突然能力に目覚めた男の730日

こうめい

文字の大きさ
10 / 43
2章 邂逅

450日目その4~秘密事と寮生活の始まりと~

しおりを挟む
駆と水元が水の寮へ向かうために部屋を出てから数十秒。
部屋には、各能力の序列1位のみが残っている。

夢野「その表情は、何を問われるのか当たりが付いているようね。」
火火野「えぇ。自分でもずっと考えていたので。」
里水「単刀直入に聞くが、火以外に別の能力を持っているな?」

全く表情が変化しない。
周りは…期待?興味津々?といった感じだ。

火火野「あぁ。あるよ。」

里水は軽く頷き、続ける。

里水「やはりか。どんな能力かを聞く前に、言っておこう。俺達にもあるんだ。別の力が。」

やはりか。
俺だけ、ということはないと思っていた。
ただ、”レア”だという事は明らかだった。

雷華「私たちから、どんな能力なのか、お伝えしましょう。」
火火野「いいのか?人払いしたってことは、組織内でも秘密事項にしているんだろ?」

夢野が頷く。

夢野「そうよ。だから、序列1位と個別の能力を持っている者しか知らないわ。」

まぁ、納得いく人選だと思った。

夢野「もう言っちゃうけど、不知火君以外は個別能力を持っているわ。あなた含めて4人だけ、今後現れるかどうかは分からないけどね。」
火火野「そうなんですね。」
雷華「では、私から。火火野さんは、ある程度見当がついてるでしょうから。」

雷華はニッコリしながら、続ける。
不知火の顔には、そうなのか?が書いている状態でコチラを見てくる。
俺はソレに頷きで返す。

火火野「能力者が分かるんだろ?あんたが放った風に触れるか何かすると。」
雷華「ご明察ですね。少し風の中に留まっていただく必要がありますけど、どの能力を扱えるのか感じることができます。」
不知火「へぇー。お前すごいな。俺はいつ見つかったのかすら分からんかったぞ!」

ガッハッハと豪快に笑っている。
まぁ、普通の能力者はそうだろうな。

天岩「次は私で良いかな。私は、ある程度だけど、強さが見えるよ。対象者が能力を発動していないといけないけどね。」
火火野「へぇー。かなり便利だね。チームを組むときにすごい有用だ。」

天岩は少し照れくさそうにしている。

スッと、割って入る里水。

里水「最後になったが、俺は他人の治癒が可能だ。ある程度重症だとしてもかなり早く治すことが出来る。病気を治したりすることは出来なかった。千切れた腕を生やしたりするのは”多分”無理だ。死んだ人間を生き返らしたりも不可能だと思う。」
火火野「多分無理?」
里水「どこか千切ってみるか?」
火火野「あー、理解した。」

皆の視線が俺に集まる。

火火野「じゃ、俺の番ね。俺は人が能力を使用しているのが”視える”んだ。雷華さんの風に捕まらなかったのも、俺には視えていたから。さっきの落とし穴も同じで、視えてたから落ちなかった。」
雷華「何で私の風を避けていたのですか?」
火火野「簡単な話さ、”誰”のどんな能力かは分からない。悪人の攻撃かもしれない能力に触れる奴はいないでしょ。」

不知火が大きく、おーきく頷く。

火火野「まぁ、能力者を探しているんだろうってのには、気付いていたんだけどね。夢野長官まだ時間あります?」
夢野「大丈夫ですよ。この後は特に予定はありませんので。」
火火野「じゃ、ちょっと掘り下げて、雷華さん、天岩さんはどんな感じで分かるの?」

雷華と天岩は顔を見合わせて。

雷華「”さん”は要りません。火火野さんの方が、年上ですので。」
天岩「私も土筆でいーよ。」
火火野「あー。癖みたいなもんだね。年齢関係なく、”さん”付けが染みついちゃってるからさ。じゃ、お言葉に甘えて。雷華から聞かせてくれるかな。」

雷華はニッコリしてから始めた。


雷華「私は、風が触れたものの感覚なので、なんとなく熱かったり、冷かったり、ザラザラしてたり、フワフワしてたりします。」
火火野「本当に、感覚なんだな。土筆は?」
天岩「私は、透明なモヤみたいなものが見えるな。大きさで判断する感じ。能力者によって違いはなくて、本当に大きさだけ。」
火火野「隠すことはできるの?」
天岩「多分できないよ。ちょっとだろうが、全力を出そうが、モヤの大きさは変わらなかったよ。あと見ようと思った時だけ視える感じだよ。」

