込んでしまいました。
メイクが作るのは顔と思いがちだけれど、違うんですよね。メイクによって心もしっかり守られて。
メイクを通し、主人公のマイコちゃんがどんどん輝いていくことがとても眩しかったし、彼女を見守ってくれる友達同士の関係もとてもみずみずしくて。ラスト、冒頭のマイコちゃんとは全く違う、きらきらした彼女を見られてとてもうれしかった。
マイコちゃんのお母さんもきっとそうだろうなあ✨
また作品全体を通し、ワードセンスが輝いていますよね! お母さんの「イエローカード」がツボりました。私も家族に使ってみようと思います(笑)
最後に。
作品を読み終わって思ったこと。ああ、私も女の子でよかった、ということ。
空っぽのマスカラみたいに心の中に入れておきたい素敵な作品でした。
読めてよかったです!ありがとうございました!
ゆいさんー!お読みくださりありがとうございますっ🍡🍵
私もメイク得意じゃないのです……。難しいですよね、メイク。化け不足が不得意の原因だと分かっているけれど、下手に化けると本物の化け物になってしまうから冒険できないという負のループにハマってます……。
ワードセンスを褒めていただけて、女の子でよかったと思っていただけて嬉しいです!
キラキラ輝くようになった主人公に負けず劣らず、お互いにモノカキとして今以上に輝けたらもっともっと嬉しいです!
これからも小説と共に楽しい時間を過ごしてまいりましょー🙌