突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

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1章 あのポーズが全ての始まり

1日目~火が出た!!~

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時は遡り、729日前。

一人の中年が夜道を歩いている。

時間は天辺を2時間前に過ぎ去り、丑三つ時に近づく。

身長180cm。体重60kg。視力0.3、眼鏡での矯正で1.0程度。

髪はボサボサ。無精髭アリ。

職業、会社員。企業の社内システムの開発、運用、管理をしているシステムエンジニアというやつだ。

酒は付き合いで飲む程度だが、タバコだけはどれだけ高額になってもやめられない。

35歳、独身。

この中年は、『火火野 晃太(ヒビノ コウタ)』。

この物語の主人公である。

ゴソゴソ

火火野「…あ、会社にライター忘れたわ…最悪。」

帰り道、唯一ある喫煙スポットで一服することがルーティンだ。

火火野「コンビニ行くのもめんどいな…」

おもむろに、右手で拳銃の型を作る。

火火野「フンッ!…って着くわけねーかw」

ポッ…

右手で作った銃身の先に、火が灯る。

火火野「うぉわっちぃ!!!」

急いで右手を振り回す。

右人差し指に灯った火は消えたようだ。

火火野「…おいおい。マジか。」

急いで周りを見回す。

誰も居ない。

『大いなる力には大いなる責任が伴う』

どこかで見たことのあるフレーズが、頭に浮かんだ。

とりあえず走って帰宅し、家の中に入り呼吸を整える。

喫煙所から家まで2キロ程度。

走って帰ることなど全くない。運動をしていないのに、あまり疲れていないことが驚きだ。

火火野「…ふぅ。仕事のし過ぎで幻でも見え始めたか。」

再度、右手で銃を作って良く分からないが力を込めてみる。

ポゥ

火が灯る。

弱弱しいが、右人差し指の指先に確かに存在している。

火火野「…夢オチじゃ、ないよな。」

そこからは実験。

左手で同じことができるか。

手のひらの上に出現させることができるか。

記憶があるのは30分程度、いつの間にやら眠っていた。

目が覚めたのは正午を過ぎた頃。

普段、3時間~4時間しか寝むれないのに、ビックリだ。

火火野「あー、やべー寝すぎた。あ、ダルイ…風呂も入ってねー。休みで良かったわ。…メガネ、メガネ…ん?」

眼鏡男子になって10数年。視力は年を追うごとに悪くなっていき、”見る”ための必需品だったはずだ。

それがどうだ。部屋が見える。はっきりと。

メガネは床に落ちているのにだ。

火火野「…見える。見えるぞ!!」

この能力の開花が関係しているのかは分からないが、視力が回復したようだ。

にしてもダルイ。

体が鉛のようだ。

とはいえ、生存するために食事は必要だ。

火火野「買っててよかった、インスタントラーメンっと。」

ズズッとラーメンを片手鍋に入れたまま食す。

食しながら、夜の続きを行った。

これから何が起こるのか、男の子の本能だろう、少しワクワクしている自分が居る。

まだ、自分の運命には気づくはずもない1日目が終わる。
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