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第三章「焼き味噌団子」
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本日の式日寄合裁判の案件は二件。
直に判決が下されて、これにて本日はお開きというときに、老中の阿部豊後守正武が、
『ときに飛騨守殿、南町では、お七とかいう娘を火付けの疑いで捕縛したとか?』
と訊いてきた。
『はあ……』
よくもまあ、そんなことまで耳に入るものだと正親は思った。
『で、その娘、まこと火付けの罪人か?』
『父親が訊いたところ、本人が頷いたということですし、火打道具も持っておりましたので。それに、前に二度ほど火付けをしそうになったとか』
『では、決まりではないか』
『はあ、されど、いまだ火を付けた理由が分かりませぬ』
『分からぬとは、どういうことじゃ?』
正武は、四角張った顎をぐっと上に押し上げて、白髪が混じり始めた眉を顰めた。
『はあ、取り調べを続けておりますが、娘の気持ちが落ち着かないようで』
『白状はしておるのであろう?』
『大番屋に移して調べをしておりますが、だんまりを決め込んでいるようで』
『手緩い!』
正武の甲高い声が、部屋中に響き渡る。
部屋にいた者たちは、体をびくつかせる。
氏平でさえ、体を震わせたほどである。
だが、正親は眉毛一本すら動かさずに、平然と座っていた。
『締め上げてでも吐かせい!』
『しかし、まだ年歯もいかぬ娘ですので』
『飛騨守殿、火付けは大罪ですぞ。その娘、見せしめのためにも、早いとこ処断なされい!』
直に判決が下されて、これにて本日はお開きというときに、老中の阿部豊後守正武が、
『ときに飛騨守殿、南町では、お七とかいう娘を火付けの疑いで捕縛したとか?』
と訊いてきた。
『はあ……』
よくもまあ、そんなことまで耳に入るものだと正親は思った。
『で、その娘、まこと火付けの罪人か?』
『父親が訊いたところ、本人が頷いたということですし、火打道具も持っておりましたので。それに、前に二度ほど火付けをしそうになったとか』
『では、決まりではないか』
『はあ、されど、いまだ火を付けた理由が分かりませぬ』
『分からぬとは、どういうことじゃ?』
正武は、四角張った顎をぐっと上に押し上げて、白髪が混じり始めた眉を顰めた。
『はあ、取り調べを続けておりますが、娘の気持ちが落ち着かないようで』
『白状はしておるのであろう?』
『大番屋に移して調べをしておりますが、だんまりを決め込んでいるようで』
『手緩い!』
正武の甲高い声が、部屋中に響き渡る。
部屋にいた者たちは、体をびくつかせる。
氏平でさえ、体を震わせたほどである。
だが、正親は眉毛一本すら動かさずに、平然と座っていた。
『締め上げてでも吐かせい!』
『しかし、まだ年歯もいかぬ娘ですので』
『飛騨守殿、火付けは大罪ですぞ。その娘、見せしめのためにも、早いとこ処断なされい!』
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