夢で会ったインキュバスが忘れられないんだが

Sui

文字の大きさ
21 / 26
夢と現実の狭間

09

しおりを挟む
 一軒家は二階建てになっていて3人家族にはちょうどいい大きさ。幸せな家族が住んでいると見て分かるような雰囲気だった。
 ソフィアが先に入り、大きな声で帰ったことを知らせていた。

「帰ってきたのね。おかえりな……さ……」
「私がお招きしたんだ。すまないがお茶でも用意してくれないかな?」
「いいけれど……大丈夫なの?」

 その人は二階から降りて俺を見るとすぐ戸惑い、慌ててフードの人にアイコンタクトしていた。上品の佇まいが抜けきれないかのような仕草で可愛らしい人だった。おそらくエリカかもしれない……と考えながら会釈した。
 フードの人は大丈夫と軽く横を振り、安心させるように笑顔を見せた。

「そういえば名前を訊いてなかったな。私はリュトという。そこの椅子にかけてくれ」
「リトです。どうもおじゃまします……」

 リュトに促されて指していた椅子にかけた。3人で食事に囲まれているだろうテーブルに、一輪挿しの花瓶が真ん中に置いてある。

「ねぇねぇ、かびん、とって!」

 ソフィアが俺の服を引っ張って、花瓶を指さしていた。花瓶を手渡すと、ふわっと笑っておじぎしてくれた。

「そこでつんだおはなをかざるのー。きれいでしょ?」

 少し大きめなポケットから、そこで摘んだであろう小さい花を何本か取り出して花瓶に挿し、俺を見せくれた。
 どう答えたらいいのか分からず、とりあえずうなずいたらソフィアはさらに笑って、俺に花瓶を渡してきた。
 そこにリュトがやってきて、ソフィアの頭を撫でながら向こうで遊んでなさいと優しくたしなめていた。

「ソフィアがすまなかったね。人が好きでおもてなししたがるんだ。君は特にいい匂いするから、いつもよりテンションが上がっててね」
「あの……いい匂いっていうのは?」
「──もう察してるんだろう? 私がインキュバスっていうことは」

 思わず口つぐんだ。まさかそこまで気づくとは。

「インキュバスやサキュバスは空想の存在であることを人間にはそう思わせるようにしている。そうでないと狩られちゃうからね……」

 そんな重大なことを俺に話していいものだろうかと思いながらも、あえて何も言わずに聞き続けた。

「だから、ここには誰にも来れないように魔法がかけてある。領主でさえもここまでは来たことがないんだ」
「リュト、お茶持ってきたわ」

 先ほどの人が二つのカップを載せたお盆を持って入ってきた。

「ありがとう。この人と2人だけで話したいから、君はソフィアと一緒にいてくれないか」
「ええ……」

 不安そうな顔をしながら会釈し、ソフィアのところへ向かっていた。
 おそらく初めてここに人間が入ってきたのだろう、それぐらい戸惑っていたのが分かる。
 加害はしないということを伝えればいいのだが……いまのところその機会はなさそうだ。

「──私はこの人に一目惚れしてね。迂闊にも空想の存在ではないことを伝えてしまった。夢だけで会うのが耐えられなくなってね」
「あの……そこまで話しても大丈夫なんでしょうか?」
「おや? 私のこと知りたいんじゃなかったのか?」
「そ、それは知りたいが……、空想の存在であれば隠したいのが通常なのでは?」

 リュトは突然楽しそうに笑い、目を細めて俺を見てきた。

「私はインキュバスであることは捨てていない。つまり能力はそのままだ──分かるな?」

 リトはハッとした。そういえば初めてルイスと会った時、俺のセックス事情を把握出来ていた。それは夢のなかでもカウントされているのかと驚きはしたが、相手がインキュバスやサキュバスであれば同類なら分かるのかもしれない。

 ともあれ、セックス事情が全て見透かされるのはなんとも気分が悪いものだな。

 顔をしかめた俺にリュトは小さく笑って、お詫びを述べた。

「人間がインキュバスやサキュバスに惚れるのは至極当たり前で、普通なら放置するんだが……今回はちょっとお節介をしたくなってね。君は気付いていないが、同類の匂いがまとわりついてる」
「同類の……匂い?」
「マーキングと思っていい。契約してるなら、常にその匂いがまとわりついてるんだが、契約してないときた──そのインキュバスだかサキュバスだか知らないが、かなり勇気のある行いだな」

 ルイスが俺をマーキングしていると知り、浮かれそうになってしまう。
 駄目だ。もう少し詳しく訊かなければ。

「リトと言ったか、君は極上の精気がある。まだ子どものソフィアでさえもいい匂いと言うのだからな。とうに契約してると思ってた」
「契約というのはどんな——」
「それは言えないな。自分の身のためにも……エリカと契約している以上は」

 やはり先ほどの人はエリカだったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...