俺は、フムフムと思っていたら。

雷華「火火野さんは?どんな感じに視えるんですか?」
火火野「あー、聞きっぱなしだったな。俺は、色が付いて視えるよ。灰色のキャンパスに水彩絵の具で薄く色を塗ってる感じかな。能力者からその色が伸びていて、発動しようとしている場所に溜まってる。」
里水「かなり戦闘に有益な力だな。奇襲とか意味がないな。」
火火野「まぁ、目で見てればな。俺の能力は視てないと意味がないから、背後から襲われたりすると分からないな。」
不知火「うーーん。でも月末はタイマンだから、ものすごい有利だなぁ。こっちの能力は視切られて、そっちは隙間から攻撃を当てられるんだろ。」
火火野「まぁ、戦いの中ではかなり優位に立てると思う。けど、今まで能力者とあんまり戦ってないから、もっといろいろ検証しないと、実戦で頼りにしすぎるのは危険かな。」
不知火「そうか。だが、ものすごい頼りになりそうな味方が増えて何よりだ!!」

また、でかい声で笑っている。

里水「落とし穴の件。避けるだけで良かったんじゃないか。」

少し、怪訝そうな表情になったように見えた。

火火野「俺の持論だけど、トラブルの時にこそ”本質”ってやつが見えるもんだ。だから、ちょっともめ事を起こして、どう対応するのかを見てみたかったんだ。まぁ、あいつ等が仕掛けて来なければ、こっちから仕掛けようと思ってたんだ。」
里水「そういう事か。俺の対応は想定通りだったか。」
火火野「いや、そんなに何もかも予想している訳じゃないよ。ただ、余りにも素早い対応だったから、今回が初めてじゃないとは思ったけどね。」
不知火「ハッハッハー!俺は見事に落ちてしまったがなぁ!!冗談抜きでぶん殴ってやろうと思ったぞ!」
火火野「でも、皆もその時に、俺の能力についてなんとなく気づいたんだろ?」

皆頷く。

天岩「アイツ等、それなりに練習してるから、あの落とし穴のクオリティーもかなり高いしね。」
雷華「初めましての、あの状況で気づくのは難しいですね。」
里水「分かった。ただ、今後はあまり揉め事を率先して起こすことはやめてもらいたいものだ。」
火火野「あぁ。こちらもすまなかった。お前の対応のおかげで、大事にならなくて助かったよ。」

里水はまた、無表情に戻っている。

夢野「一通り聞きたいことは聞けたわね。他に何かある?」
 
俺は少し考え、確認してないことを思い出す。

火火野「敵…雷華達より先に現れたアイツ等について、教えてください。」

長官は少し、表情が暗くなる。

夢野「私たちの、いえ非能力者の天敵になりうる組織よ。と言っても5人しか確認できてないけどね。」
火火野「たった5人ですか?それなら、こちらがちゃんと対応すれば、脅威にならないのでは?」
夢野「4人は、何とでもなると思うわ。ただ…」

長官の表情に影が落ちる。

夢野「たった1人。あちらの最強が、全能力者の最強なの。里水君や不知火君、駆君は戦ったことがあるけど、こちらは本気、あちらは戯れ。何か月か前の話だけど、その実力差は絶望的ね。」
里水「…俺はあの時よりかなり強くなったが…」
不知火「全然、届かんよな。」
火火野「…」

あの時の悪寒。間違いないだろう。
最強の能力者。

夢野「その能力者は、『龍皇』と呼ばれているわ。始まりの能力者で、私の父よ。」

さすがに驚く。

火火野「父親と敵対しているのか。…ですか?」

長官の暗さが少し和らぐ。

夢野「クスッ。無理矢理に敬語にしなくてもいいわよ。簡単な意見の相違よ。でもとんでもない人数の人達を巻き込んだド派手な親子喧嘩ね。まぁ、私は無能力者なんだけどね。」

えーーーーー!!
声にならない声が出た。

最後にとんでもないカミングアウトが何個もあって、長い長い今日が終わっていく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...