夢で会ったインキュバスが忘れられないんだが

Sui

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夢の中で

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「ランクあがると魔物の情報が増えるってハナシは聞いていたが、本当だったんだな」

 リトはいま、ランクが上がらない限り入れない文献部屋であらゆる魔物の詳細が記載している書物を読んでいるところである。

 冒険者のランクはSSからDまであり、ギルドからランクに合った依頼が届く。ランクを上げるには数をこなすか、あえて高レベルを挑戦して早いこと上げるかのどちらかになる。

 ただ俺は上位ランクを目指していた訳ではなく、報酬がほしい時に依頼を受けていたためランクはB止まりだったが、ここ最近積極的に受けてきたからか、いつの間にかAに上がっていた。
 いつものように依頼を済ませギルトに向かうと、ランクが上がっていることをギルドスタッフから教えてもらった。ついでに文献部屋も入れるようになるのことも。——もしかしたらインキュバスの詳細が得られるのではと思い、早速入ってみたのだ。

 高レベルの魔物やエリアなどが詳しく記載しているであろう文献をいくつかピックアップし、パラパラとめくってみたがどれも記載していなかった。
 とりあえず窓口カウンターにいるギルドスタッフなら知っているだろうかと考え、確認してみる。

「なぁ、インキュバスっていう魔物が載っている文献はあるのか?」
「インキュバスですか……。ここにあるのはほとんど撃滅対象だけですので、あるかどうかは。とりあえず調べてみますね」

 撃滅対象か…そこまで考えたことなかったな。ただ、インキュバス・サキュバスだと撃滅することは難しいだろうな。人間の性欲が無くならない限り、居続ける存在なのだから。

「確認してみましたがやはりありませんでした。もしかしたらランクSかSSだと記載しているかもしれませんね」
「ここで確認することは出来ないのか?」
「申し訳ございません。ここのギルドはランクAまでなんです。SとSSは城下町に行かないと……」
「そうなのか」

 ここの町から少し離れたところに城下町がある。俺には縁がないと思っていたが、インキュバスの情報が手に入る可能性があるなら、さらにランク上げるしかないな。

「まずはレベルアップしなきゃいけないってことだな。なんか大きい依頼とかないか?」
「そうですね。これなんかはどうでしょう──」





「……なぁ、なんでインキュバスのことを調べてるの?」

 目の前にずっと会いたかった顔があった。

「あれ? なんでいるのお前」
「夢だよ。俺がいる時点で気付け」

 確か、俺はギルドでインキュバスのことを調べて、結局見つからずランク上げるために依頼を教えてもらい……あれ? 確かそのまま宿に戻ったはず……だよな?
 いま俺が立っている場所はギルドで、窓口カウンターの向こうにはあの時のインキュバスがいた。

「へー、あんた冒険者なんだ。まぁ冒険者が集まるギルドではインキュバスやサキュバスの情報なんて無いぜ」
「……俺に会いに来てくれたのか?」

 するとインキュバスはため息つく。

「あんたの情欲がめちゃくちゃ俺を引き寄せてんだよ。どれだけ無視しても、全然治まらないでやんの。仕方ないから来てやっただけ」

 ギルドでスタッフが立っていたところにインキュバスがいる。現実と同じかどうかはわからないが、依頼が載っているであろう書類を読んでいる…いやフリかもしれない。
 
「なぁ、お前の名前教えてくれよ」

 手に持っていた書類を取り出し、顔に近づけたがスッと避けられる。ちっ、唇を奪おうと思ってたのに。

「やだね。教える理由はないし、俺はお前の精気をもらいに来ただけ」
「……俺はリトだ。最中に名前を呼んでくれると、極上の精気ってやつを与えてやれると思うんだがな?」

 極上の精気ってどうやって出来るのかは知らんが。

「ふぅん、リトっていうんだ」

 唇の端から下唇をベロリと舐め、間にあったカウンターに登り座った。そして綺麗な指が俺のフェイスラインを撫でていく。
 無精髭にもサワサワと触れられ、ゾワゾワとする。

「今回はやけに積極的だな……?」
「まぁね。前回とは違って最初から入ると決めてたんだし」

 インキュバスが着ていたベストとレザーパンツがみるみるとギルドスタッフが着ていた上衣とズボンに切り替わって、角と尻尾も隠されていく。

 ……あの尻尾、触りたかったな。次は触らせてもらおう。

「——たくさんの人がいるギルドでヤるっていうシチュエーションってわけか」
「その方が燃えるだろう?」
「夢って自覚してなければな。でも悪くはない」

 触り心地の良い髪を梳いて、そのまま後頭部を掴み唇を奪った。

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